なぜヒストリックカーのカタチは魅力的なのか

森口将之のカーデザイン解体新書 第3回

なぜヒストリックカーのカタチは魅力的なのか

2018.09.19

人々を惹きつける昔のクルマ、そのカタチが生まれた理由を探る

駆動方式、安全対策、環境性能…クルマのカタチを決める要素とは

「ケンメリ」で考えるクルマの魅力、デザインの魅力

昔のクルマは、どうしてこんなに魅力的なカタチをしているのか。ヒストリックカーのイベントに足を運んだ人の多くは、こういう感想を抱いていることだろう。今回は、取材で国内外のヒストリックカーに接してきた経験を通して、この難しいテーマについて考えてみたい。

なぜ昔のクルマのカタチは人を惹きつけるのか。本稿では魅力的なヒストリックカーの画像を紹介しつつ、このテーマについて考えていきたい(画像はトヨタ自動車「2000GT」、2018年2月の「第10回 Nostalgic 2days」で編集部撮影)

昔のクルマは駆動方式が千差万別

前回の記事で紹介した「AUTOMOBILE COUNCIL」(オートモビル カウンシル)をはじめ、ヒストリックカーのイベントに足を運んだ人の多くはクルマのカタチ、つまりデザインを見に来ているはずだ。動かないし乗れないクルマを展示するイベントに、多くの人が相応の入場料を支払って入場しているのだから、魅力の源泉がデザインにあることは間違いない。

いすゞ自動車「117クーペ」(「第10回 Nostalgic 2days」で編集部撮影)

なぜ、ヒストリックカーのデザインは魅力的なのか。さまざまなヒストリックカーに実際に接してきた人間のひとりとして言及しておきたいのは、それらのクルマが個性を出しやすい状況で生まれたという点だ。

まずは技術面。ヒストリックカーが現役だった頃、現在の小型車の主役である前輪駆動(FF)のクルマは少なかった。同じ前輪で駆動と操舵の双方をまかなうには、エンジンの力をタイヤに伝えるドライブシャフトの途中に、首を振るためのジョイントを用意しなければならない。このジョイントのスムーズな動きを出すのに、各社が苦労した。

日産自動車「ダットサン フェアレディ」(「第10回 Nostalgic 2days」で編集部撮影)

ゆえに、現在も大型セダンには見られるFR、つまりフロントエンジン・リアドライブを使い続けていた小型車は多かったし、いまでは希少なものという扱いを受けているRR(リアエンジン・リアドライブ)を使うクルマもけっこうあった。

日本もそうで、例えば1960年代の軽自動車では、RRの「スバル360」、FRのダイハツ工業「フェロー」や三菱自動車工業「ミニカ」、FFの本田技研工業「N360」などが同時に販売されていた。

「スバル360」(2017年の「AUTOMOBILE COUNCIL」で編集部撮影)。愛称は“てんとう虫”

途中のモデルチェンジでFFからRRに切り替わったスズキ「フロンテ」のようなクルマもあったし、日産自動車は同じクラスのFF「チェリー」とFR「サニー」を同時に販売していた。

日産「チェリー」(神奈川県座間市の日産ヘリテージコレクションで編集部撮影)

エンジンの置き方も、今と昔では事情が異なる。現在は大部分の前輪駆動車が採用する横置きエンジンは、左右のドライブシャフトの長さが異なることから、アクセルを踏むとハンドルが左右に取られてしまうことがあった。これを嫌って当時の前輪駆動車には、エンジンを縦置きとしたクルマも多かった。

クルマを横から見たときのプロポーションは、エンジンがどの位置に、どの向きで置かれるかで大きく変わってくる。昔のクルマはこのエンジンの積み方が、同じクラスでも千差万別だった。スタイリングに多様性があったのは当然だ。

トヨタ「スポーツ800」(「第10回 Nostalgic 2days」で編集部撮影)

制約の少なさが自由なカタチを生んだ

しかも安全対策や環境対策は、今ほど進化していなかった。

交通事故による死者が増えたことを受け、国や地域ごとに衝突安全の基準が定まるとともに、「JNCAP」(自動車事故対策機構が行う自動車の安全性評価)など、公的機関もクルマの安全性に関するテストを実施するようになったのが、この間の経緯だ。こうしたテストで良い成績を収める車種が登場すると、他社は構造や技術を参考にして、同様の特徴を備えた車両を開発するようになる。こうして、カタチが似たクルマが増えていった。

環境対策でデザインに影響を与える要素として挙げられるのが空力だ。こちらは、「Cd値」(空気抵抗係数)という数字で優劣が表される。空力性能は高速走行時の安定性向上にも寄与するが、近年は走行抵抗低減による燃費・環境性能向上にも注目が集まる。あるクルマが優れた空力を実現すると、似たようなフォルムの車種が出てくるのは安全対策と同じ流れ。これは、F1などレースの世界にもいえることだ。

ジャガー「Eタイプ」(「第10回 Nostalgic 2days」で編集部撮影)。電気自動車「E-TYPE ZERO」として復活することが先頃、決定した

裏を返せば、こうした対策が重視されていなかった1970年代初めまでは、メーカーが作りたいカタチをストレートに作りやすかった。もちろん、安全性能や環境性能は高いほうが望ましいけれど、それによって失われたものもあるわけだ。

こうした対策は、車体の大型化をもたらした。1970年代初めは、ほとんどの日本車が全幅1.7m未満、つまり5ナンバー幅に収まっていたが、今は全幅1.8m以上のクルマが多い。1度のモデルチェンジで一気に大型化したわけではないが、徐々に成長していったのだ。しかも、室内空間はモデルチェンジごとに大きくすることが求められたので、クルマの大型化はそれを実践した結果でもあった。

スバル「レオーネ」(「第10回 Nostalgic 2days」で編集部撮影)

さらに、自動車業界の競争が激しくなり、さまざまな国や地域に合わせたクルマを作る必要性が高まったことも、カーデザインが似てきたという声が多くなっている理由のひとつだと思っている。

昔は多くの日本車が、日本市場だけを相手にしていた。欧州のデザイナーを起用したり、同じ時代の米国車を思わせるスタイリングを導入したりしていたが、その目的は輸出ではなく、我が国のユーザーに対し、欧米の最新トレンドのカーデザインを提供することだったのだ。

ランボルギーニ「カウンタック」(2017年の「AUTOMOBILE COUNCIL」で編集部撮影)

文化が育んだ“ケンメリ”の人気

日産自動車を例にとると、1960年代の「ブルーバード」や「セドリック」はイタリアの名門デザインスタジオ「ピニンファリーナ」が手掛けていたが、1970年代になると一転して、「スカイライン」や「バイオレット」などに、当時の米国車を思わせるフォルムを採用した。

テレビCMに「ケン」と「メリー」という男女が出演していたことから、“ケンメリ”という愛称で親しまれた当時のスカイラインについて、一部の自動車雑誌は装飾過多で後方視界が悪いなどと酷評していた。走りの面でも、排出ガス規制が始まったばかりだったので、レースで活躍した「GT-R」がすぐに生産中止となるなど、性能は期待できなかった。

“ケンメリ”こと日産の4代目スカイライン「C110型」(日産ヘリテージコレクションで編集部撮影)

しかし、歴代スカイラインで最も販売台数を稼いだのはこのケンメリである。高度経済成長時代を過ごした若者のハートを、デザインとプロモーションで掴んだ結果だった。伝統的な自動車評価を超えたところで人気を博したのだ。

歴代スカイラインで最も売れたのがこの“ケンメリ”だ(日産ヘリテージコレクションで編集部撮影)

現在、5ナンバーの枠内で、このようにカッコ重視のスタイリングを実現するのは難しいだろう。だからこそ、個性あふれる1台として今も評価することができるし、デザインを通じて、ケンとメリーのCMが流れていた頃を思い出したりもできる。当時の世相も反映したデザインであるからこそ、いまなお評価されているのかもしれない。

現代のクルマには、いろんな意味で真似できない個性あふれるデザインだ(日産ヘリテージコレクションで編集部撮影)

万人に好まれるのは、現在のスカイラインなのだろう。しかし、日本文化を反映したクルマという点では、ヒストリックモデルに軍配が上がりそうだ。

ちなみに、10代目「R34型」までは事実上、日本専用車として国内市場で存在感を示してきたスカイラインだが、日産がルノーとアライアンスを組んで以降、国外では日産の上級ブランド「インフィニティ」で販売されるようになった。

スカイラインは今や、グローバルカーへの転身をとげた(画像は“ケンメリ”、日産ヘリテージコレクションで編集部撮影)

カーデザイン史として考えれば、年を経るにつれて設計に盛り込むべき要件が増え、内容が複雑になっていったことが分かる。デザインにおける自由度が少しずつ狭まっていったことは否めないだろう。逆にいえば、ヒストリックカーのデザインは、作り手の思いがストレートにカタチに現れていた。だからこそ、多くのクルマ好きの心を掴んでいるのではないかと考えている。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。