30年の歴史が指し示すのはマツダの未来? 「ロードスター」の歩みを振り返る

30年の歴史が指し示すのはマツダの未来? 「ロードスター」の歩みを振り返る

2018.10.23

ライトウエイトスポーツを待ち受けた盛者必衰のことわり

受け継がれる初代「ロードスター」のコンセプトとは?

自動車業界は大変革の時代、マツダは変わってしまうのか?

長年、マツダブランドの象徴であり続けている「ロードスター」。1989年に登場した初代ロードスター(型式から“NA”とも呼ぶ。2代目は“NB”、現行の4代目は“ND”)以来、一貫してマツダが目指す“人馬一体”を体現してきたモデルだ。2019年2月の発売30周年を前に、「ロードスター」が歩んできた道のりをライトウエイトスポーツの歴史とともにプレイバックしたい。

累計100万台以上の生産を達成している「ロードスター」。世界中にファンが多いクルマだ(画像は筆者撮影)

時代に翻弄されたライトウエイトスポーツの歴史

第二次世界大戦後、世界ではモータリゼーション(自家用乗用車の普及)が進み、自動車産業が発展していった。1950年代に入ると、自宅のガレージなどでクルマを作る多くの「バックヤードビルダー」が誕生した。

バックヤードビルダーは木箱で部品をユーザーのところまで運び、ユーザー自身の手でプラモデルのようにクルマを組み立てる“キットカー”を提供。イギリスの自動車メーカーであるロータスも、もともとはバックヤードビルダーだったことはよく知られた話だ。手頃な値段でクルマを手に入れられるキットカーの興隆により、スポーツカーの楽しみは広く人々に普及した。

ライトウエイトスポーツの歴史を解説するNDの開発責任者・中山 雅氏

このように、クルマが安く手に入る土壌が形成されたこともあって、1960年代には走って楽しいライトウエイトスポーツカーが最盛期を謳歌していた。ところが、1970年代になると情勢は一変する。その大きな要因となったのが、アメリカで成立した排出ガス規正、いわゆる“マスキー法”だ。この規制は、排出ガスに含まれる一酸化炭素と炭化水素を1975年から、窒素酸化物を1976年から、ともに従来の10分の1に削減したクルマでなければ、販売を認めないという厳しいものだった。

当時は、エンジンの高回転・高出力を目指して自動車各社が開発を進めていた時代。当然ながらマスキー法の衝撃は大きく、基準をクリアするため、各自動車メーカーはエンジンの出力を下げざるを得ない状況となった。さらに、1974年には“極低速域での衝突に関して、ヘッドライトは壊れてはならない”など、衝突安全のレギュレーションが自動車保険に加わる。安全性を高めるためには、大型バンパーや衝撃吸収装置をクルマに装着する必要があった。

こうして、クルマは大きく重くなり、もともと非力であったエンジンのパワーは、さらに低くなっていった。小さく軽いため、非力なエンジンであっても楽しく走れることを特徴とするライトウエイトスポーツにとって、それは非常に苦しい時代だった。各メーカーの生産も頓挫し、この種のクルマは事実上、その姿を消すことになる。

NAから受け継がれる人馬一体のDNA

それから時代は流れて十余年後。マツダは1989年に初代「ロードスター」を発表し、もう作れないといわれていたライトウエイトスポーツを復活させた。初代ロードスターは、(1)歴史的に培われてきた伝統様式、(2)最新の技術、(3)走って楽しい正統派ライトウエイトスポーツの3つをコンセプトとして登場し、大成功を収めた。

ライトウエイトスポーツの復活を知らしめ、多くのフォロワーも生んだ初代「ロードスター」

「ロードスター」では初代NAから現行モデル(ND)まで、ライトウエイトスポーツとしてのパッケージ哲学を脈々と引き継いでいる。例えば、フロントミッドシップのフロントエンジン・後輪駆動(FR)方式や、後ろ側にキャビンが寄る特徴的なスタイリングなどがそれだ。

その中でも、歴代4モデルに共通している特徴的な点がプラットフォーム構造(ベアシャシー)だ。ここからも、マツダが目指す“人馬一体”、つまりは走る楽しさ、運転する喜びを追求する姿勢に変化がないことをうかがい知ることができる。

NDが登載するSKYACTIVシャシー。強度などは変わっているが、基本構造は全てのモデルに共通している(この画像のみマツダ提供)

クルマの中心部を縦に通るパワー・プラント・フレームは、エンジンとファイナルドライブユニットをしっかりと固定する。これによりブレを抑え、アクセルオン・オフ時の反応を向上させる。また、エンジンなどの重量物をなるべく内側に配置することで、低重心化とコンパクト化を実現。クルマの回転方向にかかる慣性を小さくすることで、ヨー慣性モーメントの低減と重量バランスの最適化を図っているのだ。

こうした一貫したマツダの姿勢について、現行「ロードスター」の開発主査を務める中山雅氏は、「量産性を考えると、決して効率的なものではないと思います。ですが、『走る歓び』を体現するため、こうしたユニークな設計をしています」と語る。

新旧「ロードスター」比較!そこから見えるマツダらしさ

マツダは先日、技術説明会を開催し、「2030年に全てのクルマに電動化技術を搭載する」と発表した。では今後、マツダが大きく方向を転換するのかといえば、そうではないと思う。

電動化技術は、あくまで環境に配慮し、時代のニーズに合わせたものだ。マツダが時代のニーズに対応しつつも、“走る歓び”を追求する姿勢を捨てないであろうと信じるのには理由がある。

「NA」(左)と「ND」(右)。サイズこそ大きな変化は見られないものの、エクステリアデザインには深化を感じさせる

その理由を語るため、今回はNAとNDの“重量”を比較してみたい。カタログデータではNAが940~960kgであるのに対し、NDは990~1020kgとなっている。一見、重量が上がっているように見えるが、これにはカラクリがある。

実は、NAにはエアコンやパワーステアリング、パワーウインドウといった、現在のクルマであれば搭載されていて当然の装備が含まれていない。これらはNAの場合、オプション装備となっていたのだ。つまり、仮にこれらをNAが装備していた場合、重量はNDと同等程度になると見込まれる。

NAのコックピット。写真は当時オプションのエアコンも搭載したタイプ
NDのコックピット。NAと比べてインテリアもスタイリッシュに変貌

またNDは、NAの時代にはなかったエアバッグや衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備を搭載していて、燃費を見るとリッターあたり4kmの向上を達成している。安全性と環境性能が改善しているにもかかわらず、NAの頃から重量に変化がないのは、まさに最新技術の賜物といえる。

重量比較を通じて分かるのは、NAが目指した3つのコンセプトが、30年という時を経てもNDに受け継がれており、正常進化を遂げていることだ。おそらく、この理念は「NE」、「NF」と系譜が連なっていっても変わることはないだろう。

このことからも、マツダは今後もマツダらしくあり続け、「ロードスター」はマツダのブランドアイコンとして、ますますその価値を高めていくに違いないと考えられるのだ。

勢ぞろいした歴代「ロードスター」。左から4代目(ND)、3代目(NC)、2代目(NB)、初代「NA」
根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。