アパレル業界に差す光から目を背けるな―― 落合陽一が「服」を演出する意味

アパレル業界に差す光から目を背けるな―― 落合陽一が「服」を演出する意味

2018.10.12

落合陽一とデザイナーの鈴木えみがコラボ

「現代の魔法使い」はなぜファッションイベントに?

落合氏「Amazonが起こしたディスラプションは最高」の真意

「ZOZOの仕組みは凄く面白いし、Amazon Fashionが起こしたディスラプション(破壊)は最高だと思う」

最近のアパレル市場について落合陽一氏はそう語った。同氏はAmazon Fashionの仕掛けるアパレルイベント”AT TOKYO”にて、モデル・鈴木えみ氏がデザイナーを務めるブランド「Lautashi(ラウタシー)」のインスタレーションの演出を担当する。

※インスタレーションとは、作品の展示方法の1つ。作品とその展示する空間との一体感を表せるような環境に展示すること、および作品そのものを示す

メディアアーティスト 落合陽一氏(左)とデザイナー 鈴木えみ氏(右)

メディアアーティストとして有名な落合氏。あまり、ファッションの業界で仕事をするイメージはなかったが、今回、鈴木えみ氏とタッグを組んだのはなぜか。掘り下げてみると、同氏の抱くアパレル業界への期待が見えてきた。

東京の「今」を演出する”At Tokyo”

At Tokyo”は、Amazon Fashionが10月15日~20日に開催する「Amazon Fashion Week TOKYO(AFWT)」において、日本のファッションやデザインのコミュニティへの継続的な支援を目的として実施するプログラム。今年で4回目の開催となり、Lautashiは、同プログラムに参加するブランドとして、10月18日にインスタレーションを実施する予定となっている。 

そもそも両氏が会ったキッカケは、「たまたま美容室が一緒だった」からだそう。美容師の紹介でランチをすることとなり、意気投合。鈴木氏のアプローチで、落合氏がインスタレーションを演出することになった。

「落合さんは、私の抽象的な要望を掘り下げてしっかりと言語化してくれるから助かります。まるでインタビューのように、色々と聞いてくるんです。『一番印象に残っている匂いは? 』とか(笑)。今まで会ったことのないタイプの方だったこともあり、お話してすぐ『一緒に仕事をしてみたい』と思いました」(鈴木氏)

「えみさんは『抽象的な要望』と言いますが、感性が似ているからか、本人が伝えたいことがよくわかるんです。インスタレーションは、えみさんから要望のあった『光』にフォーカスした演出を行います。”日本らしいものは出てこないけど、なぜか日本を感じてしまう”演出に注目して欲しいですね」(落合氏)

なぜ「現代の魔法使い」がファッションイベントに?

落合氏がファッションイベントに関わるのは今回が初めて。鈴木氏からの誘いがあったとはいえ、なぜ今回の役割を引き受けることにしたのか。

「もともと洋服は好きなんです。それは趣味としても、研究対象としても。AI(人工知能)を用いて洋服をつくってみたり、テクスチャ(物体の表面における質感や光の反射など)の研究をしたりしていましたから」(落合氏)

たしかに、今年の5月に開催された「Advertising week Asia」の基調講演で同氏は、「ファッションショーなどから洋服の画像データを集め、AI技術を用いて、新たにイメージを生成する」という研究について紹介していた。

そう考えると、研究者としてファッションへの知見を多く持ち、かつ表現者としても活躍する同氏が今回のイベントで演出を担当する、というのはあまり不思議ではないように思う。

「Advitising week Asia  2018」での基調講演では、「機械学習でヨウジヤマモトの服を読み込ませ、”それっぽい”デザインをつくることに成功した」という話が語られていた(画像は「Advitising week Asia  2018」、落合氏の基調講演時のもの)
ちなみに「Advitising week 2018」で落合氏は、愛用の「ヨウジヤマモト」の服を着用していた

テクノロジーの進化で、”人と洋服の関わり方”が変化した

テクノロジーの進化によって、アパレル業界はここ数年で急速な変革を遂げている。Amazonや楽天、メルカリなどを代表するサービスによって国内EC市場は急成長。実店舗型のアパレルショップは勢いを失った。さらには、”サイズ問題”を解消するための「ZOZOスーツ」やスマホ一台での採寸を実現するサービスなども続々登場し、アパレル市場におけるEC比率の成長を助長している。

ファッションテック企業が次々と登場したことによって、洋服の売り方や作り方が変わったのと同時に、”人と洋服の関わり方”も変わってきていると落合氏は分析する。

「これまでのアパレル業界では、その多くが”ファッションモデルが着て、それをメディアが拡散して、消費者が購入する”というモデルで動いていました。しかし、ECの普及で店舗を構えなくても洋服が売れるようになったことで、企業は浮いたコストを、コンタクトポイント(顧客接点)増加させるために使えるようになりました」(落合氏)

今回のAT TOKYOも”ファッションとテクノロジーの融合によって誕生した新たなコンタクトポイント”の1つだ。売り手にとっては、「店舗を構えずに洋服を売れるようになった」ことで、浮いたコストを使ってイベントを開催できるし、顧客にとっては、「スマホで情報を簡単に見つけられる」から、気軽に参加できる。

「人が新しい洋服と出会えるファッションショーやインスタレーションといったイベントは、これまで『コストが多くかかるから』と実施することを躊躇されがちでした。それが、テクノロジーの進化によって、比較的低コストで開催できるようになった。そういったイベントが『スーパーブランドの特権』ではなくなりつつある中で、”洋服との出会い方”が変わってきているように思います」(落合氏)

「ディスラプションって、悪いことだけじゃないんです」

ZOZOの仕組みは凄く面白いし、Amazon Fashionが起こした業界のディスラプションは最高だと思う――。

落合氏の発言の裏には、これらのファッションテック企業が業界に与えた影響は、消費者やデザイナーにとってプラスであった、という意味が込められている。

「ディスラプションって、悪いことだけじゃないんです。アパレル業界の変革に伴い、新たな可能性がたくさん生まれています。今回のように、新たな洋服と出会える場を開くことができるのは、デザイナーや一般の方にとっては好ましいことでしょう。僕の演出した空間で、鈴木えみさんがデザインした洋服の魅力を直接感じてもらいたいですね」(落合氏)

終始カメラを手にしていた落合氏。インスタレーションでは自身が撮った画像・映像を使用するそうだ

インスタレーションのレポートはコチラ

「落合陽一×鈴木えみ」が魅せる、現代の東京と服(2018.10.12)

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。