クラウドファンディングは「1万人超の製作委員会」海外が求める日本アニメへの挑戦

クラウドファンディングは「1万人超の製作委員会」海外が求める日本アニメへの挑戦

2018.09.20

近年、海外で「日本のアニメ」の需要が高まっている

いち早く海外需要を意識して作られた「UNDER THE DOG」

「1万3000人の製作委員会」が生んだこの作品の「お金の話」を激白

日本独自の文化・産業として、「アニメ」の存在感が高まる昨今。産業面は好調な一方、従事するクリエイターの賃金や収益構造が問題視されており、消費者、つまりアニメファンが「お金の動き」に注目している度合いは高い。

クラウドファンディングで資金を集めて2015年に本編を公開、2018年に入って劇場版も展開した「UNDER THE DOG(アンダーザドッグ)」は、そうした「お金の動き」が既存のアニメとは異なる事例として象徴的だ。

国内のTVアニメの製作費用は、複数の企業が予算を持ち寄って企画を立ち上げる「製作委員会方式」によって捻出されている。消費者が直接作品に寄付をするクラウドファンディングは、こうした既存の資金構造とは真逆とも言える。

アニメファンの側からすれば一見すると理想的にみえる"民主的な製作フロー"は、実際のところ、クリエイティブの現場にどのような作用を与えたのだろうか?

今回は、ポップカルチャーとテクノロジーのイベント「YouGoEX」にて行われたアニメカンファレンス「世界から見た日本のアニメの潮流とKickstarterではじめて成功した日本アニメ『UNDER THE DOG』のレポートをお届けする。

世界に広がる「日本アニメ」

同カンファレンスは、CiP協議会が連続開催しているうちのひとつで、YouGoEXとコラボレーションして開催されたもの。冒頭は、モデレーターを務めたジャーナリストの数土直志氏が、海外でも広がりを見せる日本のアニメ産業の現状を解説した。「UNDER THE DOG」は、「アメリカの視聴者をターゲットにした日本アニメ」だからだ。

日本アニメの産業規模は、ここ7年ほど右肩上がりの成長を見せている。これは舞台、声優などアニメ周辺産業が広がっていること、海外での需要拡大が要因にあるという。アニメ産業市場のうち35%は海外市場における売り上げだ。

海外における日本アニメ市場の推移

2005~2006年ごろ、海外ではアニメの海賊版ソフトが横行するなどの逆風が吹いたが、現在はネット配信が普及。特にアメリカ、中国では正規配信が進み、国内同日配信により、日本との時差なく日本アニメを体験できるようになった。

かつて”巨大なニッチジャンル”と言われていた日本アニメだが、数土氏は「海外でアニメを消費する人々からみても、すでに日本アニメはメインカルチャーに入っている」とコメント。2000年代に急拡大したアニメコンベンションは全世界で開催されており、特に大規模なアニメエキスポ(米国)では延べ動員35万人という巨大イベントとなっている。 

また、サンライズとハリウッドの協業によるハリウッド版ガンダムの製作、「君の名は。」のコミックスウェーブフィルムが中国の企業と協業したアニメ映画「詩季織々」など、国内の制作会社が海外のオファーを受けた取り組みが目立つようになってきたことに触れた。

こうした拡大傾向は好ましい一方で、アメリカなど国外においても、日本アニメのスタイルが生み出せるようになってきていることを指摘。ここに日本企業がどう関わるかが重要になると語った。

さて、日本アニメのテイストが海外において求められている潮流を、「UNDER THE DOG」のプロジェクトではどう利用していったのだろうか。

アメリカで求められる「日本アニメ」を狙った

ここで、「UNDER THE DOG」の発起人のひとりであるゲームデザイナー/原作・脚本家のイシイジロウ氏と、同プロジェクトの運営に携わったプロデューサー・片岡義朗氏にバトンが渡った。

イシイジロウ氏(ゲームデザイナー/原作・脚本家/映画監督) チュンソフト、レベルファイブにおいて主にADVのシナリオ監督プロデュースを務めた後2014年に独立。2015年に起業(ストーリーテリング社)。「モンスターストライク」(3DS・アニメ)やTVアニメ「ブブキ・ブランキ」(2016)、実写映画「女流棋士の春」など。

まず、「UNDER THE DOG」は、先に数土氏が解説したような海外との協業企画ではなく、国内発・国内制作の企画だった。近年、Netflixが出資した「日本アニメ」が製作されているが、こうした流れが起こる前に、インディーズで作られたものだ。

この企画が動き出した2014年ごろ、アメリカには「見たいと思える日本アニメがなかった」という人が多かった、とイシイ氏。当時の日本ではいわゆる「ハーレムもの」や「日常もの」など、若い女性が多く登場する作品が百花繚乱となっていた一方、アメリカで好まれるのは「AKIRA」「攻殻機動隊」など90年代に作られたコアな作品で、ニーズが満たされていなかったのだ。

彼らが見たい「90年代のアニメ」をぶつける。そうした狙いで、「UNDER THE DOG」は始まった。

折しも、Kickstarterをはじめ、クラウドファンディングがあらたな収益方法として話題になっていた2000年初頭。ゲーム業界では、インディーズゲームの開発プロジェクトなどが多く見られたが、イシイ氏はレベルファイブ在籍中だったためゲームを職務外で作ることは叶わず、90年代に作ったアニメの企画が成就せず残っていたことも状況と合致した。

ただ、発案当時は斬新だった「銃と少女」の組み合わせも、同ジャンルの作品が多く生まれたことで陳腐化しつつあった。そこで、無敵の女の子が活躍するストーリーではなく、彼女たちを「90年代のシビアな世界に置いてみたらどうなるか」と、ストーリーを現代にそって調整した。

高額寄付が一点赤字に、誤算と反省

片岡嘉朗氏(プロデューサー/コントラ代表)

ここからは、片岡氏による「お金の話」に移る。クラウドファンディングは、募集期間を1カ月、58万ドル(約6500万円)集まれば成功という目標設定でスタート。しかしフタを開けて見れば、追加販売分を含めて91万ドル(約1億円)もの金額が集まった。支援者の数は1万3000人程度、92%が外国人で、日本人はわずか8%だった。コンテンツの狙い通り、「海外の日本アニメファン」に支持された。

ここまで見れば大成功…だが、最終的な収支は「数千万円の赤字」。制作費は想定の10%程度の予算超過で、これは現場の頑張りとしてはありうる超過といえるとのこと。だが、ビジネスの部分で想定外の費用が膨らんで寄付収入を上回ってしまい、結果的に著作権を持つことになったアニメ制作のキネマシトラスが、それを引き受けることになってしまった。

イシイ氏は、安藤真裕監督、コザキユースケ氏など、これまで関わりのあった一線級のクリエイターに声をかけた一方で、「自らの名前を前面に出し、ファンディングをしたという枷もあり、そのプレッシャーからかクオリティ的に暴走してつくってしまったところもあるかも知れない」と振り返る。片岡氏も、「現場としては、クオリティが著しく高いものを作って初めて寄付した人に喜んでもらえるという意識があった」と付け加えた。

また、赤字の最大の原因は、クラウドファンディングという資金募集形態にあった。業界に前例がなく、さまざまな部分で対応が後手に回ってしまった。

日本のアニメでとられる資金調達方法として「製作委員会方式」があるが、参加企業は3~12社程度だという。一方、クラウドファンディングはファンによる少額寄付を集めるものだが、結果として「クライアントが1万3000人いる製作委員会」のような状況になってしまった。出資者一人ひとりから、プロジェクトの進捗やリワード(寄付の対価となる物品などのこと)に関する問い合わせが次々に届くため、その対応を行うための専用のシステムとそれを運用する人員を確保しなければならなかった。

2016年当時、公式アカウントのツイートは英語で行われていた。

寄付プラットフォームのKickstarterはアメリカ企業で、支援者の大半も英語話者であったことから、問い合わせから契約書類まで、語学スキルを持つスタッフによる対応システムの構築が急務となった。契約関連の業務では翻訳のみならずKickstarter側との交渉を行わなくてはならず、こうした部分込みで行える人材の雇用は当然費用がかかる。加えてKickstarterの利用にはアメリカに現地法人を置くことが必須で、こうした体制づくりすべてを行うのは非常に厳しかったという。

また、Kickstarterの仕組みとして、寄付の対価(リワード)を渡す約束をしていた。「リワードの種類が多い方が多くの寄付が集まる」というTipsを参考に、作品のBlu-rayソフトやグッズなどさまざまな物品を用意したが、それぞれの製作手配や配送などが必要で、募集開始時点では想定していなかった事務コストがかさんでしまった。

その上、アメリカの郵便と物流の事情は日本のそれとは大きく異なり、配送だけで全く想定していなかった事態が勃発。そのあらゆる事柄に、別途の費用がかかってしまった。たとえば、中止にしたリワードの寄付者に、返金か別リワードへ移行かの選択を依頼する連絡などのため、問い合わせ対応を全件完了させるまで公式サイトの公開時期を延長したことで、サーバ費用などの維持費も膨らんだ。

ちなみに、作品に寄付するほどのファンなら大丈夫だろうと作品データの配布をリワードに含めたところ、違法アップロードが世界的規模で大量に見つかったという。作り手からすれば、この作品の収益は二次利用で上げることを考えていたにも関わらず、その最終的な目標に対して致命的な打撃となる、ガックリしてしまうようなトラブルも明かされた。

赤裸々に失敗談が語られたが、片岡氏は「当然、次からはこうしたノウハウがあるので、赤字にはならないし、Kickstarterが無ければこの映像著作物が生まれなかったのは事実で、この仕組みには感謝している」とコメント。

そしてイシイ氏は、「PVの制作費だけを集めるのなら、こうした顛末にはなっていなかった。全制作費を集めようとするとトラブルが起きがち。中国資本のクラウドファンディングも注目されているのでまだまだ活用の余地はある」と語った。ただし、お金の回収に着目しすぎず、現場の事務作業や実際に使える金額を確認した上で進行しないといけない、とつけたした。

表現のローカライズにひそむ危険

最後に、数土氏から日本と海外の比較をベースとした質問が投げかけられた。

「日本と世界で好まれる表現の違いは?」という問いに対し、イシイ氏は、「日本のほうが規制について言われる部分は多い」とコメント。戦闘シーンなどの暴力表現、政治的な内容などについては海外のほうが自由度は高いという。

一方、片岡氏は、プロデューサーの視点から、日本アニメが海外に「合わせすぎる」ことに警笛を鳴らす。白黒つけない決着のような日本らしさが支持を受けている大きな要素のため、過度なローカライズは必要ないと断言。かつて「遊☆戯☆王」の米国展開を手がけた際、現地の関係者から「(気弱な表遊戯はヒーローらしくないため)主人公は裏遊戯だけにしてほしい」とリクエストされたエピソードを例に挙げ、「ヒーローは強くあるべきというアメリカの観念に屈したら原作の持ち味は崩れてしまう」とコメント。日本の漫画・アニメの持つ「らしさ」を守るべきと強く訴えた。

講演の主題となった『UNDER THE DOG』だが、直近では2018年6月23日~7月6日にかけて、国内の3劇場で劇場版『UNDER THE DOG Jumbled [アンダー・ザ・ドッグ/ジャンブル]』を公開した。映画館での上映は終了しているが、オンラインストアでのBlu-ray通販は行われている。作品が気になった人はこちらでチェックしてみてほしい。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる