「Apple vs Google」スマホ戦争を制すのは? 水面下で「AI」中心の覇権争い

「Apple vs Google」スマホ戦争を制すのは? 水面下で「AI」中心の覇権争い

2018.10.15

2018年モデルのスマホが出揃う今、各社動向をまとめる

注目すべきはハイエンド製品の差別化にあり

カメラはGoogle、プラットフォームではAppleが有利か

「iPhone X」ほどの衝撃はなくとも裏では大きな変革が見える

2018年モデルの新型スマートフォンが出揃いつつある。

ここで一度、各社の発表内容をまとめながら、スマートフォン競争の様子を俯瞰して見てみよう。

「5点」に絞られたスマホ競争

Appleは9月12日にiPhone XS・iPhone XRを発表し、5.8インチ・6.5インチの有機ELディスプレイを搭載したiPhone XSシリーズを9月21日に発売した。廉価版となるiPhone XRは10月19日から予約を開始し、10月26日に発売される予定となっている。

iPhone Xs、iPhone Xs Max

Samsungは8月に米国ニューヨークで、フラッグシップとなる6.4インチ有機ELディスプレイを搭載したGalaxy Note9を発表。日本でも10月下旬の発売が決まっている。

Googleは10月9日に米国ニューヨークで、第3世代となる自社ブランドのスマートフォンPixel 3、Pixel 3 XLを発表。こちらも日本で11月に発売される予定だ。10月30日にはニューヨークでOnePlusが新製品を発表する予定となっている。

ここまでの各社の発表から、新モデルのスマートフォン競争でのポイントは、以下の5つに集約されつつある。

1.画面サイズの6.5インチ程度までの拡大
2.有機ELディスプレイを採用した高画質を実現
3.サウンド再生機能
4.カメラ撮影機能
5.スマートウォッチ、ペンなどのアクセサリ

各社の動向を説明する上で、もっとも注目すべきはAppleだ。以下、同社の発表を元に説明を進めていこう。

eSIM対応で欠点をつぶしたApple

まず触れておくべき点は、新たに「eSIM」(中国では2枚のSIM)を活用した2つの回線の同時待ち受け(DSDS)のサポートを実現したこと。また上位モデルとなるiPhone XSでは4×4 MIMOのサポートによる1GbpsクラスのLTE通信を実現した。

これはiPhoneとしては初めての対応となるが、Androidの世界ではすでに実現されてきたことであり、昨年のワイヤレス充電や防水機能などと同様に、通信面での欠点をつぶした対応と見ていいだろう。

機械学習の処理能力を日々のスマホ利用に生かす

次に、AppleとGoogleが同調して仕掛けている「ハイエンドスマートフォンの差別化」要因が顕在化してきた点に注目してみる。

Appleは9月12日、ハイエンドモデルのiPhone XSからエントリーモデルのiPhone XRにまで搭載した「A12 Bionic」に備わっているニューラルエンジンにフォーカスしたプレゼンテーションを展開した。

そこでは、Appleが推進する拡張現実(AR)アプリのデモや、ただカメラで映しているだけで、バスケットボールのシュート練習の分析を行うことができるアプリを紹介。これらのデモは、今までできなかったことを実現する未来の可能性を見せるものであった。

リアルタイムのシュート分析機能が可能に

新しいカメラ機能についてもAppleは、A12 Bionicの性能を根拠とした進化をアピール。上位モデルでカメラが2つ搭載されているiPhone XS以上に、iPhone XRでその真価が発揮されている点も興味深い。

iPhone XRにはiPhone XSと同じ広角レンズを備える1200万画素の新しいセンサーが搭載されたが、望遠レンズのカメラは用意されなかった。

しかしAppleはこの1つのカメラと画像処理プロセッサ、ニューラルエンジンによる機械学習処理を組み合わせることで、2つのカメラと同じようにポートレートモードの写真を撮影することができるようにしている。

ちなみに、人の被写体を認識して背景と切り分けることから人のポートレート撮影に特化される点、そして、望遠レンズではないために近づいて撮影しなければならない点はiPhone XSとの差別要因となる。

その他にもiOS 12では、Siriがユーザーの行動からパターンを見出し、今必要なアプリの機能を提案したり、これに声の命令を割り当てて呼び出せるようにするSiri Shortcutsを用意したが、こちらも機械学習を生かして日々のiPhone利用を便利にする取り組みと位置づけられる。

Googleも、AIでPixel 3を差別化

GoogleのPixel 3の発表もまた、AIによるスマートフォンの差別化を前面に押し出すモノだった点で、Appleとの共通点を見出すことができる。

Pixel 3にも、1220万画素のデュアルピクセルセンサーを備えた1つのカメラが搭載されているが、同時にIntelと共同開発した「Visual Core」が搭載された。これは昨年のPixel 2から用意されていたチップで、いわば2つ目のプロセッサが搭載されているようなものだ。昨年のVisual Coreは8コアで、画像処理を行うことに特化されてきた。

Pixel 3 XL

Pixel 3でGoogleは「2つ目のカメラを搭載する必要はない」との結論に達し、超解像ズームやナイトショットなどのスマートフォンのカメラが苦手とされていたシチュエーションでの撮影品質の向上に加え、やはり機械学習処理によるポートレートモードの搭載、またグループショットで全員が笑顔で揃っているカットをおすすめするTop Shotなどの撮影機能を用意した。

また、Googleレンズは日本語にも対応し、映しているものの文字を自分の言語に翻訳して見せてくれる機能を利用できるようにしている。ほかにも、カメラ機能に関する機械学習処理でも非常に多くの新機能が用意されているが、Pixelの魅力はそれだけではない。

カメラを長押しして「Googleレンズ」を起動させることで、文字を認識し、日本語に翻訳することができる。URLを読み取ることも可能だ

電話機能における進化も注目だ。5月のGoogle I/Oで披露した合成音声を用いて電話でレストランなどの予約を取ることができるGoogle Duplexを11月からニューヨークやサンフランシスコなどの米国の都市で利用可能にするという。

さらに、米国で問題になっているロボットコールと言われる迷惑電話に対して自動的に応答し、端末内で音声認識をして文字でユーザーに対応を選択してもらうCall Screenも備えた。

プラットホーム化ではAppleがリード

スマホ市場を牽引するAppleとGoogleは、スマートフォンのハードウェア、OSの双方をデザインする点で共通している。彼らが、スマートフォンにおいてAIを活用して行くトレンドを作り出そうとしている点でも共通項を見いだせる。

中でも、カメラや画像処理に関するアルゴリズムの実装では、Googleが上回っている。画像認識の精度の高さや、写真・ビデオの補正、人物の認識などは、Googleの方が正確であると評価することができるし、Pixelにこれらのノウハウをしっかりと取り入れてきた。

しかし、AppleはA11 Bionicでニューラルエンジンをプロセッサに組み込み、A12 Bionicではこれを大幅に進化させている。AppleはiPhoneのカメラ機能の向上にニューラルエンジンを用いているが、CoreMLを用いて開発者もその処理性能を生かすことができ、Appleが9月12日に「新しい世代のアプリ」として紹介したツールやゲームの新規性を作り出している。

もちろん、シリコンバレーでも、人工知能や機械学習技術者の不足が叫ばれる現状を考えれば、Appleの機械学習を生かしたアプリの奨励はアグレッシブに映る。しかし、アイディア、デザイン、ユーザビリティなどで差別化するアプリ開発競争に、アルゴリズムが加わっていくことを、Appleは明確に示している。

各社の新製品群は、一見2017年の「iPhone X」から代わり映えしないように見えるが、背後では「AI」を中心として大きな変革が進行しているのだ。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

関連記事
スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

関連記事