「亀田製菓が大豆でおつまみをつくった」が、単なる新商品発表ではない理由

「亀田製菓が大豆でおつまみをつくった」が、単なる新商品発表ではない理由

2018.11.06

亀田製菓が「大豆でつくったやさしいおつまみ」を発表

商品開発の背景に、世界的な食糧危機の懸念

ゲストでメイプル超合金、夏奈が登場! 気になる味は?

亀田製菓は11月5日、植物性原料の大豆でつくった新商品「20g 大豆でつくったやさしいおつまみ 旨口さきいか味」「24g 大豆でつくったやさしいおつまみ 黒胡椒ジャーキー味」を、東京都内にて期間限定で販売すると発表した。

亀田製菓が発表した「大豆でつくったやさしいおつまみ」シリーズの「黒コショウジャーキー味」(左)と「旨口さきいか味」(右)

これは一見、単なる”新商品発表”に過ぎない出来事だが、実は亀田製菓にとっては社運を賭けた挑戦の第一歩でもある。では同社が「大豆でつくったやさしいおつまみ」から始める挑戦とは何か。11月5日に行われた記者会見の様子と合わせて紹介する。

「さきいか」と「ジャーキー」で食糧危機を救う?

亀田製菓の挑戦とは、将来的な「食糧危機への対応」、および世界市場を獲得するための「構造改革」である。では、大豆でつくった「さきいか」「ジャーキー」風のおつまみを売り出すという発表とそれらがどう結びつくのか。まずは食糧危機への対応について説明する。

総務省統計局の「世界の統計 2018」によると、地球の総人口は2017年の75億5000万人から、2055年には97億7000万人にまで増加すると予想されている。人口が増加すると、当然これまで以上の食料が必要になるだろう。

しかし、普段当然のように摂取している動物性タンパク質(牛、豚、牛乳など)を得るためにはその何倍ものタンパク質が消費される。牛や豚は毎日多くの餌を食べるし、生きるためにはそこから得た多くのエネルギーを消費する必要があるためだ。

人口が増加しても、これまでのペースで人類が「肉」を食べ続けると、いずれその供給が間に合わなくなるタイミングがくる。これを「タンパク質危機」と呼び、早ければ2025年~2030年にはその危機が訪れるとも言われている。そのため今は、タンパク源を得るための選択肢として「昆虫食」なども流行っているが、やはり食べなれた牛や豚の肉を食べたい、というのが多くの人の本音だ。

その問題を解決するための亀田製菓の一手が、動物性タンパク質を植物性タンパク質で代替する技術の開発。つまり、大豆で「さきいか」と「ジャーキー」をつくったのは、迫る食糧危機を救うための第一歩であるというわけだ。

新規事業で欧米市場の獲得へ

植物由来の代替商品を開発する企業は、グローバルで増えている。植物由来の人工肉や乳製品を製造する米インポッシブル・フーズは、1000以上のレストランで”植物肉”を使用した「インポッシブル・バーガー」を販売して人気を博している。同社や、同じく人工肉を製造・開発する米ビヨンド・ミートはVCや投資家から多くの資金調達を果たしており、「植物由来の代替食品製造」は、今注目の市場の1つといえる。

もちろん、そうした企業に資金が集まるのは、そこに大きな市場成長の可能性があるためだ。特に欧米市場はチャンスで、健康意識が高く、お肉のように美味しく食べられるのにヘルシーな「人工肉」のニーズは高いのだという。亀田製菓も「大豆」商品で、健康志向の高い人たちを対象に市場の獲得を目指す。

そこでの同社の強みは、これまで培った経験にある。代表取締役会長 CEOの田中通泰氏は「当社が培った製造技術を活かし、まるで本物、むしろ本物よりも美味しい新感覚の食品を作っていきたい」と意気込んだ。

亀田製菓 代表取締役会長 CEO 田中通泰氏

 具体的には、原料の水分をコントロールすることで独自の食感に仕上げる技術や、調味・味付け技術などを活用するとのこと。ただの「代替食品」ではなく、低カロリーで美味しく食べられることを前提に商品を開発したといい、新商品を指して、「ビヨンド・ミート」ならぬ「ビヨンド・おつまみ」とも表現した。

なお日本市場でも、「健康志向の女性への展開を見込んでいる」とのこと。

亀田製菓の「食感技術」と「調味技術」

食感は完全にジャーキーで「ビールに合いそう」

記者会見では、芸人のメイプル超合金(安藤なつさん、カズレーザーさん)と女優の夏菜さんが登場。その美味しさを伝えるための「食レポ」に挑戦した。

メイプル超合金の安藤なつ(左)とカズレーザー(右)、女優の夏菜(中)

黒胡椒ジャーキー味のおつまみを食べ、「ジャーキーと同じ食感で驚いた。ビールに合いそう。美味しい」と夏菜さん。続けてメイプル超合金の安藤なつさんは「これは本物のジャーキーに違いない。ドッキリでしょ? 責任者を呼んで来い」とコメント。もちろん本物のジャーキーのはずはなく、”責任者”どころか亀田製菓のCEOである田中氏も同席していたため、少し現場がピリついたが、カズレーザーさんが「……出てくるのは我々の事務所『サンミュージック』の責任者となりそうです」とすかさずフォロー、会場の笑いを誘っていた。

「本当に大豆でできてるの? 」と思わず成分表を確認する2人

ちなみに筆者も食べてみたところ、「大豆でつくった」と知っていても、本物のさきいか、ジャーキーとの違いはほとんど感じなかった。強いて言うなら、初めの噛みごたえは本物と相違ないものの、唾液に溶けやすいのか、数度噛むと柔らかくなりやすいような印象を受けた。だが、違和感を感じるほどの違いではなかったため、「カロリーや塩分を抑えたい」という人には積極的に選びたい選択肢になることだろう。

「大豆でつくったやさしいおつまみ」は11月6日から11月末まで、東京限定でテスト販売する
CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。