まずは過疎地とタクシーから? トヨタ×ソフトバンクで真っ先に変わるもの

まずは過疎地とタクシーから? トヨタ×ソフトバンクで真っ先に変わるもの

2018.10.12

思ったよりも早かったトヨタとソフトバンクの提携

トヨタの「e-Palette」で広がるモビリティサービス

「JapanTaxi」との共存は可能か

日本の株式市場で時価総額1位と2位の企業が手を結んだ。トヨタ自動車とソフトバンクが、モビリティサービスの新会社を設立したのだ。なぜ、両社がタッグを組むことになったのか。どんなコラボレーションをしていくのか。豊田章男氏と孫正義氏、両トップの発言から個人的に期待したいモビリティシーンを考えた。

トヨタ自動車の豊田章男社長(右)とソフトバンクの孫正義会長兼社長

協業を持ちかけたのはトヨタ

トヨタといえば、日本はもちろん、世界の自動車業界という観点でもトップクラスに位置する大企業。一方のソフトバンクグループは、自動運転の実証実験に自転車シェアリング、駐車場シェアリングとモビリティ分野に積極的に関わっており、先駆者のUber Technologies(ウーバー)をはじめとするライドシェア企業への投資も盛んに行っている。

なので、我が国の次世代自動車戦略を決めるには、トヨタとソフトバンクによるトップ会談が望ましいのではないかと、自動車メディア関係者との間で雑談をしていたことがあったのだが、予想よりはるかに早く、両社の共同記者会見を目にすることになったので、正直いって驚いた。

この2人が日本の次世代自動車戦略を決めるのかもしれない

会見内容は両社の出資による新会社の設立だった。新会社の名前は「MONET Technologies」(モネ・テクノロジーズ)。出資比率はソフトバンクが50.25%、トヨタは49.75%。微妙に差があるのは、社長にソフトバンクの宮川潤一副社長が就任するからとのことだった。

新会社設立についてはトヨタが話を持ちかけたという。実は両社、20年ほど前に一度、接触していたとのこと。豊田社長が課長だった頃で、すでにソフトバンクを率いていた孫社長から、米国のインターネット販売システムを導入しないかと問い合わせがあったそうだ。ところが、そのとき豊田社長は申し出を断った。

こうした経緯を考えれば、今回の提携を持ちかけたのがトヨタ側だったのは当然だろう。しかしそれ以外にも、トヨタがソフトバンクと組む理由はあった。

自動車メーカーの枠を飛び出すトヨタ

豊田社長は最近、「自動車業界は100年に一度の大変革の時代」という言葉を使って、危機感をたびたび口にしている。さらにトヨタは、カーメーカーからモビリティサービス・プラットフォーマーへ変革していくとも宣言している。

2018年1月に米国・ラスベガスで行われたCES(家電見本市)では、無人運転シャトルの「e-Palette」(イーパレット)を発表。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでこれを走行させ、その後に事業展開するとの計画を打ち出した。

2018年のCESで「e-Palette」を発表し、モビリティーサービス・プラットフォーマーへの変革を打ち出したトヨタ

さらにトヨタは、米国のカーシェアリング企業「Getaround」(ゲッタラウンド)とスマートフォンを使ったキーレスカーシェアの展開を開始したり、シンガポールに本拠を置くアジア最大のライドシェア企業「Grab」(グラブ)と手を結んだりしている。そして今年は、以前から資本提携を行なっていたUberに5億ドルもの巨額出資を行い、関係を強化していた。

「ドアを開けたら孫さんがいた」

そのUberの筆頭株主はソフトバンクだ。それだけではない。同じライドシェア企業の「Grab」、中国の「DiDi」(ディディ/滴滴出行)、インドの「Ola」(オラ)の筆頭株主は、全てソフトバンクなのだ。世界のライドシェアは、この4社で90%のシェアを握っているといわれる。気がつけば、ソフトバンクはライドシェア市場の主役になっていたのだ。

ライドシェアの規模は拡大を続けている

「ドアを開けたら必ず孫さんがいた」と豊田社長は話す。トヨタがライドシェア市場に参入する前に、ソフトバンクは主要プレーヤーを押さえてしまっていたのだ。孫社長の先見性がいかんなく発揮された形である。

なぜ、ソフトバンクはライドシェアを重視しているのか。それは、膨大な移動情報が手に入るからだ。日本にライドシェアはまだ根付いていないが、ソフトバンクは携帯電話キャリアだし、グループのYahoo! JAPANからもさまざまな情報が手に入る。

以前、駐車場シェアの「BLUU Smart Parking」に関する記事でも触れたことだが、ソフトバンクは、大量の移動情報を手に入れることで需要予測の精度が高まり、車両や駐車場などを的確に供給していくことができるとしている。今回の会見で孫社長は、15分単位、100m四方の移動情報を予測できると語っていた。

モビリティサービス×AIで需要予測の精度は向上しそうだ

つまり、ソフトバンクは単なる携帯電話キャリアではない。グーグル顔負けの膨大なユーザーデータを持ち、新しいサービスをいち早く立ち上げることができるフットワークの良さもある。今までの通信会社とは違うという説明には納得できた。

ソフトバンクはホンダと組む流れだった?

もうひとつ注目したいのは、ソフトバンクが2018年5月、米ゼネラルモーターズ(GM)の自動運転開発子会社であるGMクルーズホールディングスに出資していることだ。GMクルーズといえば、本田技研工業(ホンダ)が今回の会見の前日に、自動運転ライドシェア車両を共同で開発すべく出資したと発表した相手だった。

さらにホンダは、昨年のCESで、ソフトバンクグループに属する「cocoro SB」の「感情エンジン」をベースとし、「HANA」(Honda Automated Network Assistant)と呼ばれるAI技術を搭載したコンセプトカーを発表してもいる。

ソフトバンクにAI技術はあるが、クルマ作りのノウハウはない。トヨタとの会見で「日本連合」という言葉を口にした孫社長は、以前から日本の自動車メーカーとのタッグを目論んでいたのかもしれない。これまでの経緯を考えればホンダと組む可能性もあったはずだが、その前にトヨタが動いたのではないかと思う。

トヨタ「e-palette」を使ったサービス構想について話すモネ・テクノロジーズの宮川社長

過疎地の移動とタクシー改革に期待

では、新会社は何をするのか。この点についてモネ・テクノロジーズの宮川社長は、トヨタのe-Paletteを活用し、ネットショッピングの商品配達や病院のシャトルバスといった多様なモビリティサービスを検討していくと話した。中でも高齢化、買物困難者、運転免許返納、学校統廃合、無医師など、地方の過疎地で問題となっている事象の解決に力を入れていく考えだという。

ソフトバンクはこれまでも、自動運転バスをこうした地域の移動に提供したいとし、実証実験を重ねていた。その考えは新会社にも引き継がれているようだ。

宮川社長はプレゼンの中で、地方における買物困難者や学校統廃合などの問題に触れ、これらの課題解決に貢献したいと意欲を示した

そしてもうひとつ、筆者はタクシーとライドシェアの大変革が起こるのではないかと期待している。

日本では、タクシーやバスのような旅客輸送車両はナンバープレートが緑色で、運転士は2種免許という専用ライセンスを必要とする。対するライドシェアは白ナンバー、一般ドライバーが一般的であり、日本では違法であるとタクシー業界が強硬に反対してきた。

昨年、タクシー専用の新型車「JPN TAXI」(ジャパンタクシー)を送り出したトヨタは、東京のタクシー会社である日本交通が中心となって立ち上げた配車アプリ「JapanTaxi」(旧・全国タクシー)に出資し、筆頭株主になっている。

目にする機会がかなり増えたトヨタの「ジャパンタクシー」

一方のソフトバンクは、前にも書いたようにライドシェア推進派だが、日本では今のところ違法であるため、まずはタクシー会社へのアプリ提供という方式で参入する構えだ。Uberは淡路島、DiDiは大阪でトライアルを始める。

ちなみに孫社長は、トヨタとの会見で「ライドシェアのことを配車アプリというのは見当違いの表現だ」と釘を刺していた。単なるアプリであるというのは過小評価であり、モビリティのプラットフォームと称するのが正しいとの主張だ。

ソフトバンクが例に挙げた地方の過疎地では、タクシー業者は採算が取れず、しかも運転手不足に悩んでいるケースが多い。こうした場所では「公共交通空白地域自家用有償旅客運送」という制度が用意され、活用の場が生まれつつある。ちなみに、自家用有償旅客運送は市町村運営、福祉目的も認められている。

いずれにせよ、この制度を活用したライドシェア的なモビリティサービスは、東京23区など、都市部のタクシーを中心とするJapanTaxiとバッティングする機会は少ないので、すみ分けは可能なのではないかと思われる。また、e-Paletteはタクシーやライドシェアよりもバスに近い車体であり、会見では既存の交通と競合せず、バス事業者などと連携して展開していくという話だった。

トヨタとソフトバンクによる革命が、タクシー業界や地方における交通の在り方を変えるかもしれない

両社の協業とe-Paletteの登場が契機になって、我が国のバスやタクシー、ライドシェアのルールが一新されることと、過疎地の移動問題が解決することを望みたい。日本の2トップがタッグを組んだのだから、それも可能なのではないかと期待している。

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。