ユニクロが全世界の倉庫を「自動化」 第一号は有明から

ユニクロが全世界の倉庫を「自動化」 第一号は有明から

2018.10.10

ユニクロ、有明の物流倉庫の自動化を公開

ダイフクと提携し海外拠点でも同様に自動化を展開

倉庫の自動化は全社的な改革の一環、と柳井氏

ユニクロなどを展開するファーストリテイリングと、物流システム・機器の大手企業ダイフクが戦略的なグローバルパートナーシップの構築に関して、「中長期的・包括的な物流に関するパートナーシップ合意書」を締結したと発表した。

10月9日、両社の代表者が出席のもと、記者発表会を開き、東京・有明にある物流倉庫に導入された、2社が共同で取り組みを進める最新鋭の自動化設備を公開した。

物流分野における戦略的グローバルパートナーシップを発表し握手を交わす、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏(中央左)とダイフク代表取締役社長の下代博氏(中央右)。発表会では、ファーストリテイリング グループ執行役員 神保拓也氏(左端)、ダイフク 執行役員 権藤卓也氏(右端)も出席した

ファーストリテイリングと手を組むダイフクは、大阪市に本社を置く1937年設立の企業。"マテリアルハンドリング(マテハン)"と呼ばれる、物流における保管・搬送・仕分けを効率的に行うためのシステム製造業界では、世界トップラスに位置づけられる。

グローバル展開の拡大を企業戦略に掲げる2社がタッグを組み、有明の物流拠点の自動化システムを皮切りに、先進的な物流システムを構築し、国内外への拡大を図る。

自動化の陰には「物流の混乱」

今回のプロジェクトを指揮する、ファーストリテイリングのグループ執行役員・神保拓也氏は、ダイフク社とのパートナーシップ締結の背景には、2015年に同社内で起きた「ユニクロ物流の大混乱」があると語った。

2015年当時、物流はパートナーに丸投げしていたことから現場は混乱、配送遅延なども起こっていたという

「当時、物流パートナーに業務を丸投げしていたため、実際に現場で何が起きているのかを把握できていなかった。物流の混乱を物流部だけで解決しようとしていて、物流のあるべき全体像や戦略を考えることができていなかった」と神保氏。

そこで、物流部を解体し、企画・計画・精算・物流・販売などサプライチェーンに関わる人材から成る「グローバルサプライチェーンマネジメント部」を発足するなど、翌2016年9月から物流システムの改革に向けた取り組みを開始した。

ユニクロの物流改革の概要図

たとえば、ユニクロの人気商品であるヒートテックに関して、実売される時期は秋口であるのに、春先に生産されてすぐ大量入庫されてしまい、半年近く休眠在庫が発生してしまう問題が発覚した。こうした課題の抽出から物流パートナーとの信頼関係を再構築し、問題解決に努めた。

しかし、人件費の高騰や集人難、教育コストなどの理由から人海戦術的な手法では限界が見えることから、「遅きに失する」という考えのもと、抜本的な改革に着手するに至ったと説明した。

RFIDで検品、「モノがヒトに向かってくる」ピッキング

その結果、たどり着いたのが"世界最先端技術を用いた進化し続ける超省人化アパレル倉庫"で、最初に具現化されたのが今回報道陣に公開された有明倉庫だ。この倉庫は2017年から稼働している同社のオフィス「UNIQLO CITY TOKYO」と同じ建屋にあり、ECで注文された商品の保管から発送までを担っている。

ユニクロ有明倉庫の自動化システムの概要

ダイフク社との取り組みは、2016年12月に遡る。当初、有明倉庫の自動化は同社が過去手掛けた中でも世界最大級の規模。常識から考えると3年の工期がかかると言われており、「オリンピックまでに間に合えば」という目標を掲げていたが、実際にはわずか1年半で完成。今春に1時稼働が開始され、10月からフル稼働に入ったという。

有明倉庫は、延床面積11.2万㎡の6階建ての建物内の1~3階にあり、まずは1階部分で自動で荷物の積み下ろしを行った後、3階にベルトコンベアーで運ばれて、RFIDタグによる自動検品を経て、自動で保管倉庫に格納される。

有明倉庫の3階部分にある、自動検品エリア。コンテナ内の商品は1点1点RFIDタグが取り付けられ、自動検品機を通過してチェックが行われる

人手を必要とせず、天井の空間にまで商品を保管ができるため、保管効率は従来の3倍に向上した。出庫に関しても自動かつ迅速に行われ、唯一人手で行われるその後のピッキング工程では、商品が作業者の手前に運ばれる仕組み。そのため、既存のピッキングのように倉庫内を歩き回ることなく、一歩も動かずに作業が行える。

その後の梱包作業も、配送用の箱の組み立てから封函まで全自動。しかも内容量に合わせて配送箱の高さを調整して封函される仕組みのため、配送時の積荷容積を抑えることができる。

梱包された商品はそのまま配送先の方面別に自動で仕分けされるため、荷積みのために待機する配送業者の仕分け作業の手間も省く。物流システム内の移動に使われた商品コンテナまでもが最後に自動で折り畳まれる仕組みだ。

3階部分の自動保管倉庫。自動で格納や出庫が行われるため、人の手が届かなかった天井近くにまで保管が可能になり、これまで以上に空間を有効活用ができる

今回の自動化システムによる省人化率は90%、教育コストも80%削減。入庫時の生産性は80倍、出庫時の生産性は19倍に向上。ほぼ機械が自動的に行うため24時間稼働が可能になり、稼働開始からおよそ半年間でのRFIDによる自動検品のエラーや漏れは1件もなく、精度は100%とのこと。従来は8~15時間ほどかかっていたオーダーから出荷までの時間は最速15分、遅くとも1時間以内には出荷が可能になったという。

倉庫を自動化したことによって得られた効率化を数字で示した

記者会見では、今回の自動化システムの投資額は明かされなかったが、1つの物流センターあたりの投資額は10億~100億円、全世界では1000億円規模にのぼるとのこと。

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は、「ダイフクさんは日本初の自動車生産ラインの製造事業者として23の国と地域に拠点を持ち、自動車業界とともに世界へ進出した企業。今度はユニクロと手を組み、世界最先端・最大級の自動倉庫で世界へ」と語り、2~3年以内に全世界の全拠点における倉庫の自動化を目指す意向を明かした。

物流システムの改革・改善は、顧客へのサービス向上のみならず、従業員やアパレル業界の働き方改革、配送業界などECに関連する周辺業界の業務改善など社会貢献の一環でもあると意向を明かした、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井氏

なお、既に中国、タイ、オーストラリア、アメリカ西海岸・東海岸の拠点にはダイフク社の専門家チームが入り、自動化に着手しているとのこと。また、今回公開されたシステムに留まらず、さらなる自動化を目指してロボット開発ベンチャー企業とも話を進めていると明かした。そして、今回の物流倉庫の自動化は、アパレルサプライチェーンとして、働き方改革なども含めたすべての改革につながる、会社全体での取り組みの一環だと説明した。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる