トヨタは3キャリア提携で節操がない? 実はしたたかに”使い分け”ていた

トヨタは3キャリア提携で節操がない? 実はしたたかに”使い分け”ていた

2018.10.11

トヨタとソフトバンクの提携は必然的な流れ

「危機感」をトリガーに、パートナー企業を増やし続けるトヨタ

ドコモには5G、KDDIには国際通信…ソフトバンクに求めるは「投資力」

トヨタ自動車とソフトバンクは10月4日、共同で新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」を設立することを明らかにした。2018年度内をめどに事業を開始するという。

"似た者同士"だったトヨタとソフトバンク

会見に登壇した、トヨタの豊田章男 社長とソフトバンクの孫正義 社長は異口同音に「目指している未来が一緒だった。提携は必然だった」と語る。確かにここ最近の両社の動きを見ていると、同じ「未来のクルマの世界」を夢見ているようだった。

例えば、ソフトバンクはライドシェア事業への投資に積極的で、米Uberや中国DiDi、東南アジアのGrab、Olaなどに多額の資金を投入してきた。実はトヨタもそのうちUber、Grabに投資している。

また、自動運転を実現するにはAIを操る半導体が不可欠。米NVIDIAにソフトバンクが出資したかと思えば、トヨタもNVIDIAと自動運転に向けた提携を実施。さらに、AIによる運転支援デバイスを開発する米Nautoに対してもソフトバンクとともにトヨタが出資しているのだ。

つまり、ソフトバンクが将来の自動運転分野で有望だと思う企業は、トヨタも目をつけ出資していた。同じ会社を取り合うとまではいかないが、共同の株主になったということが多々あったというわけだ。

トヨタとしてみれば「クルマの素人であるソフトバンクに出資先で邪魔されたり、茶々入れられてポシャってしまっては困る。好き勝手させないためにも、早めに手を組んでおくのが吉」という判断があったかもしれない。

両社のトップ同士においては、かつて孫社長が海外のシステムを売り込みに豊田社長(当時は課長)のところに行くも、独自のネットワークを立ち上げていた豊田社長があっさりと断ったという過去がある。その遺恨があってか、トップ同士が歩み寄ることはなかったが、トヨタの若手メンバーがソフトバンクに声をかける形で、今回の提携がまとまったという。

今回、2社が共同で立ち上げる「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」では、ソフトバンクのIoTプラットフォームとトヨタのモビリティサービスプラットフォームを融合させることで、利用者の需要に応じて配車を行う「地域連携型オンデマンド交通」や「企業向けシャトルサービス」などを、全国の自治体や企業向けに展開していく考えだ。

ただ将来的には、ソフトバンクが先見性のある会社をいち早く見出して投資しつつ、ものづくりの現場を知り尽くしているトヨタがその会社とタッグを組み、技術を磨き上げるという役割分担をしていく可能性もありそうだ。

「100年に1度の大変革期」敵は自動車メーカーに無し

トヨタといえば、KDDIの主要株主。KDDIと蜜月でコネクテッドカーの世界を作り上げていくかと思いきや、今回まさかのソフトバンクがパートナーとして選ばれた。

豊田社長は、ここ最近「100年に1度の大変革期」というフレーズを用い、危機感を露わにすることが多かった。その危機感から、トヨタは手当たり次第にパートナーを作っているようにも見える。

今年1月にラスベガスで開催されたCESで、豊田社長はモビリティサービス専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」を発表。自動運転のクルマが街中を自在に走り、人を運ぶだけでなく、物流や物販などに活用できるプラットフォームを目指し、2020年半ばまでに実現したいとしていた。

「e-Palette Concept」イメージ

この記者会見で印象的だったのが、同氏が語っていた「もはや、トヨタの敵は自動車メーカーではない。FacebookやGoogle、Appleがライバルになってもおかしくない時代が来る」というフレーズだ。

確かにGoogleが本気で自動運転車を作れば、地図データやユーザーの行動履歴と組み合わせて、とてつもない自動運転プラットフォームができる可能性が高い。単に街中を走るクルマを作るという意味では、トヨタは有利な立場にいるが、ユーザーがスマホを使い、ライドシェアで移動する時代が本格的になれば、自動車メーカーは単なる下請け企業に成り下がってしまう恐れもある。

クルマ作りでは誰にも負けない自信のあるトヨタだが、これが通信やアプリ、プラットフォーム作りとなれば話は別だ。トヨタがいちから通信やアプリ、プラットフォームを作れないのであれば、それらを得意とする企業とパートナーを組むのが近道だという判断なのだろう。

3キャリアの武器を使い分けるトヨタ

国内のキャリアとトヨタの関係を見ると、その傾向はわかりやすい。同社は、5Gに関する提携はNTTドコモ、世界で使える通信プラットフォームはKDDI、そして今回発表されたように、配車サービスのプラットフォームと投資活動においてはソフトバンクと組んでいる。

はたから見れば節操がないような気もするが、5Gなら技術開発力のあるNTTドコモ、国際的な通信ならグローバルで拠点を持つKDDI、配車サービスなら、Uber、DiDi、Grab、Olaに投資しているソフトバンク……と各社の強みを充分に精査した上でパートナーを選んでいるのは、トヨタのしたたかさとも言える。

GoogleやFacebook、Appleが台頭してくる中で、トヨタはプライドをかなぐり捨てて、あらゆる企業と提携する道を探り始めている。プライドを捨てた業界トップ企業ほど恐ろしいものはない。豊田社長が抱く「危機感」が、いまのトヨタを強くしていると言っても過言ではないだろう。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。