24時間365日 Apple Watchを身に着ける私が「Series 4」を買う理由

24時間365日 Apple Watchを身に着ける私が「Series 4」を買う理由

2018.10.05

Apple Watch Series 4を絶賛し、即購入してしまった理由

思い描いていた機能や性能が、Series 4でやっとカタチに

Apple Watchの基本形ができた今、本当の進化が期待できる

腕時計をはめなくなって十数年から一転、毎日ほぼ24時間Apple Watchを身に着けるようになって約2年。今やApple WatchがあるからiPhoneを使い続けているような状態の筆者にとって、Apple Watch Series 4は"神"を付けたくなるようなアップデートになった。その理由とは……。

不満だった初代から、Series 4を即決するに至るまで

Apple Watchは初代から買い続けて「Series 4」で4台目だ。今年は、Nikeとのコラボレーションモデル「Apple Watch Nike+」(10月5日発売) の40ミリを購入した。

9月21日の「Apple Watch Series 4」発売に続いて、10月5日に登場する「Apple Watch Nike+」。新しいNikeスポーツループには光があたった時に反射する糸が用いられている

かく言う私も、無条件でApple Watchを買い続けてきたわけではない。ファッション性と通知機能を訴求点としていた初代モデルには満足できず、同じ路線のままだったらSeries 2には手を出さなかった。しかし、Series 2でAppleがアクティビティ/フィットネスの強化に乗り出したことで、がぜん面白くなってきてコンプリートが継続している。

そう言うと、アクティビティ/フィットネス「だけ」がApple Watchを買う理由だと思うかもしれないが、そうではない。私が思うApple Watchの最大の長所は「常に身に着けていられること」だ。私はアクティビティ/フィットネスが入口だったが、その長所は全ての人に当てはまると思う。

Apple Watchを手にするまでは、アクティビティバンドをランニングの距離/ペースの記録やレース前の調整に使っていた。でも、毎日の歩数とか、カロリー消費量といったアクティビティは記録していなかった。アクティビティバンドを常時身に着けていなかったからだ。軽くて着けやすいアクティビティバンドでは機能が限られ、逆に十分なセンサーを備えている製品はサイズが大きく、多くはアクティビティ向けのデザインで服によっては悪目立ちしてしまう。

Apple Watchは、シリコンのスポーツバンドやカラフルなスポーツループを付けたらアクティブなデバイスになり、ミラネーゼループを合わせたら高級感を漂わせる。バンド交換が面倒でも、自分の服装を考えてバンドを選べば、1つのバンドで幅広いファッションに対応してくれる。そして、他の多機能時計や高機能スマートウォッチが大ぶりなデザインのものばかりであるのに対して、Apple Watchは様々なセンサーを備えながら本体サイズはコンパクトだ。ずっと装着し続けても苦にならない。

アクティビティ向けのバンドでも色を選べばカジュアルになりすぎない。バッテリー持続時間は約1日。就寝時に充電する人が多いが、AutoSleepを使った睡眠トラッキング、スマートホーム機器の操作、振動による無音目覚ましなど、ベッドでも活用している筆者は2台使いでほぼ24時間身に着けている

常に身に着けるからこそ、価値がある

なぜ、それが大事なのかというと、ウェアラブルは身に着けてこそ価値があるからだ。重くて身に着けるのが苦になったり、服装によって外すようなデバイスでは得られるデータが限られる。逆に言うとユーザーが常に身に着けているデバイスであることで、スマートウォッチで「できること」が大きく広がる。

Series 2が発表された後、アクティビティ/フィットネスはスマートウォッチの機能の1つでしかなく、そこに力を注ぐのをリスクと見なす声が当時はあった。だが、それはきっかけに過ぎない。スマートウォッチに関心を持ってもらう最初の市場としてアクティビティ/フィットネスが適していただけで、本当の狙いは、多くのセンサーを備えたスマートウォッチを常に身に付けてもらうことだ。

それによって新たな可能性が広がる。例えば、ウェアラブルを運動の記録にしか使っていなかった人が生活全体の活動データを取るようになることで、体の変調のアラートといったヘルス分野に活用が広げられる。今年の2月に起こった飲酒運転による事故で、乳児と共に被害に遭った女性がApple WatchのSOS機能によって自ら救急車を呼ぶことができた。いつ事故に遭うかなんて予測することはできない。SOS機能も、ユーザーが常に身に着けるデバイスであってこそ有用性が増す。

Series 4の要が「ヘルス機能」という話は誇張ではない

前振りが長くなってしまったが、小さなバッテリーしか積めない限られたサイズの中で、性能と効率性を向上させながら、Series 2でGPS機能と水泳にも使える耐水性能、Series 3でセルラー機能を実装するなど、ユーザーが常に身に着けていられるデバイスとしてApple Watchは着実に進化してきた。その上で、次のステップに進むのがSeries 4である。

私がSeries 4を買った最も大きな理由はヘルス向け機能だ。通常よりも高い心拍数に加えて低い心拍数を検知する機能やECG (心電図、米国のみで年内に提供開始)など、心拍計に関する機能が強化された。スマートウォッチの一般的なセールスポイントとして、心拍計強化は弱いと思う。「カメラ搭載」とかの方が話題になるだろう。だが、すでにApple Watchを常に着けて生活している私のようなユーザーにとって、ヘルス機能の強化は大きなプラスである。

心拍数を知るのはスポーツのリカバリーなどで役立つが、普段の生活においてもストレスがかかっている時に無理をせず、休んだり、気分転換で体を動かすといったブレーキをかける指針になる。心拍数を測るデバイスを使っていない人がこの感覚をイメージするのは難しいと思う。例えるなら、携帯電話を持ち始める前と後だ。以前は携帯なしで外出しても気にならなかったのが、携帯を持ち歩くようになると携帯なしの外出が考えられなくなる。同じように、心拍について知るようになると、体の声を聞かずに生活するのが無鉄砲なことに思えてくる。

心拍を測るようにしておくと、調子が出ない時、ストレスを感じる時などに休むべき状態であるのが見えてくる。緊張対策、呼吸法などの効果の目安にもなる

個人的には、転倒検知も購入を後押しする機能になった。転んだ時にアラートを表示し、ユーザーからの反応がなかったら転倒を緊急連絡先に発信する。65歳以上を除いてデフォルトでオフになっているため高齢者向け機能と見なされるが、私はオンにするつもりだ。というのも、この3年で2回も転倒して負傷しているからだ。一度はトレイルランでスリップして肘をケガ、次は遊歩道をジョギングしていた時にコントロールできなくなった自転車に正面から突っ込まれてしばらく満足に膝を曲げられなくなった。どちらも緊急連絡は不要だったが「転ばぬ先の杖」である。

落下、つまづき、スリップなど、転倒のパターンを学習させて転倒検知を実現

2012年ごろから北カリフォルニア地域で自転車の事故が増加している。最初は原油価格の上昇で通勤・通学や日々の移動に自転車を使う人が増え始めたのが理由だったが、ここ数年は自転車や電動スクーターのシェアリングサービスの台頭も原因の1つになっている。サンノゼやサンフランシスコでよく見かけるようになった自転車やスクーターのシェアリング利用者の中には、危なっかしい人が少なくない (特に電動スクーター)。自転車の事故で最も多いのは自動車との衝突である。自転車の専用レーンがあいまいなまま、マイクロライド・シェアリングが台頭しているのだから事故の増加は避けられない。私自身、シェアリングの自転車を使うことが増えている。だから、転倒検知とSOS機能の恩恵を受けるのは高齢者だけではないと思うのだ。

米国の主要都市で電動スクーターや自転車のシェアリングが増加、操作に慣れない人も多く事故が増加

進化の段階は例えればiPhone 4、大きな発展はここから

Series 4の新デザインは、画面が大きくなったのが個人的にはプラスになっている。これまでステンレスモデル、アルミニウムモデル、42ミリ、38ミリと全てを実際に使ってきて、最終的には毎日常に身に着けるものだから「より軽く」を優先して、38ミリのアルミニウムを選んでいた。でも、画面が小さすぎるというトレードオフがあった。それが40ミリに大型化して"改善"され、さらに大きな画面のSeries 4向けに情報の視認性が高い新しいUIが用意されて"解消"した。ただ、42ミリや38ミリが「ちょうど良かった」という人も少なくないので、これは個人差のあるポイントだ。

グラフやアイコン、文字をバランスよく盛り込んで、小さな画面で豊富な情報を伝える。インフォグラフィック的な新しい文字盤

デザインほどではないが、性能アップも大きい。文字盤の切り替えやスクロール、タッチの反応がなめらかで、なによりSiriのレスポンスが良くなっているのがうれしい。メッセージの音声入力など、音声を使ったインタラクションをスムーズに行える。

Series 4は、より機能的でパワフル、そしてよりモダンで、より面白い。ただ、そう思うのは私が初代からSeries 3までのユーザーだからであって、Apple Watchはまだ基本的な機能や性能が形になり始めた段階に過ぎない。iPhoneに例えるなら、Retinaディスプレイを搭載しデザインが刷新された「iPhone 4」ぐらいだろう。「iPhone 5s」や「iPhone 6」シリーズに比べたら、iPhone 4は足りないものばかりの発展途上だった。だが、スマートフォンの進化を実感でき、使っていてワクワクした時期だった。

順風満帆に見えるApple Watchだが、不安点もある。サードパーティのアプリ開発環境である。Overcastの開発者であるMarco Arment氏は、次のようにツィートしている。

「Apple Watch向けの開発はひたすら時間がかかって、フラストレーションがたまり、やる気が失せ、腹立たしい。理由は明白で、デプロイメントとデバッグの基本ツールが機能しないから。それがWatchアプリが少なく、良いものが出てこない大きな理由である」

ユーザーが常に身に着けるデバイスというのは、アプリ開発者にとっても大きな魅力であり、それを活かしたアプリやサービスの普及がスマートウォッチの進化を後押しするのは明らかである。でも、サードパーティのアプリの多くはiPhone用アプリのおまけのような存在でしかなく、Apple Watchのために作られ、Apple Watchで役立つアプリは少ない。その問題をクリアできたら、iPhoneにおける「iPhone 5s」~「iPhone 6」の爆発的な販売の再現が現実味を帯びてくる。

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。