一見地味な「Pixel 3」に、Google日本攻略の本気度が見えた

一見地味な「Pixel 3」に、Google日本攻略の本気度が見えた

2018.10.17

Googleが満を持して自社製スマホ「Pixel 3」を日本へ投入

見た目も機能も目立たない? どうやって日本で売る?

FeliCa搭載だけじゃない、日本市場攻略へ本気のスペック

Googleが今月、最新スマートフォン「Pixel 3」シリーズを国内向けに発表した。Twitterでの広告や六本木ヒルズへのオブジェの設置などと話題作りを進めてきた中で、発表前日の深夜に米国発表したばかりの端末を日本に持ち込むというタイムリーなイベントとなった。

Googleが「Pixel 3」を国内発表

だが、発表を受けた第一印象として「Pixel 3のスペックには目立ったところがない」との反応が多かった。日本のスマホ市場に再上陸を果たしたGoogleの狙いはどこにあるのだろうか。

「AIがあれば2眼は不要」の説得力

Pixel 3は最新OS「Android 9 Pie」を搭載するとはいえ、本体に特別なスペックを備えているわけではない。プロセッサーの「Snapdragon 845」は多くのメーカーが採用しているし、搭載メモリーも4GBと標準的だ。外装は生活空間に溶け込みやすいデザインだが、iPhone XSのように際立った存在感はない。

本体前面のカメラこそ流行の2眼を搭載するものの、背面のメインカメラは1眼にとどまった。最も安いモデルでも9万5000円(税込)と高価格帯のハイエンドスマホとして、デュアルカメラを採用しなかった点にも不満の声は多い。

Pixel 3の背面カメラは1眼。デュアルカメラは採用しなかった

だが、Googleが見ている世界は他者とは異なっていた。同社が得意とする機械学習を活用し、物理的なカメラはたとえ1つであっても、デュアルカメラに相当する能力を計算で生み出すという。例えば、ポートレート撮影機能では、手前の人物を機械学習で識別することで、背景の色を変えたりぼかすことが可能だ。

通常はデュアルカメラが必要な機能を1つのカメラで実現

Pixelシリーズが搭載してきた画像処理専用のプロセッサー「Pixel Visual Core」も強化した。Pixel 3はこれを利用してシャッターを押してから写真を保存するまでのわずかな時間に、合成やノイズ除去といった大量の処理を施している。

このようにスマホのカメラ競争はセンサーやレンズにとどまらず、画像処理エンジンやソフトウェアの勝負になっている。専用プロセッサーやGoogleのAI技術を駆使するPixel 3は、その先頭に位置するというわけだ。

だが、これまでGoogleのスマホは米国を始めとする英語圏の市場に軸足を置いていた。電話の着信にAIが応対する自動応答機能「Call Screen」も、まずは米国からの提供となっている。

では、果たして日本で売る気があるのか。その本気度をはかる上でポイントとなるのが「FeliCa」の搭載と大手キャリアによる採用だ。

「日本専用モデル」を開発、大手キャリアが全国展開

FeliCaの搭載は、日本版Pixel 3のもっとも大きな特徴と言えるだろう。Google PayはSuicaなど4種類の電子マネーに対応しており、10月9日には「QUICPay」にも対応したことが発表された。おサイフケータイアプリを利用することで「iD」や各種ポイントカードも利用できる。

「おサイフケータイ」アプリを標準で搭載する

もちろん、おサイフケータイ対応は他のAndroidスマホでも実現しており、それ自体は目新しいものではない。注目すべきは、GoogleがFeliCaの搭載にあたって、海外向けとは異なる日本専用モデルを用意した点にある。発売にこぎ着けるまで実に3年を要したという。

さらにドコモとソフトバンクという2つの大手キャリアが採用を決めた点も大きい。日本ではSIMフリーのオープン市場も拡大しているとはいえ、そのシェアは全体の1〜2割にとどまる。しかも売れ筋は3万円前後の端末が占めている。Pixel 3はGoogleストアでも直販するが、手に触れたこともない10万円の端末をネットで注文する人は限られる。

ドコモとソフトバンクが採用を決めた

だが大手キャリアには全国の販売網がある。店舗には実機やモックが展示され、店員の説明を受けられる。価格面でもドコモでは月々サポートがつき、実質価格が下がるため買いやすい。Pixel 3のようなハイエンド端末を本格展開するには、大手キャリアの力は必須といえる。

注目を集めるPixel 3であるが、今後の課題は、Googleのブランドがどこまで受け入れられるかだろう。検索エンジンやYouTube、ChromeブラウザーなどGoogleの製品やサービスは広く普及しているものの、Googleが日本市場にスマホを投入するのは、2015年のNexusシリーズ以来であり、時間が空いてしまった。また、名前もPixelに変わったことで、ユーザーへのアプローチは一から出直す形となる。

ではその中でPixel 3の最大のメリットはなにか。それはGoogleが見ている世界を最前列で体験できる点にある。しかしそれらの機能の一部は、やがて他メーカーのAndroid端末にも展開されていくこととなる。そうなる前にPixelブランドをいかに早く国内で立ち上げられるかがカギになりそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。