インテル日本法人にソニー出身の新社長、船出するスズキ丸が直面する課題とは

インテル日本法人にソニー出身の新社長、船出するスズキ丸が直面する課題とは

2018.10.25

半導体大手のインテル、日本法人の次期社長に元ソニーの鈴木国正氏

異例の外部登用となった新社長、成長分野へ事業の転換を担う?

今後は自動車や5G、IoT、データセンターなどPC以外が成長のカギ

半導体メーカーIntelの日本法人となるインテル株式会社(以下IJKK=Intel Japan KK)は、10月24日に東京都内で記者会見を開き、同社の新社長に鈴木国正氏が11月1日から就任することを明らかした。

IJKKの社長は、今年の3月末に前社長となる江田麻季子氏が退任したことが明らかになってから、IntelのEMEA地域の事業部長を務めていたスコット・オーバーソン氏が、暫定的に務めてきた。だが、オーバーソン氏は暫定社長という扱いで、本格的な次期社長をこれまで探してきたというのが経緯となる。

そのIJKKの新社長に就任する鈴木国正氏は、ソニー株式会社でキャリアを積んできた経営者で、最終的にはソニーの携帯電話事業子会社のソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社の社長 兼 CEOにまで上り詰めた後、今年の3月にソニーを退職していた。ソニーモバイルでモバイル事業に関わる前には、PlayStation向けのネットワークサービスの立ち上げ、さらに99年~00年代にはソニーのPC事業「VAIO」事業の副本部長、最終的には事業本部長に昇格してVAIO事業をリードするなどしており、その頃は顧客としてIntelに関わってきた。

左から鈴木氏の直接の上司となる米Intelセールス&マーケティング統括本部副社長 兼 グローバル・マーケッツ&パートナーズ 本部長 シャノン・ポーリン氏、インテル株式会社次期社長の鈴木国正氏、インテル株式会社 代表取締役社長 スコット・オーバーソン氏

なぜ内部昇格ではなかったのか、その舞台裏

IJKKの社長が鈴木氏に決まったということを知った時に、筆者が抱いた正直な感想は、「今回は内部昇格ではないのだ」ということにつきる。

というのも、歴代のIJKKの社長は、本社から赴任してきた場合を除き、ほとんどはIJKKからの内部昇格だったからだ。直近の江田麻季子前社長は、IJKKでマーケティング本部長を務めた後、アジアパシフィック地域でマーケティングに従事し、その後IJKKに戻り社長に昇格した。江田氏の前任者になる吉田和正氏も、IJKKで各事業部の事業本部長などを経験した後、IJKKの社長に昇格した。それ以前の傳田信行氏、西岡郁夫氏なども、いずれもIJKKの内部からの昇格となっており、暫定的に本社の副社長が務めていた時期を除けばほとんどが内部昇格で社長を出しているのが同社の歴史だ。

なぜ今回は内部昇格ではないかと言えば、江田麻季子前社長の退任がIntelにとって想定外の事態だったからだと考えることができる。江田氏の退任理由は明らかにされていないので詳細は不明だが、これまでの社長交代時は慣例として、前任者と後任者がそろって記者会見に臨んでいたことを考えれば、Intelにとって後任者も決まらない中での社長交代劇は「想定外」だったと言っていいだろう。

江田氏が社長になった後、江田氏と同じ時期に社長候補だと考えられていた二人の副社長は相次いでIJKKを去っている。つまり、幹部の世代交代がこの時に方針として決まったため、他の候補者は社を去ったのだと考えられる。そして、江田氏が社長の間に社内から後任者を決め昇格させ、円滑な世代交代が進められるはずだったが、そのシナリオは江田氏の突然の退任ですべて狂ってしまった、そう考えることができるだろう。

そこで、社外から社長が招請されることが決まり、その人材として、ソニーの幹部の一人として経営経験も豊富な鈴木氏が次期社長として選ばれた、そういうことだろう。今後は、「次の次」を見据えた人事もどこかのタイミングで行なわれることになると見る。

日本でPC事業の強化が一筋縄ではいかなくなる理由

新社長は荒波に向かうことになる?

これまで、IJKKの存在価値は日本のOEMメーカーを手厚くサポートし、鈴木氏がいたソニーVAIOがそうであったように、世界でも注目されるユニークでイノベーティブな製品の販売につなげるというところにあった。そこが本社からも評価されてきたのだが、その状況は大きく変わりつつある。というのも、日本からグローバル市場向けPCを大規模に販売するメーカーが事実上なくなりつつあるからだ。そうした中で鈴木新社長は、これまでは調達先として関わってきたIJKKの中に落下傘社長として舞い降りることになる。与えられることになる課題は決して簡単ではない。

Intelの地域子会社の売り上げのカウントは、その地域に存在するOEMメーカーがどれだけCPUを買ってくれたのかで決まってくる。例えば、DellやHPのようにグローバルにビジネスを行なっているPCメーカーが、IntelからCPUを買ってPCを製造して、日本で100万台を売ったとする。その売り上げはIJKKにつくのかというと、そんなことはなくて、米国本社の売り上げになる。同じように、AcerやASUSなどの台湾メーカーが日本でPCを売ったとしても、台湾Intelの売り上げとしてカウントされ、IJKKの売り上げにならない。

では、日本のPCメーカーにCPUを売ればいいではないかということになると思うが、問題は、実質的にグローバルに大規模にPCを販売する日本のPCメーカーというのが既になくなりつつあることだ。NEC PCと富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は既にLenovoの傘下になっており、今のところ両社とも売り上げはIJKKにカウントされているが、どこかのタイミングでそれがLenovoに切り替わって、中国Intelにカウントされるようになってもおかしくない。そして日本のメーカーの中では最大シェアを誇っていた東芝クライアントソリューションも、現在はシャープの子会社、もっと言えばその親会社の台湾ホンハイ社の孫会社となっている。今後それが台湾Intelへ移行してもおかしくない。

日本のPC市場は10年代前半の年間1,500万台からは減って年間1,000万台という市場に縮小しているが、それでも1千万台の市場があり、ボリュームとしては決して小さくはないが、今後それが劇的に増えると予想する人はいないし、日本の大手PCメーカーというものがなくなっていくことで、IJKKの役割は日本独自のOEMメーカーのテクニカルサポートという従来の役割から、徐々に変わっていくことにならざるを得ない。つまりIJKKにとってPCビジネスは既に成長市場ではないということだ。

自動車や5G、IoTなどの新分野を増やすことが課題に

このため、今後IJKKにとって重要になってくるのは、PC以外の分野への売り込みだ。特に、日本に残された最後の巨大コンシューマ向け製造業とされている自動車向け半導体の販売は、IJKKにとってもこれから最重要な分野になる可能性が高い。

自動車メーカーは単に車に搭載されるエッジ向けの半導体だけでなく、自社で設置するデータセンターなどにも多大な投資を行なっている。言うまでもなく自動運転は、自動車単体では実現できず、自動車メーカーが設置するデータセンターにあるコンピューティングリソースと協調しながら運行されるからだ。

また、今後は自動車メーカーが通信キャリアの基地局近くに設置していくエッジサーバーなどでも新しいビジネスチャンスがあると考えられる。既にIJKKはトヨタ自動車と協力して、エッジサーバーの規格を提案する取り組みを行なうなどしており、次のステップに向けて自動車メーカーとの協業を強化している。そうした取り組みを強化して、自動車メーカーとの取引を拡大できるか、それがIJKKの生き残りにとって重要な鍵となるだろう。

これ以外にも、5Gソリューション、そして自動車以外のIoT、さらには現在のIntelの稼ぎ頭であるデータセンター事業など、PC以外の事業がこれからのIJKKにとっては重要分野となっていくはずだ。こうしたビジネス環境の中で、鈴木氏がどのようにIJKKの舵取りをしていくのか、その手腕に注目が集まることになる。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。