世界的ヒット作の生みの親に聞く、日本ゲームが世界で勝つためのヒント

世界的ヒット作の生みの親に聞く、日本ゲームが世界で勝つためのヒント

2018.09.27

MHW、NieR:Automata、仁王の制作者がプロモーションの裏話を紹介

海外ユーザーアンケートから見る日本産ゲームの弱点とは?

3者が考える日本ゲームが世界で勝つために必要なこと

「I just set up a trap!」
「Thanks for the help!」
「I've set a Health Booster!」

ハンティングアクションゲーム『モンスターハンター:ワールド(MHW)』をプレイしていると、多種多様な言語が飛び交うことがある。オンラインで世界中のプレイヤーと一緒にモンスターを狩りに行くことができるMHWには、意思疎通を図る手段として、あらかじめ設定した文章を画面に表示させる定型文機能が用意されているのだ。

各言語に自動翻訳される定型文もあるが、手動で入力したオリジナルのメッセージなどはそのままの言語で表示される。英語であればまだしも、スペイン語やハングルなどが表示されると、正直なにを言っているのか筆者にはわからない。しかし、それもまた、国際色豊かなユーザーがプレイしている証拠だろう。

自動定型文のイメージ。ちなみに筆者の場合、モンスターに拘束されると「ねぇお願い、元のさやかちゃんに戻って!」と、自動で叫ぶ設定になっている。海外プレイヤーが見たら、きっと「わけがわからないよ」と言うはずだ

近年、ゲームは「日本国内だけで販売されるもの」ではなくなった。オンラインによるコンテンツ配信や、海外販社と連携した展開などによって、いかに海外での販売数を伸ばすかが重要になってきている。

そのような市場環境もあってか、2018年9月20日から4日間にわたって開催された「東京ゲームショウ2018(TGS2018)」では、「日本発グローバル・ヒットタイトルに学ぶ、国産ゲームが世界で勝つ方法」をテーマにした講演が開かれた。カプコン 『モンスターハンター:ワールド』プロデューサーの辻本良三氏、スクウェア・エニックス 『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』プロデューサーの齊藤陽介氏、コーエーテクモゲームス 『仁王』ディレクターの安田文彦氏の3名が登壇し、それぞれの作品が世界的にヒットした理由について話していたので、本稿ではその内容を紹介しよう。

7割以上の海外比率を実現した『MHW』

最初に登壇したのはカプコンの辻本氏。モンスターハンター(MH)は2004年から10以上のタイトルが発売されているシリーズだ。最新作であるMHWは世界累計出荷本数が1000万本を超え、シリーズのなかで最高記録を更新したことでも話題になった。過去のMH作品でも欧米市場に対する取り組みは行ってきた同社だが、今作はどのような点に注力したのだろうか。

辻本氏「2008年に発売された『モンスターハンターポータブル2ndG』の海外比率は14%でした。そこで浮き彫りになった課題を解決すべく、チュートリアル強化やオンラインマルチプレイ提供を行った結果、『モンスターハンター4G』では30%まで海外比率が上昇。さらにMHWでは、ユーザーからの『据え置き機への要望』に応えるとともに、4KやHDRの対応など『AAAの水準のクオリティとボリュームの実現』という、海外タイトルではもはや当たり前にやっていることを目指しました」

シリーズの経験を生かして徐々に海外比率を高めてきたMH。最新作でも世界を見据えた目標を設定した。

辻本氏「そこで掲げたコンセプトが“最新技術を使って世界一のマルチプレイ・ハンティングアクションを作る!”というものです」

カプコンの辻本良三氏
過去MHシリーズの欧米市場への取り組みと過去作の海外比率

MHシリーズの大きなコンセプトでもある“マルチプレイ・ハンティングアクション”を改めて意識しつつ、最新作では世界で勝負することに一層注力し、システム開発やプロモーションを実行。具体的には「世界同日発売」や「ワールドワイドマッチング」、シリーズ最多の「12言語へのローカライズ」などに取り組んだという。

辻本氏「また、プロモーションでは、開発初期から海外販社と入念な連携を行うことで、開発陣にも販社の生の声やユーザーの温度感を伝えることができたと思います。加えて、E3(海外で行われるゲーム見本市)で作品の発表をしてから発売後まで、北米、欧州、日本、アジアのバランスを考えながら、各国でイベントを実施いたしました」

発売後も積極的に各国でイベントを開催しているMHW。今回のTGS2018でも、各国の予選を勝ち抜いた代表者による、モンスター討伐のタイムアタック大会「DREAM MATCH」が行われた。

そのほか、「日本・アジア」と「北米・欧州」で商品パッケージや広告などのデザインを変えたり、新規ユーザーが手に取りやすいようにタイトルのナンバリングをつけなかったり、開発担当者が同行して欧米でテストプレイを実施したりと、グローバルを意識して取り組んだ結果、MHWでは海外比率が71%と、大幅な海外ユーザーの増加に結びついたのである。

地域によって異なるパッケージデザイン
現地ユーザーの温度感が伝わった結果、71%という海外比率を実現した

バランスを取ることで成功を収めた『ニーア オートマタ』

続いて、アクションRPG『ニーア オートマタ』のプロデューサーの齊藤氏にバトンが渡った。

スクウェア・エニックスの齊藤陽介氏

齊藤氏「まず我々は、前作『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』の反省点を考えることからスタート。同作では、ヨコオタロウ氏の考える世界観に加えて、岡部啓一氏をはじめとするMONACAスタッフの作曲する音楽について、非常に高い評価をいただきました。その反面、決してダメだったわけではありませんが、世界市場を見据えた場合にまだ伸ばすことのできるキャラクターや、アクションゲームとしての完成度を“及第点”と考え、それらをさらに高い“合格点”へと引き上げるよう試みました」

ニーア オートマタは累計出荷・DL販売本数が300万本以上のアクションRPG。前作で「まだ伸びしろがある点」について、さらなる向上を目指したという。そこで、キャラクターデザインに『ファイナルファンタジーXIV』でアートディレクターを務めた吉田明彦氏を起用し、ゲーム開発をアクションゲームの開発に定評のあるプラチナゲームズに依頼。なにか1つに秀でるゲームではなく、全体のバランスを取ることを意識した。

齊藤氏「プロモーションで効果があったと考えられるのは、ゲームタイトルの発表会をコンサートスタイルにしたことと、発売後にMONACAの楽曲を主軸としたコンサートを実施したことです。発売後のコンサートについては、ゲームの発売前にコンサートのチケット販売を行ったので、どこまで集客できるか不安でしたが、ありがたいことに連日満席でした」

実際、同作のサウンドトラックは、オリコン週間CDアルバムランキングで2位を獲得するほど、高い人気を誇っている。

効果があったと齊藤氏が考えるプロモーション例

齊藤氏「また、視聴者にはネタバレがあることを事前に伝えたうえで、出演声優さんに作品のおもしろさを話してもらう座談会を開催しました。その結果、ユーザーも積極的にSNSで発言してくれるようになったと思います」

SNSでは、なかなかネタバレ発言をしにくいもの。しかし、それではクチコミも広がりづらい。そう考えた齊藤氏は、あえて公式がネタバレをすることで、SNSでの拡散を狙った。

齊藤氏「とはいえ、ゲーム開発には数年間を要することが当たり前になってきています。ニーア オートマタの内容をトレースしたところで、成功できるかはわかりません。大切なのは開発者がテンションをキープすること。“生みの苦しみ”は重々承知しています。しかし、最終的にいいものを生み出すのは、開発の時間を楽しく有意義にできるかが大切なのではないのでしょうか。もちろん、アイデアには旬があるので、ベストな時期でのリリースは大前提です」

3度の体験版と12年の開発期間が話題を呼んだ『仁王』

コーエーテクモゲームスの安田氏は、世界で200万本以上の販売台数を誇るアクションRPG『仁王』において、開発の観点から大きな影響のあったアプローチを紹介した。

安田氏「我々は発売の10カ月前にα体験版を配信しました。そこで得られた難易度調整やインターフェース改善などのフィードバックを反映して、その4カ月後に再度β体験版を配信。そして、一般的なものに近い最終体験版を発売直前に配信しました。αと比較すると、β版はユーザーアンケートの評価が上がっていることがわかります」

コーエーテクモゲームスの安田文彦氏
3回配信された体験版
αとβのアンケート結果比較。赤が「Very good/Good」、黄色が「Normal」、グレーが「Very bad/Bad」だ

従来の体験版は、完成したゲームの一部を切り出して発売前に配信するケースがほとんど。しかし、仁王の場合は開発途中の段階から3回の体験版を配信した。そして都度、改善内容を公開することで、意見をしたユーザーにも納得してもらえるように工夫。自分の意見が反映されたところをβ版で確認できるようにすることで、ファンを構築できたのではないだろうか。

安田氏「体験版で世界中の人に触ってもらえて、海外では、なにが好かれてなにが嫌われるのか、分析しながら開発できた点が最終的な評価につながったのではないかと考えています。また、ソニーさんとパブリッシュのパートナー契約を結んで、欧米とアジアに展開できたことも後押しになりました」

そして安田氏は、個人的な意見としてもう1つ話題を呼んだ理由を分析する。

安田氏「そもそも仁王は2005年に発表され、発売まで12年の歳月が経過しました。そのため、国内では『仁王先輩』と呼ばれ、“ネタ”として扱われている時期もあったと認識しています。しかし、体験版を公開することで、仕掛け人である社長のシブサワが本気で作っていることが伝わり、ストーリーが生まれ、バズる結果になったのではないでしょうか」

海外でUI評価の低い日本産ゲームが、世界で勝つために必要なことは?

今回、同講演を開催するにあたって、コアな海外ゲームユーザー700人を対象に、日本産ゲームの意識調査を実施。日本ゲームの長所や短所などについて意見を聞いた。

日本産ゲームの長所(左)と短所(右)

アンケートでは、海外ユーザーにとって「日本製ゲームは操作性、ユーザーインターフェース(UI)がよくない」ということが見てとれる。この結果について、3人はどう思っているのだろうか。今後日本ゲームが世界で勝つために必要なこととあわせて、考えを聞いた。

辻本氏「たしかに、海外タイトルはリアルさを追求して、余計な情報を非表示にしているものが多いですが、ジャンルやタイトルによって、どういうところを遊んでほしいのか、そのためにはどういう情報が必要・不要なのかが変わってくると思います」

齊藤氏「UIに対する考え方の違いがあるのではないでしょうか。例えば、ドラゴンクエストは、コマンドの階層を深くすることで、初めてゲームに触れる人でも直感的にわかるようになっていると思います。反対に海外のゲームは、表示されているボタンを押すだけで機能がすぐ使えるようになっているものが多いイメージですね。とはいえ、“絶対的にこうすればいい”という答えはないのかもしれません。タイトル・バイ・タイトルで検討はすべきですが、できないことを無理してやるべきではないでしょう」

安田氏「我々もUIは改善に苦しんだ部分ですね。齊藤さんのおっしゃった通り、ゲーム文化によって考え方の違いがあるのではないでしょうか」

辻本氏「MHにはユニークな操作方法もあり、海外のFPS(一人称視点のシューティングゲーム)で慣れている人にとって、ガンナー(弓、ライトボウガン、ヘビィボウガンなどの武器を使用するプレイヤー)は操作が特に難しかったのではないでしょうか。今作では改善はしましたが、あくまでシリーズもののタイトルなので、いままでのユーザーに“プレイしやすくなった”と感じてもらうことも大事です。また、海外だけでなく、初めてプレイする人が操作しやすいか否かもしっかりと議論を重ねました」

国が異なればゲーム文化も異なる。すべての人にとって満点のUIを実現するのは難しいだろう。そのなかで、3者は今後どのようなビジョンで日本のゲームを世界に発信していくのか。

安田氏「極端な弱点については、克服していくべきだと思っています。しかし、作品の評価されている部分は変えてはいけないので、大事なところを伸ばしていきたいですね」

齊藤氏「ニーア オートマタでは、バランスを重視することで狙い通りの結果を得られたと考えています。もしニーアの次回作があれば、今作と同様に、まだまだ上を目指せる“及第点”をさらに高い“合格点”へと引き上げていきたいですね」

辻本氏「いただいた意見を受け止めつつ、例えば、UIについてももっとかみ砕いて、どこをどう変えていけばいいのか分析する必要があるでしょう。また、プレイヤーの声をもっと聴いていきたいですね」

日本製のRPGを意味する「JRPG」という言葉があるように、これまで日本のゲームは比較的ドメスティックに作られてきた。しかし、世界的に日本のゲームへの注目度は高く、国内だけを向いて作るという時代は変わってきている。

今後、各ゲームメーカーが聴くべきユーザーの声はどんどんグローバルになっていくだろう。世界中のプレイヤーに向けて作られるゲームがどのように進化していくのか、展開が楽しみだ。

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自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。