約9兆円に膨らむVR市場!普及のタイミングはやはり?

約9兆円に膨らむVR市場!普及のタイミングはやはり?

2016.01.21

2016年はVR元年になる ?

2016年は「VR(Virtual Reality)元年」といわれている。米Oculus VRが2012年に発表した「Oculus Rift」の事前予約が始まり、Microsoftも2016年第1四半期に「Microsoft HoloLens Development Edition」の発売を予定。先頃、東京ビッグサイトで開催された第3回ウェアラブルEXPOでも、多数のVR技術を活用したデバイスが披露された。もちろん日本の企業も指をくわえて見ているわけではない。東芝はメガネのレンズ上に情報を表示させる「Wearvue TG-1」を発表し、ソニーも2016年上期に「PlayStation VR」の発売を予定している。

2016年1月から事前予約を開始し、今春にはユーザーの手元に届く「Oculus Rift」。ちなみにOculus社は2014年3月にFacebookが買収した(同社資料より)
現実世界に3Dホログラムを重ね合わせてMR(Mixed Reality)を実現するMicrosoftの「Microsoft HoloLens」。2016年第1四半期に開発版が3,000ドルで発売する予定だ(同社オフィシャルサイトムービーより)
東芝のWearvue公式サイト。50gの軽量のリアル眼鏡型ウェアラブル端末から投映された情報を用いることで、フィールドサポートや倉庫・物流、警備、ヘルスケアなど広くビジネスの現場で使える。すでに予約が始まっている
「それは、誰も知らない Virtual Reality」。PlayStation VRの公式サイト。かぶると360度全方向を取り囲む3D空間が出現するという

ハードとソフトで800億ドル市場の予測も

VR市場についてはさまざまな意見が出ているが、直近の予測とゴールドマンサックスのアナリストであるHeather Bellini氏の予測を紹介したい。同氏は2025年までのVR市場規模が800億ドル(日本円にして約9兆円)まで成長する可能性が高い、と海外のニュースメディアに述べている。内訳としてハードウェア市場が450億ドル、ソフトウェア市場が350億ドルまで拡大する急成長産業として注目しているという。さらにVRおよび「AR(Augmented Reality: 拡張現実)」がビデオゲームやライブイベント、ビデオ視聴など9つの領域に広がり、なかでもゲーム市場は116億ドル規模になると予想した。このように世界が注目するVRとは何だろうか。

目の前の現実とCGをリアルタイムに合成し、「見るから体感するへ」を提唱するキヤノンの「MREAL」(同社の公式動画より抜粋)

一般的には「仮想現実」と訳されるものの、"実体は存在しないが本質的もしくは効果として現実である"と定義するのが正しい、と日本バーチャルリアリティ学会は説明している。前述したARのほかにも「MR(Mixed Reality: 複合現実)」」というキーワードも用いられるが、そもそもARは現実世界に情報を付加する「Google Glass」や前述のWearvue TG-1が当てはまり、VRはコンピューターが作り出す世界に自身が没入するタイプでRiftやPlayStation VRが相当。そして、MRはARとVR両方の掛け合わせたもので、HoloLensやキヤノンの「MREAL(エムリアル)」が代表的だ。

VRが持つ没入感やフィードバックがUX(User Experience: ユーザー体験)に大きな変化をもたらし、これまでの枠を越えたゲームやサービスが提供可能になるのは想像に難しくないが、問題となるのはその価格だ。

例えばOculus Riftはディスプレイやマイクなどを内蔵するヘッドセット、IRカメラ、コントローラーなどがセットで599ドル。日本までの送料を追加すると8万円を超える。さらにハイスペックなPC(そして対応するVRコンテンツ)を用意しなければならない。Oculus VRは「Oculus Ready PC」として、ASUSやALIENWAREなどのPCを推奨しているが、これらも約1,000ドル(約12万円)という価格設定となる。また、Microsoft HoloLensも開発者向けながらも3,000ドル(約36万円)。まだまだコンシューマーが気軽に購入するようなレベルではない。

市場拡大のカギは未体験の魅力を彼らがどう伝えられるか?

VRが普及に至り、ビジネスとして花開くには、コンシューマーがVRコンテンツから得るUXを理解して、その価値が世間に広まるが必要がある。だが、前述のように価格設定は高いハードルとなり、街中でVRを体験する空間も国内にはない。この普及タイミングとして期待できるのが、PlayStation VRだ。

ソニーはPlayStation VRの価格を発表していないが、Oculus Riftより安価な設定を行うというメディアへの発言も聞こえてくるため、唯一コンシューマー向けの価格になるのではと期待できる。また、PlayStationという閉じられたプラットフォームにユーザーを囲い込み、PlayStation本体やゲームタイトルをユーザーに購入してもらえるため、仮にPlayStation VRで赤字を出しても全体的な利益につなげることがソニーには可能だ。

だが、Oculus VRもデバイスから利益を得ようと考えてはない。同社はPCの周辺機器に位置するOculus Riftを"プラットフォーム"と定め、VRコンテンツに特化した配信プラットフォームの運営をビジネスの主軸に置いている。このVRコンテンツはサードパーティが開発し、Oculusプラットフォームを通じた有料配信から得る収益で、Oculus VRと参画するサードパーティーベンダー両者が潤うビジネスモデルだ。

Oculus VRやPlayStation VR、他社のVRシステムのいずれかが一強体制を築くのか、フタを開けてみなければ分からないが、先進的なデバイスの"第一世代"がヒットする公算は低い。

前述のようにコンシューマーがVRコンテンツの魅力に気づかないからだ。イノベーターがVRコンテンツの魅力を世間に伝え、アーリーアダプターがVRデバイス普及を手伝う。そしてラガードに広まる気配が生まれてこそ、初めてビジネスとして成功する。

SONYの「PlayStation VR」。イノベーター、アーリーアダプターたちの活躍と価格設定がVRの普及に一役買うはずだ(同社公式ムービーより抜粋)

それでも今からVR市場に参画する意義はある。さまざまな未来技術を描いてきたSF小説が現実化した事例を見れば明らかだ。過去にもVRを題材にした小説や映画は多数存在したが、その世界が現実になる日が目前に迫っている。新たな市場でビジネスを始めようとしている企業はVR元年といわれる今年こそ参画を目指して動き出すべきだ。

阿久津良和(Cactus)

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。