かつてのパナソニック電工が挑む「くらし」のデジタル化

かつてのパナソニック電工が挑む「くらし」のデジタル化

2018.11.06

グループ名門企業が挑む次の100年の姿

住宅の先行き不透明な中、デジタルが重要な役割

未知のニーズを如何にかたちにできるか

パナソニックは、東京・有楽町の東京国際フォーラムで創業100周年記念イベント「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」を開催した。この中で、パナソニック エコソリューションズ社の北野亮社長が、「次の100年における人々の『くらし』の変化とパナソニックのお役立ち」と題したビジネスセッションを行った。

パナソニック エコソリューションズ社の北野亮社長

「アタッチメントプラグ」を手掛けるエコソリューションズ社

エコソリューションズ社は、かつてのパナソニック電工(旧松下電工)の流れを汲み住宅関連事業を手がける、パナソニックの社内カンパニーだ。ちなみに、パナソニックの創業商品として有名なアタッチメントプラグは同社が担当しており、現在でも漁船向けや屋台向けなど、年間10万個の出荷実績があるという。

アタッチメントプラグ」は1918年の松下創設時の商品

北野社長はエコソリューションズ社について、「練り物樹脂の製造技術をコアにスタートした配線器具や照明器具などの電設資材や、雨樋でスタートした住設機器のほか、空気質設備、ソーラー、蓄電池など、住宅分野および非住宅分野にひろく事業を展開している。近年は高齢者向け介護サービス事業、自転車によるモビリティに加えて、さらに街づくりにまで事業を広げている」と説明。同社を「24時間、人々が生活しているあらゆる場面で役に立てるカンパニーだ」と位置づける。

セッションには北野社長のほか、小学館 サライ編集室の小坂眞吾編集長、スキーマ建築計画の長坂常代表、東京大学大学院 工学系研究科 先端学際工学専攻の森川博之教授が参加し、人々の「くらし」の変化についてのパネルディスカッションを行った。このモデレータを務めたのは、フリーキャスターであり千葉大学の客員教授でもある木場弘子氏だ。

フリーキャスターの木場弘子氏

今後の住宅ビジネス、デジタルで成長させたい

まず北野社長は、「住宅着工件数をみると、先行きは明るくない」という見通しを示す。パナソニックは、住宅着工数が上昇し続けていた数十年前の成長期には、豊かなくらしを実現するためとして『電気の1、2、3運動』を展開し、1部屋に2つの灯りと3つのコンセントを提案するなどしてきた。その後も省エネで明るいインバーター技術や、LEDの普及にも力を注ぎ、人々のくらしを変えてきた。そして、「これからはデジタルが重要な役割を果たすことになる」と展望を述べる。

40年ほど前、住宅着工数が減ってきた時期には、増改築キャンペーンを展開し、既存住宅向けの新ビジネスとして増改築需要を掘り起こしたことも

北野社長はパナソニックの強みを、「リアルなくらしのタッチポイントを持っている」ことだと話す。その強みを活かし、「デジタルが、さりげなくより良いくらしやより良い社会をサポートしてくれることに期待している。デジタルを活用することで、掃除、洗濯中であったり、午後からはホームパーティーを開いていたであったり、一日の中でその時間に何をしていたのかといった、これまではわからなかった、その人のくらしぶりがわかるようになる。実際のくらしぶりにあわせて、本人すら気がつかなかった新たな価値やサービスを提供できるようになる」と今後を語る。

パナソニックは直近、住宅向けIoT家電導入を包括的に提供する新ビジネス「Home X」を発表している。北野社長はHome Xを、利用者とくらしをデジタルでつなぐ「くらしの総合プラットフォーム」だといい、「Home Xでは、賢くて押しつけがましくない奥ゆかしいサービスを、さりげなく提供する」と説明した。

エコソリューションズ社の方針は今後も変わらず、「家、街、社会を、人起点で、より良く、快適にすることだ」と話す。ただし、「やり方は、いま流のやり方になる」という。変えるべきは変え、「IoTとAIを組み合わせた家電の知能化によるくらしのアップデートを通じて、人に寄り添った変化を提供したい。より良いくらし・社会のために、果敢に取り組み、変わり続けるカンパニーでありたい」と述べる。

未知のニーズを如何にかたちにできるか

スキーマ建築計画の長坂常代表

ここで、スキーマ建築計画の代表で建築家でもある長坂常氏が、京都・南禅寺のブルーボトルや、東京・表参道のHAY TOKYOなど、自らが設計した店舗での経験をもとに、「ブルーボトルの店舗は京町家を改装したものであり、景観を守りながら、和の様式のなかに洋を取り入れた。また、HAY TOKYOでは、一晩で、すべての什器を取り外すことができる仕組みとなっている。パリでは、午前中にはマルシェだったところが、午後は通路になったり、広場になったりし、道にある緑もリフターで動かすことができる。散々、建物を作ったなかで、人がアクティビティになっていないという課題に気づいた。いまは、ある程度、街のなかに建物が整ってきて、そのなかをどうしていくかということが重要になっている。これからはリノベーションが重要になる」という気づきを語る。

長坂代表はさらに、「今後は、建物や部屋を所有するというだけでなく、時間単位で空間をシェアするようなことが増える」という見解を示す。そして、「空間を作る上でデジタル技術は必要になる。それによって、もっと豊かな空間を作れるだろう」と、デジタル技術とくらしが繋がることへの期待を語った。

東京大学 大学院工学系研究科先端学際工学専攻の森川博之教授

東京大学 大学院の森川教授は、「隠れた顧客のニーズを探し出すことが大切であり、これを実現するのがデジタルである」と発言する。過去の例としてハードディスクレコーダーの登場を挙げ、「ハードディスクレコーダーにすべての番組を録画しておき、見ないものは消すという、それまでにないTV体験を実現した。こうしたものを探さなくてはならない」と、発言の背景を説明する。

今後さらに期待することとして、「AIやIoT、ビッグデータを使ったデジタルが、さりげなく裏側に入って使われる世界を期待している。たとえば、建物や地面などにセンサーを埋めることで、事前に地滑りなどの危険を検知するといった使い方が可能であり、命を救うことにつながる。こうした活動が地道に行われ、私たちをさりげなく守ってくれる世界が訪れてほしい」と、新しいデジタル活用の可能性を語った。

ハードディスクレコーダーの全録で、テレビの視聴スタイルが大きく変わったという人は多いはず
小学館 サライ編集室の小坂眞吾編集長

サライの小坂編集長は、家電を取り巻く現状を、「便利な家電が世の中に数多く溢れていても、デジタルが進み、すぐにそれ以上に便利な家電が生まれる。これが今後もずっと繰り返えされるだろう。一方で、モノを買っても、すぐ売ったりシェアリングしたりするような若い世代が増えている」と分析する。そして、「全体がこうした(若い世代の変化の)流れに対応していく必要がある」と語る。「モノとモノがつながるだけでなく、人と人がつながるものを出してもらいたい」と、パナソニックのデジタル活用への期待を寄せて締めくくった。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。