世界的ヒット作の生みの親に聞く、日本ゲームが世界で勝つためのヒント

世界的ヒット作の生みの親に聞く、日本ゲームが世界で勝つためのヒント

2018.09.27

MHW、NieR:Automata、仁王の制作者がプロモーションの裏話を紹介

海外ユーザーアンケートから見る日本産ゲームの弱点とは?

3者が考える日本ゲームが世界で勝つために必要なこと

「I just set up a trap!」
「Thanks for the help!」
「I've set a Health Booster!」

ハンティングアクションゲーム『モンスターハンター:ワールド(MHW)』をプレイしていると、多種多様な言語が飛び交うことがある。オンラインで世界中のプレイヤーと一緒にモンスターを狩りに行くことができるMHWには、意思疎通を図る手段として、あらかじめ設定した文章を画面に表示させる定型文機能が用意されているのだ。

各言語に自動翻訳される定型文もあるが、手動で入力したオリジナルのメッセージなどはそのままの言語で表示される。英語であればまだしも、スペイン語やハングルなどが表示されると、正直なにを言っているのか筆者にはわからない。しかし、それもまた、国際色豊かなユーザーがプレイしている証拠だろう。

自動定型文のイメージ。ちなみに筆者の場合、モンスターに拘束されると「ねぇお願い、元のさやかちゃんに戻って!」と、自動で叫ぶ設定になっている。海外プレイヤーが見たら、きっと「わけがわからないよ」と言うはずだ

近年、ゲームは「日本国内だけで販売されるもの」ではなくなった。オンラインによるコンテンツ配信や、海外販社と連携した展開などによって、いかに海外での販売数を伸ばすかが重要になってきている。

そのような市場環境もあってか、2018年9月20日から4日間にわたって開催された「東京ゲームショウ2018(TGS2018)」では、「日本発グローバル・ヒットタイトルに学ぶ、国産ゲームが世界で勝つ方法」をテーマにした講演が開かれた。カプコン 『モンスターハンター:ワールド』プロデューサーの辻本良三氏、スクウェア・エニックス 『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』プロデューサーの齊藤陽介氏、コーエーテクモゲームス 『仁王』ディレクターの安田文彦氏の3名が登壇し、それぞれの作品が世界的にヒットした理由について話していたので、本稿ではその内容を紹介しよう。

7割以上の海外比率を実現した『MHW』

最初に登壇したのはカプコンの辻本氏。モンスターハンター(MH)は2004年から10以上のタイトルが発売されているシリーズだ。最新作であるMHWは世界累計出荷本数が1000万本を超え、シリーズのなかで最高記録を更新したことでも話題になった。過去のMH作品でも欧米市場に対する取り組みは行ってきた同社だが、今作はどのような点に注力したのだろうか。

辻本氏「2008年に発売された『モンスターハンターポータブル2ndG』の海外比率は14%でした。そこで浮き彫りになった課題を解決すべく、チュートリアル強化やオンラインマルチプレイ提供を行った結果、『モンスターハンター4G』では30%まで海外比率が上昇。さらにMHWでは、ユーザーからの『据え置き機への要望』に応えるとともに、4KやHDRの対応など『AAAの水準のクオリティとボリュームの実現』という、海外タイトルではもはや当たり前にやっていることを目指しました」

シリーズの経験を生かして徐々に海外比率を高めてきたMH。最新作でも世界を見据えた目標を設定した。

辻本氏「そこで掲げたコンセプトが“最新技術を使って世界一のマルチプレイ・ハンティングアクションを作る!”というものです」

カプコンの辻本良三氏
過去MHシリーズの欧米市場への取り組みと過去作の海外比率

MHシリーズの大きなコンセプトでもある“マルチプレイ・ハンティングアクション”を改めて意識しつつ、最新作では世界で勝負することに一層注力し、システム開発やプロモーションを実行。具体的には「世界同日発売」や「ワールドワイドマッチング」、シリーズ最多の「12言語へのローカライズ」などに取り組んだという。

辻本氏「また、プロモーションでは、開発初期から海外販社と入念な連携を行うことで、開発陣にも販社の生の声やユーザーの温度感を伝えることができたと思います。加えて、E3(海外で行われるゲーム見本市)で作品の発表をしてから発売後まで、北米、欧州、日本、アジアのバランスを考えながら、各国でイベントを実施いたしました」

発売後も積極的に各国でイベントを開催しているMHW。今回のTGS2018でも、各国の予選を勝ち抜いた代表者による、モンスター討伐のタイムアタック大会「DREAM MATCH」が行われた。

そのほか、「日本・アジア」と「北米・欧州」で商品パッケージや広告などのデザインを変えたり、新規ユーザーが手に取りやすいようにタイトルのナンバリングをつけなかったり、開発担当者が同行して欧米でテストプレイを実施したりと、グローバルを意識して取り組んだ結果、MHWでは海外比率が71%と、大幅な海外ユーザーの増加に結びついたのである。

地域によって異なるパッケージデザイン
現地ユーザーの温度感が伝わった結果、71%という海外比率を実現した

バランスを取ることで成功を収めた『ニーア オートマタ』

続いて、アクションRPG『ニーア オートマタ』のプロデューサーの齊藤氏にバトンが渡った。

スクウェア・エニックスの齊藤陽介氏

齊藤氏「まず我々は、前作『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』の反省点を考えることからスタート。同作では、ヨコオタロウ氏の考える世界観に加えて、岡部啓一氏をはじめとするMONACAスタッフの作曲する音楽について、非常に高い評価をいただきました。その反面、決してダメだったわけではありませんが、世界市場を見据えた場合にまだ伸ばすことのできるキャラクターや、アクションゲームとしての完成度を“及第点”と考え、それらをさらに高い“合格点”へと引き上げるよう試みました」

ニーア オートマタは累計出荷・DL販売本数が300万本以上のアクションRPG。前作で「まだ伸びしろがある点」について、さらなる向上を目指したという。そこで、キャラクターデザインに『ファイナルファンタジーXIV』でアートディレクターを務めた吉田明彦氏を起用し、ゲーム開発をアクションゲームの開発に定評のあるプラチナゲームズに依頼。なにか1つに秀でるゲームではなく、全体のバランスを取ることを意識した。

齊藤氏「プロモーションで効果があったと考えられるのは、ゲームタイトルの発表会をコンサートスタイルにしたことと、発売後にMONACAの楽曲を主軸としたコンサートを実施したことです。発売後のコンサートについては、ゲームの発売前にコンサートのチケット販売を行ったので、どこまで集客できるか不安でしたが、ありがたいことに連日満席でした」

実際、同作のサウンドトラックは、オリコン週間CDアルバムランキングで2位を獲得するほど、高い人気を誇っている。

効果があったと齊藤氏が考えるプロモーション例

齊藤氏「また、視聴者にはネタバレがあることを事前に伝えたうえで、出演声優さんに作品のおもしろさを話してもらう座談会を開催しました。その結果、ユーザーも積極的にSNSで発言してくれるようになったと思います」

SNSでは、なかなかネタバレ発言をしにくいもの。しかし、それではクチコミも広がりづらい。そう考えた齊藤氏は、あえて公式がネタバレをすることで、SNSでの拡散を狙った。

齊藤氏「とはいえ、ゲーム開発には数年間を要することが当たり前になってきています。ニーア オートマタの内容をトレースしたところで、成功できるかはわかりません。大切なのは開発者がテンションをキープすること。“生みの苦しみ”は重々承知しています。しかし、最終的にいいものを生み出すのは、開発の時間を楽しく有意義にできるかが大切なのではないのでしょうか。もちろん、アイデアには旬があるので、ベストな時期でのリリースは大前提です」

3度の体験版と12年の開発期間が話題を呼んだ『仁王』

コーエーテクモゲームスの安田氏は、世界で200万本以上の販売台数を誇るアクションRPG『仁王』において、開発の観点から大きな影響のあったアプローチを紹介した。

安田氏「我々は発売の10カ月前にα体験版を配信しました。そこで得られた難易度調整やインターフェース改善などのフィードバックを反映して、その4カ月後に再度β体験版を配信。そして、一般的なものに近い最終体験版を発売直前に配信しました。αと比較すると、β版はユーザーアンケートの評価が上がっていることがわかります」

コーエーテクモゲームスの安田文彦氏
3回配信された体験版
αとβのアンケート結果比較。赤が「Very good/Good」、黄色が「Normal」、グレーが「Very bad/Bad」だ

従来の体験版は、完成したゲームの一部を切り出して発売前に配信するケースがほとんど。しかし、仁王の場合は開発途中の段階から3回の体験版を配信した。そして都度、改善内容を公開することで、意見をしたユーザーにも納得してもらえるように工夫。自分の意見が反映されたところをβ版で確認できるようにすることで、ファンを構築できたのではないだろうか。

安田氏「体験版で世界中の人に触ってもらえて、海外では、なにが好かれてなにが嫌われるのか、分析しながら開発できた点が最終的な評価につながったのではないかと考えています。また、ソニーさんとパブリッシュのパートナー契約を結んで、欧米とアジアに展開できたことも後押しになりました」

そして安田氏は、個人的な意見としてもう1つ話題を呼んだ理由を分析する。

安田氏「そもそも仁王は2005年に発表され、発売まで12年の歳月が経過しました。そのため、国内では『仁王先輩』と呼ばれ、“ネタ”として扱われている時期もあったと認識しています。しかし、体験版を公開することで、仕掛け人である社長のシブサワが本気で作っていることが伝わり、ストーリーが生まれ、バズる結果になったのではないでしょうか」

海外でUI評価の低い日本産ゲームが、世界で勝つために必要なことは?

今回、同講演を開催するにあたって、コアな海外ゲームユーザー700人を対象に、日本産ゲームの意識調査を実施。日本ゲームの長所や短所などについて意見を聞いた。

日本産ゲームの長所(左)と短所(右)

アンケートでは、海外ユーザーにとって「日本製ゲームは操作性、ユーザーインターフェース(UI)がよくない」ということが見てとれる。この結果について、3人はどう思っているのだろうか。今後日本ゲームが世界で勝つために必要なこととあわせて、考えを聞いた。

辻本氏「たしかに、海外タイトルはリアルさを追求して、余計な情報を非表示にしているものが多いですが、ジャンルやタイトルによって、どういうところを遊んでほしいのか、そのためにはどういう情報が必要・不要なのかが変わってくると思います」

齊藤氏「UIに対する考え方の違いがあるのではないでしょうか。例えば、ドラゴンクエストは、コマンドの階層を深くすることで、初めてゲームに触れる人でも直感的にわかるようになっていると思います。反対に海外のゲームは、表示されているボタンを押すだけで機能がすぐ使えるようになっているものが多いイメージですね。とはいえ、“絶対的にこうすればいい”という答えはないのかもしれません。タイトル・バイ・タイトルで検討はすべきですが、できないことを無理してやるべきではないでしょう」

安田氏「我々もUIは改善に苦しんだ部分ですね。齊藤さんのおっしゃった通り、ゲーム文化によって考え方の違いがあるのではないでしょうか」

辻本氏「MHにはユニークな操作方法もあり、海外のFPS(一人称視点のシューティングゲーム)で慣れている人にとって、ガンナー(弓、ライトボウガン、ヘビィボウガンなどの武器を使用するプレイヤー)は操作が特に難しかったのではないでしょうか。今作では改善はしましたが、あくまでシリーズもののタイトルなので、いままでのユーザーに“プレイしやすくなった”と感じてもらうことも大事です。また、海外だけでなく、初めてプレイする人が操作しやすいか否かもしっかりと議論を重ねました」

国が異なればゲーム文化も異なる。すべての人にとって満点のUIを実現するのは難しいだろう。そのなかで、3者は今後どのようなビジョンで日本のゲームを世界に発信していくのか。

安田氏「極端な弱点については、克服していくべきだと思っています。しかし、作品の評価されている部分は変えてはいけないので、大事なところを伸ばしていきたいですね」

齊藤氏「ニーア オートマタでは、バランスを重視することで狙い通りの結果を得られたと考えています。もしニーアの次回作があれば、今作と同様に、まだまだ上を目指せる“及第点”をさらに高い“合格点”へと引き上げていきたいですね」

辻本氏「いただいた意見を受け止めつつ、例えば、UIについてももっとかみ砕いて、どこをどう変えていけばいいのか分析する必要があるでしょう。また、プレイヤーの声をもっと聴いていきたいですね」

日本製のRPGを意味する「JRPG」という言葉があるように、これまで日本のゲームは比較的ドメスティックに作られてきた。しかし、世界的に日本のゲームへの注目度は高く、国内だけを向いて作るという時代は変わってきている。

今後、各ゲームメーカーが聴くべきユーザーの声はどんどんグローバルになっていくだろう。世界中のプレイヤーに向けて作られるゲームがどのように進化していくのか、展開が楽しみだ。

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新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。