“電気ジャガー”の出来栄えは? 初の電気自動車「I-PACE」が日本上陸

“電気ジャガー”の出来栄えは? 初の電気自動車「I-PACE」が日本上陸

2018.10.16

ジャガーが日本で電気自動車「I-PACE」の受注を開始

造形は間違いなくジャガー、その走りやいかに?

航続距離は470km! 唯一の弱点を克服したEVの可能性

英国のジャガーが手掛けた電気自動車(EV)「I-PACE」が日本上陸を果たした。すでに注文を受け付けていて、納車開始は年明け2019年の予定となっている。

ジャガー・ランドローバー・ジャパンはジャガー初の電気自動車「I-PACE」の受注を開始した。グレードは「S」「SE」「HSE」の3つで価格は959万円~1,162万円(税込み)。「FIRST EDITION」は1,312万円だ

EVならではのクルマづくりで広い室内を実現

I-PACEはジャガーのエンジン車である「F-PACE」や「E-PACE」と同様に、SUV(スポーツ多目的車)のスタイルをとったEVである。ただし、エンジン車とは全く異なる仕立てで、EV専用にジャガーがゼロから開発した。とはいえ、近年のジャガーに通じる造形は一目でジャガーだと気づかせてくれる。見間違うことはないはずだ。

関連記事:「E-PACE」を日本で発売! ジャガーがSUVを作る2つの理由とは何か

車体はエンジン車のF-PACEに近い大きさだが、前後タイヤ間の距離であるホイールベースは2.99mあり、F-PACEより10cm以上長い。これはI-PACEが前後にモーターを持ち、いわゆるエンジンルーム内には従来のエンジンやトランスミッションなどを持たないため、客室を前輪に近いところまで広げることができたことによる。

サイズは全高1,565mm、全長4,682mm、全幅2,011mm。リアシート後方のラゲッジスペースは容量656Lで、シートを倒せば最大1,453Lまで広くなる

正面にはラジエーターグリルがあるが、もちろんエンジンを冷やすための設備ではない。そこから入った空気は、ボンネットフード上のエアダクトから排出されて、その空気の流れが滑らかな流線を描き、空気抵抗を減らす役目を果たす。前後タイヤのオーバーハング(タイヤよりも外型に出ている部分)は共に極めて短く、エンジン車とは全く異なる姿である。従来と異なる新しさ、先進性を発散する外見は、独特の存在感を感じさせる。それでも、全体を見れば間違いなくジャガーだと分かる造形なのである。

ラジエーターグリルを備えるが、それはエンジン冷却用ではない

室内は、運転者中心の空間を基本とし、エンジン回転計が不要なメーターは、カーナビゲーションの地図のほか、様々な情報を表示する機能を持つ。同時にヘッドアップディスプレイも装備するため、運転中に大きく目線をそらさずに済む。より安全性が高く、安心の運転席周りといえるだろう。シフト操作は単純なボタンスイッチだ。

長いホイールベースをいかした室内は広く、同乗者にも快適な空間をもたらしている。バッテリーを床下に収納しているため、室内の床は平らで足元も広い。

EV専用にゼロから開発した意義

I-PACEは、EVが単に環境に適したクルマであるだけでなく、運転のしやすさや室内の快適さをも格段に飛躍させる素養を備えることを、改めて実感させるクルマだ。そういった商品性をジャガーは、EV専用にI-PACEをゼロから開発することで実現した。それは、テスラのクルマやBMWのEV「i3」も同様で、これらのクルマはEVならではの良さを引き立たせている。

東京ミッドタウン日比谷で開催された「I-PACE」の発表会には、自身もジャガーに乗っているというプロテニスプレイヤーの錦織圭選手が駆けつけた

逆に、エンジン車とEVの使い勝手を変えないのが、フォルクスワーゲンの「e-GOLF」だ。その点、エンジン車からの乗り換えには不自由しないが、あえてEVを選ぼうという人に対し、その魅力を存分に伝え切れているかどうかは疑問でもある。

このように、クルマの電動化に対する自動車メーカーの考え方は様々だが、ジャガーは電動化の時代を前に、EVの魅力を最大限に引き出すことに挑戦し、その考えをI-PACEとして結実させた。

EVでジャガーの走りは追求できるか

ジャガーといえばスポーツカーに始まり、高級乗用車として英国を代表するに至ったクルマである。したがって、I-PACEに込められた性能は、競合他社やエンジン車に引けを取らない水準に達しているというのが同社の説明だ。

ジャガー「I-PACE」のコックピット

前後のモーターを合わせたI-PACEの最高出力400PSは、直列4気筒の2.0リッターガソリンターボエンジンを積む「F-PACE R-SPORT」の300PSを超えているどころか、ジャガーのスポーツカーである「F-TYPE」が搭載するV型6気筒エンジンの340PSをも上回っている(ただしV型8気筒エンジンは550PS)。その上、最大トルクは696Nmで、この数字はF-TYPEが積むV8エンジンの680Nmを凌駕する。このトルクの強大さは、モーターならではの特性だ。それにより、停止状態から時速100kmまでの加速時間は4.8秒と、F-TYPEの4.1秒に迫る俊足ぶりである。

こうした速さは、例えば三菱自動車工業の軽自動車である「i-MiEV」も同様に持つEVの特性だ。エンジン車に比べ、はるかに加速は強く滑らかで、車体をぐいぐい引っ張っていく感触がある。ゴルフ場の電気カートを見て「EVは遅いのでは?」と想像していた人は、まさに目から鱗が落ちる思いをするだろう。

EVが遅いものと想像して「I-PACE」に乗る人は、大いに驚くはずだ

EVの走りの特質は、その加速のよさだけではない。重いバッテリーを床下に搭載する例がほとんどであるため、重心が低く、より安定した走りになるのだ。さらにI-PACEは、ジャガー伝統のしなやかなサスペンションを備えているので、低重心をいかした思い通りのコーナリングを体験できるのではないだろうか。

いずれにしても、EVはEVであること自体が高性能の証であり、その走りは高性能車に乗り慣れている人をも納得させる域に達する。

EVであることは、それ自体が性能の高さを意味する

もちろん、排気音のないEVは静粛性にも優れる。静けさは、高級車が求める究極の室内環境だ。滑らかで快適な乗り心地と静けさ、そして俊足の走りは、新次元の移動体験を運転者にも同乗者にももたらすだろう。

ジャガーをはじめ、これまでの上級車種が追い求めてきた高次元の走りを簡単に実現してしまうのがモーターだ。例えば直列6気筒やV型12気筒は、エンジンとして最高のバランスといわれ、振動が少なく、滑らかで快い加速をもたらすことで知られているが、そういった特性はモーターも共有している。EVが究極のクルマとさえ考えられている理由がそこにある。

静かな走りはEVの特徴。“咆哮”なきジャガーを物足りないと思う人もいるかもしれないが、静かに走る電気ジャガーに、ネコ科の猛獣らしさを感じることだってできるはずだ(画像は「I-PACE」の前席)

一方、バッテリー性能によって長距離を走れないというのが、EVにとって唯一の弱点といってよかった。しかし、I-PACEは1回の充電で470kmという航続距離を実現している。エンジン車でさえ、出発して一度の休みもなく400km以上を運転し続けることは、まれではないか。途中で休憩するなら、その時に急速充電すれば、さらに足を伸ばせる。

もはや欠点を克服したEVが、エンジン車に対する優位性を強調する時代は訪れている。そうした中、1,000万円前後する上級SUVに、I-PACEというEVの選択肢が登場したのだ。テスラ「モデルX」と同じく、時代を牽引する人たちからの注目を集めるクルマだといえるだろう。

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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