マツダ「CX-5」に新技術「GVCプラス」登場! ブレーキ制御は地味だが効果絶大?

マツダ「CX-5」に新技術「GVCプラス」登場! ブレーキ制御は地味だが効果絶大?

2018.10.11

「CX-5」の商品改良で新技術「GVCプラス」を導入したマツダ

切ったハンドルを戻す時にブレーキ制御? その効果とは

地味な技術を楽しげに説明するマツダから“らしさ”を感じた

マツダがSUV「CX-5」に商品改良を施した。目玉は新たに搭載する2.5Lガソリンターボエンジンとのことだが、個人的に注目したいのは、このタイミングで初登場となった車両運動制御技術「G-ベクタリング コントロール プラス」(GVCプラス)だ。

この技術、簡単にいうと「切ったハンドルを戻す時に発動させるブレーキ制御」のことで、アピールするにはちょっと地味なポイントのようにも思うのだが、それを何やら楽しげに説明するマツダの技術者からは、いかにも同社らしいといった感じを受けた。ここからは、マツダの車両開発本部 操安性能開発部で主幹を務める梅津大輔氏の解説に基づき、GVCプラスとは何かを見ていきたい。

マツダが「CX-5」の商品改良を実施。予約受注は始まっており、発売は11月22日の予定となっている(画像は改良版「CX-5」、提供:マツダ)

GVCプラスとは何か、それはクルマをどう変えるのか

まず、マツダにはエンジン、トランスミッション、シャシーといったクルマを構成する重要な要素を、バラバラにではなく、ソフトウェアで統合制御しようという考え方がある。同社が大切にする「人馬一体感」を支えるそれらの技術群を、マツダは「スカイアクティブ ビークル ダイナミクス」(SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS)と呼ぶ。

その技術群の第1弾として、2016年に登場したのが「G-ベクタリング コントロール」(GVC)だ。この技術は、ドライバーがハンドルを切った時に、少しだけエンジントルクを絞る制御を効かせることで、クルマを前荷重にし、スムーズなコーナリングを支援するもの。前荷重とは、大げさにいえばクルマが“つんのめった”感じになることだが、それにより前輪の接地感が増すので、クルマは曲がりやすくなる。ハンドルからの入力でエンジンを制御する、つまりは統合制御だ。

GVCプラスはスカイアクティブ ビークル ダイナミクスで第2弾となる技術。改良版「CX-5」が初めて採用する(画像提供:マツダ)

そのGVCの進化版が、今回の改良で初めて登場した「GVCプラス」なのである。GVCはハンドルを切る時にエンジンを制御してクルマを曲がりやすくする技術だが、このGVCプラスは、その切ったハンドルを戻す時(直進状態に戻ろうとして逆方向に曲がる時)、曲がる方向とは反対側の前輪を「ちょっとだけつまんであげる」(梅津主幹)ことで、ハンドルの切りすぎ(戻しすぎ)を防止し、直進状態にスムーズに戻れるようにする制御だ。

梅津主幹の手で一部が隠れてしまったが、スライドの左下には「応答性改善」と書いてある

この制御が効く場面として想像しやすいのは、高速道路を走っている時、急に落下物なりニホンカモシカなりが正面に出現して、それを避けるために急いでレーンチェンジをする、といったシーンだ。緊急でハンドルを切って障害物を避けた後、ドライバーはクルマを直進状態に戻すため、ハンドルを逆方向に切ることになる。そのときの素早いハンドル操作にクルマは少し遅れて反応するので、ついついハンドルを切りすぎて、オーバーステアの状態になってしまう。ハンドルを切りすぎれば、直進状態に戻るために少し“切り戻す”操作が必要になるので、クルマは不安定な挙動になる。

このように、ドライバークルマを直進状態を戻そうとしてハンドルを切る時、GVCプラスは、曲がる方向とは反対側の前輪に少しブレーキを効かせる。ブレーキの効いたタイヤは転がるのが少し遅くなるので、結果としてクルマは曲がりすぎることなく、スムーズに直進状態に戻れる。ブレーキの効きは、ハンドル操作の強さ(早さ)によって変わる。

クローズドコースを使い、GVCプラスのオン/オフを切り替えながら緊急レーンチェンジを行ってみたのだが、その制御の効果はよく分かった。まずは制御をオフにして、時速70キロくらいで急ハンドルのレーンチェンジを行うと、新たに進入したレーンで直進状態に戻ろうとして、急いでハンドルを逆に切ったり、また切り返したりする操舵を短時間のうちに行ってしまい、クルマが直進状態に戻るまでには、どうしても“揺り戻し”のような挙動を発生させてしまった。次にGVCプラスをオンにして同じテストを行うと、クルマはスムーズにというか、少なくともバタバタした感じをともなうことなく、直進状態を回復した。

アニメ「サザエさん」のエンディングで、一家が勢い込んで家になだれ込んだ時、その勢いで家が入り口と逆側に大きくたわんだ後、その反動で入り口側に少し、グラっと揺れるという描写が出てくるが、GVCプラスがオフになった状態で緊急レーンチェンジを行い、クルマを直進状態に戻す時の“揺り戻し”というのは、まさにそんな感じ。ハンドルを急いで切る時は「GVC」が効いていて綺麗に曲がれるのだが、直進状態に戻す時にはハンドルを切りすぎ、その超過分を取り戻すために逆方向のハンドル操作を急いでしまうので、その時にクルマが少し、グラっと逆方向に揺り戻すのだ

つまり、ドライバーが「どれだけ早く曲がりたいか」を読み取って、それを助けるのがGVCであるならば、「どれだけ早くまっすぐ進む状態に戻りたいか」を汲み取り、それをサポートするのがGVCプラスだということになる。

1つの頭で複数の部位を制御するのは世界初?

梅津主幹によると、GVCプラスはソフトウェアの改良により実現した制御だそうだ。つまりマツダは、新機能を実現するため、CX-5に新たなネジやバネを取り付けたわけではない。

こういった制御のロジックをクルマに実装するのには、どんなモジュール構成が必要なのか。概念図は下に掲げた通りなのだが、つまりは操舵角、車速などの情報をエンジンのコンピューターに送って、そこでドライバーの意図を計算して(読み取って)、適切な制御をエンジン本体とブレーキユニット(ABSユニット)の双方に同時に指示する、という流れになっている。「統合コンピューターがあって、エンジンとブレーキに同時に指示を出すような制御は、おそらく世界初なのでは」と梅津主幹は話す。

GVCプラスの制御の流れ

例えばクルマがスリップした時などに、急ブレーキでタイヤがロックしてしまわないように制御する「ABS」で考えると、その制御は、ABSのセンサーがタイヤのスリップを感知し、エンジンにトルクをコントロールするよう指示を出す、といった経路をたどる。つまり、GVCプラスとは情報伝達の流れが違うのだ。「1つの頭で、1つの制御ロジックによって、エンジンもブレーキも同時に動かすということ自体、分業が進んだ自動車の世界では非常に珍しい」というのが、梅津主幹が「世界初」という言葉を使った理由だ。

まとめとして梅津主幹は、GVCプラスの価値は大きくいえば3つあり、それは「緊急回避の性能向上」「ワインディングでの一体感向上」「滑りやすい路面でのオーバーステア抑制」だとした。この制御は、全てのマツダ車に順次導入していくという。

今回の改良版「CX-5」で登場したGVCプラスは今後、全てのマツダ車に広まっていくそうだ(画像は改良版「CX-5」のインテリア)

マツダが重要視し、ブランドメッセージとする「走る歓び」とは、「日常の運転シーンにおいて、まるで長く使い込んだ道具を扱う時のように、自分の意図通りに走り、曲がり、止まることができて、その手応えをかみしめ、気持ちよく感じ、ずっと運転したくなる」という感覚だと聞く。すごく早いとか、鋭く曲がるといったようなポイントではなく、ドライバーが意図した操作をソフトウェアの制御で助ける(地味な)新技術を商品改良でアピールするあたりは、いかにもマツダらしいやり方だといえるのではないだろうか。

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「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

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2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。