GAFAに続く「T」 - Uberとの提携から見えるトヨタのMaaS戦略

GAFAに続く「T」 - Uberとの提携から見えるトヨタのMaaS戦略

2018.09.06

トヨタとUberが自動運転車の開発促進を目指し協業を強化

これまでも自動運転関連技術に多額の投資をしているトヨタ

トヨタは単なる自動車メーカーからMaaSの総合プロバイダーへ

トヨタ自動車とUber Technologiesは、8月28日のプレスリリースで、両社が技術提携と資本提携を行なうことを発表した。トヨタがUberに対してシエナをベースにしたライドシェア向け自動運転車両を提供し、かつ5億ドルの出資を行なう。この提携によりトヨタが得るものは何なのか。最近の出資例なども振り返りながらその狙いを考察していきたい。

UberのコスロシャヒCEO(左)とトヨタの友山茂樹副社長(右)

提携に見る2つのポイント

今回両社の提携発表の概要は次の2点だ。

(1)両社の持つ技術を搭載した自動運転のライドシェア専用車両をトヨタが開発・製造し、Uberのライドシェアネットワークに導入する。

(2)トヨタはUberに対して5億ドル(1ドル=111円換算で555億円)を出資する。

(1)に関してはトヨタとUberがそれぞれ開発している自動運転の技術を統合したライドシェア専用の自動運転車をトヨタが開発して、Uberに対して供給するという意味となる。トヨタが自動運転技術を開発していることは説明の必要が無いと思うが、Uberも独自に自動運転技術を開発していることはよく知られている。

ただし、Uberの自動運転車開発は、3月にアリゾナ州で公道試験中に死亡事故を起こしてからストップしており、現在まで同社から再開されたというアナウンスもされていない。そう考えれば、実体としてはトヨタが開発する自動運転車両をUberのライドシェアのシステムに導入するという形になると考えられる。

トヨタによれば、ミニバンのシエナをベースにして、車両には同社が開発する、自動運転車を利用したライドシェアサービス「Autono-MaaS」を導入するという。

“Autono-MaaS”とは、Autonomous Vehicle(自動運転車)とMaaS(Mobility-as-a-Service : モビリティアズアサービス)を融合させた、「トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービス」を示す造語

また、(2)に関しては純粋な出資である。Uberは非上場の企業であるため、株価や時価総額は非公表だが、今年の1月にソフトバンクを中心とした投資家連合が約125億ドルでUberの17.5%の株式を取得したという事実から考えれば、5億ドルの出資は決して支配的な株主になる訳ではないとわかる。

額から見るに、これはトヨタがUberにコミットメントするという象徴的な意味に過ぎないと考えていいだろう。

自動運転×ライドシェアで「MaaS社会」の実現へ

トヨタは自動運転関連のITへの投資を強めている。最も象徴的な投資は、Preferred Networks(PFN)への投資だろう。PFNは、自動運転に必須と言えるAIの開発に必要なマシンラーニング/ディープラーニングの知見を多く持っている企業で、同社が提供するディープラーニングのフレームワーク(開発ツール)の「Chainer(チェイナー)」は、日本のAI開発の現場で一般的に使われている。

トヨタは15年12月に10億円出資したのを皮切りに、15年8月には105億円を追加出資している。その他にもトヨタはAI開発に必須なデータリサーチャーの育成などで強みを持っているALBERT、さらには日本のタクシー配車で先頭を走っている日本交通子会社のJapanTaxiにも出資を行なっている。いずれも自動運転の開発には必要な知見やリソースを持つIT企業だ。

では、Uberとの提携でトヨタが得るものはなんだろうか。それは、現状では世界最大とみられるライドシェアネットワークに自社の自動運転車を導入し、そこから得られる知見を、「Autono-MaaS」にフィードバックできることだろう。

ライドシェアというと料金が安くなるタクシーとしか認識していない人は多いと思うが、その延長線上にあるのは決してタクシーではなく、MaaSと呼ばれる、自動運転車により自動車がサービスとして提供される新しい自動車社会だ。

MaaSが実現する社会では、自動車のあり方が従来とは大きく変わることになる。またこの社会では、自動車の所有という概念はなくなる可能性が高い。

自動車は街中を無人で走っていて、ユーザーがスマートフォンなり、街に設置している端末を操作して呼び出すと自動でユーザーの元までやってくる。そして目的地までユーザーを運ぶと、再び無人に戻り次の顧客の呼び出しを待つ間、街を無人で走る……。まさに今Uberなどのライドシェア企業が有人のシステムで実現しているシステムそのものだ。

つまり、トヨタが必要としているのは、そうしたライドシェアを実現するITとその知見で、それをUberから吸収するための車両供給、そして出資であると考えればいいだろう。

トヨタ”単なる自動車メーカー”からの脱皮

既に述べたとおり、トヨタはPFN、ALBERT、Japan Taxiなどの日本のAI関連のIT企業に投資や提携を行なっており、それに加えて今回のUberとの提携、出資である。その鍵となっているのは「自動運転」であり、そしてMaaSだ。トヨタとしては今後自動運転の普及により、MaaS社会が実現すると考えており、それに向けて着々と手を打っている、そう考えて間違いないだろう。

MaaSが実現した社会では、自動車産業は完全に転換期を迎えることになる。まず多くのユーザー、特に都市部のユーザーは自動車を所有しないことを選択するだろう。そうなると、自動車メーカーとしてはそれに変わる収入源を真剣に考えていく必要がある。

しかしその時に、どこかのIT企業(例えばGAFAと呼ばれるような、Google、Apple、Facebook、Amazonなど)にMaaSの基幹システムを握られていたらどうだろうか?

その場合、自動車メーカーは機関システムを握る企業の下請けとして自動車を作るだけの企業として生き残らざるを得ない。そうした下請け企業があまり利益を取れないというのは、AppleやAmazonなどの下請けで、製品を製造している台湾や中国の受託製造メーカーならよく知っている事実だ。

であれば、IT、車両、インフラを一体としてMaaSを提供する総合モビリティ企業として生き残りたい、そうトヨタが考えているとすれば、今回の動きは理解できるのではないだろうか。

いずれにせよ、トヨタの動きは速い。他の日本の自動車メーカーがITへの投資に二の足を踏んでいるうちに、どんどんITへの投資を増やしている。次の時代には、GAFAにトヨタの「T」が加わっているとしても何も不思議ではないだろう。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。