現代に蘇ったデザインケータイ「INFOBAR xv」が狙う潜在需要

現代に蘇ったデザインケータイ「INFOBAR xv」が狙う潜在需要

2018.11.01

KDDIのデザインケータイINFOBAR、最新機種の発売迫る

最新機種ながら十字キー搭載、タッチパネルなしと「ケータイ」仕様

今、あえてこの機種をリリースした狙いとは

人々が「スマホ」ではなく「ケータイ」を使っていた2000年初頭。2003年にKDDIがリリースした"デザインケータイ"「INFOBAR」は、既存の携帯電話と一線を画したルックスで注目され、一躍人気機種となった。

2018年、その最新機種「INFOBAR xv」が登場する。これまでもINFOBARブランドのスマートフォンは発売されてきたが、今回の新機種はタッチパネルではなく十字キーとテンキーで操作する、まさに"あの頃"のケータイ感覚で使える一台となっている。今夏行われた同機種のクラウドファンディングは約1200万円を集めるなど、INFOBARには今も根強いファンがいるのが見て取れる。

現在21_21 DESIGN SIGHT(ギャラリー3)で行われている展示会「新・ケータイ INFOBAR 展」で、初代のデザイン秘話や、「今、あえて"デザインケータイ"をリリースした狙い」を聞いた。

会場はこちら。21_21 DESIGN SIGHTのメイン展示とは入り口が異なる。

INFOBAR「幻のカラバリ」公開

初代INFOBARの発売日である10月31日から始まった「新・ケータイ INFOBAR 展」。ここでは、数あるINFORBARシリーズの中から、初代INFOBARと新機種のxvの2機種にフォーカスし、デザインにまつわる資料が展示されている。

初代INFOBAR
採用されなかったカラーバリエーション。内覧会に出席したKDDI・砂原哲氏によれば、さくら、ひまわりなどをイメージした色合いが試作されたという。
初代INFOBARの箱とショッパー(紙袋)。象徴的な「ニシキゴイ」カラー。
当初タイルは全5色構成だったが、量産の関係上3色に減らし製品版の配色になった。

 今こそケータイが求められている

INFOBAR xv(NISHIKIGOI)
INFOBAR xv(NASUKON)
INFOBAR xv(CHERRY BERRY)

INFOBAR xvに関しては、深澤直人氏の直筆スケッチや、今年7月に同機種の発表を行った際展示したモックアップ、クラウドファンディングの支援者に贈る専用ケースなど、製作過程が伺える資料や、INFOBARらしさにこだわったアイテムが展示されている。

深澤直人氏によるINFOBAR xvアイデアスケッチ
INFOBAR xvのSIM取り出しピン。本体を模したかたちに遊び心を感じる。
クラウドファンディングのリターンであるINFOBAR xv専用ケース。マルチケースとしてではなく、本体がぴったり入る寸法に設計されている。

発売が告知されて以降、INFOBAR xvの実機がまとまって一般展示されたのはこれが初めて。つまり、実物に触る機会がこれまで得られなかったにも関わらず、すでにKDDI側が想定した以上の数の予約が集まっているという。

実機はカラーバリエーション3台分だけでなく、複数展示されているため、ゆとりをもってタッチアンドトライできる。十字キーで移動し、中央のボタンで確定するインタフェースは、スマホに慣れた身にはかなりノスタルジックに感じた。

懐かしさを感じたのはハードウェアの作りだけではなく、ソフトウェア面のデザインにもあると語ったのは、KDDI プロダクト企画部の美田惇平氏。それもそのはずで、メインメニューのアイコンやアニメーションは、2007年発売の「INFOBAR2」のデザインを踏襲している。

INFOBAR xv メニュー画面。選択時のアニメーションは技術上再現がやや困難だったとのことだが、旧機種との使用感の近さを実現するために実装した。

同社調べによれば、INFOBAR2を現役で利用しているユーザーはかなりの数存在している。ケータイ的な使い心地で、デザイン性の高い機種を求める既存ユーザーの「機種変候補」となるものをリリースするというのが、INFOBAR xv発売の動機のひとつだという。

実際、来場していた人の中に現役INFOBAR2ユーザーがいたので、並べて撮影させてもらった。フォルダのかたちなどを見ると、デザインの近さが分かりやすい。

もうひとつには、昨今スマホが普及しきったことにより、通話専用機のようなシンプルな機種を2台持ちしたいというニーズが高まっていることがある。デジタルデトックス、スマホ疲れといったキーワードに見られるような、スマホ1台完結型から離れたいという欲求に、かつてデザインケータイを持ちたかった層含めてアプローチできたらと語る。

NTTドコモが今月発表したコンパクトなカードケータイ「KY-01L」も、機能を絞り込んだコンパクトさが注目された。美田氏はこの動向に対して市場活性化は歓迎として、実機のお披露目を機に、購買層が一層広がることを期待しているとコメントした。

ちなみに、発売当時デザインケータイに心躍らせた現在アラサー~アラフォーの世代が、クラウドファンディングの支援者でも多数派だったそうだ。デザインの魅力で話題をさらったINFOBARを懐かしく思う世代にはグッとくるアイテムだけに、これからの実売の伸びにも注目したい。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。