パナソニックが描く未来のクルマ像 --車内空間の進化で移動と生活は融合する

パナソニックが描く未来のクルマ像 --車内空間の進化で移動と生活は融合する

2018.11.02

パナソニック、最新クルマ技術による暮らしの変化をテーマにセッション

これからのクルマは通信が前提になり、車内空間が格段に快適になる

地方創生にもつながる未来のモビリティ、パナ独自のノウハウに期待

パナソニックが、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催している「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」。その中で、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の伊藤好生社長らが、「変革するモビリティ~ミライのクルマ、街、くらし~」をテーマにしたビジネスセッションを行った。

セッションにパナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の伊藤好生社長、同 柴田雅久上席副社長のほか、慶應義塾大学 環境情報学部教授 政策・メディア研究科委員長の村井純氏、モータージャーナリストの岡崎五朗氏、ファッションモデルの蛯原友里さん、モデレータとして三菱総合研究所の杉浦孝明主席研究員が参加

オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、パナソニックの車載関連事業を中心とした社内カンパニーだが、セッションの話題はクルマだけに留まらず、人々の生活全体に対して、自動運転などの最新技術が与える影響を探っていく内容になった。

パナソニックが完全自動運転時代にできること

パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の伊藤好生社長

伊藤社長は冒頭、パナソニックが目指すモビリティ社会について以下のように説明した。

「クルマを取り巻く環境には、『コネクティッド(Connected)』、『自動運転(Autonomous)』、『電動化(Electric)』、そしてクルマの『シェア(Sharing)』といった、『CASE』と呼ばれる変化が起きている。これらの変化の対応には、パソナニックがテレビやデジカメなど、家電で培ってきた技術が貢献できる。デジタルAVC技術や画像処理技術、電池、電源技術を活かして、コックピット、ADAS、自動運転、電動化の分野で、クルマの進化に貢献したい」

また、将来的に完全自動運転が実現した世界での“挑戦”にも言及。「ドライバーが運転から解放されると、移動時間の過ごし方が大きく変わる。パナソニックは創業以来、家電と住宅設備で、よりよい暮らしのための住空間を提供してきた。この住空間の技術やノウハウとコックピットシステムを融合させ、新たなコンセプトの移動空間を作る」と語る。

「新たな移動空間としての次世代キャビンは、乗っている人の状態をセンシングすることで、その人に最適な空間を提供する。人の体温にあわせて空調をコントロールしたり、用途にあわせて照明や音響をコントロールしたりすることで、リビングのような空間を作り出すことができる」と、将来的な展望も付け加えた。

「あわせて、未来のモビリティにも挑戦する。パナソニックは、藤沢と綱島で、スマートタウンをオープンした。エコで快適、安心、安全のインフラを提供している。ここでは、小型EVモビリティが街のなかを行き交い、子供たちの送迎に利用されるなど、地域の移動を支えていくことになる。街の活気を高めるモビリティサービスを提供したい」

これからのクルマは「つながる」

これら伊藤社長の話を受け、三菱総合研究所の杉浦孝明主席研究員をモデレータに、伊藤社長のほか、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の柴田雅久上席副社長、慶應義塾大学 環境情報学部教授 政策・メディア研究科委員長の村井純氏、モータージャーナリストの岡崎五朗氏、ファッションモデルの蛯原友里さんが参加してパネルディスカッションが行われた。

慶應義塾大学 環境情報学部教授 政策・メディア研究科委員長の村井純氏

慶應の村井教授は、日本におけるインターネットの父と呼ばれる存在。「インターネットの前と後では生活が大きく変わった。いま普通のことが、インターネット以前にはどうやっていたのだろうと思うほどだ。最初はコンピュータが有線でつながっていることが、”つながっている”ことの証であり、それが格好いいとされた。当時のインターネットの世界をリードした雑誌の名前がWiredだったのもそれが理由だ」と前置きた。その有線接続が主流だった黎明期の当時から、「コンピュータをクルマに組み込むと、人と一緒に動くことができると考え、クルマへの搭載を進め、それから持ち運べるようなものを作ろうとした。そこからビジョンを考えて続けて、いまに至っている」と、インターネットが登場した早い段階から既に、クルマをベースにした研究が始まっていたことを示した。

パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の柴田雅久上席副社長

これを受けて、パナソニックの柴田氏は「これからのクルマは、通信が前提になってくる。次世代通信規格の5G、準天頂衛星のみちびきによるGPSの進化、V2Xと呼ばれるクルマとクルマ、クルマと人、クルマとインフラがつながることで、さらにクルマは進化することになる。自動運転が発展し、運転をすることよりも、移動が主になる」とし、それにより、「クルマにはさらに車内空間の快適性が求められるようになる。パナソニックが培った技術を車内空間に生かすことができる」と話した。

三菱総研の杉浦氏は「快適なリビングやホテルのような車内空間になると、もっとクルマは便利になる」と指摘。岡崎氏も、「これまでのクルマは、走る、曲がる、止まるという3つの要素があり、そこにデザインがすばらしければ、いいクルマと言われた。この考え方が100年間続いてきた。だが、これからは、ここに、つながるという要素が加わることになる。つながることが、我々をワクワクさせている」と期待を寄せる。

三菱総合研究所の杉浦孝明主席研究員
モータージャーナリストの岡崎五朗氏

一方、村井教授は「これまでのクルマ移動は、”運転”する必要から、子供の世話ができない、仕事ができないという状況になっていた。生活と移動が乖離していた。だが、コネクティッドオートモバイルでは、移動している間も、生活と同じことができる環境が実現する。生活のなかに、移動を溶け込ませることができる」と指摘。これに対し子育てと仕事を両立中の蛯原友里さんは、「運転で最もストレスなのが駐車するとき」で、「運転中に、後席のチャイルドシートで子供が急に泣きだし、なにもできないということがある。運転中も子供の相手ができる時間がつくれたらいいと思っている」と、実体験をもとに語る。

ファッションモデルの蛯原友里さん

柴田氏は「全周囲カメラで障害物を検知する機能で、駐車のストレスを軽減できる。さらに次のステップでは、クルマが自動で駐車してくれる。その次にはショッピングモールの店の入口で降ろしてくれて、あとはスマホ操作でクルマが自動的に駐車スペースを探して駐車してくれるようになる。また、ドライバーの眠気発生時などに注意を促すシステムを開発しているが、この技術を応用し、後席のお子さんが泣かないように対話してくれるといったシステムも可能になるだろう」とした。

伊藤氏は「技術的に難しいものでも、使いやすいことが大切。技術者視点で作ってしまうと使いにくいものができてしまう可能性がある。パナソニックは、白物家電を長年やってきた。その上で、スイッチの場所、表示方法などを含めた使いやすさを追求してきた。この点でもパナソニックが貢献できる」と付け加える。

また今後は、カーシェアリングの仕組みにより、使いたいとき、必要なサイズのクルマを利用するスタイルが広がるという指摘があがる。柴田氏はそれに同調しながら、「とくに女性から、前の利用者のたばこ臭やポテトチップのニオイが気になるという声がある。前の利用者がインフルエンザや風邪だったということも想定できる」とし、蛯原さんも「子供を病院に連れていく際、逆に風邪がうつるかもしれない」と心配する。柴田氏は「パナソニックのナノイー技術で車内の空気をきれいにできる。シェアリング車に乗るだけで、髪や肌に潤いを与えるということにも使える」とし、さらに村井教授は「病院に行かなくても、クルマのなかで移動中に診療が受けられたり、診療したりできる時代がやってくる」と展望を話した。

モビリティは地方創生にも貢献できる

セッションでは、地方都市におけるクルマの必要性についても議論があった。地方ではクルマが必要不可欠な移動手段であるものの、高齢化で、住民の免許返納も進んでいかざるを得ないという問題が生まれている。

参加者たちは、自動運転の実現が、こうした地方の移動の問題を解決したり、ドライバー不足を解決する手段になると話しあう。また自動運転車が、地方都市を訪れる外国人観光客に対しても、新たに有力な移動手段のひとつになり、地方創生にもつながっていくことなどが話された。杉浦氏は「モビリティは、地方のインフラを活性化することができる。地方創生において、これからはモビリティによる社会を作る必要がある」と結論づけた。

最後に、モータージャーナリストの岡崎氏は「移動の自由度を高め、快適性を高め、安全性を高め、これを安価に利用できることが求められている。今後のモビリティに期待したい」と述べる。蛯原さんは「自動運転によって子育てにもいい影響をもたらし、みんなが笑顔になれるクルマが登場してほしい」と発言した。村井教授は「パナソニックには、人の周りにあるものを使いやすくするという知見が蓄積されている。自転車、車椅子、小型EV、自動車など、様々な移動手段において、これらのノウハウが生かされることに期待したい」と述べ、セッションを締めくくった。

損なのか得なのか? ユーザー目線で考えるトヨタのサブスク「KINTO」

損なのか得なのか? ユーザー目線で考えるトヨタのサブスク「KINTO」

2019.02.20

トヨタがクルマの月額定額サービス「KINTO」を開始

「カローラ スポーツ」が3年で192万円強

このサービスをトヨタが始めることの意義

トヨタが提案する新しいクルマとの関係、それが愛車サブスクリプションサービス「KINTO」(キント)だ。簡単にいえば3年契約の自動車購入プランだが、最大の魅力は“明朗会計”とでもいうべき月額負担のみで、クルマのある生活を手にすることができるところ。この新たな販売形態は、我々にどんなメリットをもたらすのだろうか。ユーザー目線で考えてみた。

トヨタがクルマのサブスクリプションサービス「KINTO」を始める

「プリウス」が月々4万9,788円から乗れる新サービス

トヨタは2019年2月5日、愛車サブスクリプションサービスの運営会社として株式会社KINTOを設立すると発表した。新サービス「KINTO」の名称は、西遊記に登場する「筋斗雲」からインスパイアされたもの。必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる便利さや自由さを表しているとのことだ。

KINTOの愛車サブスクリプションサービスは3年契約で、毎月定額料金を支払えば、クルマを期間限定で所有できる。単に車両代が定額なのではなく、月々の料金には、登録時の諸費用および税金、メンテナンス費、任意保険、毎年の自動車税までが含まれている。このほかの負担といえば、ガソリン代や洗車代、必要な人には駐車場代くらいで済んでしまう。複雑なクルマのコストをシンプル化したことは同サービスの特筆すべき点といえるだろう。

サービスメニューは、トヨタ車対応の「KINTO ONE」とレクサス車対応の「KINTO SELECT」の2つが用意されている。

KINTO ONEで選べるのは、「プリウス」「カローラ スポーツ」「アルファード」「ヴェルファイア」「クラウン」の5車種。全てハイブリッド仕様となる。選択できるグレードは制限されるが、ボディカラーは自由に選べる(有償色は追加料金)。オプションはパッケージされたものから選択することになるようだ。サービス開始が3月1日からなので、詳しい仕様やオプションパッケージの追加料金などは明かされていないが、最も安いプリウスの場合、月額(税込み)4万9,788円~5万9,832円で手にすることができる。ボーナス併用払いを利用すれば、月々の負担を減らすことが可能だ。

KINTO ONEは「プリウス」(画像)などトヨタ車5車種からクルマを選べる。月額料金は4万9,788円~5万9,832円

KINTO SELECTでは「ES」「IS」「RC」「UX」「RX」「NX」から1台を選ぶ。車種はセダン、クーペ、SUVと豊富だ。選べるのはハイブリッドモデルのみとなる。3年契約であることに変わりはないが、KINTO ONEと違うのは、これら6車種のうち、1台に3年乗るわけではなく、6か月ごとに乗り換えができるところ。月額料金は194,400円と高めだが、こちらも全ての費用が“コミコミ”となっている。

KINTO SELECTは「UX」(画像)などレクサス車6車種からクルマを選べる。月額料金は19万4,400円だ

新車に半年ごとに乗り換えられるのはかなり贅沢といえるが、残念なのは、グレードとカラー、装着オプションまでが完全指定となってしまうこと。これは、納期などの事情を考慮した結果だという。ちなみに、KINTO SELECTは2月6日に始まったばかりだが、2月13日の時点で、すでに契約者が現れているというのには少し驚いた。

なぜハイブリッド車だけのラインアップなのか

車両のラインアップを見て気になったのは、全てがハイブリッド車である点だ。トヨタが先頃、KINTOについての説明会を東京で開催したので、この点について質問してみると、株式会社KINTOの小寺信也社長からは、「DCM(車載通信機)搭載車のみに限定した」との回答が得られた。もちろん、人気や需要を踏まえた点もあるだろう。しかし、リアルなところでは、エコカーに適用される減税の恩恵を考慮したという事情があるのかもしれない。

ただ、トヨタはKINTOがDCM搭載車のみであることを、ユーザーメリットとして還元する手立てについても検討している。それが運転のポイント化だ。通信機能を用いた運転の評価を行い、安全運転やエコ運転など、その乗り手がクルマを大切に扱っていると判断できれば、それを利用料金の値引きという形で還元する手法である。さらに、このデータを、KINTO利用車両の中古車販売時の品質保証にも役立てるようだ。

このほか、KINTOでは販売や追加サービスについても様々な構想を検討している模様。小寺社長によれば、中古車版のKINTOも将来的には検討してみたいアイデアだそうだ。また、地域によっては、冬期のマストアイテムであるスタッドレスタイヤについても、オプションとして対応できるように考えているとのことだった。

KINTOにラインアップされたのは、「クラウン」(画像)などDCMを搭載する車両のみ。いわゆる「コネクティッド技術」を利用すれば、ドライバーの運転を評価し、その評価に合わせたポイントを付与することができる 

KINTO ONEとKINTO SELECTのどちらのサービスも、まずは東京地区から試験的に始めて、今年の夏以降には全国に展開し、秋口にはサービス対象車を拡大していく計画だという。サービス拡大に合わせて、それぞれの車種や仕様など選択肢も増えていくようだ。

KINTOのユーザーメリットとしては、3年間の車両代および維持費というコストを明確化できる点に加え、購入プロセスを簡素化できる点が挙げられる。最終的な契約では販売店に出向く必要があるが、車両のセレクトや見積もりなどはWEBで済ますことが可能だ。ワンプライスのため、値引きを引き出す営業マンとの駆け引きも不要となる。

注目すべきは、自動車任意保険が料金に含まれていることだろう。基本的な対物・対人だけでなく、フルカバーの車両保険である点にも言及しておきたい。また、全年齢に対応しているので、保険料が高くなる若い人ほど大きなメリットが享受できる。車両保険の免責は5万円なので、もしもの際、負担が最小限で済むのも嬉しい。

KINTO ONEで「アルファード」(画像)を選んだ場合の月額料金は8万5,320円~9万9,360円。これは登録時の諸費用や任意保険などを含む価格だ

気になる“お得度”を「カローラ スポーツ」で考える

ただ、やはり気になるのは、同サービスの“お得度”だろう。そこで、今回はグレード構成が分かりやすい「カローラ スポーツ」を例にとって考えてみたい。

対象車である「カローラ スポーツ」のエントリーグレードである「ハイブリッドG“X”」の車両価格は241万9,200円。これに対し、「KINTO ONE」の月額料金の下限は5万3,460円なので、年間で64万1,520円、3年間の総額は192万4,560円とそれなりの金額になる。

比較対象としやすいのが、車両価格の一部を据え置く残価設定型ローンだ。とあるトヨタ販売店のWEBサイトを訪れ、車両本体のみで「カローラ スポーツ」を購入した場合の残価設定ローン(3年契約)を試算してみると、頭金なし、金利4.5%で月々4万7,400円となった。残価設定ローンの場合、一定額を据え置くので、最終回に据え置き額を支払わなければ、クルマは返却しなくてはならないので条件は似ている。これにメンテナンス代、自動車任意保険、2年目以降の自動車税などが加わることを考えると、もしかしたら、KINTOはお得なのかもと思えてきた。

ただし、普通にクルマを購入する際には、値引きや付属品のサービスがある(可能性がある)ことは、忘れてはいけないポイントだ。金利だって、キャンペーンなどでもっと条件が良いこともある。とはいえ、自動車保険のことを考えると、少なくとも若者は、KINTOをトヨタからの魅力的な提案と受け取るかもしれない。

KINTO ONEで「カローラ スポーツ」(画像)を3年間乗る場合、料金は“コミコミ”で192万4,560円だ

トヨタがわざわざ自社でサブスクリプションサービスを展開する狙いは、新たな自動車ユーザーの掘り起こしだけでなく、販売店のネットワーク維持と収益確保にもある。仮にトヨタのクルマを使ったサービスであったとしても、他社のサブスクリプションサービスやリースなどでは、必ずしもトヨタの販売店を利用するとは限らないからだ。

また、KINTOは定額販売なので、販売に必要な人件費が削減できるし、販売後もメンテナンスによる定期的な入庫がある。これがメンテナンスによる収益を生み出し、KINTOユーザーとの関係を築く時間ともなる。その販売店をKINTOユーザーが気に入れば、3年後、次のクルマを選ぶ際、新車購入かKINTOの新契約になるのかなど選択肢は色々あるものの、とにかく同店の顧客となる可能性があるのだ。

また、KINTOは値引きなしのワンプライス販売なので、同サービスが普及すれば、トヨタの収益率向上に寄与するのはもちろんのこと、3年後の中古車価格の向上にもつながるかもしれない。

クルマの月額定額サービスは損なのか得なのか

結局のところ、KINTOは得なのか、損なのか。高級車をコロコロ乗り換えるKINTO SELECTは別格として、KINTO ONEの詳しいメニューが明かされるまで明言しづらい点はあるが、トヨタ自身も手探り状態であり、割高と思われないような価格設定に苦心していることは感じられた。

まだまだテスト段階ともいえるKINTOだが、購入プロセスの簡素化、完全月額定額による分かりやすい価格設定などにより、本来であればまとまった資金が必要となる愛車購入を検討してもらいやすくする上で、トヨタにとって新たなオプションとなるのは間違いなさそうだ。また、3年契約なので、ユーザーはライフスタイルに合わせてクルマを選べるという利点もある。

ただ、自動車自体の完成度は年々高まっており、ユーザーの平均保有期間と自動車の寿命は長くなっているのが現実でもある。コスト面で考えれば、1台を長期保有した方がトータルで安く済むのは間違いない。また、KINTOは定額サービスであるがゆえに、目先のコストだけに捕らわれた結果、身の丈に合わないクルマを選んでしまう危険性もあるだろう。

とはいえ、KINTOというサービスの登場が、とりあえず一度、クルマを持ってみようと考えるきっかけになるケースはあるはずだ。“所有”にこだわらない時代に、まずはクルマと向き合ってみるという機会を作り出すだけでも、トヨタがKINTOを始める意味は大きいのかもしれない。

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2019.02.20

クルマ向上委員会「輸入車一気乗り編」のプロローグ

安東さんがジャガー「F-PACE」から乗り換えるクルマは?

“駐車場問題”で心が折れた…重視したのはクルマの横幅

年に一度、神奈川県・大磯を舞台に開催される日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会。たくさんの輸入車を一度に楽しめる同イベントを、安東弘樹さんに取材してもらった。

※文と写真はNewsInsight編集部の藤田が担当しました

夜には「バラいろダンディ」(TOKYO MXで放送中、安東さんは火曜レギュラー)の生放送が控える2月5日、朝から夕方までの間に安東さんが乗ったクルマの台数は、アストンマーティン「DB11」やテスラ「モデルX」などを含む計8台。最初のクルマはジャガーのステーションワゴン「XF スポーツブレイク」だ。

ファルコンウィング(ドア)を広げたテスラ「モデルX」を背にポーズをとる安東さん。編集部からは「ヒーロー風に」と注文させてもらった

早速、「XF スポーツブレイク」の話に入りたいところなのだが、実は試乗の開始直後、安東さんからあるクルマの購入を決めたという話を聞いたので、まずはプロローグとして、そちらから取り掛かりたい。というのも弊紙では、安東さんがクルマ選びに悩む様子を以前から追っていた経緯があるので、その結果をご本人から直接聞いた以上、本連載にてお伝えしておきたいと思ったからだ。

大前提として、安東さんは現在、ポルシェ「911 カレラ 4S」とジャガーのSUV「F-PACE」を所有しているのだが、TBSを退職してフリーとなって以降、クルマ(F-PACE)で仕事現場(特に東京都内)に通勤する機会が増えると、深刻な“駐車場問題”に直面することとなった。つまり、横幅が1,935mm、高さが1,665mmと大柄なF-PACEだと、基本的には立体駐車場に入れられないなど、クルマをとめておく場所を探すのに苦労が多いのだ。

購入検討リストに入っては消えていったクルマは、マツダ「アテンザ」やミニ「クラブマン」など枚挙に暇がない。そんな安東さんのクルマ選びが、ついに結論に達したと小耳に挟んだので、「XF スポーツブレイク」に乗り込んですぐ、そのあたりの話を聞いてみた。

クルマ選びが決着!

編集部(以下、編):次のクルマ、決まったそうですね?

安東さん(以下、安):そうなんです、メルセデスの「オールテレイン」にしました。最終的に「ヴェラール」と悩んでたんですけど、やっぱり駐車場に入らないんで……。実はメルセデスって、以外に幅は、そんなにないんですよ。(全幅が)ヴェラールは1,930mmなんですけど、オールテレインは1,860mmしかありません。ちなみに、「Sクラス」でさえ1,910mmです。

「オールテレイン」とは、メルセデス・ベンツの「E220d 4MATIC オールテレイン」(画像)というクルマのこと。Eクラスのステーションワゴンをベースとするクロスオーバー車で、2.0L直列4気筒のディーゼルエンジンを搭載する。最高出力は194ps、最大トルクは400Nm。サイズは全長4,950mm、全幅1,860mm、全高1,495mmだ。公式サイトで見ると、車両本体価格は893万円となっている
「ヴェラール」(画像)はSUV専門メーカーであるレンジローバーから2017年に新登場したクルマ。弊紙ではモータージャーナリストの御堀直嗣さんに試乗して頂いたことがあるので、こちらの記事をご覧いただきたい

:実は年末に遅刻したんですよ。しかも2件。所属している事務所で打ち合わせや雑誌の取材などを行う事が多いのですが、その立体駐車場にF-PACEが入らないので、いつもは近場のコインパーキングを利用して打ち合わせなどをするのですが、その日は近くの駐車場が全く空いてなくて。どうにもならなくて、1キロ以上も離れたところにとめて、そこから歩いて事務所に向かったら遅刻してしまいました。それが1件目。

もう1件は共演者のライブ。場所が代官山だったのですが、空きが有っても立体駐車場では「サイズが大きすぎる」と断られるところばかりで……。1カ所、「空」と表示されている平置きの駐車場を見つけたんですけど、そこは1台ごとにバーで区切られている所で、よく見ると「横幅1,900mm以上はご遠慮ください」って書いてありました。結局、かなり離れた、しかも超高額な駐車場にとめた挙句、開演時間に少し遅れてしまいました。

:“横幅問題”が身にしみたわけですね。

:ええ、クルマを3台所有できるなら、1台は横幅を気にせず選んでもいいんですが、家を改装して(3台目のクルマをとめておく)駐車場を作れないことも分かりましたから……()。

※編集部注:安東さんは自宅の庭を改装して3台目のクルマのために駐車場を作るつもりだったが、建築法上の理由で断念した。このあたりの事情は以前、本連載でお伝えした通り。

:F-PACEを買い換えるということですか。

:F-PACEって、とってもいいクルマで、(駐車場問題以外には)何の不満もなかったんですけどね。オールテレインが5月に納車なので、それまで、計2年8カ月で手放すことになりますね。もっとも、走行距離は計算上、5月には9万キロ前後になるので、買い換え時ではあるかもしれません。

安東さんがとても気に入っていると話すジャガー「F-PACE」

:納車待ちでウキウキしてますか?

:そうですね。ただ、あまりにもF-PACEが気に入ってるんで、少し複雑ですけど。それと、人に自分の所有車を言うときに「メルセデス・ベンツです」というのが、若干その……。何に乗っているんですかと聞かれて、「メルセデス・ベンツです」と答えると伝わりきらないというか、「Eクラスのオールテレインです!」まで、全て言いたい、というか()。

※編集部注:「メルセデス・ベンツ」だから買ったのではなく、こだわって選んだクルマが「メルセデス・ベンツ」だったということを伝えたいけど、クルマにあまり興味がない人には伝わらない、というニュアンス。

安:テレビ局やスタジオなどの現場にクルマで行く時は、事前にマネージャーが先方に車種を聞かれるわけです。マネージャーはクルマもナンバーも把握しているので、それを先方に伝えるんですけど、車種を聞かれた時に5月からは「安東は“ベンツ”です」って答えることになるのですが、「あー、フリーになったからねー」みたいな感想をもたれるのかなと思うと……。

実は、実際の購入金額はF-PACEよりもオールテレインの方が低いんです。少し複雑で、F-PACEの方が「何円から」というカタログの表記ではオールテレインよりかなり安価なのですが、オプションや諸経費を含めると、実は、F-PACEはかなり価格が上がってしまったので、最終金額は逆転するのです。これはオールテレインにほとんどの装備が標準で付いていることが大きいです。

※編集部注:クルマの値段を見る場合、ほとんどオプションが付いていない状態での価格表記なのか、“コミコミ”での価格表記なのかには注意する必要がある。例えば、サンルーフやシートベンチレーションのような「あったら嬉しい装備」のみならず、カーナビなどの「ぜひとも付いていて欲しい装備」すら付いていない“素”の状態で、かなり安く見える値段を提示している場合もあるからだ。

:オールテレインとポルシェ、しばらくはこの2台体制ですか?

:ですね。ドイツ車2台、しかもベンツとポルシェっていうと、人によっては反感を買うかもしれませんけど(笑)。「ポルシェ 911 カレラ4Sの右ハンドルのマニュアルトランスミッション(MT)です!」とか、いちいち全部説明したいくらいですよ! 2台とも、結構マニアックだと思うんですけどね。

ただ、クルマに詳しくない方には、「ベンツとポルシェ」としか言いようがないので、「フリーになると違うな」などと思われるんでしょうね(笑)。かといって、その都度、「メルセデスですけど、社員時代に乗っていたクルマより安いんです」とか言うのも変だし。難しいですね。

「オールテレイン」の気になる点は?

:オールテレインの少し気になるところは、最低地上高(地面からクルマの最も低い部分までの距離)が140mmで、それって“普通”なんですよね(※)。「E 220 d」のステーションワゴンは115mmともともと低いので、それでも25mm上がってはいるんですけど。

※編集部注:もっと高くてもいいのに、という意味。クロスオーバーSUVだと200mm前後のことが多いので、確かに高くはない。

:オールテレインはエアサス(エアサスペンション)で車高が上げられるんですけど、それでも20mmしか上げられなくて。(車高上昇時の)160mmって、これでも下手したら“普通のクルマ”なんですよ。さらに、車高は時速35キロを超えると、(自動的に)下がっちゃうんですよね。

メルセデスとしては、本当に速度が出せないような道でしか、車高を上げさせたくないと考えている、ということなんでしょうね。メルセデスは他のメーカーより、そういった部分でマージンをとるので。この手のクルマは200mm位の最低地上高にしているメーカーが多いのですが(スバルやボルボなど)、メルセデスとしては、そこまで上げた時の安定性を担保できない、ということなのかもしれません。

:クルマづくりの話で、メルセデス・ベンツは乗り手をあんまり信用していなくて、逆にBMWは乗り手に委ねる、というような言葉を聞いたことがあります。

:よく言われてますよね。

:車高についても、メルセデスが考えている以上に、乗り手に上げたり下げたりして欲しくないから、クルマ側である程度は制御する、ということなんでしょうか?

:そこが残念といえば残念ですね。

ジャガー「XF スポーツブレイク」で箱根ターンパイクを疾走する安東さん

かなり吟味して購入を決めたのだから、おそらく、オールテレインが届くのを楽しみにしているのだろうとは思うのだが、「ちょっと気になる点」として最低地上高に言及するところなどは、クルママニアの安東さんらしい観点という気がした。MT車のシフト操作を喜びと語る安東さんだけに、自分で運転するクルマに関することは全て、自分で考え、自分で決めて、(最低地上高の調整も含め)自分で操作したいのだろう。

さて、クルマ選びの顛末をお伝えすることできたので、編集部としてもひと安心だ。次回からはいよいよ、JAIA試乗会の模様をレポートしたい。最初に乗るクルマは(すでに乗ってはいるが)、ジャガーのステーションワゴン「XF スポーツブレイク」だ。ジャガーのSUV「F-PACE」を気に入って乗っている安東さんだけに、この2台の比較も気になる。

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