「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析

カレー沢薫の時流漂流 第7回

「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析

2018.09.17

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第7回は、「ストロング系チューハイの人気」について

今回のテーマは「ストロング系チューハイ人気」だ。

ストロング系チューハイの「強さ」とは?

この時点で「おっ俺たちのストロングゼロの話か」と身を乗り出してしまっている。これは、ギャンブル依存症の人間のダイイングフィッシュのような目が、お馬さんの話になったとたんプリズムのように輝き始めるのと同じ原理である。

ここ一年ぐらいで、サントリーのストロングゼロを筆頭に「ストロング系チューハイ」が爆発的に広まってきている。「俺のところには広まっていない」というのなら、それで良いし、新たに興味を持つ必要はない。むしろそのまま「ストロング系チューハイが関係ない世界」にいることをお勧めする。

昨年末など、「ストロングゼロ文学」という大喜利ネタがツイッターで流行ったほどだ。ググってもらえればすぐ出てくるが、「ストロングゼロ文学」とは、簡単に言えば有名な小説などの一文に、突然ストロングゼロをぶち込んで、すべてどうでも良くさせる、というものである。

意味不明に聞こえるかもしれないが、これ以上ストロングゼロの特性を説明している大喜利は存在しない。酒として美味いとか不味いとかの問題ではない。この「どうでもよくさせる」力こそが、ストロングゼロをはじめとしたストロング系チューハイがウケた理由である。

上記はあくまで個人の感想だが、大多数の個人の感想でもある。何故なら、ストロングゼロに関して「味がいい」と言っている人はあまり見かけないからだ。私も味に関しては「アルコール汁」としか思ってないし、美味い液体が飲みたいなら「ファンタグレープ」という神の雫を飲む。

では、何故そんな大して美味くもないものを好んで飲むかというと、何度も言うが「飲むとすべてどうでも良くなる」からだ。激怒したメロスもストロングゼロを飲んだ瞬間、何に激怒していたか忘れてしまうのである。

私も、昨年末に大喜利などでストロングゼロの評判を聞きつけ、試してみた者の1人である。ストロング系の何がストロングかと言うともちろんアルコール度数だ。

標準的なストロング系チューハイの度数は9%である。ストロングでないチューハイのそれよりは高いが、他にも度数の高い酒はいくらでもある。だが、ストロング系チューハイはとにかくすぐ飲めて、酒の回りが早く、あっという間に「すべて忘れてイイ感じ」になれてしまうのだ。

当然、良い事も悪い事も全部忘れてしまうのだが、今の世の中悪い事の方が圧倒的に多いため、ストロングゼロを飲むと「トータルで幸せになれる」のである。

「遊びではない」飲用の副作用

さらに言えば、ストロング系チューハイがウケた理由はその安さだろう。スーパーに行けば100円程度でロング缶が買えてしまう。

ストレス解消の方法は他にもあるし、金をかければいくらでも解消できる。しかし、そんな金銭的余裕がある者ばかりではないし、むしろ金がないことがストレスなのだ。それが100円程度で解消してしまうのである。ストロングゼロが「飲む福祉」という異名で呼ばれるのも納得である。

このように、コスパ最高リピ確定な、ストレス社会の救世主と言っても過言ではないストロング系チューハイだが、もちろん良いことだけではない。他の酒がそうであるように、ストロング系チューハイも飲み過ぎると体に悪いし、アルコール依存症になる恐れもある。

特に「飲むと楽になる」という理由で飲んでいる人間はあっという間に「ストロング系チューハイを飲まないと人と話せない、仕事に行けない」というところまで行ってしまう。

私もストロングゼロを「楽しさ」目的で飲んでいた人間だが、徐々に飲む量が増え、「このままでは問題を忘れるために飲んでいたストゼロのおかげで新しい大きな問題が起る」と察知したので、一旦飲むのを止めた。大体、自分は無職なので、ストゼロを飲んでまで行かなければならない仕事や、話さなければいけない人間もいないのだ。

しかし、ストゼロが有名になってから、各社競い合うように、ストロング系チューハイを出しているし、最近ではアルコール度数12%という、さらなるストロング商品が生まれている。

どうも、世の中全体が「問題の解決」より「解決できないから問題を忘れる」方向へシフトしているように思えてならない。実に私向きの社会だ。むしろ、やっと時代が俺に追いついたと言っても過言ではない。

ちなみに、これは別の媒体の担当の言だ。

「ストロングゼロは酒ではないです。ストロングゼロは、ストロングゼロを飲まなければやってられない人が飲むものです、遊びではないのです。」

遊びではなかったのか。少なくとも、ストロング系チューハイが他の嗜好品と一線を画した存在であることは確かだろう。

最初は遊びのつもりでも、気づいたら地獄の果てまでついて来ているという、さそり座の女みたいになる可能性はある。

手を出す時は注意が必要だ。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

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