4ドアクーペの魅力とは? メルセデスの新型「CLS」試乗で考える

4ドアクーペの魅力とは? メルセデスの新型「CLS」試乗で考える

2018.09.07

メルセデス・ベンツの4ドアクーペ「CLS」に試乗

「Eクラス」などでも選べるクーペ、「CLS」の存在意義は

ドアの枚数で大きく違う日本での使い勝手

メルセデス・ベンツが2018年6月に日本で発売した新型「CLS」は、後ろにいくにしたがって天井(屋根)が低くなるクーペスタイルを特徴とするクルマだ。同社では「Cクラス」「Eクラス」「Sクラス」といった商品でもクーペスタイルを選べるのだが、なぜ別枠でCLSを用意しているのか。その理由を試乗しながら考えてみた。

メルセデス・ベンツの新型「CLS」

消えていった日本の4ドアクーペ、「CLS」は3代目に

CLSは4ドアでありながらクーペのような流麗なスタイルを持つところが特徴で、初代は2004年に誕生している。クルマの形として、従来の価値観からするとセダンは4ドアで、クーペは2ドアであることが一般的だった。その両者を合体し、新たな価値としたのがCLSである。

CLSの車体寸法は4ドアセダンの「Eクラス」とほぼ同じだが、クーペスタイルなので車高は低く見え、かつ速そうで、カジュアルな雰囲気をも漂わせる。つまり、Eクラスよりお洒落な感じなのだ。

メルセデス・ベンツ日本の広報によると、「『Sクラス』が技術の集大成だとするなら、『CLS』はメルセデス・ベンツのデザインを切り拓くクルマ」とのこと。「サメ」を想起させるフロントエンドの前傾具合に注目だ

こうした商品性を持ったクルマとしては、1970年代半ばに日産自動車「セドリック」の4ドアハードトップがあったし、1980年代末から1990年代にかけてはトヨタが「コロナ EXIV」や「カリーナED」を発売するなど、実は日本車が先行していた。いずれも4ドアセダンであったセドリック、コロナ、カリーナに比べ、より流麗な外観を獲得しつつ、4ドアの便利さを併せ持っていたのが70~90年代に登場したクルマ達だったのだ。しかし、車体剛性が不足していたり、4ドア5人乗りでありながら後席の居住性がよくなかったりして、市場から去っていったという経緯がある。

同じことはCLSにもいえそうだが、新型で3世代目となるこのクルマは、誕生から14年を経てなお、寿命を保っている。

新型「CLS」の価格は、2.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジンを積む「CLS 220 d スポーツ」が税込み799万円から。電気モーターの「ISG」(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を搭載する3.0L直列6気筒エンジンの「CLS 450 4MATIC スポーツ」は同1,038万円からだ

クーペで気になる後席の居住性はどうか

新型CLSを過去の4ドアクーペと比べると、車体剛性については、衝突安全性能が向上したことにより70~90年代とは比べものにならないほどに高まっている。

では、後席の居住性はどうか。新型CLSのエクステリアデザイン統括であるロバート・レズニック氏に問うと、「後席を重視するお客様には、Eクラスを選んでいただけばいいのではないか」との答えだった。この部分について、実用性は割り切っているようだ。

それでも、初代から2世代目までは4人乗りで、後席が2人掛けだったCLSが、新型では後席を3人掛けとし、5人乗りのクルマに生まれ変わっている。実際に後席に座ってみた実感からいうと、それほど窮屈さは感じないし、天井はえぐられて頭上の空間が確保されており、なおかつ、頭の後ろまで天井が続く造形により、落ち着きのある雰囲気となっていた。後席への配慮も、実は十分に講じられているのだ。

天井は後ろにいくほど低くなるが、後席の居住性は悪くない

CLSの販売は、米国や中国で好調だという。米国では1~2人乗りでの利用が多いはずで、中国では大柄で格好いいクルマの需要が高い。日本にもCLSを好む消費者はいる。合理性や実用性の高さを求める欧州よりは、見た目を意識する市場で好評を博していて、それが歴代CLSの存続にもつながっているようだ。

なぜ4ドアである必要があるのか

それにしても、見栄えがよく格好のいいクルマなのに、なぜ4ドアである必要があるのか。メルセデス・ベンツには、ほかに「Cクラス」「Eクラス」「Sクラス」に2ドアクーペがある。4ドアであることの利点とは何なのだろうか。

2ドアにも独特の格好よさがあるが、なぜCLSは4枚のドアを備えているのだろうか

まず、4ドアであることにより、前後のドアはそれぞれの長さが短くなる。そのため、乗り降りがしやすくなる。

例えばBMWの「MINI」の場合、基本となる3ドアハッチバックは、車体寸法としては日本の道路や駐車場事情にも合っていて使い勝手がよさそうだが、乗り降りのドアが2枚なのでドア1枚あたりの全長が長く、実は乗り降りの際にドアを大きく開ける必要がある。

一方、すでにMINIの5ドア(4ドア+ハッチバック)も市場に出ているが、その前に「MINI クロスオーバー」というSUVが発売となり、これが5ドアであった。車体寸法はMINI3ドアより大柄だが、日本でよく売れた。理由の1つは、乗り降りするドアが4枚あることにより、ドア1枚あたりの長さが3ドアに比べ短くなるので、狭い場所での乗り降りがしやすかったからだ。

ドア全長が短ければ、少ししかドアを開けられない場所でも乗り降りできる。駐車場の広さに制約がある場所では、4ドアの方が隣のクルマにドアをぶつける心配も少なく、乗り降りしやすいのである。

乗り降りしやすいのが4ドアの特徴。狭い駐車場も多い日本では特に便利だ

ほかの視点としては、荷物の乗せやすさがありそうだ。4ドアであることにより、例え1~2人しか乗らない場合でも、後ろのドアを先に開けて、手荷物などを後席やその床下へ置き、身軽になってから前席に乗り込めるという便利さがある。後席に人が乗ることは少なくても、荷物を手に1人でクルマを利用するケースは割と多い。

また、雨の日には傘を先に後席の床へ放り込み、急いで運転席に乗り込むといったこともできる。折りたたんだ傘を手に持ったまま運転席に乗り、助手席側へ傘を置くとなると、自分の服や座席に雨がしたたり落ちる。小雨程度であれば、先に後席へ傘を放り込めた方がいいという場合もあるだろう。

後席に手荷物を積むのも4ドアの方が簡単だ

そうした点から見ると、例えばBMWの電気自動車「i3」は、4ドアでありながら、前のドアを開けてからしか後ろのドアを開けられない機構となっているため、単純に後席の乗り降りだけであれば4ドアの利便性を実感できるが、上記のように、1人乗りでも後席へ先に荷物を置きたいといった使い方には適さない。

4ドアには、単に後席に乗る頻度が高いとか、後席への乗り降りがしやすいといったことだけでなく、ほかの使い勝手で便利さを期待される側面もあるのである。いわゆる4ドアセダンの実用性はなくても、CLSが4ドアである利点は案外、大きいといえる。

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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