いまだ世紀末が続く「外国人技能実習制度」

カレー沢薫の時流漂流 第13回

いまだ世紀末が続く「外国人技能実習制度」

2018.10.29

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第13回は、「外国人技能実習制度」について

日立製作所笠戸事業所が、外国人技能実習制度を利用していたフィリピン人実習生20名を「とりあえず解雇」することにしたそうだ。

「解雇」とはそんなビール感覚のものだっただろうか。ちなみに、この「とりあえず解雇」は日立製作所の会長の発言である。

なぜ「とりあえず解雇」をすることになったかというと、グランドメニューをゆっくり見るためではない。実習生のビザが「働いてはダメなやつ」に変更され、このまま雇用すると違法になってしまうため、「とりあえず解雇」することにしたそうだ。このビザがワーキングビザになればすぐ復職させるという。

外国人技能実習制度の「世紀末」な状況

復職させるのは良いが、その前に何故ビザが変更になったか、である。

まず「外国人技能実習制度」というのは、Wikipediaによると『「技能実習」あるいは「研修」の在留資格で日本に在留する外国人が、報酬を伴う技能実習あるいは研修を行う制度』だ。目的は、発展途上地域が発展するための人材の育成、そして、少子高齢化で労働力不足の日本が人材を得るためでもある。

実習生は賃金をもらいながら技能を習得でき、日本企業は労働力が得られる。一見ウィンウィンな制度に見えるが、その実情は世紀末級に荒れている。今回の日立の問題ですら、雑魚キャラがジジイから種モミを奪ったぐらいの「氷山の一角」であり、もっとすごいサウザー級、ラオウ級の問題がこの制度により起こっているという。

この外国人技能実習制度で、実習生は最長3年日本に滞在することができる。しかし、今回「とりあえず解雇」される実習生はまだ1年程度しか働いていない。何故引き続き雇用ができなくなったかというと、国の監督機関「外国人技能実習機構」から、2年目以降の実習計画の認定を受けられなかったためだという。

認定を受けられないということは「技能実習」ビザではなくなるため、雇うと違法になる。よって「とりあえず解雇」となったわけだ。何故認定が受けられなかったかというと「技術習得」が名目なのに、目的の技能を学べない作業をさせている疑いがあったからだ。

つまり「それ初日から出来てたやろ」というような単純作業や、「汚い、くさい、カメムシいない?」というような、日本人がやりたがらない3K作業をさせていたかもしれないということである。ついでに、キツくて危険な仕事もさせていた可能性もある。

日立の真意はわからないが、このように「技能実習」にかこつけて、まったく技能の身につかない作業を低賃金で長時間やってくれる人材を確保しようとする企業がある、というのが、「外国人技能実習制度」の抱える大きな問題だ。ウィキペディアにも「実質的な奴隷労働制度であると批判されている」などと激しいことが書かれている。

最低賃金を割っていた、などまだカワイイ方で、賃金の未払い、異議申し立てをすれば強制帰国、さらには強制帰国を脅し文句に性暴力を働くなど、まさに世紀末の様相である。実習生となった外国人の多くは「日本は安全な国」と思って働きに来ただろうが、全然安全じゃない。少なくとも外国人労働者にとってはモヒカンジープの国だ。

中には、未払い賃金の支払いを免れるため、中国人労働者をだまして中国につれて行き、そのまま中国に置き去りにしたという事例もあるそうだ。ここまで来ると、諸外国から真面目で大人しいと思われている日本人も「なかなかやるじゃないか」という気になって来る。

しかしこの外国人技能実習制度問題は、メロス激怒必至の日本側の邪智暴虐だけが原因ではない。実習に来る外国人側も、最初から技能習得ではなく「出稼ぎ」が目的で外国人技能実習制度を利用している側面があるという。

そういう外国人にとって仕事内容は何でも良く、むしろ定められた仕事を決められた時間しか出来ないとなると、「思ったより稼げない」ということになってしまう。そのため、自ら稼げる目的外作業や、低賃金でいいから時間労働をさせて欲しいという外国人もいるそうである。

日本企業側が真面目に制度内容を守ろうとすると、逆に外国人側が「おい話と違うぞ」となってしまう、韓流ドラマ級のすれ違いが起きているケースもあるのだ。

このように、外国人技能実習制度が本当に「発展途上地域のための人材育成」に使われているかというと、疑問なところがあるのが現状だ。

コンビニの20時閉店、受け入れられる?

ちなみに、都会に行くとコンビニのレジが外国人であることも珍しくない(我が地元だと腰を抜かすレベルの「事件」)。

コンビニは今のところ「技能実習」には当たらないため、「留学」という名目で働いている人が多いという。これに関し、コンビニ業界からは「コンビニも技能が身につくから外国人技能実習制度に入れてほしい」という声が出ている。

それに対しては「人手が足りてへんだけやろ」と総ツッコミが入っているようだが、このままいくと人手不足でコンビニが20時に閉まるようになってしまうかもしれない。果たしてコンビニが20時に閉まる生活に耐えられるだろうか。思うに、そうなったら文句を言う人は多いだろう。

今まで通り、小腹が空いたからと深夜二時に菓子パンを買いに行ける生活を維持するためには、我々は外国人労働力のことを真剣を考えなければいけない。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。