ブロックチェーンを使った“投げ銭”で、スポーツに絆を生む「エンゲート」

ブロックチェーンを使った“投げ銭”で、スポーツに絆を生む「エンゲート」

2018.10.11

スポーツ特化の投げ銭サービス「エンゲート ベータ」

ブロックチェーン技術でギフティングのデータをすべて記録

サッカーやバスケなどのプロスポーツチームが続々と参加

「投げ銭」――。

それは、賞賛や応援の気持ちを金銭の贈答によって表現すること。路上で芸を披露する大道芸人や、演奏するミュージシャンなどにお金を払うことをイメージする人も多いと思うが、インターネットの普及した現代では、Webやアプリを通じて投げ銭ができるようになってきた。動画の投稿主に視聴者が投げ銭できる配信サービスもある。

ブロックチェーンなどを活用したサービスを提供するベンチャー企業・エンゲートは、この投げ銭をスポーツの応援に使えるのではないかと考えた。そうして生まれたのが、ギフティングサービス『エンゲート ベータ』だ。

同サービスは、スポーツの試合を観戦したファンが、自分で購入したトークンを使ってチームや選手に投げ銭(ギフティング)できるというもの。すばらしいプレイをした選手やチームに対して、拍手や声援といった非金銭的な形だけでなく、直接金銭的に応援することができるというわけだ。チームは従来のスポンサー収入やチケット収入、グッズ売上に加えて、新たな収益源を得ることになる。

もちろん、「試合中にギフティングをした人には、限定で選手のメッセージ動画が送られる」「シーズン中に最もギフティングをしたファンは、ディナーに招待される」といった、ファン向けのリワードも用意される予定だ。具体的なリワードの内容はサービスを導入しているスポーツチームごとに異なるが、まだ検討中のところが多いという。

エンゲート 代表取締役社長の城戸幸一郎氏

2018年10月9日に開催された同サービスのローンチ発表会で、エンゲート 代表取締役社長の城戸幸一郎氏は「同級生に石橋顕さんというヨットの選手がいまして、彼は2008年に北京オリンピックの出場が決まったのですが、その際、遠征費用として数千万円の資金調達が必要になりました。私たち同級生が一丸となって彼の資金調達に協力したことを覚えています。地元企業の支援もあり、なんとか石橋選手はオリンピックに出場することはできましたが、資金面でチャンスを奪われているスポーツ選手は、まだまだいるはず。テクノロジーでその問題を解決する方法はないかと考えた結果、このサービスを思いつきました」とエンゲートを始めたきっかけを述べた。

資金を調達して出資者に後々リターンを提供するという関係は、クラウドファンディングに似ているように感じるが、「クラウドファンディングは、1つのプロジェクトに対して期間限定でステークホルダーを集める仕組み。これに対して、ブロックチェーンを活用したエンゲートは、永続的にファンとチーム・選手の関係が続くコミュニティサービスであると考えています。いままでギフティングをしてくれたファンのデータをブロックチェーン上に刻むことで、それが絆となり、アセットになるのです」と城戸氏は説明した。

同氏の説明にあったように、ギフティングはすべてブロックチェーン上に記録されるようになっている。何のメリットがあるのかというと、誰が誰を応援したか記録されることで、そこにコミュニティが形成されていくのだという。詳しいことは発表されなかったが、エンゲートでは、集まったギフティングの「ビッグデータ」をさまざまなサービスに展開していくことも予定している。例えば、選手が現役を引退した後、セカンドキャリアとして新たに飲食店をオープンする場合、現役時代に応援してくれたファンに向けて、告知やクーポンを届けるといったサービスが考えられるだろう。

エンゲートが目指す世界

ローンチパートナー5チームのエンゲートに対する期待

ローンチ時のパートナーに決まっているのは、サッカーの「湘南ベルマーレ」、バスケの「横浜ビー・コルセアーズ」、野球の「徳島インディゴソックス」、フットサルの「フウガドールすみだ」、ハンドボールの「琉球コラソン」、女子サッカーの「INAC神戸 レオネッサ」の6チーム。そのうち、発表会ではINAC神戸 レオネッサを除く5チームの代表者が登壇し、同サービスに抱く期待や検討しているリワード内容について語った。

琉球コラソン 代表取締役/CEOの水野裕矢氏

琉球コラソン 代表取締役/CEOの水野裕矢氏は「私たちの所属している日本ハンドボールリーグは実業団のリーグですが、全8チーム中、琉球コラソンだけがクラブチームという状況。日中働いているメンバーも多く、私自身も4年前までは選手を兼任しながら社長をしていました。そのため、資金調達面としてもそうですが、お話を聞いて非常に楽しそうだと感じたこともあり、エンゲートへの参加を決めました。リーグのほかのチームは比較的保守的なので、我々が風穴をあけていければと考えています」と、意気込みを示した。
ギフティングすることでファンが受け取れるリワードの内容は「ファンクラブ得点とは差別化していきたいですね。沖縄からの遠征は100%飛行機なので、一緒に遠征を楽しんでいただくなど、これから検討していきたいと思います」と、考えを述べた。

湘南ベルマーレ 代表取締役社長 水谷尚人氏

湘南ベルマーレ 代表取締役社長 水谷尚人氏は「今回エンゲートを導入する目的は大きく2つ。1つは収入面、もう1つはコミュニケーションです。我々はかつてベルマーレ平塚を名乗っていたことがありましたが、親会社の撤退によって存続の危機に陥りました。なんとか地域の人やファンに助けられて生き延びることができましたが、同じことを繰り返さないためにも、収入面については常に考えておきたいですね。そして、もっともっとサポーターと距離を縮めていきたいと思い、参加させていただきました」とサービスに参加する理由を述べた。
また、リワードについては「実は現在、J1降格の危機に瀕している状態なので、そこまで選手と深い話ができていません。ただ、すでに実施している取り組みとして、選手との食事会セッティングなどがあるので、選手との交流を含めたリワードを検討していきたいと考えています」と話した。

徳島インディゴソックスを運営するパブリック・ベースボールクラブ徳島 代表取締役社長の南啓介氏

徳島インディゴソックスを運営するパブリック・ベースボールクラブ徳島 代表取締役社長の南啓介氏は「徳島インディゴソックスは独立リーグの1つのチーム。育成がメインのリーグではありますが、何を経験してそこまで強くなったのかという選手のストーリーもファンの方に見てもらえるのではないかと思いまして、今回参加させていただきました。特に、独立リーグにはいろいろな人生を歩んでいる人がいるので、そのあたりを見てもらい、応援してほしいなと思っています」と、期待を述べた。
次に、「独立リーグなので、柔軟な取り組みができると思います。ファンの方に始球式をお願いしたり、選手の使用していたバットやグローブを提供したり、試行錯誤しながらやっていきたいと考えています」と、リワードについて話した。

横浜ビー・コルセアーズ 代表取締役 CEO 岡本尚博氏

横浜ビー・コルセアーズ 代表取締役 CEO 岡本尚博氏は「日本のプロバスケットボールはまだまだ歴史が浅いため、しっかりとマネタイズ面を考えなければいけません。サッカーや野球と比較すると、マスメディアに取りあげられる情報も少ないため、エンゲートでコミュニティの認知度を高めていきたいですね。また、ビー・コルセアーズは海賊という意味を持っています。未開の海を切り拓くように、新たなテクノロジーを使って可能性を追求していきます」と、サービスへの期待を述べるとともに、「リワードとしては、なかなか体験できないことを提供したいと考えています。選手との食事会はすでにファンクラブで行っているので、例えば、一緒に練習試合をする、オープン戦でベンチに入って采配を振るう、といった従来スポーツ業界ではやってはいけないと思われていたようなことをやってみたいですね」とチャレンジングな姿勢を見せた。

フウガドールすみだを運営する風雅プロモーション 代表取締役社長の安藤弘之氏

フウガドールすみだを運営する風雅プロモーション 代表取締役社長の安藤弘之氏は「フットサルはまだまだ未熟なスポーツだと考えています。これからどうやって盛り上げていくか考えたときに、メディアに頼らずに自分たちで情報を発信できることに魅力を感じて、今回エンゲートを採用することに決めました。ただ、一番の魅力はほかの競技のみなさんと、同じ方向を向いて歩いて行けることだと思っています。意見や情報を交換しながら魅力あるリワードを提供していきたいですね」と話した。
また、リワードについては「未定ですが、我々のチームらしく明るいリワードを用意したい」とのことだ。

エンゲート ベータのローンチは10月20日。横浜ビー・コルセアーズのホーム開幕戦からスタートする。まずはWeb版から利用できるようになり、随時アプリ版もリリースしていく予定だ。またローンチキャンペーンとして、発表会で登壇した5チームと女子サッカーチーム「INAC神戸 レオネッサ」の試合において、当日会場に来場したファン全員に無料で100Pをプレゼントするという。

なお、同サービスにはブロックチェーンが使われているが、仮想通貨を発行するサービスではない。発行したトークンはエンゲート外では価値を生まないため、流出や二次流通などのリスクはほとんどないといっていいだろう。ちなみに、ブロックチェーンには「NEM」が使われている。

プロスポーツで大事なのはファンと資金。これまでスポンサーといえば企業であったわけだが、同サービスが普及すれば、ファンコミュニティがチームや選手をサポートできるようになる。今まで以上にファンと選手の交流が生まれ、スポーツの新たな楽しみ方が生まれるのではないだろうか。

ブロックチェーンと聞くと、仮想通貨やトレーサビリティ、土地・住宅管理など比較的システマチックなものと結びつくイメージが強い。目的も「効率化」や「可視化」といった、いわば“人間の体温”を感じさせないものが多いのではないだろうか。そんななかで、「ファンとスポーツ選手の絆」という非常に概念的なものを目的にして、ブロックチェーン技術が使われていることに驚いた。個人的には、スポーツ以上に投げ銭との親和性が高いであろう「eスポーツ」にも広がっていってほしいと思う。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu