「N高」で地方創生! 伝わってくる教育に対するカドカワの豊富な熱量

「N高」で地方創生! 伝わってくる教育に対するカドカワの豊富な熱量

2016.06.01

軽妙なトークで講演を盛り上げた石破茂 国務大臣

「小中一貫の教育を受けてきましたが、県立高校だけは行きたくありませんでした。当時、私の父親は鳥取県知事。『お前の息子、できが悪いぞ』なんて県立高校の先生が県知事を呼びつけるのには相当な勇気が必要になるからです」。「カドカワ 地方創生と教育に関する発表会&カンファレンス」の基調講演に立った石破茂 国務大臣は、軽妙なトークで会場に大爆笑を誘った。

大臣は、「防衛や外交、農林水産に力を入れてきましたが、教育だけには携わりたくなかったです」と自身で語る。それを裏付けるかのように「石破先生が教育について話しているのを初めてみました(笑)」と、同カンファレンスでパネルディスカッションに参加した平将明 衆議院議員は笑みをこぼした。

石破大臣が教育について語るという希少性はさておき、そもそも現役大臣が1社単独開催のカンファレンスで基調講演を行うこと自体が異例だ。

それには切実な理由がある。石破大臣も平議員も、地方創生 国家戦略特区を担当する。この地方創生の領分において、教育は切っても切れないテーマだからだ。

地方自治体の1/4で高等学校が消失

現在、日本には1,740の地方自治体があり、その約1/4の市町村で高等学校がない状態だという。これは、少子高齢化による教育世代の減少で、高校の統廃合が進んだ結果だ。高校がなくなってしまった自治体では、教育を求める子育て世代が離れてしまうことが容易に考えられる。人口減少が教育格差を生み、その教育格差がさらなる人口減少を促すという悪循環となっている。子育て世代=働き盛りが地方から都市部へ移住してしまっては、地方創生なんてままならない。地方創生を担当する大臣として、見過ごせなかったのだろう。

N高のPR動画。普通の高校とは異なることをアピールしている

石破大臣の基調講演に先立ち、ドワンゴによる発表会が行われた。「地方創生と教育に関する新たな取り組みについて」という内容だった。ドワンゴ、カドカワが教育でどのように地方創生に関わっていくのか……お察しのとおり、そのカギは今年4月に開校したばかりN高等学校だ(以降、N高)。

ドワンゴ取締役の大井川和彦氏は「N高というネットを活用した教育を地方自治体に提供し、教育拠点としていただきたい」と話す。具体的には地方自治体の役場の一部や廃校、空き家などにインターネット接続可能な端末を設置し、そこでN高の課外授業プログラムを使って勉強するというものだ。ドワンゴは、この計画を「Nセンター」プロジェクトと名付けた。

地域住民と生徒のコミュニケーションの場を提供

役場の一部や廃校、空き家などを活用するのがNセンターのポイントといえよう。そもそもN高は、ネットで授業を受け、ネットでレポートを提出し、ネットで高校卒業資格が得られる教育システム。家庭にパソコンがあればわざわざ外出する必要はない。だが、Nセンターという“物理的な場所”を設け、そこに生徒が通うという仕組みを採っている。大井川氏は「通学の場を提供することで、生き生きと勉強してもらいたい」と、そのねらいを語る。自治体側も「街や村を歩く若い世代の姿が、自治体の雰囲気を活性化させる」と、この方針を歓迎する。

また、地域住民の中から「チューター」(学生への助言、サポートを行う制度)を選任しNセンターに常駐させる。地域住民と学生たちのコミュニケーションを深めるねらいもある。

鹿児島県・長島町 井上貴至 副町長

現在、このNセンターに賛同し導入を予定しているのは、鹿児島県・長島町、群馬県・南牧村、佐賀県・武雄市(予定)の3自治体。

発表会に登壇した鹿児島県・長島町の井上貴至 副町長は、「10年前に町で唯一の高等学校が廃校になりました。長島町は消滅可能性自治体のひとつに数えられています」とその危機を訴える。そのうえで「卒業後に町に戻れば返還不要の『ブリ奨学金』(※)や全国の大学生による子ども向け自習塾『獅子島の子落とし塾』といった施策を行ってきました。Nセンターはそれらに続く“第三の施策”と捉えています」と期待を打ち明ける。

※ブリは長島町の特産品。回遊する出世魚であることと、Uターンする若者のイメージを重ねている

長島町のNセンターは、今年7月に役場の一部に設置されるという。これだけ素早い対応は、いかに早く若者を受け容れたいか……町の危機感の表れともいえよう。

なお、ドワンゴ広報によれば、この3市町村に限らずNセンターを開く自治体を増やす予定だ。そして、Nセンター設置自治体数に上限を設けないとした。

そもそもN高は、以前から地方自治体との連携を視野に入れていた。同校は“ネットで完結する学習”という以外に多彩な課外授業が特徴といえる。カドカワが得意とする「文芸小説創作授業」、ドワンゴが領域とする「プログラミング授業」、グループのバンタンが本業とするファッションやデザインの「クリエイティブ授業」といった具合だ。

そうした課外授業のひとつに、地方自治体と連携した「職業体験」が挙げられていた。今回の地方創生への取り組みは、その職業体験をより一層深掘りしたものといえる。事実、前出の大井川氏は「Nセンターでは職業体験、グループワーク、キャリア学習に取り組んでいく」と強調する。

島根県立隠岐島前高校。目の前が海という美しいロケーション(隠岐島前高校パンフレットより)

では、Nセンターの取り組みが本当に地方創生につながるのか……。ヒントは「高校魅力化」に取り組んでいる“先達”の高校にある。

たとえば島根県立隠岐島前(どうぜん)高校。隠岐の島という地理的に不利ともいえる立地にあって、高校魅力化に2008年から取り組み、生徒数を増やしている。「島留学」をうたい、島外からの生徒を募ったほか、「特別進学コース」「地域創造コース」を用意。特に後者は体験型・課題解消型の学習や島ならではのカリキュラム、企業などへのインターンシップに重点を置いている。石破大臣も基調講演の中で島前高校の取り組みについて絶賛していた。

おりしも2020年度に大学入試改革が行われ、“知識の豊富さ”から“知識の応用力”を問われる試験に変更される。体験学習やグループワークは、そうした知識の応用力を養うのに欠かせない学習法だ。Nセンターでそうした学習が行えるようになり評判が高まれば、生徒が自ずと集まり、地方創生の礎となれるだろう。

さて、N高といえば「ドラクエ内で遠足!?」「ヘッドマウントディスプレーをかけて入学式!?」「ウイイレで体育授業!?」など、嘲笑ともとれる書き込みがネットで散見される。だが、フタを開けてみれば、2016年4月に開校したN高に、1,482人もの生徒が入学した。ネット上の高校でこの人数が多いのか少ないのか筆者には判断できないが、一般的な高校と比べれば、堂々の“マンモス校”だ。ドワンゴも「初年度の入学者数としては多かったと思います。また、4月以降も転入・編入生徒が増えています」(広報担当者)とした。

ニコファーレで行われた入学式に参加した生徒(ドワンゴプレスリリースより)

カドカワ 代表取締役社長 川上量生氏は、「ネットに集まる人材には優秀な人が多い」「N校から一時も早く東大合格者を輩出したい」と、しばしば熱く語る。Nセンターの取り組みも、そうしたセリフと同様に、教育に対する同社の熱量が伝わってくるような内容だった。

石破大臣の講演に戻ろう。当時、鳥取大学附属の小中一貫校に進んだそうだが、大学付属の一貫校に入れるのは“学力の高い生徒”という風潮があり、大臣もそう思い込んでいたそうだ。だが、当時の担当教師いわく「勘違いしてはならない。始まったばかりの大学付属小中一貫校は、“実験の場”。いわば諸君は“実験材料”」と、辛辣な言葉を投げかけたという。「今でこそ“生徒は実験材料”などという発言をしたら大問題」と大臣は指摘したが、ひょっとしたらN高の斬新な取り組みと重なって、このエピソードを披露したのかもしれない。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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