「シリコン・バレー」ならぬ「ライフサイエンス・バレー」になれるか!? 日本橋の新たな挑戦

「シリコン・バレー」ならぬ「ライフサイエンス・バレー」になれるか!? 日本橋の新たな挑戦

2016.06.07

東京「銀座」は銀貨を鋳造した施設があったことからその名がついた。一方、銀座があるのだから金貨を鋳造した「金座」も当然にあった。だが、金座のあった場所には日本銀行が建てられ、金座という地名は定着しなかった。貨幣鋳造の機能を失いながらも地名として残った銀座……貨幣発行を司る国の中央銀行が存在しながらも地名にならなかった金座。両者を比べると、何か感慨深いものがある。そして、その金座のあった場所一帯は“日本橋”と呼ばれている。

一般社団法人「LINK-J」を立ち上げた三井不動産

三井のシンボルのひとつ「三井本館」。この西側に日本銀行がある

この日本橋の再開発を強力に推し進めているのが三井不動産だ。日本橋三井タワーやコレド日本橋、コレド室町などの再開発を手がけ、日本橋の様相を大きく変化させている。それもそのはず、日本橋・室町は三井グループの前身である呉服店「三井越後屋」があった場所で、いわば創業地ともいえる土地。越後屋のあった場所には現在、三井本館がかまえ、三井グループの象徴として認識されている。

そんな日本橋を「ライフサイエンス」の中心地にという構想がスタートした。これは、日本橋を医療や健康に関わる新産業が育成できる街にしようという取り組みで、三井不動産やアカデミア有志が中心となり、一般社団法人「ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン」(LINK-J)を設立した。

医療や健康に関わる新産業の育成と前述したが、同財団が考える対象産業の幅は広範だ。医学をはじめ理学、工学、ICT、人工知能といった新たなテクノロジー分野において、人的交流・技術交流を促すのがLINK-Jの役割としている。

LINK-Jの理事長には慶應義塾大学医学部長 岡野栄之氏が就き、副理事長には大阪大学大学院医学系研究科長 澤芳樹氏が就任する。三井不動産 常務執行役員 植田俊氏が理事を務め、そのほか特別委員には、理化学研究所 理事 松本洋一郎氏や京都大学 iPS細胞研究所 所長 山中伸弥氏などが名を連ねる。まさに“産官学”が一堂に会した陣容だ。

LINK-Jのロゴを掲げる、左から三井不動産 代表取締役 社長 菰田正信氏、LINK-J 理事長 岡野栄之氏(慶應義塾大学医学部長)、LINK-J 理事 植田俊氏(三井不動産 常務執行役員)

具体的な取り組みとしては、ライフサイエンスに関わる企業や学校法人などにオフィス、カンファレンス会場を提供することなどが挙げられる。そうした企業などに用意されるのが「日本橋ライフサイエンスハブ」「日本橋ライフサイエンスビルディング」「日本橋ライフサイエンスビルディング2」の3拠点だ。

コレド室町3の8階スペースが日本橋ライフサイエンスハブとなる

まず、日本橋ライフサイエンスハブについてだが、コレド室町3が入居する室町ちばぎん三井ビルディング8階の約1,030平方メートルが充てられる。国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」が入居するほか、200人以上の参加者を収容できるカンファレンスルームが利用できる。LINK-Jやそれに関わる企業の発表会などが行われる象徴的な拠点だ。

日本橋ライフサイエンスビルディングには、LINK-Jに関わる主要企業、学校法人、一般社団法人などが入居する。たとえば企業ではバイオファーマ・フォレストやクオンタムバイオシステムズなど、学校法人では大阪大学、京都大学、東京大学、東北大学など、社団法人ではLINK-Jそのものやイノベーションフォーラム、未承認薬等開発支援センターなどが入居する。専有面積は3拠点の中でもっとも広く、約6,240平方メートルとなり、中核拠点といえる。

ベンチャー支援も視野に

日本橋ライフサイエンスビルディング2は、専有面積約1,340平方メートルで、医療・健康などに関わるベンチャーが入居する。三井不動産はベンチャー支援プログラム「31VENTURES」を展開するが、まさに「31VENTURES life Bridge ニホンバシ」がこれに充てられる。31VENTURESでは、三井不動産による直接出資のほか、グローバル・ブレインによるファンドも用意され、資金面でのサポートも可能だ。

左:日本橋ライフサイエンスビルディング、右:日本橋ライフサイエンスビルディング2

三井不動産がLINK-Jをこれほど強力に推進する背景には、“産業を育てることこそデベロッパーの役目”と考えているからだろう。オフィスビルやレジデンスを建設しても、そのビルに入るテナントや人がいなければただの“箱”だ。

そしてもう一点、日本にシリコン・バレーのようなイノベーション豊かな街を誕生させたいというねらいが明白だ。シリコン・バレーはICT企業の集積地で、アップルやHPといった巨大企業を育て上げた。

製薬メーカーが集中する街

もともと日本橋は五街道の起点で、物産の集積地だった。その名残は今でも色濃く残り、三井越後屋は三越デパートに受け継がれ、白木屋は東急百貨店として存続している。呉服屋以外にも乾物問屋が軒を連ね、その姿は今でも健在だ。それ以外に、薬問屋が多かったことでも知られている。複数の製薬会社が日本橋に拠点をかまえているのがその名残といえるだろう。

たとえば山之内製薬と合併してアステラス製薬となった藤沢薬品工業は日本橋に東京本社を置いていた。現在も日本橋アステラス三井ビルディングとしてその本社機能を残している。そして、そこから3区画先に第一三共本社ビルがある。実は日本橋ライフサイエンスビルディングは、その両社に挟まれる区画に立地する。LINK-Jによるライフサイエンス企業の集積地と、日本橋を拠点にする医薬・化学メーカーがこれほど地理的に近い関係となれば、有機的な連携が行いやすくなるだろう。

左:アステラス製薬本社、右:第一三共本社
日本橋再開発の第一ステージの“絞め”となった福徳神社。神社も再開発の対象になるとは日本橋ならではだ

さらにLINK-Jは第二ステージに突入した「日本橋再生計画」とも無縁ではないだろう。ちなみに第一ステージが三井タワーやコレド室町1~3などで、福徳神社の建立で完成をみた。第二ステージでは、日本橋三井タワー北側の「日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業 A地区」や、コレド室町2北側、福徳神社隣の「日本橋本町二丁目特定街区開発計画」などが進められている。

武田薬品も日本橋に拠点

前者は延床面積約168,000平方メートルにおよぶ巨大な複合ビルで「現在のLINK-Jの機能が不足になれば、新たな拠点として考えられる」(LINK-J 理事 植田氏)と再開発後の活用を視野に入れている。一方、後者には竣工後に武田薬品工業が入居することが決まっている。武田薬品の本社は大阪だが、この地は古くからの武田薬品の拠点で、“東京での創業地”ともいえる。LINK-Jの役割を活性化させる大手製薬会社がひとつ増えることになるのだ。

左:本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業 A地区、右:日本橋本町二丁目特定街区開発計画

LINK-JはUCサンディエゴ(カリフォルニア州立大学サンディエゴ校)や、サンディエゴを拠点とするライフサイエンス産業の業界団体「BIOCOM」と連携するとした。サンディエゴはバイオ・製薬・医療関連の企業が集まるライフサイエンス産業の世界的な集積地。日本橋もライフサイエンスの分野において、サンディエゴのような存在感を示せるか。今後の展開に目が離せない。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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