10回に1回、コーヒーチェーンから“浮気”してもらう 台湾ティーカフェ「ゴンチャ」快進撃の裏側

10回に1回、コーヒーチェーンから“浮気”してもらう 台湾ティーカフェ「ゴンチャ」快進撃の裏側

2018.09.05

近年、茶をメインとした台湾系のカフェチェーンが増えている

中でも「ゴンチャ」は2020年までに100店舗を目指し急拡大

台湾本土にはあるコーヒーをあえて出さない狙いとは?

近頃、都内近郊でじわじわと数を増やしている、コーヒーではなく茶を中心に提供する「ティーカフェ」。大きな黒いタピオカが入った「タピオカミルクティー」は、昨今のブームを知らない人でも、90年代のスイーツブームで見聞きしたことがあるかもしれない。

ティーカフェ市場の中でも勢いがあるのが、台湾で生まれたブランド「ゴンチャ」。日本上陸から3年弱で17店舗と数を伸ばしており、今後2020年末までに100店舗を目指すという。

コーヒーを中心としたメニューが主流のカフェ市場において、あえて台湾の茶で勝負をかけた理由はどこにあったのか。今回は、ゴンチャ ジャパン 取締役社長兼COOの葛目良輔氏に、ゴンチャの日本展開のきっかけから、同社のこだわり、経営方針について伺った。

ゴンチャ ジャパン 取締役社長兼COO
葛目良輔(くずめりょうすけ)氏
1993年にケンウッドへ入社。その後、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、スターバックス コーヒー ジャパン、日本マクドナルドで主に店舗営業、事業開発に従事。CCCとスターバックス コーヒー ジャパンの共同事業「Book & Café」では事業リーダーを務めた。2015年2月リヴァンプに参画。フードチームリーダーとして、台湾ティーカフェ「ゴンチャ」の日本法人設立のタイミングからCOOとして業務執行に携わる

――日本国内で「ゴンチャ」のフランチャイズ展開を手がけられるようになった経緯を教えてください。

まず、「ゴンチャ」ブランドそのもののご説明をしますと、台湾で生まれ、商品のクオリティに力を入れるカフェブランドとして、アジア、オセアニア、北⽶エリアにおいて約 1,400 店舗(2017年12月現在)を展開しています。

当初、本国の経営陣は、日本への参入は難しいと尻込みしていたそうです。その不安の背景には、カフェ市場の熾烈な競争や、独自の日本茶文化を持っていることなどがあります。

日本展開のきっかけは、韓国で大きな成功を収めたことです。

3年で300店舗規模まで急成長しました。日本と同様カフェ大国である韓国の首都・ソウルでゴンチャが受け入れられたことが自信に繋がったようです。私はそうした日本進出の意向を受けて、2015年よりゴンチャ ジャパンの陣頭指揮を執っています。

――これまでマクドナルド、スターバックスと大手外食チェーンでキャリアを積まれてきた葛目さんですが、ゴンチャのどこに魅力を感じ、日本法人の設立に携わられるようになったのでしょうか?

前職でスターバックス さん(以下、「スタバ」)に10年ほど関わっていたのですが、その中で「コーヒーは苦手だけど、スタバは好きだ」というお客様や従業員がたくさんいらっしゃることを知りました。

なぜそうした人が多くいらっしゃるかと言えば、スタバは飲食ビジネスだけれども、本質的にはブランドビジネスだからです。ブランドに共感するからこそ、1杯500~600円という価格帯を高いと思わずに来店されている。でも、実はコーヒーが好きなわけではない。

そこで、スタバで支持されるような価値を、「お茶」という商材を用いて提供すれば、競争が激しい日本のマーケットでも、一定の機会があるのではないか、と考えました。

ゴンチャで提供している飲料の例。タピオカの入ったミルクティー以外にも、ストレートティーやスムージーなどがある

――ゴンチャのメインターゲットは?

メインターゲットは20代の女性と設定しました。この年代の方々は「お茶」や「タピオカ」が好きな人が多く、ゴンチャの商品に関連した嗜好の傾向があったためです。

ターゲット層もそうですが、出店にあたってさまざまな指標などを考えるなかで、「10回コーヒーチェーンに行く中で、1回ゴンチャに浮気してもらう」ことを念頭に置くことを考えました。ゴンチャが日本に進出した2015年当時、日本には大手コーヒーチェーンが1000店舗ほどあったので、その10分の1、つまり100店舗は行けるだろう、と踏んだのです。

――なるほど、2020年までに100店舗という出店目標はそこから出されたのですね。

ええ、ですがあくまでも仮説のひとつです。来年以降は出店のアクセルをぐっと踏んでいきたいですね。2018年内に名古屋・大阪・福岡の都市圏において、店舗密度をあげていく計画です。

――日本進出からおよそ3年が経過して、「10回に1回ゴンチャに浮気」してもらうという狙いは当たっていましたか? データなどあれば教えてください。

端的に言えば、イエスです。ゴンチャでは毎月、外部機関による覆面調査を実施し、店舗にフィードバックしています。そこでは必ず、「今日の店舗体験は、いつも行くお店と比べてよかったですか? 比較したお店の名前と良かったかどうかを教えてください」という問いを設けています。

この設問に対して、2人に1人は「スタバ」と回答されます。春水堂、パールレディなど、タピオカ入りのドリンクを提供されているティー専門店の回答は全体の3割程度で、7割はスタバをはじめとしたカフェチェーンです。お客様は、ゴンチャをカフェとして見ているんですね。

「スタバと比べて客席が少ない」とマイナス評価を受けるときもあれば、「お茶の香りがスタバより良い」「コーヒーよりコストパフォーマンスが高い」という評価をいただくこともあります。ですので、先に述べた仮説も、あながち間違っていなかったと確信できました。

――台湾本国のゴンチャと日本のゴンチャを比較すると、本国にあるコーヒーがメニューから外されています。コーヒーはカフェ業態の主力選手ですが、なぜメニューから外したのでしょうか?

日本進出にあたって、まず「やらないこと」を決めました。それがコーヒーを扱わないという決断です。

実は、各国にあるゴンチャで、コーヒーを扱っていない市場は日本だけなんです。逆に、他国のゴンチャがコーヒーを置くのは本国の方針です。カップルでご来店される場合、コーヒーがないと男性側が不満を持つことが多く、機会損失を起こさないためにメニューに加えているんです。私はそこに関してまったく同意しません。

日本でコーヒーを飲もうと思ったら、カフェだけでなくコンビニでも、手軽においしいものが飲める。コーヒーを出すことで、お茶専門カフェとしての地位や認識が薄まるならば、提供しないほうがいい。なので、コーヒーは今日現在も扱っていません。

ミルク・ストレートの違いだけでなく多様なメニューを展開しているが、コーヒーは差別化のためにあえて提供していない

――グローバルの方針に反してメニューを絞るのは、勇気が要ったのではないですか? 

その逆です。日本の競争の激しいマーケットの中で、「本格的なお茶を気軽に飲めるカフェ」としてのプレゼンスを獲得することが重要です。今でこそスムージーなどを置いていますが、進出当初はティーメニューのみに絞っていました。

もちろん、「コーヒーないの?」だとか、「韓国にあるスムージーは日本で出さないの?」など、残念がっていただくこともありますので、今後ブランド価値が確立したら、そういった声にお応えし、全方位的にラインアップを拡充する可能性はあります。ですが、最初から八方美人的にすべてを取りそろえてしまうと「何屋」かわからなくなり、ブランドビジネスとしては自殺行為です。

――取材前に原宿の店舗に立ち寄ったのですが、かなりの行列ができていました。やはり第1号店の原宿が一番混み合っているのでしょうか?

ゴンチャ 原宿表参道店(平日 午後16時ごろ)の様子。店の外まで行列ができていた

いいえ、違います。原宿表参道店の客数は全17店舗の中では中くらいです。

今のところ、一番お客様が多いのは渋谷です。渋谷、新宿、池袋、あとは横浜と続きます。こういった都市部への出店は、お店の規模というより、マーケットの大きさ、集まる人が多いからこそ必然的にそれが反映されて来店客が多くなっています。

面白いのが、2号店のビーンズ阿佐ヶ谷店は年を追うごとに客数が増え、今では開店時の約2倍にまで増えたことです。阿佐ヶ谷駅の駅ビルに入っているのですが、駅の乗降客数に変化はないです。阿佐ヶ谷が生活圏の方々が、新宿など都市部の店舗でゴンチャを体験して、地元の店舗を「再発見」する流れが起きたのです。

これは出店戦略通りの動きで、中核になるエリアに店舗を出店すると、そこから周辺マーケットに広がっていく。中心となる出店エリアがハブで、広がっていくところはスポーク。自転車の車輪のような関係になります。

ハブを出せば、スポークが潤う。また、スポークの地域で暮らす人がハブに遊びに行ったとき、そこでもゴンチャを利用する、という相乗効果が生まれます。お客様のブランド認知をあげるためには、出店戦略も大切な要素と思います。

――先ほどお話しされていたように、大阪​、福岡にも出店されましたね。これから地方でも展開を強化していきますか?

それらの地域への出店イコール、地方に大きく舵を切るということではないです。今回の大阪(梅田・茶屋町)と福岡(天神)は、特に大きなマーケットに出店するご縁をいただけた結果ですね。

東名阪福という4エリアを中心に、ハブ・アンド・スポークで進めていきたいと考えています。

――話が戻りますが、コーヒーの販売をやめたこと以外に、ゴンチャのシステムを日本向けにカスタマイズした部分があれば教えてください。

カスタマイズと言う言葉がまさにそれで、メニューを固定せず、お客様の好みに応じてカスタマイズするということをしています。

ドリンクは4つのベースのお茶から、アイスかホットか、サイズは3種類、甘さ、氷の量、トッピング、こういった要素を選んでいただいています。全部で2000種類くらいになるカスタマイズを、お客様の気分や体調、好みにあわせてカスタマイズいただくセルフカフェという概念をあえて強調しているんです。

ドリンクのベースは、ブラックティー(紅茶)、ジャスミン グリーンティー、ウーロンティー、阿里山 ウーロンティーの4種類

とはいえ、広く親しまれている「タピオカミルクティー」のイメージから、ゴンチャのドリンクに必ずタピオカは入っていると思っている方はまだまだ多く、それでお叱りの声をいただく場合もあります。ですが、カスタマイズという基本は変えませんし、「選ぶ楽しみ」を強調していることは、多くのお客様からもポジティブに受け取っていただいています。

――いわゆる「タピオカミルクティー」を求めてゴンチャに来店される方はどれくらいいますか?

ゴンチャにおけるタピオカミルクティーは「タピオカの入ったブラック ミルクティー」になりますが、全体の3~4割の注文率です。3人に1人はそれを頼むということになるので、かなり大きい割合になります。それでも、メニューとして固定はしません。

「ブラック ミルクティーのタピオカ入り」が、ゴンチャにおける"タピオカミルクティー"

ちなみに、タピオカの入ったブラック ミルクティーを頼む人の割合は、上陸当時はもっと多くて2人に1人でした。だんだんその割合が変わってきているということは、ほかの選び方をお客様に楽しんでいただいている証と考えています。

ターゲットは女性と先ほどお話ししましたが、来店客の男性比率も、当初2割程度だったのが、今や3割を超えています。お店に行かれると確かに女性が大勢いらっしゃっているのですが、確実に男性比率も上がっています。彼女と一緒に、というケースもよく耳にしますが、表参道のお店を3年間見ていて、男性だけでいらっしゃる方も、とても増えてきたなと思います。

――来店客の幅が広がってきたということでしょうか。

そうですね。外国人の方も、当初はアジア系の方が多かったのですが、欧米系の方の比率も著しく増えています。お茶という商材自体のマーケットが広がっているというのは、定点観察していると強く実感します。

なので、私達はあまりステレオタイプのターゲット層にこだわらず、「台湾ティーカフェ」として、お客様好みに自由なカスタマイズをしていただくようにしています。

――店舗ではかなり長い行列ができていますが、実際並んでみると想像より回転が速かったので驚きました。オペレーションの効率化と味の担保はどのように両立されているのでしょうか?

そこは日本が持つ優れた部分、オペレーションエクセレンスとでもいうのでしょうか。スタッフの習熟や細かな改善というのが半分。もう半分はお客様の慣れです。最初は「何を頼んだらいいんだろう」と悩まれる方が多いですが、年月を経ると注文を確定するまでの時間が短くなります。

現在は、お客様と従業員双方の変化が相乗効果を生み、20人並んでいたら20分あれば買えるような速度で提供しています。私もそうですが、スタッフの中にもカフェチェーンの経験者は多いです。そうした経験者たちがノウハウを生かしてくれていると感じます。

――多様なカスタマイズがある一方、お茶の作り置きなどに難しさがあるように思います。おいしさのために採っているルールなどあれば教えてください。

お茶については、必ず抽出後4時間以内に提供するように徹底しています。それを超えたら廃棄する。これはゴンチャのグローバルスタンダードです。

また、ゴンチャのアイスティーは、アツアツのお茶を1杯ずつ氷で急速に冷まして作っています。お茶が濃いと評価いただく要因のひとつには、風味がぎゅっと閉じ込められるこの製法にあると思います。一杯ずつお作りするので手間はかかりますが、この製法を採るのは、「おいしさ」の要素の中で「新鮮さ」が大きいと考えるからです。

ゴンチャでは熱いお茶を1杯ずつ氷で締めて提供している

――主力商材のタピオカですが、どのように調達されていますか?

本国の台湾から冷蔵で直輸入しています。それをお店で1時間かけて調理しています。世界共通のレシピで、大鍋のお湯でタピオカを戻した後に煮て、冷まし、最後に三温糖を和えていますが、これが結構大変です。業務用材料には、お湯に入れると10分で戻せるものや、レンジで温めて使うタピオカもあって、そういった企業様からの売り込みもありました。

ですが、そういったものは採用しません。「おいしさ」のために、効率ではなく、面倒くさい方をとりましょう。そのかわり、やらないことを決めましょう、ということです。

おかげさまで、スタンダードでは調理から5時間以内に提供することとなっていますが、実際は2時間以内に提供し切ってしまうことが大半です。

――ゴンチャが日本で本格展開されていることを含め、1990年代以来の「タピオカ」ブームがきている、とも言われています。春水堂系列のスタンド「TP TEA」が上陸するなど台湾発のチェーンも増えてきており、競争は過熱していますが、こうした「お茶カフェ」の競合と比較した際のゴンチャの「強み」を教えてください。

それもやはり「ブランド」に集約されます。美味しいお茶ならどこ? 美味しいタピオカミルクティーなら、台湾ティーならどのお店? と聞いていった時、第一想起になれるかどうかです。差別化というよりも、一番当たり前のことを愚直にやっていれば、「ティーカフェ」という市場の第一想起になるだろうと思います。

なので、市場が広がり、似たような業種・業態が増えるのは大歓迎です。偉そうな言い方になってしまいますが、パイを取り合いたいのではなくて広げたいので、健全な参入は本当に嬉しく思います。

――「ティーカフェ」市場、どれくらい広がりそうだと考えていますか?

私達の独自調査ですが、およそ300~400億円というのが現状です。シンクタンク系のデータを引っ張ってきて調べました。これには、コーヒーチェーンのティーメニューも、ティー専門のカフェも含みます。

その一方で、別に行った独自調査によれば、コーヒーチェーンにティーメニューがあることを知っている人は、回答者中15%に留まりました。100人いて15人しか、知らない。ましてや体験した割合となると、半分以下になるでしょう。

まず「外食でお茶が飲める」ことの認知拡大が重要になります。ですから、スタバが2016年からはじめた「TEAVANA」ブランドなどのティーメニュー拡大は大歓迎です。彼らがお茶を知らしめていただくほどに、お茶を専門としている我々のような存在の付加価値が増していくと考えています。

――出店を拡大する中で、座席のある店も増えています。今後は台湾本国のようにテイクアウト中心の出店を強化するか、着席前提のカフェ的な出店を強化するか、方針をお聞かせいただけますか?

座席の有無について明確な方針を作ってはいません。お客様からみた私達の価値は、「一杯のお茶」だからです。それをどのように楽しむかが重要なので、「何」を出すかにフォーカスすべきと考えています。

あとは商品以外の体験、お茶を買うまでの時間自体がお客様からするとブランド体験なので、それを長くすればするほどブランド理解は深まります。

たとえば郊外のお店は客席が多く設計されていますが、これはブランド理解のための施策です。郊外型店舗では、隣で300円くらいの「タピオカミルクティー」が売られているので、ブランドを正しく理解していただかないと、「Mサイズのブラックミルクティーにパールのトッピングを入れた」ものが529円というのは、高く感じてしまうのです。

ただ、現段階の出店戦略では都市部が多く、調理の時間もかかることから、キッチンを広くとって、大勢のお客様に商品を提供できる体制を整えることを優先する場合が多いです。なるべくお客様をお待たせしないように、まずは店内のキッチンを強化していきたいですね。

――ありがとうございました。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。