新iPhoneで話題の「eSIM」って、そもそも何? GSMA規格に対応?

新iPhoneで話題の「eSIM」って、そもそも何? GSMA規格に対応?

2018.09.19

新型iPhoneが採用発表して話題の「eSIM」を解説

「Apple SIM」との違い、GSMAの標準規格に対応か

日本のeSIMサービスは新型iPhoneで使える?

アップルが発表した新しいiPhone。今回は「iPhone XR」「iPhone XS」「iPhone XS Max」という3モデルが登場したが、その中でも注目の機能の一つが「eSIM」の採用だ。eSIMとはどんな機能なのか。

参考記事:新型はiPhone XSとiPhone XR、Apple Watchも刷新
https://biz.news.mynavi.jp/articles/-/1992

参考記事:大手キャリアも「eSIM」採用が相次ぐ(2017年の記事)
https://biz.news.mynavi.jp/articles/-/818

eSIMとはソフトウェアで物理SIMの機能を実現するもの

eSIMはEmbedded SIM(埋め込みSIM)の略で、物理的なSIMカードではなく、ソフトウェアでSIMの機能を実現するものだ。そもそもSIMとは、「Subscriber Identity Module」の略称で、加入者の情報を記録するためのICチップを搭載したプラスチックカードをSIMカードと呼んでいる。このSIMカードを端末に挿すと、通信時に契約者情報などが送信され、携帯電話会社(キャリア)が契約を確認して、加入状況に応じたサービスを提供できる。

こうした仕組みにより、主に海外ではSIMカードを抜き差しして端末を切り替えて使うことが一般的だった。標準のSIMカードはクレジットカードサイズだが、その後ミニSIM、マイクロSIM、ナノSIMとどんどんサイズが小さくなってきた。歴史的には既に25年以上も使われている技術だ。

契約者情報が埋め込まれるため、基本的には改ざんなどの攻撃に対する耐タンパー性(解析のしにくさ)が求められる。これはセキュアエレメントとしてICチップ内で保護されているが、この情報を安全に端末内にダウンロードして設定を書き換えられれば、SIMカードを物理的に挿入する必要がなくなる。

これを実現するのがeSIMだ。物理的なSIMカードと同等レベルの安全性を実現するため、現在は世界の携帯電話業界の団体であるGSMAが規格を策定し、標準仕様となっている。

契約切り替えが容易になり、海外旅行などでメリット

eSIMを使うと、SIMカードを差し替えるように端末に紐付く契約を切り替えられる。端末を買い換えたら、その端末に契約情報をダウンロードして書き込めば、SIMカードを使わなくても通信が行える。別の端末を使うときも、情報を書き換えるだけでいい。インターネット経由でキャリアと新たに契約した場合も、SIMカードの到着を待たずに、その契約データを端末に書き込めばすぐに通信ができる、というのもメリットだ。

複数のキャリアの情報を一つの端末に書き込めるので、海外旅行に行ったら現地のキャリアと契約して、日本に戻ったら国内のキャリアに切り替える、といったことも簡単にできる。

海外によく行く人だと、毎回スマートフォンのSIMカードを差し替えて現地のSIMカードを挿して使う、という場合も多いだろう。eSIMであれば、差し替えの手間はなく、現地に着いたら、スマートフォンの画面から契約したキャリアに切り替えるだけで済む。

eSIMの仕様は「Remote SIM Provisioning」と呼ばれている。仕様では、まずユーザーがキャリアとの契約を行う。オンラインで契約してしまえばショップに行く必要もない。その後、SIMの書き換えのためにキャリアのRemote SIM Provisioningシステムに接続。この接続にはQRコードを使う例が一般的で、端末のカメラで読み取ってアクセスする。そこからSIMプロファイルがセキュアにダウンロードされ、これをインストールしてアクティベートすれば完了となる。仕様上は、どのキャリアのネットワークに繋がっていてもプロファイルをダウンロードして切り替えができるようになっていなければならないようだ。

新しいiPhoneの「eSIM」はGSMA標準規格か

アップルは、以前からiPadの一部モデル向けに「Apple SIM」と呼ばれる機能を提供しており、似たようなことはできていた。ほかにもGlocalMeがクラウドSIMと呼ばれるサービスを提供している。どちらも、対応する事業者との契約から通信開始までを全てワイヤレスで実行できるが、正式には標準規格で定められたeSIMではない。

逆に、新しいiPhoneでは明確に「eSIM」と表現しており、Apple SIMとは呼称していない。これは、GSMAが定めた標準規格に則っているからだろう。

新しいiPhoneが、こうした仕様に準拠しているかどうかは現時点では分からない。ただし、新しいiPhoneのeSIMソリューションを提供しているのはG+D Mobile Securityのようだ。これは、iPhone発表の当日、米国ロサンゼルスで開催されていたMobile World Congress Americas 2018の会場のG+Dブースで筆者が確認した。同社によれば、新しいiPhoneのeSIMは、GSMAの標準規格に従ったものだということだ。

MWC AmericasのG+Dブースに展示されていたeSIM対応端末
同G+Dブースの、こちらはIoTデバイス向けのeSIMチップ

国内ではIIJがフルMVNOでのeSIMの提供を目指しており、すでにSurface Pro LTE Advancedでの動作検証を行っているという。同PCはeSIMの規格に準拠しており、これもG+Dがソリューションを提供しているため、基本的には新しいiPhoneでも利用可能になると想像できるが、これも現時点では何とも言えない。

新しいiPhoneのeSIM対応では、すでに国外のいくつかのキャリアの名前が挙がっているが、国内3キャリアの名前は出なかった。これに対してソフトバンクは前向きに対応を検討しているという。KDDIも「デュアルSIMの機能使ったサービスで、新しい価値を提供できるように検討中」としている。

ソフトバンクはすでにIoTデバイス向けのeSIMサービスを提供しているし、KDDIもWindows 10を搭載したeSIM対応のAlways connected PCに対してeSIMの通信プランを提供しており、これはSurface Pro LTE Advancedを含めたPC向けのサービスということで、iPhoneにも適用できる可能性はあるだろう。

それに対して、NTTドコモは「お客様のニースや反応を見ながら検討する」とのコメントにとどまっているが、同社も法人向けの「docomo IoT回線管理プラットフォーム」を提供しているほか、タブレット端末の「dtab」でeSIMをサポートしている。

3社ともすでにこうしたeSIMソリューションを提供しており、各社のeSIMプラットフォームはGSMAのRemote SIM Provisioning規格に対応していることから、iPhoneのeSIM対応サービスの提供は可能そうだ。

デュアルSIMがスタンダードになれば世界が変わる

グローバルを含めて、eSIMの用途は基本的に当初はプリペイドでの使い方がメインになるだろう。iPhoneが物理SIMのスロットとeSIMのデュアルSIM構成なので、物理SIMとして普段使っている自国のキャリアのSIMを入れて、海外では現地のキャリアをプリペイド契約して使う、という方法が想定できる。

海外でのプリペイド利用だけでなく、物理SIMをメイン回線、eSIMはサブ回線という場合に、簡単に契約が書き換えられるeSIMならキャリアの乗り換えがより容易になる、というメリットもある。物理的なSIMが不要なので、SIMカードの差し替えも必要なく、どこにいても即座に契約が変更できるというユーザーにとってのメリットは大きい。

もっとも、現実的には「乗り換えやすさ」をキャリアが嫌う可能性はある。プリペイド契約が少ない日本では頻繁にキャリアを切り替えることも多くはないが、2020年を前に、海外からの旅行者が簡単に現地の通信サービスを契約できるというメリットもあり、まずはそうした面からの対応は期待できる。

eSIMに対応するコストもあるため、世界各国でeSIMが使えるわけでもなく、物理SIMは当面なくならないが、iPhoneが対応したことで、今後スマートフォンメーカーも追従する可能性もある。当面は、物理SIMのデュアルスロットの方が便利だが、世の中の変化が始まるきっかけにはなりそうだ。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。