【三菱重工業】揺れる750社のグループ中核企業の今後

【三菱重工業】揺れる750社のグループ中核企業の今後

2016.06.07

【三菱重工業】揺れる750社のグループ中核企業の今後

 土佐藩士により1870年に発足した九十九商会(土佐藩から払い下げられた3隻で海運業を営む)の経営を71年に引き受けたのが、土佐藩士であり三菱グループ創始者である岩崎弥太郎である。73年に九十九商会は三菱商会に改称、時代は下って1934年には船舶製造に重機、航空機、鉄道車両を加え、「三菱重工業」として新しいスタートを切ることとなる。

 戦後、三菱重工業は財閥解体のあおりを受け一時的に3社に分割したが、64年に3社合併し、現在の三菱重工業が誕生した。三菱重工業は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱商事と共に、現在750社ほどある三菱グループの中核を担っている。

 三菱重工業の主な事業ドメインは「エネルギー・環境」「交通・輸送」「防衛・宇宙」「機械・設備システム」の4つ。なお、70年には三菱重工業の自動車部門が独立し、後述する「三菱自動車」が設立される。

(三菱重工業有価証券報告書より抜粋)

 三菱重工業と同業他社を比較すると、売上規模・時価総額のいずれも他社を圧倒していることが分かる(下表)。

■総合重機

 ただ、三菱ブランドは盤石ではない。下記(1)~(5)にあるようなアキレス腱を持っているからだ。

(1)三菱自動車の燃費データ改ざん問題
 16年4月、小型車を共同開発している日産自動車からの指摘により、三菱自動車の燃費データ改ざん問題が発覚した。対象となる日産自動車との共同開発車4車種は、13年6月から現在までに62万5000台を販売している(4車種だけでなく、そのほか9車種も対象の可能性があるとの報道もある)。国内だけでなく海外でも燃費データの追加試験が検討されており、すでに販売した顧客への補償も検討されている。

 00年、04年に三菱自動車が自ら招いた経営危機の際は、「不採算部門の整理」や「経済合理性の追求」ではなく「三菱ブランドを守る」ことを優先し、三菱グループ一丸となって三菱自動車を支援した。しかし今回、手を差し伸べたのは三菱グループではなく、小型車を共同開発した日産自動車であった。この救済の背景には、三菱自動車が窮地に追い込まれることで日産自動車における小型車の開発にも支障をきたすという内情がある。つまり一蓮托生の抜き差しならない状況での支援という側面が強い。日産自動車ゴーン社長も「日産自動車と三菱自動車は対等」とコメントしている。

 日産自動車は、三菱自動車の第三者割当増資を2370億円で引き受け、出資割合は34%となった。これにより、20%を所有し筆頭株主であった三菱重工業を抜き、日産自動車が筆頭株主となった。今回の一連の騒動により、三菱重工業を筆頭とする三菱グループ内での支援は、結果として失敗に終わったとの印象を抱かずにはいられない。

(2)アメリカ原発事故の賠償請求問題
 12年1月、三菱重工業が納入したサンオノフレ原発の蒸気発生器から放射性物質を含む水が漏えいし、13年6月に同原発の2、3号機の廃炉が決まった。米電力会社南カリフォルニア・エジソンなど4社から三菱重工業への損害賠償請求額は約75億ドル(約9300億円)。しかし、三菱重工業が契約上の責任額の上限は1億ドル強と主張しており、損害賠償請求額は確定していない。損害賠償請求額が75億ドルに確定した場合、多大な負担を強いられることになる。

(3)大型客船引渡遅延による遅延金支払い
 11年に受注した客船世界最大手のカーニバル(米国)傘下のアイーダ・クルーズ向けの大型客船2隻の製造が遅れたことで、三菱重工業は累計2375億円超の遅延損害金を支払うことになった。基本設計の確定が大幅に遅れたこと、16年1月に建造中の大型客船内で発生した火災により作業が遅延したことなどが原因である。現在1隻は納入しているが、残り1隻の納入時期が遅れた場合、損害金はさらに増加する可能性もある。

(4)国産ジェットMRJの納入延期
 5度の延期の末、15年11月11日に初飛行を実現したMRJ(三菱リージョナルジェット飛行機)は、翌12月に主翼部分の強度不足が判明。その影響により、17年4~6月に予定していたANAホールディングスへの第1号機納入を1年以上遅らせることとなった。納入延期に伴い、固定費である人件費の負担も増えるだけでなく、納入延期に伴う遅延金が発生する可能性もある。また、度重なる納入延期によって信頼性が失われれば、将来の販売計画にも影響を及ぼすことだろう。

(5)火力発電システム事業に関して日立と主張対立
 三菱重工業と日立製作所は、14年に火力発電システム事業を統合し、「三菱日立パワーシステムズ(以下MHPS)」を設立した。三菱重工業65%、日立製作所35%の出資でMHPSは三菱重工業の子会社である。

 日立製作所が南アフリカの火力発電所工事を07年に受注し、その資産負債などはMHPSが引き継いだが、引継価格は16年3月末時点で確定していない。当工事は損失が見込まれた事業であることから、三菱重工業は当工事引継前の損失額などを勘案した482億南アフリカランド(3790億円)の支払いを日立製作所に請求したが、日立製作所は当請求額を認めていないと発表している。なお、三菱重工業では当請求額の一部を資産計上しているが、その金額および計上の根拠は説明されていない。一方、日立製作所では、当該損失について自社で見積もった金額を引当金計上しているとのことだが、金額は明記されていない。ただ、三菱重工業からの請求額とは相当の乖離がある模様である。

■三菱重工業の行った主なM&A
年月 内容
2008.3 ショベルカーなどの製造販売を行う新キャタピラー三菱(売り上げ4109億円)の株式25%をキャタピラー社(米国)に500億円にて売却
2013.7 エンジニアリング事業や空調事業を行う東洋製作所(売り上げ201億円)の株式57%を公開買付により66億円にて取得
2016.3 フォークリフトなどの製造販売を行うユニキャリアホールディングス(売り上げ1841億円)の株式100%を取得

今後のM&A戦略

 三菱重工業は、保守的な企業体質からM&Aをほとんど行わず、自前で事業を拡大してきた。しかし、近年は経営トップの意向もあり、自前主義ではなくM&Aや大手との合弁会社設立による事業拡大を図っている。現在対立はしているが、日立製作所との合弁会社設立もその一つである。

 中期経営計画「2015事業計画」において、三菱重工業の基本方針として「事業拡大加速によるグローバル競争力強化」「財務基盤の更なる強化と高収益性追求」「企業統治と経営プロセスのグローバル適合推進」の3つを掲げている。ユニキャリアホールディングス株式の取得の際、プレスリリースには「フォークリフト事業を今後も当社のグローバル伸長事業として位置付けていることから本株式取得を決定いたしました」と記載されている。今後も事業拡大、財務基盤の強化、収益性追求のため、積極的にM&Aを行うことが想定される。三菱自動車の支援を、グループ内ではなく外部の日産自動車に頼ったのは、保守的な社風が変わりつつあることの現れなのかもしれない。

三菱重工業の財務分析

 次に、三菱重工業の財務を検証してみる。

■売り上げ/損益推移

■自己資本比率

 三菱重工業の過去18年の財務データの推移をグラフにした。00年3月期に安値で受注した海外の発電プラント工事が原因で巨額の損失が計上されているが、リーマンショックが発生した09年も含め、00年3月期以外では大きな損失は計上していない。しかし、16年3月期は前述の懸念材料のうち大型客船事業により1039億円の特別損失、さらに持分法適用会社である三菱自動車の業績悪化に伴う損失も計上されることになり、前期に比べて利益が大幅に減少する事態となっている。

 ただ、特に15年3月期までの直近3カ年の業績は非常に好調で、主要な事業ドメインの売り上げはいずれも前年対比で増加している。16年3月期は、エネルギー・環境ドメインで火力発電プラントの減収により売り上げが若干減少しているが、同じく好調をキープしているため、三菱重工業が直ちに経営危機に陥ることはない。また、自己資本比率も30%前後をキープしており、依然として同業他社と比較しても高い水準にある。

■事業ドメイン別売り上げ

■同業他社との比較(自己資本比率)

 前述の通り、三菱重工業では複数の懸念材料を抱えているが、財務が非常に安定しているため即座に経営危機に陥ることは想定されない。しかし、「三菱ブランド」の没落より三菱重工業の業績も悪化する可能性はあるため、積極的なM&Aにより事業拡大、財務基盤を強化していくことが必要である。今後も三菱重工業の改革に注目する必要がある。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。