お手本は“出会い系”!? 地域が人をスカウトする「SMOUT」の狙い

先鋭ベンチャー LOCK ON! 第7回

お手本は“出会い系”!? 地域が人をスカウトする「SMOUT」の狙い

2018.10.24

ベンチャーによる地域と人を結ぶ仕組み

地域のプロジェクトを提示して人の興味を引く

ターゲットは移住に二の足を踏んでいる層

最近の出会い系アプリは、実によくできている。

「あ、好みかも!」「きっと私と話が合いそう……」。異性の写真とプロフィールを見て気になる相手がいたら、ひとまず「いいね」をタップ。すると「いいね」した自分の情報が相手に届き、もしこちらの写真とプロフィールを気に入ってくれたなら連絡をとりあえたり、直接会えたりできる――。

ようは「あなたに興味あり」の意思表示が気軽でカンタンだから、出会いのチャンスが増えやすい。そのうえで相手のリアクションによってマッチングに至るので、成功率も高くなる。つまりローリスク・ミドルリターン。だからこそ老若男女、未婚既婚を問わず、多くの人々に支持されているのだろう。いや「既婚は問えよ」とは思うけど……。

男女のように、地域と人を結ぶ

「実はこうした“出会い系”の仕組みを、ものすごく研究したんです」と今年6月に「SMOUT」というサービスを起ち上げたカヤックLIVINGの松原佳代さんは言う。「もちろん『SMOUT』が促す出会いは、結婚したい男女じゃない。私たちがマッチングしているのは“地域と人“なんですよ」(松原さん)

カヤックLIVINGの松原佳代代表。面白法人カヤックにて2005年から上場までの10年間、広報をつとめたのち2015年に独立。(株)ハモニアを設立、代表取締役となる。カヤック在籍中に「建築家と家づくりのマッチング事業「HOUSECO」(現SuMiKa)の事業責任者をしていた縁で、2017年、カヤックLiving代表に就く。鎌倉在住。2児の母

「SMOUT」(スマウト)は、地方移住を視野に“地域と人“をつなげるマッチングサービスだ。

地方自治体や企業、NPOなどが“地方”側のプレイヤー。まず彼らが「SMOUT」上で自分たちが実施している事業やイベントなどの「プロジェクト」の詳細をアップする。

『千葉・館山の駅前シャッター通りにホステルを創りたい人募集中』『徳島でお試しサテライトオフィス、してみませんか?』『岩手・花巻でぶどう農業を新しいアイデアでアップデートできる人、副業でも可』といった具合だ。

「SMOUT」のトップ画面。田んぼを前に若者が楽しげだ

また、地方での移住やUターン・Iターンに興味がある“人”たちもエンドユーザーとなる。こちらは、まず自分が興味のあることや仕事のスキル、得意分野などを含めたプロフィールを登録する。

そのうえで出会い系よろしく「SMOUT」上で興味あるプロジェクトを見かけたら「興味ある!」のアイコンをタップ。タップした情報は、プロジェクト主催者である自治体や企業などに届く。そしてユーザーのスキルや得意分野を判断し「ぜひ参画してほしい!」となればユーザーにスカウトメールを送って、マッチング成立! というわけだ。

「すぐに移住! というものばかりではなく、まずは地域のプロジェクトに参加してみよう、というスタイルのものが多くあります。ハードルが下がるし、プロジェクトを通して、実際にその地域やコミュニティとの相性を事前に推し量れる。合う合わないを判断できるわけです。そして段階的に移住へと進む人がいたらいいと思っています」(松原さん)

サイトには各地のプロジェクトが並ぶ。感覚的に「興味ある」あるいは「スカウトされたい」をタップしておくと、それをみた自治体などの運営者からメールが届く、かもしれない

すぐ近くにいるような「身近な人たち」が対象

ここ数年、若い世代を中心に都市部から地方へと移住するムーブメントがあるのは周知のとおり。IT環境が整備されリモートでの仕事が格段にしやすくなってきたこと、スローなライフスタイルが支持されていることがおもなきっかけだ。また「地方創生」という言葉に代表されるように、過疎化などの課題を解決して地方の活性化に貢献したい、と考える層が増えたことが大きな要因である。

もともとウェブサービスやゲームなどのコンテンツ制作企業であるカヤックで広報・PRを担当。その後、代表としてカヤックの子会社のカヤックLIVINGを任され、家を建てたい人と設計士や工務店をつなげるマッチングサービス「SuMiKA」を運営していた松原さんは「移住に対する機運を肌で感じていた」と話す。

「周囲にITエンジニアやエディターが多いんですね。リモートワークしやすい彼らから『移住に興味がある』という声がここ数年ですごく増えていた。またライフスタイルにこだわって家づくりをしたいという『SuMiKa』のユーザーのなかから、実際に移住する人が目立ってきた。ようは移住が特別じゃないものになってきたな、って感じていたんです。実は私自身も海外移住を考えていたころもありましたしね」(松原さん)

ニーズの高まりを反映して、すでに地方自治体はウェブサイトに移住希望者向けの相談窓口を積極的に設置。地域移住のライフスタイルを紹介するウェブメディアもすでに数多く存在する。

ただ、そこには、ちょっとしたミスマッチも見え隠れした。

「移住情報の多くが一方通行だったんですね。コンテンツとしての情報はある。しかし、直接的にマッチングまで促してくれるようなサービス、一歩踏み出すというか、肩を押してくれるようなサービスがまだなかった。しかし、いま求められている地域移住のニーズって、もうすこしおせっかいに『移住、どうですか?』と背中を押すことだと感じていたんです。なぜか? いま地域移住を考えているのが、誰もの周りにいるような“身近な人たち”になってきたからです」(松原さん)

ほしいのは「エイヤ!」をくれるもうひと押し

移住がトレンドワードになってから、すでに数年が経過。そうなるとトレンドに敏感でライフスタイルにこだわりのある人たちは、すでに“行動を起こし終えた”というのが松原さんの見立てだ。

「とがったアーリーアダプターの方々は、すでに移住しちゃっていると思いました。ただユーザーヒアリングすると『移住に興味がある』という人が5割以上いたんですね。つまり『興味はあるけど、エイヤ! 飛び込むのはまだ躊躇している』という方々が相当数いると考えた。いわば現実的な、普通の方々が移住を考えるフェイズに入ってきているのかなと考えたんです」(松原さん)

アーリーアダプター層なら、移住メディアの情報や移住フェアのようなイベントだけでも「エイヤ!」と飛び込めるはずだ。好奇心の強さとフットワークの軽さは、たいてい比例する。しかし普通の人なら、慎重になるのは当然のこと。だからこそ、リスクや不安を解消してくれる誰かの“後押し”をするようなサービスがあれば、潜在的な移住ニーズを持つ人たちの「それなら移住してみよう!」につながる、と思い至ったわけだ。

「だから『出会い系』を参考にしたわけです。出会い系のマッチングアプリのように、やや不精な方でも、カジュアルにリスクなくお互いの扉をノックできるような仕組みをつくれば、移住したいけどちょっと怖いという、多くの人たちのニーズを満たせるかなって……」(松原さん)

既存の出会い系アプリのみならず、スカウト系の転職サイトも大いに参考にし、システムを内製したという。

地域側には、直接営業をかけてアプローチした。移住者や人手を熱望していた自治体や地域の企業、NPOからしても、これまで「能動的に移住希望者にアプローチできる場」がなかったため、歓迎されたという。最初は無料で掲載をスタートし、今は月5万円の掲載料が基本料金。この掲載料が「SMOUT」のマネタイズの柱だ。

こうしてカジュアルに参加して、相性を確かめたうえで地域からアプローチを受けられる「SMOUT」が誕生した。ローンチ直後から多くのユーザーを集めて、半年を待たずに登録者は1000人を越えた。自治体を中心とした掲載プロジェクトも増えて、現在では常時70ほどあるという。

「いま日本には約1800の自治体があるので、まだまだのびしろはあると信じています」(松原さん)

また「SMOUT」は、物理的な移住や移動とは違う形で人と地域を繋げる仕組みづくりにも取り組んでいる。「ネット関係人口」がそれだ。

「SMOUT」がサイトで公開している「ネット関係人口」のスコア

「SMOUT」内での「興味あり」の数やメールのやりとりの数、定住人口。公式Facebookページの「いいね!」の数、インスタでのハッシュタグ投稿……。移住は考えていないが、都市部にいながら地域に何かしら強い興味を持っている、応援したいという感情は、こうしたネット上の言動に現れるものだ。これを「SMOUT」では「ネット関係人口」と定義。スコアを算出してランキングとして発表している。

ネットによって、どこにいても働けるようになったように、地域への貢献もどこにいてもできる。ネット関係人口としてそれを可視化すれば、新しい地域と人、地方と都市とのエンパワーメントが生まれるかもしれない。ゲーム的に『もっとスコアをあげたい!』という地域活性のモチベーションになるつながるかもしれない。そんな期待も持っているんですよ」(松原さん)

ネットで仕事も人とのつながりも、さらには地域とのつながりも持続できる世の中。「SMOUT」は、私たちにそんな「暮らしやすさの選択肢」を提供してくれている優しいサービスなのだ。しかも、未婚も既婚も問わずに……。

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。