VRの「ミライ」を垣間見せるOculus Go/Quest

VRの「ミライ」を垣間見せるOculus Go/Quest

2018.10.16

一口にVR HMDと言っても主に2種類存在する

中でも、PC不要で簡単に使えるオールインワン型が注目の的

オールインワン型人気を牽引するOculus Go/Questについて解説

Facebook傘下のVR HMDメーカーのOculusが自社イベント「Oculus Connect 5」で、同社の最新型VR HMDのOculus Questを発表した。

Oculusは昨年発表したOculus Goも好調で、従来のPCユーザー向けのVR HMD「Oculus Rift」では取り込めていなかったユーザー層の取り込みに成功している。それはなぜなのだろうか?

2つの種類があるVR HMD

VRを利用するために必要なハードウェアと言えば、言うまでもなくVR HMD(Virtual Reality Head Mount Display)だろう。VR HMDは、内部に2枚ないしは1枚のディスプレイパネルが入っており、被った人の目の前に来るレンズに投映することで、まるで人間に自分の周囲に仮想現実(VR)があるような視覚的錯覚を与え、高い没入感でコンテンツを楽しむことができる機器のことだ。

このVR HMD、外から見るとどれも同じゴツいメガネに見えるかもしれないが、実際には仕組みや構造などから2つの種類に分けることができる。1つは単体型で、もう1つがオールインワン型となる。

前者の代表例はHTCから販売されているVIVE(ヴァイブ)シリーズ、Oculus(オキュラス)から販売されているOculus Riftなどがこれに該当する。これらの単体型HMDは、それ自体はディスプレイになっており、そこにコンテンツを表示させるには、PCなどの外部コンピュータが必要になる。

HTC VIVE

そしてもう1つが、Oculusが先日発表したOculus Quest、そして現在も販売しているOculus Goのような製品。さらにはスマートフォンメーカーが販売していた、内部にスマートフォンをセットしてそのディスプレイを利用してコンテンツを表示する、Samsung ElectronicsのGearVRのような製品もこれに該当する。

こちらの特徴はVIVEシリーズやOculus Riftシリーズのような、外部にPCのようなコンピュータを必要としないこと。VRを楽しむのに必要なデバイスが、すべてVR HMDに内蔵されている形になる(だからオールインワンなのだ)。

単体型とオールインワン型、最大の違いは

シンプルにユーザーの視点でこの2つの方式の違いは何かと言えば、それはケーブルの有無だ。HTC VIVEやOculus Riftなどの単体型VR HMDでは、それ単体ではコンテンツを描画したりする機能を持っていないので、必ずPCなどのコンテンツを再生する機器を接続する必要がある。

また、こうした単体型VR HMDでは、ユーザーが装着しているHMDの位置を、外部におかれている赤外線のモーションセンサーで認識する必要がある。このため、センサーを設置する場所が必要になるほか、ユーザーが動ける位置はそのセンサーが感知できる範囲内という制限がある。

もう1つの制約は、利用するPCの性能が高い必要がある点だ。例えば、Oculus Riftの場合は、奨励環境ではPCにNVIDIAのGeForce GTX 1060ないしはAMD Radeon RX 480以上という、GPU(グラフィックスの描画を行なう半導体のこと)を搭載している必要がある。一般的なビジネス向けのPCでは、IntelのCPUなどに内蔵しているGPUしか内蔵していないことが多いため、そのままではVR HMD用のPCとしては利用することが難しい。そこで、PCもゲーミングPCと呼ばれる性能が高いGPUを搭載している必要があるのだ。

なぜそうした高性能なGPUが必要かと言うと、単体型VR HMDに内蔵されているディスプレイの解像度が高いからだ。例えば、HTC VIVEシリーズの最新製品となるHTC VIVE Proに内蔵されているディスプレイの解像度は2,880×1,600ドットになっており、リフレッシュレートと呼ばれる画面をリフレッシュするタイミングは90Hz(1秒間に90回)になっている。多大な数の画素数を1秒間に90回もリフレッシュするので、GPUにかかる演算量は膨大になってしまうため、高速なGPUが必要なのだ。

性能が足りないとどうなるかというと、リフレッシュする回数を減らしたり、描画しなければいけないところを端折ったりして対応するのだが、そうするとユーザーの目にはその端折ったところが不自然に感じたりして、いわゆる「VR酔い」と呼ばれる乗り物酔いと同じような症状が起きる可能性がある。それを避けるためにも、高性能なGPUを利用したPCは必須なのだ。

低価格なオールインワン型・Oculus Goが大人気に

そうした単体型HMDに対するオールインワン型のメリットは、PCや外部モーションセンサーといった外部機器と接続する必要がなく、そうした機能もすべてVR HMDの中に入っていることだ。多くのオールインワン型VR HMDはバッテリーも内蔵しており、すべてワイヤレスで利用することができる。

これまで、オールインワン型の多くは、スマートフォンを内部にセットしてそれをディスプレイや描画装置として使うという形になっていた。Samsung ElectronicsのGearVRがその代表例で、低コストにVR HMDを実現する方法として、コストパフォーマンスを重視する一般消費者に受け入れられてきた。

一歩進めて、最初からスマートフォン相当の機能を内蔵することはできないか?とソリューションを開発してきたのが、スマートフォン向けに半導体を提供している半導体メーカーのQualcommだ。Qualcommは数年前からそうしたソリューションを同社の顧客に対して提案してきた。それが実際の製品として発売されたのが、Oculus Goだ。

Oculus Go

Oculus Goの特徴はオールインワン型のボディに低価格を実現できるLCDパネル、スマートフォンにも使われているQualcommのSnapdragon 821という半導体やバッテリーが内蔵されており、OSもAndroid OSベースとなっている。

つまり、スマートフォンの機能がそのままVR HMDになった、という点にある。かつ価格はストレージが32GBのモデルが2万3,800円(税別)、64GBのモデルが2万9,800円(同)という、従来のVR HMDに比べて圧倒的な低価格が実現されいる。

例えば、Oculus Riftを利用することを考えると、HMDだけで5万円(同)が必要で、さらにゲーミングPCのようなハイエンドの高価なPCが必要になる(多くの場合は10万円台後半~20万円台)。それに対して、上位モデルでも3万円を切った価格を実現したため、カジュアルユーザーやスマートフォンユーザーなどに大受けしてヒット商品になった。

Oculus Goのセンサーを高度化した新製品、来年発売

そして、そのOculus Goの上位版としてOculusが自社イベント「Oculus Connect 5」で発表したのが、Oculus Questだ。

Oculus Quest

Oculus Questは単体型VR HMDに採用されているような高解像度なディスプレイを採用しており、最大の違いはHMDの動きを検出する機能が、Oculus Goでの3DoFから、Oculus Questではより自由度の高い6DoFへと強化されていることだ。

非常に単純化して言うと、Oculus Goの3DoFではせいぜい頭の回転の程度の動きしか検出できないのに対して、Oculus Questの6DoFでは回転に加えて、傾きや前後左右の動きを検知することができる。これにより例えばVRのゲームをプレイするときに、動きの自由度が圧倒的に向上することになる。

Oculus Questではコンテンツを再生するための半導体も強化されている。Snapdragon 835というSnapdragon 821の1世代後の製品で、処理能力や描画性能が大きく向上している。ただし、ゲーミングPCに内蔵されているようなGPUに比べると性能は劣るため、コンテンツの再現力などではまだ差があるが、それはケーブルがないことの自由度とのトレードオフだと言えるだろう。

コンテンツの再現力などの点では単体型に譲るのは事実だが、ただHMDを被るだけで自由に仮想空間を動き回ることができるオールインワン型は、使い勝手の点でも、わかりやすさという意味でも、一般消費者には魅力的な商品と映る。

今後はOculus GoやOculus Questのようなオールインワン型VR HMDが普及していくことはほぼ間違いのない状況だと考えられている。今後は他社もそれを追いかけるような商品を投入しだして、本格的なVR時代がやってくることになるのではないだろうか。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu