モノから体験を提供する レクサスとバーミキュラが考えるブランディング(後編)

モノから体験を提供する レクサスとバーミキュラが考えるブランディング(後編)

2018.10.17

バーミキュラ、米国進出を控えた手応えを語る

レクサスが大切にしている「味覚」への思い

ブランディング以前にものづくり、という意識は両社共通

値は張るけれど、思い切って買ってしまおうか。

それが車にせよスマートフォンにせよ、はたまた身の回りの生活用品にせよ、自分の使えるお金の範囲から背伸びして、「ちょっと良いモノ」を買った経験はないだろうか。

自動車のレクサスと、鋳物ホーロー鍋のバーミキュラ。作っているモノは異なるが、いずれも先述の「ちょっと良いモノ」、高価格・高付加価値の製品を提供している日本発のブランドだ。

そんな両ブランドのコラボレーションイベントが、レクサスのブランド体験型施設「LEXUS MEETS...」で開催された。今回は、バーミキュラを製造する愛知ドビーの土方邦裕代表取締役社長と土方智晴代表取締役副社長、そしてレクサスのブランディングを統括するLexus Internationalゼネラルマネージャーの沖野和雄氏にインタビューを実施。

前編につづき、ユーザーに高い付加価値のある体験を提供するブランドとしての矜恃やお互いの共通点について聞いた。

――通常、キッチンツールのレシピというのはオマケ程度の分量ですが、バーミキュラの鍋やライスポットには、充実した内容の、辞書のような厚さのレシピ本が付属しています。レシピ本もやはり体験提供の一環なのでしょうか?

土方副社長:
レシピ本も製品だと考えていますし、レシピの開発にはすごく力を入れていますし、掲載する料理のビジュアルも、ブランディングを考えながら作っていきます。

「バーミキュラ ライスポット」に同梱されているオリジナルレシピブック。同社が制作しており、レシピから撮影までディレクションしている

土方社長:
今、アメリカ進出を進めていますが、現地のシェフと組んで最高のレシピ本を作ろうとしています。

僕たちがものづくりをするときに、まずレシピから考えるんです。このレシピを作りたいから、この製品にこの機能がついている、という風に作っていく。そのくらい、製品とレシピ本は両輪ですね。

――先ほど触れられた米国支社の設立で、ライスポットの海外販売にも着手されています。現段階で何か手応えを感じられる出来事はありましたか?

土方副社長:
今、いろんな方に向けて体験会を行っていて、非常に高い評価をいただいています。

発売が本当に楽しみなのですが、懸念点として、アメリカには高級調理器の市場があまりないんですよ。5万円以上の調理器具がほとんど存在しないんです。そこに新しい市場を開発しなくてはいけないので、そこは心配と期待が両方あります。もちろん、絶対に喜んでいただける製品だと思っているので、時間はかかるかもしれませんが、成功するまでやりたいなと思います。

沖野氏:
ブルーオーシャンですね(笑)

――確かに、そこで勝てれば米国のファーストブランドに。海外メーカーの鋳物ホーロー鍋がシェアを取っているわけではないんですか?

土方社長:
実際、アメリカでも鋳物ホーロー鍋は流行っています。ただ、鍋「だけ」なので、相場は3万円前後なんです。弊社のライスポットのようにオールインワンで作られているものはあまりなくて、同価格帯なのはバイタミックスさんくらいですね。

「バーミキュラ ライスポット」は、同社の鍋と専用のヒーターがセットになった製品

――続いてレクサスについて、海外でのブランディング施策についてお伺いできますか?

沖野氏:
最近では、都内では青山にある「INTERSECT BY LEXUS」を、ニューヨークにも作りました。それ以前にもドバイに開設しています。これらは「今、レクサスのお客様でない方」向けです。「今のお客様」向けには、台湾やオーストラリアなどで、特別な空港ラウンジなどを展開しています。

やはり、体験なんです。世界観をお伝えするような施設を、海外でも展開しています。

――「体験」というところで、レクサスはイタリア・ミラノデザインウィークに大々的に出展しており、味覚を含めた感覚に訴えかけるインスタレーションを展開しています。レクサスというブランドの提供する体験において、味覚は重要だということでしょうか?

沖野氏:
まず、レクサスは五感を刺激したいというコンセプトでやっています。クルマは本当に五感で感じるものです。また、味覚はある種、誰でも興味がある部分ですし、料理というのは工夫、クリエイティビティのかたまりじゃないですか。だから、我々の活動のなかでやりたいんです。

クルマ自体も、お客様がどう使うかというところをよく考えて、そのために手の込んだ設計や製造技術を盛り込んでいる。そういうことを上手く伝えようとするのに、料理はピタッと来ました。素材選びや調理法の選定などと同じことを、実はクルマもやっているんですよ、と。共通項があるんですね。

それに、みんな食いしん坊ですから(笑) シンプルに美味しい食べ物は喜んでいただけます。また、ミラノでも「LEXUS MEETS...」でもそうですが、お料理の味だけでなく空間全体の雰囲気も作りこんでいるので、そこも含めてレクサスの持つ空気感などもお伝えできていると思っています。

「LEXUS MEETS...」内のカフェ「THE SPINDLE」は、その名の通り、スピンドルのモチーフが内装にもあしらわれている(画像提供:Lexus International)

土方社長:
確かに、料理の世界でもバックボーンが大切にされています。どういうところで、こういう思いで作られた料理だから、このようにまとめた、とか。そういう意味で、製造と料理は似ているのかもしれないですね。

沖野氏:
似ていると思いますよ、知れば知るほど、似ているなと感じます。

自動車という商品は、その魅力が一目でわかりにくいところがあります。また、自動車はその「便利さ」に着目されがちです。便利とは違うところ、味、感覚というところをもっとお伝えしていきたいですね。

――愛知ドビーはドビー機という織物の機械、レクサスひいてはトヨタ自動車は、自動織機をルーツとしているなど共通点があります。2社の共通点について、他にお感じになったことはありますか?

土方副社長:
よく、「良い物を作るだけではダメ」というようなお話を聞くことがあるのですが、僕ってその考え方がすごく嫌いで。「モノの価値は3割しかない」と言われる方もいらっしゃいますが、そういう姿勢のところに限って、ファブレス(※工場を持たない製造を行うこと)だったりする。

ですから、弊社とレクサス、ひいてはトヨタ自動車さんに共通しているのは、モノを作っているところですね。トヨタ自動車さんのすごいところって、一番難しいところを自分たちでやるところなんです。僕は(トヨタ在籍当時)原価をやっていたので詳しいんですが(笑)、ひとつのラインで何十車種も作ったりします。それはクルマづくりにおいて一番難しいことなんです。ものづくりの核となる技術がすさまじいんですね。

いいクルマをいかに作り込むかというところが根底にあった上で、お客様の体験をいかにプロデュースしようかという考え方が、弊社と似ているのではないかなと、両方の会社で働いた身として思います。

土方社長:
やっぱりものづくりなんですよ。ですが、ものづくりは簡単に立ち上げられない。まず職人が一人前になるのに何年もかかるなど、1~2年で利益を出せないので、なかなか流行らないんでしょう。

――ブランドという無形のものを顧客に伝えるのは、困難を伴うことと推察します。最後に、両ブランドの軸となるものを一言で表すと、どんな言葉になるか、お伺いできますか?

沖野氏:
「唯一無二」でしょうか。瞬間ごとの体験がその方にとって一番素敵なものになるように、尽力しているつもりです。

土方社長:
僕たちは、最終的には「共有」だと思います。

先ほど沖野さんが仰った「五感」は僕たちも大切にしているのですが、第六感としてあるのは「ヒトとヒトとの価値観の共有」だろうと定義づけています。お客様と我々、あるいはお客様同士で時間を共有すること。そこが人生の醍醐味になってくるはずなんです。人と人との関係を変えられるような製品を生み出せたら最高だと思っているので、そこを目指していきたいです。

――ありがとうございました。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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