ジープらしさは細部にも宿る? 日本上陸の新型「ラングラー」に試乗

森口将之のカーデザイン解体新書 第7回

ジープらしさは細部にも宿る? 日本上陸の新型「ラングラー」に試乗

2018.10.31

日本で抜群の人気、理由は四角いデザインにあり?

マニアでなくてもそそられる細かな演出に好感

これは「オフロードのスポーツカー」だ! 試乗で走りも確かめた

“元祖クロスカントリーSUV”のジープ「ラングラー」が11年ぶりにモデルチェンジし、日本で発表となった。デザインはひと目でジープと分かるが、ディテールへのこだわりは旧型以上。新たに採用したターボエンジン、定評の悪路走破性も含めて報告しよう。

ひと目でジープと分かる新型「ラングラー」

今年はヘビーデューティSUVの当たり年?

今年は伝統的なヘビーデューティSUVがそろってモデルチェンジするという、異例の年になった。

まず6月にメルセデス・ベンツ「Gクラス」が新型に切り替わると、翌月にはスズキ「ジムニー」がモデルチェンジ。そして10月には、元祖SUVといえるジープ「ラングラー」の新型が日本に上陸した。

ご存知の方も多いと思うが、ラングラーは第2次世界大戦中に軍用車として開発されたウィリス「MB」がルーツ。終戦後、これを民間向けに設計し直した「CJ」(シビリアン・ジープ)から、市販車としての歴史が始まった。

ジムニーが登場したのは1970年、Gクラスは1979年だから、ジープは群を抜いて長いキャリアの持ち主だ。他にヘビーデューティSUVとしては、トヨタ自動車「ランドクルーザー」や英国のランドローバーも思い浮かぶが、これらはジープに範を取った両社が終戦直後に生み出したものだ。

今年はヘビーデューティーSUVの新型が続々と登場した(左はジムニー、右はGクラス)

日本で高い人気、中国を上回る販売台数

ジープCJはウィリスからカイザー、AMC(アメリカン・モーターズ・コーポレーション)とメーカーを変えつつ、「CJ-5」「CJ-7」など、いくつかのバリエーションを生み出しながら長きにわたって作り続けられ、1986年に「ラングラー」(形式名:YJ)に切り替わる。

翌年、ジープ・ブランドはクライスラーの一員となる。その後のラングラーは、車名を受け継ぎながら「TJ」「JK」とモデルチェンジし、今回「JL」になった。

ラングラーについて特筆すべき点は、日本での人気の高さだ。最近まで販売していたJKでいえば、我が国で売れたジープの4割を占める。世界レベルで見れば中国より上、つまり、米国に次ぐ世界第2位の台数をマークしていた。

この連載でも書いたが、日本車に四角いスタイリングのクルマが多く、人気が高いのは、この国独自の文化を反映した結果だと考えている。ラングラーも四角い。これが、我が国で高評価を得ている理由の1つではないだろうか。

グレード別に見た新型「ラングラー」の価格(税込み)は「SPORT」が459万円、「UNLIMITED SPORT」が494万円、「UNLIMITED SAHARA LAUNCH EDITION」が530万円。サイズは2ドアの「SPORT」が全長4,320mm、全幅1,895mm、全高1,825mm、ホイールベース2,460mm、4ドアの「UNLIMITED SPORT」が同4,870mm、1,895mm、1,845mm、3,010mmだ

ジープらしさを高める細部へのこだわり

そんなラングラーの新型JLは、写真を見てお分かりのとおり、クルマに詳しくない人でもジープだと分かる格好をしている。さらに、試乗会のプレゼンテーションでは、基本的なフォルムだけでなく、ディテールにもジープらしさを高める要素をいくつも散りばめてあるとの説明があった。

新型「ラングラー」のフロントグリル

全てのジープは、7本の縦スロットが入ったフロントグリルと台形のホイールアーチを持つ。新型ラングラーも同じだ。その上で新型は、かつてのCJの特徴を復活させた。ヘッドランプが7スロットグリルの両端に食い込んでいるのだ。

ボディサイズを見ると、全幅と全高については旧型とほぼ同じだが、全長は「UNLIMITED」で165mmも伸びた。これまで5速だったATが、新型で一挙に8速になったことに対処するためもある。ラングラーらしい形をキープしながら空力特性の改善も行っており、フロントウインドーは7度傾きを強めた。

エンジンは「UNLIMITED SPORT」が2.0Lターボ(画像)、それ以外が3.6LのV6だ

一方で、サイドウインドーは天地を広げ、リアゲートに装着するスペアタイヤの位置は下げるなど、視界を良くするリファインも実施している。後付けしたようなリアコンビネーションランプもラングラーの伝統となっているが、これは、内部に予防安全用センサーを内蔵するという目的も持たせたデザインだ。

新型ラングラーはジムニーやGクラスなどと同様に、ボディとは別体のラダーフレームを持つ。さらに、キャビンの上半分は樹脂製で、内側の頑丈なロールケージで安全性を確保している。樹脂製のルーフは取り外しが可能。それどころかドアも脱着できて、フロントウインドーは前に倒すことができる。

日本の法律では、ドアを外したりフロントウインドーを倒したりして公道を走行することは禁止されているが、本国では、昔のジープのような雰囲気を楽しむユーザーも想定する。ドアヒンジには脱着に使用する工具の種類まで刻んである。

ドアヒンジに工具の種類を示す記号が刻まれる

さらに、フロントウインドーやアルミホイールには、ジープのイラストがワンポイントで添えてある。ただでさえジープそのものの姿をしているのに、ディテールでさらにジープらしさをアピールする。マニアでなくとも、このデザインにはそそられる人が多いのではないだろうか。

フロントウインドーにジープのイラストが

走りでもモデルチェンジ効果を実感

インテリアもジープらしく力強い造形でまとめてある。メーターは丸いアナログ式で、ATセレクターと副変速機はレバー式。スイッチはタッチパネルに頼りすぎず、確実さを優先した方式を継承している。頭上にはロールケージが露出し、ドアは一部が鉄板のままだ。それがまた、ジープらしい雰囲気を盛り上げている。

力強い造形でまとまったインテリア

では、走りはどうか。今回の試乗では、旧型から受け継がれた3.6LのV型6気筒自然吸気エンジンを積む車種でオンロード(公道)を走行したあと、新搭載の2L直列4気筒ターボエンジンを搭載した車種でオフロードコースを走った。

まず感じたのは、ドライビングポジションが自然になったことだ。旧型はペダルが右寄りでアクセルとブレーキの段差が大きく、ブレーキに合わせてシートをセットするとアクセルが遠かった。ところが、新型は違和感なく扱えるようになった。

走り出すと乗り心地の良さに気づく。ラダーフレームと前後リジッドサスペンションという伝統を受け継ぎつつ、普段使いも違和感なくこなせるようになった。加速はATが8速になったおかげもあり身軽に感じる。旧型より小回りが効くことも日本のユーザーには朗報だろう。ハンドリングはおっとりしているが、コーナーでのロールの出し方は自然で、腰高感は抱かなかった。

加速はトランスミッションの多段化で身軽に。旧型より小回りが効く点も日本で乗るには嬉しい

オフロードコースは、他の多くのSUV試乗会で用意されるそれより一段とハードだった。しかし、ラングラーは平然と走破していく。200mmもの最低地上高が効いていて、床下をぶつける気配はない。強靭なラダーフレームと良く動くリジッドサスペンションが、4つのタイヤを確実に接地させ、車体を前進させる。ローレンジを選べば、急な下り坂でも速度を抑えてくれる。

他の多くのSUVが電子制御の助けを借りて走り切るようなシーンを、ラングラーは伝統的な機械の力で進んでいく。だから、操る楽しさが味わえる。“オフロードのスポーツカー”と呼びたくなるほどだ。

新型「ラングラー」は“オフロードのスポーツカー”とでも呼びたくなるような走りを見せた

ターボエンジンは2,000rpm以上に回転を上げておけば、アクセル操作に対してリニアに力を発揮してくれるので扱いやすかった。日本では税金が2Lクラスで済むので、これまでラングラーを考えなかった人も興味を抱くかもしれない。

前述のように、日本でのラングラー人気は根強いものがあるが、新型はオンロードでの加速性能や快適性能の向上、2Lターボエンジンの追加などにより、さらなる人気を獲得しそうだ。そして、実際にオーナーになった人々にとっては、ジープらしさを深めたデザインが満足感を高めてくれるはずである。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu