"お酒好き女子"の新たなオアシス? ケンタッキーの「バル」という戦略

2016.06.01

フライドチキンでおなじみのケンタッキーが、2016年4月に新業態の店舗CAFE&BARタイプの「KFC 高田馬場店」をオープンした。昼はカフェ、夜はバル形式で、「これがケンタッキー?」と思うような大人っぽい内装。落ち着きのある空間で、ゆったりくつろげそうな雰囲気だ。

この店舗のコンセプトは「好きな時間に、好きな場所で、好きなフードやドリンクを。」というもの。朝昼晩で違うフードメニューを提供し、アルコール含む多彩なドリンクを揃える。ケンタッキーはなぜ、このような新業態の店舗にチャレンジしたのだろうか。

4月にオープンしたKFC高田馬場店。内装は「CASUAL×FASHION×POP」がテーマ。良い意味で"チェーン店らしさ"があまり感じられないデザインだ

ねらいは20~30代女性

日本ケンタッキー・フライド・チキン 新規事業部の大竹彩子氏

「20~30代女性のお客様がメインターゲットと考えていました」と話すのは日本ケンタッキー・フライド・チキン 新規事業部の大竹彩子氏。この店舗の、いわば仕掛け人だ。高田馬場は学生や社会人などいろいろな人が集まる街で、それぞれ自分の使い方をみつけてほしいという思いから、このようなCAFE&BAR形式にしたそうだ。

朝昼晩でフードメニューが異なるので、1日に3回来ても楽しめるのが特徴。それは「自分の使い方」を提供するための戦略だったが、結果は狙い通り。朝昼晩、どの時間もにぎわいをみせている。ちなみに、筆者が取材でお邪魔したのは平日の15時前後。いわゆる"アイドルタイム"という、一般的には飲食店が空く時間帯でお願いしたにもかかわらず、実際には"ほぼ満席"状態だった。

高田馬場でCAFE&BAR形式の店舗をオープンした理由については、「いろいろな人が集まっていて、平日も土日も、そして昼も夜もにぎわっている街。こんな場所は他にあまりないため、新しいコンセプトの発信源としてふさわしいと判断しました」と大竹氏は話す。

改装して今の業態になった高田馬場店は、もともとテイクアウトに強い店。そのため、改装前は14時にもなると店内に空席があった。しかしそれではせっかくのイートインスペースがもったいない。そこで、リニューアルを良いキッカケに、イートインの利用者も増えるような新コンセプトを打ち出したというわけだ。

「居心地の良い空間」作り

イートインの利用者を増やすには、「居心地の良い空間」を作る必要がある。内装同様、メニューにも工夫をこらしたそうだ。同店オリジナルのフードメニューのほか、アルコールも充実のラインナップ。ケンタッキーでアルコールを提供するのは同店が初ではないが、サントリーの「プレミアム・モルツ」のほか多彩なクラフトビール、サントリー酒類と共同開発したハイボール「カーネルハイ」といったオリジナルドリンクも揃える。

いちばん手前にある「カーネルおじさん」のサーバーは「カーネルハイ」用
多彩なクラフトビールがズラリ。クラフトビールはチキンに合うものを社内で選別。季節で入れ替えする予定だ。ハロウィンやクリスマスといったイベント限定のビールも検討中
筆者もカーネルハイをいただいたが、とても飲みやすい! 暑い日にはグイグイッといけてしまう。「飲みやすいがゆえにおかわりされる方も多いです」(大竹氏)とのこと

日本KFCホールディングスの広報担当者によれば、「前々から、チキンと一緒にビールを飲みたいというご要望はいただいていました」とのこと。基本はファミリー層が多い郊外型の店舗で、車の利用者が多いことから、アルコールを前面に打ち出す戦略は採っていない。しかし、駅前の高田馬場店では開店から閉店までアルコール類を提供。筆者がみた感じでも、平日夕方前というタイミングにかかわらず、お酒を飲んでいる人が少なくなかった。

ビール以外にも、チキンに合わせて「カーネルハイ」というオリジナルハイボールをサントリー酒類と共同開発した。女性にも飲みやすいようちょっぴり甘口に仕上げつつも、あっさりかつスパイシーな味わいのカーネルハイ。作り方や材料は「企業秘密」で、大竹氏も一切知らないそうだ。

もちろんドリンクだけでなく、若い女性に支持されそうなフードメニューを用意。フライドチキンや揚げ物類以外に、野菜を使ったメニューを充実させた。店内のデザインというハード面だけでなく、メニューというソフト面からも「つい立ち寄りたくなる店」を作り上げている。

通常の店舗で提供しているフードメニューは原則すべて提供。オリジナルメニューはすべて「追加」なのだ。メニューが増えれば店内スタッフの作業も煩雑になり、提供も遅くなりそうなものだが、大竹氏は「提供が遅くなるのは望ましくない。他の店舗と同じ設備で作れるように工夫しました」という。これは大竹氏がもともとケンタッキー店舗の店長として長く勤めていたからこそ、みえる部分なのだろう。

意外な需要

大竹氏によれば、オープン以来「意外と1名様でいらっしゃる女性が多い」とのこと。たしかに筆者が訪れたカフェタイムでも女性の1人客が少なくない。男女比でいうと3.5:6.5といったところだろうか。オープン当初は2人以上のグループ客を想定していたものの、仕事終わりなどに1人でやって来てサクッと飲んで帰る、という女性が案外多いようだ。これはケンタッキー側にとってうれしい誤算だった。

夜のフードメニュー。かわいらしいイラストが添えてある
野菜メインの料理も取りそろえている。写真は「まるごとトマトのタプナードソース バゲットつき」

「いつ来てもにぎわっている、というのも入りやすい理由かもしれません。私もそうなんですが、店内に人が少なすぎても入るのって勇気がいりますよね」(大竹氏)という指摘も。なかには女性のヘビーユーザーもいるそうだ。

そのほか、「二次会」需要もあるとか。閉店時間は22時、金・土のみ23時となる。「ちょっと飲み足りないけど、そこまで長居はできないから居酒屋へ行くのも……」というシチュエーションにフィットするのも、高田馬場店の強みといえそうだ。

バル形式のお店は増やす?

好調な様子のKFC 高田馬場店だが、大竹氏は「すべての店舗にカフェ&バル形式を導入することは一切考えていません」と話す。今回のコンセプトは高田馬場という立地に合わせて店作りをした結果。今後はカフェやバルといったものにとらわれず、ニーズに合わせて柔軟に新しい業態を広げていく。

やはりカーネルハイとフライドチキンの組み合わせが人気だそう

一応、20代女性のひとりである筆者だが、たしかに「ここなら1人でも入りやすいな」という感想を抱いた。おそらくは、チェーン店という安心感、一方で"他にはない"特別感、女性客が多いことがうかがえるガラス張りの外観などが要因として挙げられるのだろう。

ケンタッキーのみならず、今や各社がこぞってアルコールメニューを提供し出した。おそらく走りは吉野家の「吉呑み」だろう。しかし、今回紹介した業態はそれとは少し違ったアプローチ。サクッと寄れる気軽さと、オシャレな雰囲気を兼ね備えたことで、これまで取り込みきれていなかった若い女性層もファンにしていく。大竹氏は「まず来てみてほしい。そこからファンになってほしい」と語ってくれた。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。