もはや王者Microsoftの脅威に? 急成長する「Slack」の現在地

もはや王者Microsoftの脅威に? 急成長する「Slack」の現在地

2018.09.12

熾烈な覇権争いが続くビジネスチャット市場

Slackの機能拡張ロードマップに注目

Slackユーザー増加でOffice 365契約者が減少?

Slack Technologiesは、9月5日~9月6日の2日間にわたり、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ市において、自社イベント「Frontier」を開催した。同イベントにおいてSlackは、ユーザー自前の暗号鍵でデータを暗号化できる「EKM」(Enterprise Key Management)の導入など、同社の主要ターゲットである法人ユーザー向けの機能拡張ロードマップを公開して注目を集めた。

同社が機能拡張に尽力する背景には、ビジネスチャットツール市場における競争の激化がある。2018年7月には、従来からの競合である「ChatWork」、「Workplace by Facebook」、「LINE WORKS」に加えて、法人向けITソリューションの王者であるMicrosoftが無償版の「Teams」を提供することを発表している。

最新バージョン登場から4年。ユーザー数は800万人に

Slackは創業から9年のベンチャー企業。創業者は、最終的に米Yahoo! に買収された写真共有サービス「Flickr」を共同で創業したことでも知られる現CEOのスチュワート・バターフィールド氏。同氏率いるSlackは、2014年に新しい形のビジネスチャットツール「Slack」を公開し、それから4年足らずでグローバルに800万ユーザーを集めるほどに急速に成長させてきた。

Slack Technologies 創業者 兼 CEO スチュワート・バターフィールド氏

株式は現時点では非公開のため、企業規模などは不明だが、ソフトバンクなどが参加している投資コンソーシアム「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が投資することを2017年に発表するなど、投資家からも大きな注目を集めている。

カリフォルニア州サンフランシスコ市にあるSlack社の本社

現在はグローバルに1200人の社員を抱えており、本社は今年4月に新たに移転したサンフランシスコ市の新本社社屋にある。日本法人「Slack Japan」も設立済みで、同社によれば日本市場はSlackにとって米国に次ぎ2番目にユーザー数を抱える重要な市場となっている。

「柔軟な使い勝手×クラウドサービスとの統合性」に強み

そもそもSlackを使ったことがないという方にその機能を説明するならば、”組織内の構成員、および外部ユーザーとのコミュニケーションを促進するツール”と言えばよいだろうか。Slackはワークスペース>チャネルと階層化されており、ワークスペースが組織全体、チャネルが部門のようなものとして機能すると考えるとわかりやすい。使い勝手としてはLINEと近く、もちろん個人間でもメッセージのやり取りが可能だ。

ユーザーはワークスペースおよび、チャネルなどに所属してメッセージのやりとりが可能。特徴的なのは、1つのユーザーIDが複数のワークスペースやチャネルに所属できることによって、組織を横断しているプロジェクト、社外のフリーランサーなども参加させるプロジェクトなどでも柔軟にコミュニケーションをすることが可能な点が評価されている。

さらに、同一プロジェクト上にサードパーティのアプリケーションを容易に機能統合出来ることも特徴。例えば、Slackそのものは電子メールの機能は持っていないが、外部の電子メールサービス(例えばGmailなど)を統合することで、電子メールすら飲み込んで、コミュニケーションすることができる。

他にも、例えば営業支援ツールとして「Salesforce」を使っている企業や、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSを使っている企業は、接続ツールを使うことで、Slackプラットフォーム上から各種サービスを活用することができる。(接続ツールは最初からSlackに用意されている場合もあれば、ユーザーが自ら開発する場合もある)

「まずは無償版から」ハードルを下げ、導入数増加へ

Slackのもう1つの特徴は、機能制限はあるものの、とりあえずスタートは無償で始められることだ。実際日本のユーザーでも、まずは無償版からという法人も少なくない。導入する側にとっては、クラウドベースでかつ無償プランで始められるSlackは導入のハードルが低く、これがSlack躍進の1つの理由になっている。

しかし、無償プランのユーザーばかりが増えても、それでは収益が望めない。今後も安定して成長していくためには、有償プランの利用ユーザーを増やしていく必要がある。このため、今回のイベントでは有償プランのメインターゲットになる法人ユーザー向けの機能説明に多くの時間が使われた。

今回発表されたのは、EKM、Gridのシェーアドグリッド機能、リ・オーガナイズ・アウェア機能、Admin APIの導入など。特にEKMにより、自前の暗号化鍵を利用してSlack上に流れるデータの暗号化を行なうことが可能になったことは、セキュリティの担保に関心がある法人ユーザーにとっては注目のアップデート内容と言える。

こうした法人向けの新機能を拡張していくことで、有償プランの契約を増やしていく、というのがSlackの狙いだ。

意識し合うMicrosoftとSlack

急速に成長しつつあるSlackであるが、その勢いに負けじと他社もビジネスチャットツールの普及に積極的になっている。その代表がMicrosoftだ。Slackを導入した企業で、かつて社内SNSに「Yammer」、社内の音声連絡ツールに「Skype for Business」などを使っていたという企業は少なくない。

いずれも、Microsoftの現在の主力製品である「Office 365」の一部として利用されていたサービスで、そこをSlackに代替されると将来的にOffice 365の契約者の減少につながる可能性がある。

そこでMicrosoftは、Office 365にTeamsという新しいツールを導入してSlackを追い上げにかかっている。7月にはその無償版を投入することを明らかにしており、これは、Slackの特徴である”無償版を試して有償版へ移行”という特徴に対抗してきているものと見てとれる。

Teamsの特徴は、特に日本において導入が進んでいる”Office 365に含まれている”点にあり、Slackにとっては、ユーザー数でいうと第2位の市場となる日本における脅威となる。今後Slackとしては、日本で根強い需要があるOffice 365との接続性を高めるなどの方策をとる必要に迫られている。同社が今回、法人向けの機能を強化するロードマップを発表したのもその延長線上にあるということができるだろう。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。