Xperia XZ3は上出来だが、新型スマホで驚けないソニーの遅れ

Xperia XZ3は上出来だが、新型スマホで驚けないソニーの遅れ

2018.09.05

ソニーがスマホ「Xperia」の新型を発表

出来は悪くないが、現状を覆す狙いは見えない

岐路に立たされたXperiaに必要なのは先進性

ドイツ・ベルリンで開催された家電見本市「IFA 2018」で、ソニーが新スマートフォンの「Xperia XZ3」を発表した。日本でも今後キャリア各社から発売されるだろう。製品は特徴的な機能を備えているが、やはりこれまでのソニーと戦略が代わり映えしないように見える点が気になる。

Xperia XZ3

2012~2013年ごろまでXperiaは、グローバルでもそれなりにシェアを獲得していた。現在は中国勢の伸長などで売上を落とし、市場での存在感が低下している。数量という意味では安価なラインアップが少ない点が挙げられ、新興国や中国といった市場でのシェアが低いことはあるだろう。ただ、上位モデルでも先進国市場で苦戦している。

その課題として端末そのものの問題が挙げられるだろう。Xperiaシリーズは、単独で見ればそれほど悪い端末ではない。しかし、どうにも市場性に対するアプローチが慢性的に不足しているのではないか、という点が気にかかる部分だ。

こちらは前モデルのXperia XZ2

デザイン追求という特長が、今度は足かせに

Xperiaは、初期から長年デザイン性を追求してきた。ソニーならではの独自色の強いデザインは、Xperiaとしては大事なポイントだろう。「iPhoneっぽい」デザインとは一線を画してきたのは間違いない。ただ昨今では、そのこだわりが裏目に出てきた面は否めない。

例えばディスプレイの大型化にともなう狭額縁化で、本体の横幅一杯までディスプレイを拡大し、ベゼルがどんどん細くなっていくトレンドの中であっても、Xperiaは、側面の指紋センサー一体型電源ボタンの"デザイン"のために、狭額縁化への対応が遅れた。

デュアルカメラも各社が一般的に搭載している中、ようやく前モデル、しかもバリエーションモデル1機種での対応にとどまっている。画面上部の「切り欠き(ノッチ)」についてもそうだ。

iPhone X以前からなかったわけではないが、それ以降、すっかり一般化したこのノッチ。狭額縁化とセットにすれば本体前面全体のディスプレイ化が可能になるということで、一気に他社にも拡大した。iPhone Xのように各種機能を盛り込んだメーカーはないし、デザイン的にも優れているとは言えないが、「iPhoneが搭載すれば許される」という風潮があるので、一斉にマネしだしたわけだ。

Xperiaはこの流れに乗らなかったし、悪いことだとは言い切れないが、狭額縁化を含めた全画面化で後れを取ったことは間違いがない。また、一部メーカーのようにインカメラがスライドして現れる、といった突飛なチャレンジもしていない。

先進性を上手くアピールできていたか

昨今の極端なスマートフォンのカメラ押しも疑問ではあるが、機能として説明しやすいという面はあるだろう。ところが、いかんせんXperiaのカメラ押しは分かりにくい。中国メーカーは「ソニーのセンサーを使っている」点をアピールしがちだが、Xperiaの場合はソニーセンサーは当然として、そのセンサーの機能までも説明しがちだ。

BIONZやGレンズといったカメラ愛好者にはおなじみでも、なかなか一般に訴求しないブランド名に対して、例えばファーウェイの「ライカ」はイメージとしても「何か凄そう」ということが伝わりやすい。デュアルカメラも、端末のイメージという意味でも無視できない機能だ。

SamsungのGalaxyもノッチは採用していないしデュアルカメラ化も遅かったが、側面の狭額縁化は早く、縦長ディスプレイなど機能的にも先進性をアピールできていた。こうした部分に相当するアプローチが、Xperiaには不足していたように思う。

デザインと機能における先進性のアピールがうまくいっていないのだ。最近でも、カメラにおける960fpsのスローモーションは手軽で楽しいし、ISO51200という超高ISO感度での撮影機能も撮影シーンの幅を広げてくれる。

しかし、使いどころが難しいのも確かだ。誰もが頻繁に使う機能ではない分、ほかの優れた機能やデザインをメインにおいて、その中の一つとしてアピールする方がいいだろう。しかし、特にXperia XZ2 Premiumのように、日常的なメインスマートフォンとしては難しい大型のスマートフォンに高ISO感度撮影とデュアルカメラを搭載しても、多くの人がその機能を体験できるわけではない。

Xperia XZ2 Premium

そうした中で登場したXperia XZ3。初めての有機ELディスプレイ(OLED)採用で、側面の狭額縁化も大きく進展した。ノッチはないが、上下の余白も小さくなり、ようやく最近のトレンドに近づいたという印象がある。

Xperia XZ3公式の紹介動画。新機種に魅力が多いことは確か

ただ、近づいただけで、これはあくまでスタート地点だ。そこにソニーならではの味付けが欲しかった。その点が同社テレビのブラビアチームと協力した高画質技術などの部分だろう。ただ、従来からもX-Reality for mobileでブラビアチームとの協業をアピールしてきた中では少々弱い。

AIを活用したというよく使うアプリを表示する機能や、戻るキーやシャッターボタン代わりとなるサイドセンスも、いい機能だとは思うが、先進性のアピールとしては少々弱いように思える。

より正確にいうと、各社ともそうしたアピールは苦戦していて、どこもあっと驚く機能を搭載しているわけではないので、Xperiaだけが遅れているとは思わない。ただ、それにしても機能とデザインと販売戦略のバランスが悪いという印象が拭えない。

順当な進化だけではない、"驚き"の仕掛けが必要

Xperia XZ2の国内発売が今年の5月末。XZ3が秋の発売だとしても、年2回目のフラッグシップモデルの発売は近すぎる。こうしたマーケティング部分での疑問も感じるところだ。9月には例年、新型iPhoneの発表が控えているので、存在感を示しておく必要もあるのかもしれないが、現在のXperiaのラインアップでは、年1回の発表が順当だろう。

この時期の発表製品は、フラッグシップではなくバリエーションモデルでも良かった。Xperia XZ2 PremiumにデュアルカメラとOLEDを積んで映像に特化したモデルとしてリリースし、それを翌年のXZ3に投入する、ぐらいのタイムスケジュールでも良かったのではないだろうか。その際には、もちろんさらに機能の追加が必要となるが、実験的なバリエーションモデルで市場性を確認しつつ、Xperiaの先進性アピールとしてもいいだろう。

岐路に立たされているXperiaは、何かビックリする仕掛けが必要だ。今回は順当すぎて驚きがないので、次の新製品に向けて、一歩先を行く新たな取り組みを期待したい。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。