「速さ」と「実用性」は両立可能? 新型「メガーヌ R.S.」が提示する答え

「速さ」と「実用性」は両立可能? 新型「メガーヌ R.S.」が提示する答え

2018.09.18

ルノーの新型「メガーヌ R.S.」に試乗!

右ハン5ドアで市場を意識も“普通のクルマ”ではない

440万円は高いか安いか、同クラスとは動力性能で比較を

ルノーが「メガーヌ R.S.」をモデルチェンジし、日本に導入した。メガーヌ R.S.はルノーのモータースポーツ活動などを担う「ルノースポール」(車名のR.S.はルノースポールのイニシャル)が、実用的な5ドアハッチバックである「メガーヌ」の動力性能を高めたスペシャルモデルだ。

ルノースポールが手掛けた「メガーヌ R.S.」が日本上陸。2018年8月30日に全国のルノー正規販売店で発売となった

通常のメガーヌが最高出力205ps/6,000rpm、最大トルク28.6kgm/2,400rpmを発する1.6リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載するのに対し、R.S.は同279ps/6,000rpm、39.8kgm/2,400rpmを発する1.8リッター直4ターボエンジンを積む。そのパワーは実に、出力で74ps、トルクで11.2kgmの大幅アップを果たしている。ここまで違うと、もう別のクルマだ。

通常、クルマのカタログは、表紙をめくってから数ページはたいてい、そのクルマが最も美しく見える写真を掲載しているもの。だが、メガーヌ R.S.のカタログは違う。1つ目の見開きこそ2台のメガーヌ R.S.がサーキットを走行している写真だが、2つ目の見開きにはもう文字がびっしり。115年を超えるルノーのモータースポーツにおける活躍を事細かに説明しつつ、2008年に8分16秒9、11年に8分7秒97、14年に7分54秒36と、歴代のメガーヌ R.S.がニュルブルクリンク(ドイツにあるサーキット)北コースで記録したラップタイムを写真と共に掲載している。まるで、モータースポーツ専門誌のルノースポーツ特集のようだ。カタログがこのクルマ(を好む層)のマニアックさを物語っている。

カタログを開いて2つ目の見開き(3、4ページ)。モータースポーツ専門誌さながらの文章量だ

ところが、新型メガーヌ R.S.は、これまでになく“売れる”ことを意識したクルマとして登場した。従来のメガーヌ R.S.は3ドアモデルが中心だったのに対し、新型はより実用的な5ドアハッチバックのみの設定となったのだ。

先代は「3ドアモデル」(人が乗り降りするドアは2枚)が中心だったが、新型は「5ドアモデル」(同4枚)のみの設定となった

もはやマニアだけが注目すべきクルマではない

ルノー・ジャポンによれば、日本の輸入車市場におけるCセグメントスポーツ(メガーヌ R.S.、フォルクスワーゲン「ゴルフ GTI」および「ゴルフ R」、プジョー「308 GTI」などが属する)市場は91%が5ドア。メガーヌ R.S.のみが3ドアで孤軍奮闘していた状況だったという。これを5ドアに切り替えたことで、メガーヌ R.S.は「91%」の方に入った。より多くの人に購入を検討してもらおうというわけだ。メガーヌ R.S.が5ドアとなったことで、国内のCセグスポーツはほぼ100%、5ドアの市場となった。

新型「メガーヌ R.S.」は先代よりも圧倒的に大きな市場で勝負する

また、従来のメガーヌ R.S.はMT(マニュアル・トランスミッション)のみの設定だったが、新型は6AT(デュアルクラッチ・トランスミッション)のみの設定となった。メガーヌ R.S.がATを設定すること自体が初めての試みだが、この点でも、国内で購入を検討する層の間口が飛躍的に広がったのではないだろうか。

かつて、欧州ではMTが圧倒的な主流で、ATは設定しても売れなかったものなのだが、今ではAT比率がどんどん高まっているという。まぁ、ひとくちにATといっても、10年前と今では隔世の感がある。多段化して効率(燃費)も上がった。とはいえ、3ペダルのMTが、スポーツ走行には欠かせないという保守的なクルマ好きが存在するのも確か。彼らのために、ルノーも追ってMTを設定するようだ。

日本市場で売れるためにはATが必須だろう

「メガーヌ R.S.」は普通のクルマになってしまったか

右ハンドル、ATの5ドアハッチバックといえば、日本における圧倒的主流のパッケージだ。トヨタ自動車「プリウス」がそうだし、ホンダ「フィット」もそう。日本で最もメジャーな輸入車である「ゴルフ」もそうだ(ただし、海外仕様としては3ドアも存在する)。もう、メガーヌ R.S.の購入を検討する上で、障壁はほぼなくなった。

では、乗った感じはどうなのか。乗り味までその辺によくあるクルマと同じになってしまっては本末転倒だが、それは杞憂だった。5ドアのATになっても、メガーヌ R.S.はメガーヌ R.S.だったのだ。

実用性を獲得した「メガーヌ R.S.」だが、決してひよっていないことは乗れば分かる

冒頭に書いた通り、新型は1.8リッター直4ターボエンジンを搭載する。先代は2リッター直4ターボだったので排気量は200cc減ったが、最高出力、最大トルクともに先代を超えている。新型が積むエンジンは、ルノーのスポーツカー専門ブランドとしてこのほど復活したアルピーヌ「A110」と同じもの。ベースは日産自動車のエンジンだ。

ルノーというのは、かつて自然吸気エンジンが主流だったF1の世界にターボエンジンを最初に持ち込み、大暴れしたメーカーとしても知られる。市販車にも、早くからターボエンジンを採用してきた。つまり、ターボエンジンを深く理解するメーカーなのだ。

実際、新型メガーヌ R.S.が搭載するエンジンは、1.8リッターターボでありながら、ライバルのフォルクスワーゲンやプジョーがスポーツモデルに採用する2リッターターボに全くひけをとらないスペックを獲得しているし、体感上も速い。発進から、これ以上出すと危ないという領域のスピードまで一気に吹け上がっていく。

箱根ターンパイクで「メガーヌ R.S.」の走りを堪能

その怒涛のエンジンパワーを受け止めるボディと足まわりはどうかというと、ノーマルのメガーヌに対し各部が強度を増していて、太いハイグリップの19インチタイヤを収めるべく、前後のフェンダーも広く大きくなっている。車両の状態にかかわらず、タイヤを常に路面に押し付ける効果を持つ特別な機構のサスペンションも採用しているし、ダンパーは専用のものだ。

さらには、近頃は各社がこぞって採用している4輪操舵システムも装備した。前輪だけでなく後輪も操舵するシステムで、時速60キロを境に、低速走行時は前輪とは逆位相、高速走行時には同位相に後輪の向きを変える。山道で体感した4コントロールの効果は抜群。コーナーでは、クルマがとにかく曲がりたがるような印象を受けた。慣れるまではステアリングを切った以上に曲がる感覚に戸惑ったが、こういうものと知ってからは、気持ちよく走らせることができるようになった。

「メガーヌ R.S.」が搭載する4輪操舵システム「4コントロール」は、コーナリングの時、車速に合わせて後輪を操舵する。具体的には、時速60キロ以下の低速走行時には後輪が前輪とは逆の方向を向き(最大2.7度)、同60キロ以上の高速走行時は前輪と同じ方向を向く(最大1度)

動力性能の差をどう考えるかで変わる価格の印象

歴代メガーヌ R.S.がラップタイムにこだわってきたニュルブルクリンク北コースは1周約20kmで、200前後のコーナーをもつ。曲がりくねっているだけでなく、約300mの高低差もあるジェットコースター的なコースで、エンジンにもサスペンションにも高い負荷がかかる。おまけに舗装が古いため滑りやすく、タイヤにも過酷なコースだ。クルマの総合力が試されるサーキットといえる。

同コースで開発されたメガーヌ R.S.は、ライバルのホンダ「シビックタイプR」とタイムを競い合っている。先代メガーヌ R.S.が記録した7分54秒36というタイムは、7分43秒80を記録したシビックタイプRに破られた。新型メガーヌ R.S.がいつの段階でこの記録に挑むのかは分からないが、戦いは続いている。

ちなみにルノースポールは、試乗会が開催された箱根周辺の山道にも新型メガーヌ R.S.の開発車両を持ち込み、テストを重ねたという。箱根を走らせて気持ちよいのは当然のことだったのだ。

ホンダの「シビックタイプR」と速さを競い合う「メガーヌ R.S.」

過去最高にパワフルでありながら、実用的な右ハンドル5ドアハッチバックのATとして生まれ変わったメガーヌ R.S.は、マニアの要求に応えつつ、幅広い層にも訴求可能なスポーツハッチとなった。価格は440万円。絶対的に安くはないが、では、この価格のほかのクルマが、主に動力性能の面でどの程度の実力を持っているのかを調べれば、不当に高いわけではないことが分かるはずだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu