その上質感はどこから生まれるのか? 安東弘樹、「MINI」の秘密に迫る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第8回

その上質感はどこから生まれるのか? 安東弘樹、「MINI」の秘密に迫る!

2018.12.04

「ドアヒンジ」から感じたMINIの安心感

価格は同クラス国産車の倍? それでもMINIに惹かれる理由

BMWのブランドになっても残る独特の雰囲気

クルママニアの安東弘樹さんと話していると、しばしば「クルマの上質感」が話題になる。例えば、安東さんが買おうかどうか悩んでいる「MINI」(ミニ)の「クラブマン」というクルマでいえば、後席ドアの閉まる音すらも上質だと感じるのだそうだ。

ミニというブランドの、何が安東さんに訴えかけるのか。同ブランドはBMW傘下なので、BMWの100%子会社であるビー・エム・ダブリュー株式会社を一緒に訪れ、安東さんに取材してもらった。対応してくれたのは、BMWブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティングでプロダクト・マネージャーを務める丹羽智彦さんと広報部製品広報マネージャーの前田雅彦さんだ。

ビー・エム・ダブリューを訪れた安東さん(取材風景の撮影:安藤康之)

クルマ選びを左右する質感の問題

ビー・エム・ダブリューの丹羽智彦さん(以下、丹):ミニの上質さって、どういうところでお感じになるんですか?

安東弘樹さん(以下:安):ドアヒンジ(※)1つとってもそうですし、ドアの質感とか、特に後席を私はよく見ていて。前席は、最近の日本車も頑張っているんですけどね。例えばヒンジの鍛造、前は鍛造だけど後ろは違うとか、マニアックな所を見るので、やっぱり、そこは質感に表れてくるじゃないですか。

※編集部注:ドアヒンジとは、ドアとクルマをくっつけている部品のこと

:装備なんかは「アテンザ」(マツダのフラッグシップ車。安東さんは先日、新型を試乗した)も頑張っていて、自分としては必須のシートベンチレーション(背もたれと座面の広範囲に小さな吸い出し口があり、空気の流れを作ってくれる機能のこと)が付いたし、値段も割安なんですけど、ステアリングの取り付け剛性だとか、後席ドアの重厚感とかって、どうしてもかなわない部分が国産車にはあって。

安東さんがジャガー「F-PACE」、ポルシェ「911 カレラ 4S」に続き、3台目に買おうと悩んでいるクルマがミニ「クラブマン」(画像)、マツダ「アテンザ」、トヨタ「カローラ スポーツ」の3台であることは以前、お伝えしたとおり。ただ、この「次のクルマ問題」については、自宅の駐車スペースに関する新たな課題が浮上したり、別のクルマが候補に上がってきたりするなど、事態は紛糾している模様。そのあたりは、この連載でゆくゆくお伝えしたい

:例えばベンチレーションなんかは、前々から「付けてください」とマツダさんにはいっていて、「安東さんのために付けたので、責任もって買ってください」と冗談でいわれたくらいなんですけど、じゃあアテンザを選ぶかというと、やっぱり、ミニの質感を捨てられないというか。

実際のところは分かりませんけど、ぶつかるとか、いざという時に、あのドアなら衝撃を避けられるんじゃないかなと思ったりもします。やっぱり、NCAP(自動車の安全性能を比較評価する自動車アセスメントのこと。星の数で評価する)だけでは、分からないじゃないですか。星の数とリアルワールドは違うと思うので。そういう意味でも、ミニの質感の高さが捨てられないんですよ。

価格差はあっても、クルマの上質感は捨てられないと安東さん

:一番知りたいのは、簡単にいうと、何がそう感じさせるのかということ。あの高品質感、重厚感、例えばドアを閉めた時の「ガチッ!」という音もそうだし、それはドアの自重ではないと思うんですけど。

:ドアの部分に関しては、たぶんBMWも同じで、グループとしてのポリシーだと思うんですけど、ヨーロッパで走るクルマとしては、「低速域でぶつかったから大丈夫だった、高速域ではダメだった」では許されないので、重厚感を持たせていると思います。

あと、見てもらえば分かりますが、純粋にドアが分厚いんですよ。そこも、質感としては当然、出てきます。ただ、一部のお客様には「重いよね、ドアが」といわれてしまうんですけど、その部分を分かっていただければ。

ビー・エム・ダブリューの丹羽智彦さん

:5年ほど前、会社の同期が小さいクルマを買いたいというので、一緒にいろいろとクルマを見たんですね。「ポロ」(フォルクスワーゲン)とか「マーチ」(日産自動車)、「ヴィッツ」(トヨタ自動車)なんかを見ていて、彼は「ポロはドアが重くてヤダ。日本車は軽くていい」っていってて、最初はそっちに傾いてたんですけど、彼は軟派な奴なんで、「女の子には輸入車の方がアピールできるんじゃない?」っていったら、「えっ、そうなの!?」ってことで、結局は輸入車を買ったんですけど。

で、2年くらい乗った後、次のクルマはどうしようって話になって、また見て回ったんですよ。そしたら、今度は日本車のドアに「うわ、こんな軽いの!?」となって、そこで気づくんですよね。2年乗って初めて、重い方が安心感があると気づく。こういう部分って、所有してみて初めて分かる部分なんだなと感じたんですけど、ミニではどうやってお客さんに訴求してるんですか?

フォルクスワーゲンの「ポロ」(画像は現行型)

:国産からミニへの買い替えを検討されるお客様は、どうしても国産のマインドセットでいらっしゃいますよね。安東さんの話ではないんですけど、そういうところって、国産の強さでもあると認知はしています。ただ、輸入車では別のところを見ていただけるよう、重厚感などは説明することにしています。

:どのくらい伝わるものなんですか。

:最初は、そう簡単ではないと思いますね。

:彼(ポロを買った同期の方)も「モテるよ」といわなければ、日本車を買ってたと思いますよ。だから、「ステータスシンボルは必要ない」という人に、輸入車を勧めるのって結構、難しいですよね。

:例えば、「走ってて楽しい」って分かりにくいんですよ。実際はいろんな要素が絡んでいて、最後に感触として「楽しい」と分かるんですが、では具体的に、という説明が難しいところで。そこは、メーカーとしても考えるべきポイントかなと思います。特にミニは、国産から結構、お客様が入っていらっしゃるので。そこは強化しなければいけないし、試行錯誤してやっているところです。

ミニは適正価格?

:あと、知れば知るほど、ミニの価格が適正であることは分かるんですけど、国産車にしか乗ってこなかった人にとってみれば、簡単にいうと、オプションをいろいろ付けると、同じセグメントの国産車と比べて倍くらいの値段になりますよね?

:ですね。同じ値段で2つくらい上のセグメントの国産車が買えるので、「なぜミニを買うの?」とはなってしまいますよね。

:まさに、ミニとアテンザが同じくらいというか、一方はマツダのフラッグシップなのに、むしろミニの方が高かったんですよ、私の場合。「クラブマン」で、ディーゼルエンジンの「クーパーSD」(というグレードのこと。ディーゼルエンジンを搭載。最初の価格設定は437万円)にして、好きなオプションを満載にすると、税金を含め600万円くらいになってしまって。で、アテンザは全部付けて500万円程度だったんですよ。

安東さんの見積もりだと、ミニ「クラブマン」はマツダ「アテンザ」(画像)より100万円くらい高くなったそうだ

:それでも、私は悩むし、結局、最終的にはミニにしそうな気がするんですね。アテンザもものすごくいいクルマで、マツダの開発の方も「輸入車に何とか(追いつきたい)!」って気持ちを持っているし、マツダの試乗会に行くと、ついつい話が長くなってしまうんですけど。でもやっぱり、「そっちに思い切れない(マツダが海外のプレミアムブランドのような方向性に振り切れない、という意味)のは、ミニのようなブランド力があるかないかなんです」というようなことを、マツダの方もおっしゃっていて。

BMWグループに入りミニは変わったか

:でも、ミニも最初は大衆車から始まっていますよね? 今はBMWで作っていますけど、そのことって、ブランドイメージに少なからず関係あると思います?

:やっぱり今のミニって、先代のミニというか、少し前のモデルに比べると、非常にBMWの部分が入ってますね。どちらかというと、「ゴーカートフィーリング」(ミニの走り味の代名詞となっている言葉)って、前の世代の方が、より感じられるのかなと思うんですけど、そういう意味で少し、クルマとしても、スタイルは変えてますね。

画像はMINIの基幹車種である「ハッチバック・モデル」の「3ドア」。このハッチバックには3ドアのほか、「5ドア」と「コンバーチブル」(オープンカー)というラインアップがある

:正直、ミニとBMWが頭の中で結びついてるお客さんって、どのくらいいらっしゃるんでしょう? ブラッと来たお客さんで。

:どうでしょう?

ビー・エム・ダブリューの前田さん(以下、前):半分くらいはいらっしゃるかな?

:それ(BMWがミニを作っていること)を知ると、値段とか、納得感あるんですかね?

:良し悪しですけど、BMWが作っているということで、「すごいんだ」とか、「ちゃんとしてるんだ」と思っていただけたり、サービスも安心と思っていただける一方で、ミニのブランドが薄れてしまう懸念もあります。ですから、弊社の中でもブランドは完全に分けていますし、お店も分けてます。例えば、弊社ではミニのオフィスは“ミニっぽく”したりもしています。

:そこは、しっかり分けてますね。ロジスティクスなんかは一緒ですけど、ブランドのマーケティング戦略とか、商品ポジショニングとかは完全に別々で、ディーラーさんも別々。でも、BMWの要素はミニにも入れつつやってます。

ミニ「ハッチバック・モデル」の「5ドア」
BMW「X5」。ミニはBMW傘下のブランドだが、両者のカラーは全く違う

この後、話題はミニの商品ラインアップへと移っていく。安東さんからは具体的かつマニアックな要望・質問が続出したが、その模様は次回、お伝えしたい。

損なのか得なのか? ユーザー目線で考えるトヨタのサブスク「KINTO」

損なのか得なのか? ユーザー目線で考えるトヨタのサブスク「KINTO」

2019.02.20

トヨタがクルマの月額定額サービス「KINTO」を開始

「カローラ スポーツ」が3年で192万円強

このサービスをトヨタが始めることの意義

トヨタが提案する新しいクルマとの関係、それが愛車サブスクリプションサービス「KINTO」(キント)だ。簡単にいえば3年契約の自動車購入プランだが、最大の魅力は“明朗会計”とでもいうべき月額負担のみで、クルマのある生活を手にすることができるところ。この新たな販売形態は、我々にどんなメリットをもたらすのだろうか。ユーザー目線で考えてみた。

トヨタがクルマのサブスクリプションサービス「KINTO」を始める

「プリウス」が月々4万9,788円から乗れる新サービス

トヨタは2019年2月5日、愛車サブスクリプションサービスの運営会社として株式会社KINTOを設立すると発表した。新サービス「KINTO」の名称は、西遊記に登場する「筋斗雲」からインスパイアされたもの。必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる便利さや自由さを表しているとのことだ。

KINTOの愛車サブスクリプションサービスは3年契約で、毎月定額料金を支払えば、クルマを期間限定で所有できる。単に車両代が定額なのではなく、月々の料金には、登録時の諸費用および税金、メンテナンス費、任意保険、毎年の自動車税までが含まれている。このほかの負担といえば、ガソリン代や洗車代、必要な人には駐車場代くらいで済んでしまう。複雑なクルマのコストをシンプル化したことは同サービスの特筆すべき点といえるだろう。

サービスメニューは、トヨタ車対応の「KINTO ONE」とレクサス車対応の「KINTO SELECT」の2つが用意されている。

KINTO ONEで選べるのは、「プリウス」「カローラ スポーツ」「アルファード」「ヴェルファイア」「クラウン」の5車種。全てハイブリッド仕様となる。選択できるグレードは制限されるが、ボディカラーは自由に選べる(有償色は追加料金)。オプションはパッケージされたものから選択することになるようだ。サービス開始が3月1日からなので、詳しい仕様やオプションパッケージの追加料金などは明かされていないが、最も安いプリウスの場合、月額(税込み)4万9,788円~5万9,832円で手にすることができる。ボーナス併用払いを利用すれば、月々の負担を減らすことが可能だ。

KINTO ONEは「プリウス」(画像)などトヨタ車5車種からクルマを選べる。月額料金は4万9,788円~5万9,832円

KINTO SELECTでは「ES」「IS」「RC」「UX」「RX」「NX」から1台を選ぶ。車種はセダン、クーペ、SUVと豊富だ。選べるのはハイブリッドモデルのみとなる。3年契約であることに変わりはないが、KINTO ONEと違うのは、これら6車種のうち、1台に3年乗るわけではなく、6か月ごとに乗り換えができるところ。月額料金は194,400円と高めだが、こちらも全ての費用が“コミコミ”となっている。

KINTO SELECTは「UX」(画像)などレクサス車6車種からクルマを選べる。月額料金は19万4,400円だ

新車に半年ごとに乗り換えられるのはかなり贅沢といえるが、残念なのは、グレードとカラー、装着オプションまでが完全指定となってしまうこと。これは、納期などの事情を考慮した結果だという。ちなみに、KINTO SELECTは2月6日に始まったばかりだが、2月13日の時点で、すでに契約者が現れているというのには少し驚いた。

なぜハイブリッド車だけのラインアップなのか

車両のラインアップを見て気になったのは、全てがハイブリッド車である点だ。トヨタが先頃、KINTOについての説明会を東京で開催したので、この点について質問してみると、株式会社KINTOの小寺信也社長からは、「DCM(車載通信機)搭載車のみに限定した」との回答が得られた。もちろん、人気や需要を踏まえた点もあるだろう。しかし、リアルなところでは、エコカーに適用される減税の恩恵を考慮したという事情があるのかもしれない。

ただ、トヨタはKINTOがDCM搭載車のみであることを、ユーザーメリットとして還元する手立てについても検討している。それが運転のポイント化だ。通信機能を用いた運転の評価を行い、安全運転やエコ運転など、その乗り手がクルマを大切に扱っていると判断できれば、それを利用料金の値引きという形で還元する手法である。さらに、このデータを、KINTO利用車両の中古車販売時の品質保証にも役立てるようだ。

このほか、KINTOでは販売や追加サービスについても様々な構想を検討している模様。小寺社長によれば、中古車版のKINTOも将来的には検討してみたいアイデアだそうだ。また、地域によっては、冬期のマストアイテムであるスタッドレスタイヤについても、オプションとして対応できるように考えているとのことだった。

KINTOにラインアップされたのは、「クラウン」(画像)などDCMを搭載する車両のみ。いわゆる「コネクティッド技術」を利用すれば、ドライバーの運転を評価し、その評価に合わせたポイントを付与することができる 

KINTO ONEとKINTO SELECTのどちらのサービスも、まずは東京地区から試験的に始めて、今年の夏以降には全国に展開し、秋口にはサービス対象車を拡大していく計画だという。サービス拡大に合わせて、それぞれの車種や仕様など選択肢も増えていくようだ。

KINTOのユーザーメリットとしては、3年間の車両代および維持費というコストを明確化できる点に加え、購入プロセスを簡素化できる点が挙げられる。最終的な契約では販売店に出向く必要があるが、車両のセレクトや見積もりなどはWEBで済ますことが可能だ。ワンプライスのため、値引きを引き出す営業マンとの駆け引きも不要となる。

注目すべきは、自動車任意保険が料金に含まれていることだろう。基本的な対物・対人だけでなく、フルカバーの車両保険である点にも言及しておきたい。また、全年齢に対応しているので、保険料が高くなる若い人ほど大きなメリットが享受できる。車両保険の免責は5万円なので、もしもの際、負担が最小限で済むのも嬉しい。

KINTO ONEで「アルファード」(画像)を選んだ場合の月額料金は8万5,320円~9万9,360円。これは登録時の諸費用や任意保険などを含む価格だ

気になる“お得度”を「カローラ スポーツ」で考える

ただ、やはり気になるのは、同サービスの“お得度”だろう。そこで、今回はグレード構成が分かりやすい「カローラ スポーツ」を例にとって考えてみたい。

対象車である「カローラ スポーツ」のエントリーグレードである「ハイブリッドG“X”」の車両価格は241万9,200円。これに対し、「KINTO ONE」の月額料金の下限は5万3,460円なので、年間で64万1,520円、3年間の総額は192万4,560円とそれなりの金額になる。

比較対象としやすいのが、車両価格の一部を据え置く残価設定型ローンだ。とあるトヨタ販売店のWEBサイトを訪れ、車両本体のみで「カローラ スポーツ」を購入した場合の残価設定ローン(3年契約)を試算してみると、頭金なし、金利4.5%で月々4万7,400円となった。残価設定ローンの場合、一定額を据え置くので、最終回に据え置き額を支払わなければ、クルマは返却しなくてはならないので条件は似ている。これにメンテナンス代、自動車任意保険、2年目以降の自動車税などが加わることを考えると、もしかしたら、KINTOはお得なのかもと思えてきた。

ただし、普通にクルマを購入する際には、値引きや付属品のサービスがある(可能性がある)ことは、忘れてはいけないポイントだ。金利だって、キャンペーンなどでもっと条件が良いこともある。とはいえ、自動車保険のことを考えると、少なくとも若者は、KINTOをトヨタからの魅力的な提案と受け取るかもしれない。

KINTO ONEで「カローラ スポーツ」(画像)を3年間乗る場合、料金は“コミコミ”で192万4,560円だ

トヨタがわざわざ自社でサブスクリプションサービスを展開する狙いは、新たな自動車ユーザーの掘り起こしだけでなく、販売店のネットワーク維持と収益確保にもある。仮にトヨタのクルマを使ったサービスであったとしても、他社のサブスクリプションサービスやリースなどでは、必ずしもトヨタの販売店を利用するとは限らないからだ。

また、KINTOは定額販売なので、販売に必要な人件費が削減できるし、販売後もメンテナンスによる定期的な入庫がある。これがメンテナンスによる収益を生み出し、KINTOユーザーとの関係を築く時間ともなる。その販売店をKINTOユーザーが気に入れば、3年後、次のクルマを選ぶ際、新車購入かKINTOの新契約になるのかなど選択肢は色々あるものの、とにかく同店の顧客となる可能性があるのだ。

また、KINTOは値引きなしのワンプライス販売なので、同サービスが普及すれば、トヨタの収益率向上に寄与するのはもちろんのこと、3年後の中古車価格の向上にもつながるかもしれない。

クルマの月額定額サービスは損なのか得なのか

結局のところ、KINTOは得なのか、損なのか。高級車をコロコロ乗り換えるKINTO SELECTは別格として、KINTO ONEの詳しいメニューが明かされるまで明言しづらい点はあるが、トヨタ自身も手探り状態であり、割高と思われないような価格設定に苦心していることは感じられた。

まだまだテスト段階ともいえるKINTOだが、購入プロセスの簡素化、完全月額定額による分かりやすい価格設定などにより、本来であればまとまった資金が必要となる愛車購入を検討してもらいやすくする上で、トヨタにとって新たなオプションとなるのは間違いなさそうだ。また、3年契約なので、ユーザーはライフスタイルに合わせてクルマを選べるという利点もある。

ただ、自動車自体の完成度は年々高まっており、ユーザーの平均保有期間と自動車の寿命は長くなっているのが現実でもある。コスト面で考えれば、1台を長期保有した方がトータルで安く済むのは間違いない。また、KINTOは定額サービスであるがゆえに、目先のコストだけに捕らわれた結果、身の丈に合わないクルマを選んでしまう危険性もあるだろう。

とはいえ、KINTOというサービスの登場が、とりあえず一度、クルマを持ってみようと考えるきっかけになるケースはあるはずだ。“所有”にこだわらない時代に、まずはクルマと向き合ってみるという機会を作り出すだけでも、トヨタがKINTOを始める意味は大きいのかもしれない。

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2019.02.20

クルマ向上委員会「輸入車一気乗り編」のプロローグ

安東さんがジャガー「F-PACE」から乗り換えるクルマは?

“駐車場問題”で心が折れた…重視したのはクルマの横幅

年に一度、神奈川県・大磯を舞台に開催される日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会。たくさんの輸入車を一度に楽しめる同イベントを、安東弘樹さんに取材してもらった。

※文と写真はNewsInsight編集部の藤田が担当しました

夜には「バラいろダンディ」(TOKYO MXで放送中、安東さんは火曜レギュラー)の生放送が控える2月5日、朝から夕方までの間に安東さんが乗ったクルマの台数は、アストンマーティン「DB11」やテスラ「モデルX」などを含む計8台。最初のクルマはジャガーのステーションワゴン「XF スポーツブレイク」だ。

ファルコンウィング(ドア)を広げたテスラ「モデルX」を背にポーズをとる安東さん。編集部からは「ヒーロー風に」と注文させてもらった

早速、「XF スポーツブレイク」の話に入りたいところなのだが、実は試乗の開始直後、安東さんからあるクルマの購入を決めたという話を聞いたので、まずはプロローグとして、そちらから取り掛かりたい。というのも弊紙では、安東さんがクルマ選びに悩む様子を以前から追っていた経緯があるので、その結果をご本人から直接聞いた以上、本連載にてお伝えしておきたいと思ったからだ。

大前提として、安東さんは現在、ポルシェ「911 カレラ 4S」とジャガーのSUV「F-PACE」を所有しているのだが、TBSを退職してフリーとなって以降、クルマ(F-PACE)で仕事現場(特に東京都内)に通勤する機会が増えると、深刻な“駐車場問題”に直面することとなった。つまり、横幅が1,935mm、高さが1,665mmと大柄なF-PACEだと、基本的には立体駐車場に入れられないなど、クルマをとめておく場所を探すのに苦労が多いのだ。

購入検討リストに入っては消えていったクルマは、マツダ「アテンザ」やミニ「クラブマン」など枚挙に暇がない。そんな安東さんのクルマ選びが、ついに結論に達したと小耳に挟んだので、「XF スポーツブレイク」に乗り込んですぐ、そのあたりの話を聞いてみた。

クルマ選びが決着!

編集部(以下、編):次のクルマ、決まったそうですね?

安東さん(以下、安):そうなんです、メルセデスの「オールテレイン」にしました。最終的に「ヴェラール」と悩んでたんですけど、やっぱり駐車場に入らないんで……。実はメルセデスって、以外に幅は、そんなにないんですよ。(全幅が)ヴェラールは1,930mmなんですけど、オールテレインは1,860mmしかありません。ちなみに、「Sクラス」でさえ1,910mmです。

「オールテレイン」とは、メルセデス・ベンツの「E220d 4MATIC オールテレイン」(画像)というクルマのこと。Eクラスのステーションワゴンをベースとするクロスオーバー車で、2.0L直列4気筒のディーゼルエンジンを搭載する。最高出力は194ps、最大トルクは400Nm。サイズは全長4,950mm、全幅1,860mm、全高1,495mmだ。公式サイトで見ると、車両本体価格は893万円となっている
「ヴェラール」(画像)はSUV専門メーカーであるレンジローバーから2017年に新登場したクルマ。弊紙ではモータージャーナリストの御堀直嗣さんに試乗して頂いたことがあるので、こちらの記事をご覧いただきたい

:実は年末に遅刻したんですよ。しかも2件。所属している事務所で打ち合わせや雑誌の取材などを行う事が多いのですが、その立体駐車場にF-PACEが入らないので、いつもは近場のコインパーキングを利用して打ち合わせなどをするのですが、その日は近くの駐車場が全く空いてなくて。どうにもならなくて、1キロ以上も離れたところにとめて、そこから歩いて事務所に向かったら遅刻してしまいました。それが1件目。

もう1件は共演者のライブ。場所が代官山だったのですが、空きが有っても立体駐車場では「サイズが大きすぎる」と断られるところばかりで……。1カ所、「空」と表示されている平置きの駐車場を見つけたんですけど、そこは1台ごとにバーで区切られている所で、よく見ると「横幅1,900mm以上はご遠慮ください」って書いてありました。結局、かなり離れた、しかも超高額な駐車場にとめた挙句、開演時間に少し遅れてしまいました。

:“横幅問題”が身にしみたわけですね。

:ええ、クルマを3台所有できるなら、1台は横幅を気にせず選んでもいいんですが、家を改装して(3台目のクルマをとめておく)駐車場を作れないことも分かりましたから……()。

※編集部注:安東さんは自宅の庭を改装して3台目のクルマのために駐車場を作るつもりだったが、建築法上の理由で断念した。このあたりの事情は以前、本連載でお伝えした通り。

:F-PACEを買い換えるということですか。

:F-PACEって、とってもいいクルマで、(駐車場問題以外には)何の不満もなかったんですけどね。オールテレインが5月に納車なので、それまで、計2年8カ月で手放すことになりますね。もっとも、走行距離は計算上、5月には9万キロ前後になるので、買い換え時ではあるかもしれません。

安東さんがとても気に入っていると話すジャガー「F-PACE」

:納車待ちでウキウキしてますか?

:そうですね。ただ、あまりにもF-PACEが気に入ってるんで、少し複雑ですけど。それと、人に自分の所有車を言うときに「メルセデス・ベンツです」というのが、若干その……。何に乗っているんですかと聞かれて、「メルセデス・ベンツです」と答えると伝わりきらないというか、「Eクラスのオールテレインです!」まで、全て言いたい、というか()。

※編集部注:「メルセデス・ベンツ」だから買ったのではなく、こだわって選んだクルマが「メルセデス・ベンツ」だったということを伝えたいけど、クルマにあまり興味がない人には伝わらない、というニュアンス。

安:テレビ局やスタジオなどの現場にクルマで行く時は、事前にマネージャーが先方に車種を聞かれるわけです。マネージャーはクルマもナンバーも把握しているので、それを先方に伝えるんですけど、車種を聞かれた時に5月からは「安東は“ベンツ”です」って答えることになるのですが、「あー、フリーになったからねー」みたいな感想をもたれるのかなと思うと……。

実は、実際の購入金額はF-PACEよりもオールテレインの方が低いんです。少し複雑で、F-PACEの方が「何円から」というカタログの表記ではオールテレインよりかなり安価なのですが、オプションや諸経費を含めると、実は、F-PACEはかなり価格が上がってしまったので、最終金額は逆転するのです。これはオールテレインにほとんどの装備が標準で付いていることが大きいです。

※編集部注:クルマの値段を見る場合、ほとんどオプションが付いていない状態での価格表記なのか、“コミコミ”での価格表記なのかには注意する必要がある。例えば、サンルーフやシートベンチレーションのような「あったら嬉しい装備」のみならず、カーナビなどの「ぜひとも付いていて欲しい装備」すら付いていない“素”の状態で、かなり安く見える値段を提示している場合もあるからだ。

:オールテレインとポルシェ、しばらくはこの2台体制ですか?

:ですね。ドイツ車2台、しかもベンツとポルシェっていうと、人によっては反感を買うかもしれませんけど(笑)。「ポルシェ 911 カレラ4Sの右ハンドルのマニュアルトランスミッション(MT)です!」とか、いちいち全部説明したいくらいですよ! 2台とも、結構マニアックだと思うんですけどね。

ただ、クルマに詳しくない方には、「ベンツとポルシェ」としか言いようがないので、「フリーになると違うな」などと思われるんでしょうね(笑)。かといって、その都度、「メルセデスですけど、社員時代に乗っていたクルマより安いんです」とか言うのも変だし。難しいですね。

「オールテレイン」の気になる点は?

:オールテレインの少し気になるところは、最低地上高(地面からクルマの最も低い部分までの距離)が140mmで、それって“普通”なんですよね(※)。「E 220 d」のステーションワゴンは115mmともともと低いので、それでも25mm上がってはいるんですけど。

※編集部注:もっと高くてもいいのに、という意味。クロスオーバーSUVだと200mm前後のことが多いので、確かに高くはない。

:オールテレインはエアサス(エアサスペンション)で車高が上げられるんですけど、それでも20mmしか上げられなくて。(車高上昇時の)160mmって、これでも下手したら“普通のクルマ”なんですよ。さらに、車高は時速35キロを超えると、(自動的に)下がっちゃうんですよね。

メルセデスとしては、本当に速度が出せないような道でしか、車高を上げさせたくないと考えている、ということなんでしょうね。メルセデスは他のメーカーより、そういった部分でマージンをとるので。この手のクルマは200mm位の最低地上高にしているメーカーが多いのですが(スバルやボルボなど)、メルセデスとしては、そこまで上げた時の安定性を担保できない、ということなのかもしれません。

:クルマづくりの話で、メルセデス・ベンツは乗り手をあんまり信用していなくて、逆にBMWは乗り手に委ねる、というような言葉を聞いたことがあります。

:よく言われてますよね。

:車高についても、メルセデスが考えている以上に、乗り手に上げたり下げたりして欲しくないから、クルマ側である程度は制御する、ということなんでしょうか?

:そこが残念といえば残念ですね。

ジャガー「XF スポーツブレイク」で箱根ターンパイクを疾走する安東さん

かなり吟味して購入を決めたのだから、おそらく、オールテレインが届くのを楽しみにしているのだろうとは思うのだが、「ちょっと気になる点」として最低地上高に言及するところなどは、クルママニアの安東さんらしい観点という気がした。MT車のシフト操作を喜びと語る安東さんだけに、自分で運転するクルマに関することは全て、自分で考え、自分で決めて、(最低地上高の調整も含め)自分で操作したいのだろう。

さて、クルマ選びの顛末をお伝えすることできたので、編集部としてもひと安心だ。次回からはいよいよ、JAIA試乗会の模様をレポートしたい。最初に乗るクルマは(すでに乗ってはいるが)、ジャガーのステーションワゴン「XF スポーツブレイク」だ。ジャガーのSUV「F-PACE」を気に入って乗っている安東さんだけに、この2台の比較も気になる。

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