自転車、音楽、アウトドア……趣味で集う進化系シェアハウスの可能性

自転車、音楽、アウトドア……趣味で集う進化系シェアハウスの可能性

2016.06.02

ワンルームマンションの独立性を確保しつつ、シェアハウスのように入居者同士の交流を楽しめる新しい住まいの形「ソーシャルアパートメント」。設備の充実した共用スペースが最大の売り物で、物件によっては自転車、音楽、アウトドアなどの具体的なコンセプト設定がある。入居者によるコミュニティ形成が活発なソーシャルアパートは、ビジネスの場として企業からも注目を集めているようだ。

共用スペースにこだわった共同住宅

Facebookやmixiの広まりを受けて、SNSを住空間に展開しようという着想のもとに生まれたのがソーシャルアパートだ。発案者の山崎剛氏が代表取締役社長を務めるグローバルエージェンツは、2009年2月に本格的な事業に乗り出し、この数年で首都圏を中心に35棟、約2,000戸を展開するまでに業容を拡大している。「自転車と暮らす」がコンセプトの新規物件「ネイバーズ二子玉川」は、2016年5月1日のオープン時点で入居率90%超の盛況ぶりだ。

ネイバーズ二子玉川は自転車をモチーフとするソーシャルアパートメント。エントランスに飾ってある工具類(写真左)は入居者が自由に使える。この工具は世田谷にあるカスタム自転車ショップとのコラボレーションで揃えたもの。共用スペースには自転車をテーマとするチョークアートも(写真右)

ソーシャルアパートの特徴は、入居者が集まる共用スペースの整備にコストを掛けているところだ。ネイバーズ二子玉川のメディア向け内覧会に登場した山崎氏によると、同社が運営するのはリノベーション物件がほとんど。外観は照明にこだわるくらいであまり手を加えず、共用ラウンジを中心とする室内の改装に予算を投入するのがグローバルエージェンツの方針だという。

グローバルエージェンツの山崎社長

普通のアパート・マンションであれば、リノベーションを行う際に多少のデッドスペースが生じるらしいが、グローバルエージェンツでは居住空間として使いにくい場所を共用スペースに組み込むことで、建物を「フルに使いきる」(山崎氏)ことを心掛けているという。広々とした共用スペースを用意するため、総面積が同じくらいのアパート・マンションに比べると部屋の数は少なくなる。そのため、1部屋あたりの家賃は相場よりも20%程度高く設定しているという。ちなみに、ネイバーズ二子玉川の家賃は5万7,000円から7万8,000円となっている。最多価格帯は6万8,000円だ。

入居者はSNSの使用にも積極的

SNSの思想を取り入れた共同住宅らしく、ソーシャルアパートでは入居者同士の交流が活発なようだ。平日でも夜には共用スペースに5~10人が集まっているのが普通で、週末には入居者の友人も交えたパーティーも盛んに開催されているという。

「(ソーシャルアパートメントに)1年住めばFacebookの友達が間違いなく100人増える」という山崎氏の言葉からも推測できるが、コミュニティ形成に前向きな入居者は、SNSを日常的に活用している様子だ。ユニークな共用スペース、入居者の友人関係を含めた人的ネットワークの広がり、頻繁なイベントなど、ソーシャルアパートには投稿する「ネタ」が豊富にあるため、SNSとの親和性も高いと山崎氏は分析する。SNSでの情報発信に積極的な入居者は、ソーシャルアパートにビジネスの場としての可能性を探る企業を惹きつけている。

住空間をプロモーションに活用する企業

山崎氏はソーシャルアパートを「ビジネスのプラットフォーム」とも表現する。他者とコミュニケーションをとるのに前向きで、SNSの使用頻度も高い住人が集まる独特な住空間を、ビジネスの場として企業に活用してもらうことにも積極的だ。

企業によるソーシャルアパートの活用例として分かりやすいのはプロモーションだ。企業は製品を無償もしくは格安で納入し、共用スペースで実際に使ってもらう。例えば食器であれば、その製品を気に入った住人が、ソーシャルアパートを出て家庭を持つ際などにまとめて購入することも考えられる。製品の情報がSNS経由で波及する可能性も企業にとっては魅力だ。

企業とのコラボレーションは多岐にわたる

実際の生活シーンを対象に製品のプロモーションを行いたい企業にしてみれば、一般的なマンション・アパートの各部屋よりも、ソーシャルアパートの共用スペースに製品を納入したほうが安く済む。共用スペースを備えるのはシェアハウスも同様だが、ソーシャルアパートは一般的なシェアハウスよりも部屋数が多いという特徴があるため、企業はより多くの住人にプロモーションを行える。

企業とのコラボはグローバルエージェンツにとっても商機

グローバルエージェンツは企業にプロモーションの場を提供することで、食器や家電などを格安もしくは無償で取り揃えることができる。有名ブランドの食器や、最新の家電などで共用スペースの設備が充実すれば、入居者に対するアピールにもなるというわけだ。

ネイバーズ二子玉川の共用キッチン。コラボしているル・クルーゼの食器やパナソニックの電子レンジなどが使用可能だ

同社の取り組みとして興味深いのは、ソーシャルアパートを使ってマーケティングを実施したい企業をサポートするというビジネスモデルを構築していることだ。共用スペースに製品を納入し、その使用感や改善点などを知りたい企業に対して、グローバルエージェンツは場所を提供するほか、製品のアンケート調査も実施可能な体制を整えている。こういった案件では1~2件の実績があり、企業からは好評だったという。

物件増加でプラットフォームとしての価値が向上

グローバルエージェンツの目標は、2020年までに直営5,000室を達成すること。地方や海外にも積極的に展開する方針を掲げる。この目標を達成できれば、ソーシャルアパートのビジネスプラットフォームとしての価値は、量的にも面的にも増大する。海外の物件で製品のプロモーションやマーケティングが可能となれば、同社とコラボレーションをしたいという企業は更に増え、企業とのコラボがグローバルエージェンツの新たなビジネスの柱に育つ可能性も出てくるだろう。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。