AIでスマートな制御を実現! 伊藤忠が提案する次世代蓄電システム

AIでスマートな制御を実現! 伊藤忠が提案する次世代蓄電システム

2018.10.25

伊藤忠商事がエヌエフ回路社と開発した蓄電システムにAIを搭載

AIを手がけるのはイギリスのスタートアップMoixa

P2Pによる電力売買を実現するプラットフォームの構築を目指す

伊藤忠商事は2018年10月24日、イギリスのMoixa Energy Holdings(以下、Moixa)とエヌエフ回路設計ブロック(以下、エヌエフ回路社)、TRENDEと連携し、AI技術を活用した次世代蓄電システムならびに蓄電池専用電力料金プランの販売を開始すると発表した。本稿では、英国大使館で行われた製品発表会の様子をお伝えする。

AIが各家庭の消費傾向を学び、電力計画を作成

伊藤忠商事は、2013年から一般家庭用蓄電池ビジネスに参入しており、エヌエフ回路社とともに開発・製品化した独自ブランドの蓄電システム「Smart Star L」を販売している。今回、そのSmart Star Lに、MoixaのAIソフトウェア「GridShare Client」を搭載した状態で、11月1日から販売を開始する予定だ。

蓄電システムとは、繰り返し充電して家庭内の電気機器に電気を供給するシステムのこと。屋根などに取り付けた太陽光発電による充電や、電力会社から電気を購入して蓄電システムに電気を蓄える。

太陽光であれば電気を蓄えるためのコストは不要。電力会社から電気を購入して蓄電する場合でも、利用量の少ない夜間に料金が安くなるプランなどを活用することで、コストを抑えることが可能だ。また、蓄電システムがあれば、災害などで地域が停電してしまった場合でも電気を使うことができるため、災害時の対策として導入する家庭も少なくないだろう。

発表会ではまず、伊藤忠商事のSmart Star Lについて、製品の紹介が行われた。

「Smart Star Lの強みは、家をまるごとバックアップできる点、出力の大きさ、太陽光発電の出力という3つ。一般的な蓄電システムでは停電時に特定のコンセントしか利用することができないうえに、出力が100Vまで、太陽光発電の自立運転出力が1.5kWまでに制限されてしまいます。一方、Smart Star Lでは、家のコンセントすべてで使用できるだけでなく、出力が200Vまで、太陽光発電も9kVAまで使用可能です。2018年10月までに出荷累計台数が1万台を突破しました」と伊藤忠商事 工業原料化学品部 無機電子材料課 担当課長の村瀬博章氏は、Smart Star Lの強みと実績に胸を張る。

また、システムを共同で開発しているエヌエフ回路社 代表取締役会長の高橋常夫氏は「我々は、独自のIoTプラットフォームを構築しております。API接続によって、各種システムとスムーズな連携が可能。今回は英国MoixaのAIソフトウェア『GridShare Client』と連携することで、AIが気象予報やユーザーの電力需要・発電予測等を分析・学習し、太陽光ならびに蓄電池の効率的な運用が可能になります」と同社のIoTプラットフォームの接続性の高さを主張した。

伊藤忠商事 工業原料化学品部 無機電子材料課 担当課長の村瀬博章氏
エヌエフ回路社 代表取締役会長の高橋常夫氏

続いて、今回伊藤忠がSmart Star Lに組み込むMoixaの「GridShare」の紹介が行われた。

Moixa CTOのChris Wright氏は「GridShareでは、接続している世帯のデータを集め、機械学習のアルゴリズムを用いて、各家庭の電力消費パターンを学びます。それに加えて天気予報などの情報から、翌日の電気消費量などを予測。世帯ごとの電力消費計画を作成し、時間帯ごとに電力の消費を最適化。また、アプリを通じてエネルギーの流れを確認することもできます」とGridShareの概要を説明した。

Moixa CEOのSimon Daniel氏は「イギリスも日本と同じ島国。国内で使われている電力はほとんどが国内で生み出されたものです。そのため、電力をしっかりと管理しなければなりません。増加が見込まれる電気自動車に対応していく必要もあるでしょう。余剰電力をストレージとして使い、夜間にスマートチャージを行う。これにより効率的な電力消費が可能になります」と、AIを活用した蓄電システムの重要性を述べた。

Moixa CTOのChris Wright氏
Moixa CEOのSimon Daniel氏

これらSmart Star LとGridShareが連携することで、自動で賢い充電と利用が可能になる。例えば、翌日が住民不在の平日で、晴れの予報である場合、日中の太陽光発電による蓄電が期待できるため、通常深夜に電力会社から購入している電力は少なくしておくといった判断をするのだという。

AI蓄電システムに合わせて、専用の料金プランもスタート

また、同蓄電システムでは、TRENDEが提供する専用の時間帯別電力料金プラン「あいでんき」を活用することができる。「あいでんき」は午前1時から午前5時までの深夜帯(蓄電タイム)と、それ以外の時間帯で料金が設定されているプラン。条件やエリアによって価格は異なるが、東京エリアの蓄電タイムでは19.5円/kwh、それ以外の時間が31円/kwhだ。

TRENDE 代表取締役の妹尾賢俊氏は「再生可能エネルギーを積極的に活用した社会を実現するというミッションのもとで事業を展開しています。今回のあいでんきで蓄電システムの導入を促進し、最終的にはP2Pの電力取引を実現するためのプラットフォームの構築を目指したいと考えています」とビジョンを述べた。

TRENDE 代表取締役の妹尾賢俊氏
あいでんきの概要

Smart Star Lの希望小売価格は285万円(税別・工事費別)で、GridShareは月額料金が1200円(税別)。AIがある場合とない場合を比較した経済効果は、約1500円/月だと試算されているという。また、「あいでんき」の対象エリアは東北・東京・中部・関西・中国・九州の電力エリア管轄内に限られる。

グリッドシェアプラットフォームを活用した将来のビジネス展開図(イメージ)。ゆくゆくは、家庭間で電力のやり取りを行える環境の構築を目指す

昨今、相次いだ自然災害。電気を止めることが許されない病院などは、おそらくすでに自家発電システムなどを導入しているだろうが、より効率的に蓄電・電力消費・売電できるシステムが構築されていけば、“停電のない社会”の実現もあり得るかもしれない。

また、2009年に始まった太陽光発電の固定価格買取制度は、2019年10月より順次終了していく予定であり、今後は太陽光で発電した電気を自宅で使う流れが拡大していくだろう。その際、自動で効率化してくれるAI蓄電システムは、大いに活躍してくれるはずだ。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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