“変身”する掃除機「ZUBAQ」に隠された三菱電機の挑戦(前編)

モノのデザイン 第44回

“変身”する掃除機「ZUBAQ」に隠された三菱電機の挑戦(前編)

2018.11.05

2WAYに使える“変身”するスティック掃除機「ZUBAQ」

パーツ付け替えなしでスティック・ハンディの切り替えが可能

プロダクトデザインの観点から、開発秘話を聞いた

三菱電機から10月1日に発売された、コードレススティッククリーナーの新製品「ZUBAQ(ズバキュー)」。2015年に発売された「iNSTICK(インスティック)」と同じシリーズの1ラインアップという位置づけだが、見た目も機構も機能も、その様相は大きく異なる。

新製品「ZUBAQ」の開発・デザインを担当した、三菱電機ホーム機器 営業部 家電営業課の丁子裕樹氏(右)と三菱電機 デザイン研究所 ホームシステムデザイン部の志村嶺氏(左)

そこで今回は、開発・デザインを担当した、三菱電機ホーム機器 営業部 家電営業課の丁子裕樹氏と三菱電機 デザイン研究所 ホームシステムデザイン部の志村嶺氏に、プロダクトデザインを切り口として、知られざるエピソードや秘められたこだわりなど、製品化に至るまでの舞台裏を伺った。本稿は前・後編に分けてお届けする。

1台で“2つの掃除機”に

iNSTICKと言えば、スティッククリーナーに空気清浄機を一体型させた商品。いつでも気軽に使えるよう、部屋に出しっぱなしにしておけることをコンセプトとして、インテリアとしても違和感のないデザイン性にこだわった掃除機として注目を集めた。

部屋に常設しておくのだから、ついでに空気清浄機としても機能できれば“一石二鳥”になるという発想そのものにも斬新さを覚えた。

三菱電機が2015年から展開している「iNSTICK」シリーズ第一弾製品。スティック、ハンディ両用のクリーナーにプラスして空気清浄機としての機能も備えた商品だ

ところが今回、iNSTICKシリーズの新たなラインアップとして加わったZUBAQは、前例のようにカテゴリーをまたがって“一台で○役”となる多機能型の方向性とは異なり、機能はあくまで掃除機に絞られている。他にはない新規性というところでは、使い方の“スタイル”だ。

スティッククリーナーは、フロア掃除用の縦型掃除機としてもハンディ掃除機としても、2ウェイで使用できるのが一般的だ。それは通常、パーツの取り外しや付け替えによって実現する。

ZUBAQの場合、それがワンアクションで行える。スタンドに設置された状態から、本体を引き出す方向や方法で、それぞれのスタイルに変身するのだ。具体的には本体を手前に引くことでスティッククリーナーに、垂直方向に持ち上げることで、ヘッドが接続されているパイプ部分と分離して、ハンディクリーナーになる。

ZUBAQの訴求ポイントの1つが、スティッククリーナーとハンディクリーナーをワンアクションで切り替えられること。スティッククリーナーとして使用する際には、充電台からハンドルをそのまま手前に引いて取り出す
ハンディクリーナーとして使用する時には、ハンドルを垂直方向に真っ直ぐ引き上げる。パイプが根元から分離され、スティッククリーナー用のパーツがそのまま外れる仕組みだ

従来のiNSTICKとはまったく別物の新たなスタイルに行き当たった経緯や背景を、丁子氏は次のように語った。

「激戦区の市場の中で、単なるスティック型の形態ではお客様に選んでいただくのは難しいだろうと思っていました。iNSTICKは、“部屋に出しておける”が初代のコンセプト。そこで、一台で何通りにも使えるという方向性でなく、それを活かせる何か別の形を模索した結果、出しておける形態からすぐ掃除モードに入ることができるということをコンセプトに方向性を探りました」

シリーズ第一弾となったiNSTICKは、2015年に発売された。実はZUBAQの開発はその発売に先んじて、2014年ごろから始まっていた。ある程度の形になるまでに2年ほどを要し、第一弾のiNSTICKが世に出た後は、その市場評価のフィードバックを受けてブラッシュアップを繰り返した。

「(iNSTICKの)市場の反応は、空気清浄機付きというのがやはりキャッチ―で注目されましたが、イロモノ的な見方も多かったです。しかし、弊社としてはあくまで掃除機としての機能も追求し、吸引力という基本性能にも忠実でありたいと考えました。(ZUBAQでは)軽くてよく吸うという大きなコンセプトを掲げて、JCモーターという新しいモーターを採用するなど、軽さと吸引力というトレードオフの関係にある2つの要素を両立させるべく力を注ぎました」と丁子氏。

新開発のJCモーター(左)。従来のものに比べて性能を下げることなく、かなり小型化されている

正統派で終わらない外装デザイン

これと並行して行われていたのが外装デザインだ。デザイナーの志村氏によると、デザイン、エンジニア、営業の担当者が早い段階からプロジェクトに関わり、共同で検討が行われたという。

「どういうものを作ろうかという段階から、本体の中に新開発のモーターや最新のバッテリーを使うことで性能を向上させつつ、できる限り小型、軽量化するという制約のある中でのデザインだったので、想像以上に大変でした」と志村氏は振り返った。

部屋に常設しておけるインテリア性という点で、iNSTICKのコンセプトを受け継いでおり、外観のみならず、アクションも含めてとてもスタイリッシュに仕上げられている。前回とはまったく違ったアプローチの新商品の企画・開発の背景や経緯について、丁子氏は「使い勝手の部分は、スタンダードなコードレススティックにして“正統派”でいけば一定のパイが取れるとは思いますが、そこだけでは終わらない。取り出す際のモーションにもこだわることにしました」と語る。

家具のようにインテリアとしても映え、出しっぱなしにしておくことができ、いつでもサッと使えることをコンセプトに生まれた、三菱電機のコードレススティッククリーナー「iNSTICK」シリーズ。その第2弾商品として登場した新製品「ZUBAQ」について、前編では、充電台の取り出し方の違いによって、ワンアクションでスティッククリーナーとハンディクリーナーに切り替わるというユニークな機構に至った経緯やバックグランドについて伺った。

後編の次回は、その機構を実現するにあたって、行き当たった壁や苦悩したエピソードを中心に紹介したい。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。