関連イベントも増加中…日本にヒストリックカー文化は根付くのか

森口将之のカーデザイン解体新書 第2回

関連イベントも増加中…日本にヒストリックカー文化は根付くのか

2018.09.12

日本で充実してきたヒストリックカーイベント

「AUTOMOBILE COUNCIL」に集った世界の名車たち

「クルマは文化」の欧米、日本の現在地は?

自動車の電動化や自動化が進もうとしている中で、それとは対極にある旧いクルマ、いわゆる「ヒストリックカー」に注目が集まっており、イベントも増えている。クルマのデザイン史を振り返る意味でも貴重な機会なので、こういったイベントが充実してきたのは好ましい流れだ。今回は、これらのイベントの中から、8月に行われた「AUTOMOBILE COUNCIL 2018」(オートモビル カウンシル 2018)を取り上げつつ、日本のヒストリックカーシーンの今を考えてみたい。

2018年8月に千葉県の幕張メッセで開催された「AUTOMOBILE COUNCIL 2018」。今回の記事では、会場に集った名車たちを画像で紹介していく

自動車を文化として認識する欧米、日本の現状は?

新車と同じように、ヒストリックカーの世界にもイベントがある。大きく分けてアウトドア系とインドア系があり、アウトドア系は展示がメインのものと、サーキットや公道の走行がメインのイベントがある。

例えばイタリアには、いずれも第2次世界大戦前からの伝統を持つ公道走行イベントの「ミッレミリア」と、展示をメインとする「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」がある。米国では毎年8月、カリフォルニア州において、ラグナ・セカ・サーキットを使った「モンテレー・モータースポーツ・リユニオン」と、ゴルフ場を会場とする「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」が開かれる。

フォード「サンダーバード」

コンクール・デレガンスとは「美の審査会」という意味のフランス語で、イタリア語ではコンコルソ・デレガンツァになる。車両のデザインやヒストリーだけでなく、現在のコンディションやオリジナリティまで厳しくジャッジされるのが特徴だ。ちなみに、今年の「ぺブルビーチ・コンクール・デレガンス」では、アルファロメオの「8C 2900B」というクルマが最優秀賞に輝いた。

一方、インドア系ヒストリックカー・イベントで有名なのは、毎年冬にフランスで行われる「レトロモビル」だろう。会場はパリのモーターショーと同じで、自動車メーカーや専門ショップ、オーナーズクラブによる車両展示のほか、オークションも実施され、実車だけでなく部品や書籍、ミニカー、絵画などを販売するコーナーもある。

フェラーリ「ディーノ」

筆者も、このレトロモビルを何度か訪ねたことがある。日本では見ることができないヒストリックカーやその部品、あふれんばかりのミニカーなどが所狭しと並んでいて、自動車を文化として捉えていることを思い知らされた。

日産「スカイライン ハードトップ 2000GT-R」(通称:ハコスカ)

ちなみに、旧いクルマを指す言葉としては、ヒストリックカー以外に「クラシックカー」「ヴィンテージカー」「ヘリテージカー」などの言葉もあり、日本語で旧車と呼ぶことも多い。

このうち、全体を総称するのがクラシックカーで、第2次大戦前に生まれたものをヴィンテージカー、戦後1970年代ぐらいまでに作られたものをヒストリックカーと呼び分けることもある。筆者はヒストリックカーを使うことにする。ちなみに、1980年代以降に登場した価値あるクルマについては、「ネオヒストリック」「ネオクラシック」という言葉を使うこともある。

テーマは「クラシック・ミーツ・モダン」

欧米に比べると日本は、ヒストリックカーの文化が根付いていないといわれる。20世紀初めからクルマとの生活を始めていた欧米と、1960年代になってそのような時代が訪れた日本とで、時間差が生じるのは仕方がないだろう。

スバル「レオーネ 4WD エステートバン」

それでも、日本クラシックカー協会は1970年代から東京都内で「ニューイヤーミーティング」を続けているし、富士スピードウェイや筑波サーキットといったサーキットでレースイベントを行ったりもしている。さらに最近になって、インドア系、アウトドア系を問わずイベントがかなり増えてきた。

中でも、今年で3回目と歴史は浅いものの、高い評価を受けているイベントがある。千葉県の幕張メッセで毎年8月に行われる「AUTOMOBILE COUNCIL」だ。「クラシック・ミーツ・モダン」をコンセプトに掲げ、自動車メーカー、外国車のインポーター、専門ショップ、オーナーズクラブなどが、さまざまな出展を行う。今年は3日間で3万人を超える来場者が詰め掛けた。

ホンダ「S600」

メーカーとインポーターでは、スバル、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、アストンマーティンが参加した。この中でまず目を惹いたのがマツダだ。

マツダ「ランティス タイプR」

マツダはクルマのみならず、ディーラーからモーターショーの展示に至るまで独自のデザインポリシーを貫いており、多くのクルマ好きから支持を受けている。その精神がAUTOMOBILE COUNCILにも反映されていた。

さらに、今年の展示では「コンパクトハッチバック」をテーマとし、1980年代に一世を風靡した赤いボディの5代目「ファミリア」と、筆者も以前、記事で紹介した「マツダ 魁 CONCEPT」(マツダ カイ コンセプト、2017年の東京モーターショーに初出展)が並んで展示されていた。

マツダ「ファミリア」

おそらくマツダは、ファミリアから現在の「アクセラ」、そして次期アクセラのプロトタイプと噂される「魁 CONCEPT」に至る結びつきをアピールしたかったのだろう。まさにクラシック・ミーツ・モダンである。

「マツダ 魁 CONCEPT」

自動車を作って売ることが本業とされてきたメーカーにとって、販売が終わったヒストリックカーは収益面でうまみの少ない存在かもしれない。しかし、ブランドとして考えれば、長く輝かしい歴史を多くの人に伝えることは大切だ。その点で、ヒストリックカーを見せることはメーカーにとっても価値あることと私は考えている。

メーカーの垣根を越えた展示も

興味深かったのはトヨタのブースだ。こちらは「元気!!ニッポン1960s!」をテーマとして、レーシングカーの「トヨタ7」、速度記録に挑戦したスポーツカー「2000GT」などをディスプレイしていたのだが、その中になぜか日産の「セドリック」も置かれていた。

トヨタ「2000GT」(レプリカ)

トヨタはイベントの直前に「クラウン」をモデルチェンジして発売したばかり。なのに、長年ライバル関係にあったセドリックを持ってきたのはどうしてか。前回の東京オリンピックで聖火を輸送したセドリックの起用に、時節柄を踏まえた判断があることは間違いないのだが、こういった展示からは、日本の自動車文化をメーカーごとに分けず、一体のものとして捉えようとするトヨタの思いも伝わってくる。

これ以外では、筆者も日本上陸の模様をお伝えしたフランスのスポーツカー、アルピーヌ「A110」が新旧そろい踏みで主催者展示された。A110の一般公開は、日本ではこの会場が初めてということで注目を集めていた。40年の時を経ても変わらぬ精神を多くの参加者が感じたことだろう。

アルピーヌの新旧「A110」

ロールス・ロイスとベントレーの展示・販売・整備を行う埼玉県のワクイミュージアムが展示した「ラ・サルト」の存在感も印象的だった。

ル・マン24時間レースが行われるサーキット「サルト」の名を冠するこのクルマは、「もし1950年代のベントレーがスポーツカーを作っていたら?」というコンセプトで、同時代のベントレーのセダンをベースとし、英国の専門ショップが24台限定で生産したもの。大人の遊びという表現がふさわしいこのラ・サルトの日本初公開に、AUTOMOBILE COUNCILがもっとも相応しい会場だったという声が多くの関係者から聞かれたし、筆者もそう思った。

ジャガー「デイムラー・ソブリン」

とにかく、AUTOMOBILE COUNCILの会場は大人っぽい。コンパニオンはおらず、派手な照明や賑やかな音楽もない。落ち着いた雰囲気の中で名車をゆったり堪能することができる。美術館を思わせる場だったのである。

この面では、似たようなコンセプトのレトロモビルより上ではないかと思ったほどだ。日本のヒストリックカー文化が少しずつ大人に成長しつつあることを、このイベントを通して実感した。

ホンダの初代「レジェンド」
トヨタの3代目「コロナ」(RT40型)
スバルの初代「フォレスター」
GM「シボレー・コルベット スティングレー」
マセラティ「ギブリSS」
GM「ポンティアック・ファイヤーバード・トランザム」
ポルシェ「356 スピードスター」
BMW「3.0CSA」
ランドローバー「ディフェンダー」
アルファロメオ「ジュリア 1300TI」
シトロエン「DS Familiale」
三菱自動車工業「コルトギャラン」
いすゞ自動車「べレット 1500 デラックス」
日野自動車「コンテッサ 1300クーペ」
ダイハツ工業「コンパーノ スパイダー」
あらゆる面で様変わり!  新型「デリカ D:5」試乗で感じた格段の進歩

あらゆる面で様変わり! 新型「デリカ D:5」試乗で感じた格段の進歩

2019.03.26

三菱自動車の新型「デリカD:5」に試乗

顔つきの変化に目を奪われがちだが中身もすごかった

本質を追求する三菱自動車の着実な技術開発が奏功

三菱自動車工業が2019年2月に発売した新型「デリカD:5」は、印象をガラッと変えたフロントマスク(顔)に注目が集まりがちだが、注目すべきはその中身だ。三菱自動車らしく本質を追求した改良により、クルマの性能は先代に比べ格段に進歩している。その出来栄えを試乗で確かめてきた。

三菱自動車の新型「デリカD:5」

12回目の改良で大幅に進化した「デリカD:5」

三菱自動車工業の「デリカ」が誕生したのは1968年のこと。その車名は「デリバリーカー」に由来しており、目的地まで人や物を運ぶクルマとして当初は商用を主体としていたが、翌1969年には9人乗りの「デリカコーチ」という乗用の車種が登場した。そして一昨年、デリカは誕生から50周年を迎えた。

左が初代「デリカ」、右は改良前の「デリカD:5」

現在の「デリカD:5」はデリカの5代目ということで、この名が付いた。50年を超える歴史の中では、1982年の2代目で早くも4輪駆動車を設定し、ディーゼルエンジンを搭載した。この2つは、今日もD:5を特徴づける要素となっている。

3代目までは「キャブオーバー」といって、エンジンを運転席下に搭載するワンボックス車の形態だったが、4代目からは客室の前にエンジンを搭載するミニバンとなった。そしてデリカD:5は、2007年のモデルチェンジによって登場し、すでに12年の歳月を経ようとしている。この間、三菱自動車は11回も一部改良を実施していて、今回が12回目となる。歴代デリカは1つの車型を長く継承する傾向にあったが、ことに今回の改良では、大きな進化を遂げたと感じる。

2019年2月に発売となった最新のデリカD:5は、外観の輪郭は従来のままだが、ことに顔つきが大きく変わり、押し出しの強い造形となった。その効果は、例えば今回の試乗で、大型トラックがやや無理な車線変更をしようとした際、ミラーに映るデリカD:5の顔を認識し、一瞬、動きを躊躇した様子にも見てとれた。この造形は、三菱が2015年の「アウトランダー」以降、フロントの共通性として各車で採用している「ダイナミックシールド」の概念に基づいた変更である。

改良を経て大幅に変わった「デリカD:5」の顔つき

またフロントの造形は、主に市街地などでの利用が多い顧客向けに新しく車種設定した「アーバンギア」と、標準仕様といえる「D:5」とで異なる意匠を採用している。

こちらが「デリカD:5 URBAN GEAR(アーバンギア)」。「D:5」には4つ、「アーバンギア」には2つのグレードがあり、価格は384万2,640円~421万6,320円となっている

いずれにしても、この大胆な顔つきの変更が注目されがちだが、それ以上に今回の改良は、走行性能や上質さといった面での進化が大きく、格段の進歩と驚かされるほどであった。なかでも、ディーゼルターボエンジンの改良と、変速段数を6速から8速へと増やしたオートマチックトランスミッション(8速AT)の効果は絶大だ。

SUV顔負けの悪路走破性に上質な乗り心地をプラス

エンジンの基本は変わらないが、新たに「尿素SCR」と呼ばれる排ガス浄化装置が取り付けられ、その精度が高まった。走行のための燃料である軽油のほかに、排ガス浄化用の尿素水溶液を補給する手間は増えるが、いまやディーゼルの排ガス浄化は尿素SCRなしでは語れない時代となっている。

その上で、エンジン内部の摩擦損失を減らしたり、燃焼室の改良や新型燃料噴射装置を採用したりするなどの改良により、最大トルクを増大し、アイドリングストップ後の再始動性を改善している。

2.2Lコモンレール式DI-D(ダイレクト・インジェクション・ディーゼル)クリーンディーゼルターボエンジンを搭載

8速ATは発進で使う1速のギア比を大きくして力強さを上げ、それ以後のギア比は従来の6速に比べ小さくすることで、滑らかかつ燃費に効果的な変速を可能にしている。

車体は、もともとデリカD:5の特徴であった「リブボーンフレーム」と呼ばれる骨格構造に加え、車体前部の剛性を上げる改良が施された。4輪駆動による悪路走破で、SUVの「アウトランダー」や「パジェロ」などに引けを取らない性能を発揮するデリカD:5は、強靭な骨格構造により、大きな凹凸のこぶ路面で、前後のタイヤが対角線上で持ち上げられ、車体にねじれが加わった状態でも、後ろのスライドドアを開閉できる車体剛性を持つ。それが他では真似できない特徴の1つだった。そこに車体前部の剛性の強化が加わり、舗装路での走りの上質さが改善されたのである。

試乗をしてみると、それらの改善が、D:5の走りを格段に進歩させていた。

新型「デリカD:5」および「アーバンギア」のボディサイズは、全長4,800mm、全幅1,795mm、全高1,875mm、ホイールベース2,850mm、最低地上高185mm。車両重量はグレードによって違うが1,930キロ~1,960キロだ

試乗で実感、性能は「様変わり」

ディーゼルターボエンジンは、始動後にディーゼルらしい音を発生させるが、軽やかに聞こえるので嫌な気分にならない。1,900キロを超える重い車体であるにもかかわらず、4輪駆動車であることから、発進時の動き出しは軽やかだ。その際もエンジンはうなることなく、ほぼアイドリング回転に近いところで走り出した。

エンジン内部の摩擦損失が軽減されたこと、同時にトルクが増大されたこと、さらには8速ATの1速ギア比が大きくなり、ギア比の力でエンジンを助ける効果などにより、このスムーズな発進が実現できたのであろう。

また今回、パワーステアリングが電動化されたので、発進してすぐに曲がる場面でも、クルマは軽やかに進路を変えた。

パワーステアリングは油圧式から電動に変わった

この走り出しの時点で、すでにデリカD:5の大きな進化を実感した。さらに、アクセルペダルを踏み込んで加速させていくと、わずかなペダルの踏み込みで速度を増していく。しかも、速度が上がるに従って、ディーゼル音は気にならなくなるほど静かになり、快適だった。8速ATの効果でエンジン回転を上げ過ぎないこともあるし、防音や吸音を増した車体の効果も静粛性に効いている。

高速道路に入っても、エンジンやトランスミッションの効果、また快適な室内の様子は変わらない。時速100キロで走行中のエンジン回転数は、アイドリングから少し上の毎分1,500回転ほどでしかない。従来のディーゼルエンジン車では、この速度で巡行するには騒音が大きく、音に疲れる印象があったが、様変わりである。

走り出しでも高速道路でも改良の効果が感じられた新型「デリカD:5」

乗り心地も、車体前部が強化されたことにより、路面の凹凸を乗り越えた際の衝撃が緩和され、改善されたことを実感した。走行感覚も乗り心地も、明らかに上質なミニバンとなった。この快適性であれば、D:5でもっと遠出をしたい気持ちにさせられるはずだ。

「様変わりした」というのが、まさしく適切な評価だろう。そこには、モデルチェンジによらず、実績を踏まえて一歩ずつ改良を加えていく三菱自動車のよさが現れている。

先進的だが着実、三菱自動車の技術開発

三菱自動車は2000年のリコール問題や2016年の燃費不正などを経験し、今日に至る。社内の隠蔽や規律違反などを抱えながら、一方で、技術開発においては先進的な取り組みを続けてきた側面がある。

1996年の直噴ガソリンエンジンの量産化や、同年の電子制御を活用した4輪駆動力制御などで、三菱自動車は先駆的な技術開発力を発揮してきた。同時に、1970年代からのラリー競技への出場や、1980年代からの「ダカールラリー」(パリダカ)出場などにより、悪路走破性のみならず、舗装路での俊足の走りを追求してきた歴史がある。

今日、三菱自動車は電動化とSUVに的を絞った商品展開で、存在感を発揮しようとしている。その両方の技術を合わせた象徴的な商品が「アウトランダーPHEV」だ。同車は世界で最も売れているプラグインハイブリッド車である。

電動化とSUVにフォーカスする三菱自動車の象徴的な商品が「アウトランダーPHEV」だ

三菱自動車が力を注いできた4輪駆動についてはデリカの歴史の中で触れたが、電動化に関しても同社は、1966年に電気自動車(EV)の開発を開始し、2009年には世界初の量産EV「i-MiEV」の市販にこぎつけるなど、先駆的な歩みを進めてきた。

いずれの技術も世界の主要自動車メーカーが開発に取り組んでいるものだが、それを量産化し、一般へ市販して世に問うことを、三菱自動車は長年にわたり粘り強く続けている。さらに、その技術を一時的な流行で終わらせることなく、磨き続けるのが同社の特徴にもなっている。それを可能としているのは、そもそも同社が、本質的な原理原則を追求した技術開発にこだわってきたからなのであろう。

世界初の量産EVとなった「i-MiEV」の現行モデル

デリカD:5においても、例えば「車体剛性」のような、一見しただけでは消費者には分かりづらい部分において、「リブボーンフレーム」という本質的な剛性構造を採用することで、ミニバンとしては悪路走破性で抜きん出た性能に仕上げている。そこが土台となり、乗り心地が格段に改善しているのだ。

技術革新といっても、目新しさをやみくもに追うのではなく、本質的な課題解決の道を探ることが、長年にわたり技術を進化させ、磨き続けることを可能にする。今度のデリカD:5においても、まさにそうした三菱自動車の開発姿勢が発揮されたと実感した。すでにD:5を所有している人でも、今回の改善には驚き、食指が動くことだろう。

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iPad、iMac、AirPods…アップルが3日連続で新製品

一見地味な製品アップデートだが、その狙いは?

メインストリーム需要の受け皿としては充実

3月18日からの3日間は、アップルの新製品ラッシュとなった。「iPad Air」と「iPad mini」の新型を皮切りに、19日には「iMac」、20日には「AirPods」を立て続けに発表し、世界的に話題を巻き起こした。

iPad製品群に「iPad Air」と「iPad mini」の新モデルを追加

個々の製品はいずれも既存モデルのアップデートにとどまっており、見た目の変化も少なく地味な印象だ。果たしてアップルの狙いはどこにあるのだろうか。

目立ったわりにアップデートは地味

今回アップルが発表した製品に共通しているのが、見た目に大きな変化はなく、中身のアップデートにとどまっている点だ。

新しいiPad AirとiPad miniは、いずれも既存モデルとサイズや画面の大きさがほとんど同じだ。最新世代のiPad Proはデザインを一新したのに対し、2つの新製品は既存モデルの金型や部品を流用しやすい構造となっている。

新型「iPad Air」の見た目はiPad Pro 10.5とほとんど同じだ

専用ペンの「Apple Pencil」も第1世代の対応にとどまっている。第2世代のペンは無線充電方式になっており、これに対応させるとなればiPadのフルモデルチェンジは避けられなかっただろう。

プロセッサーはiPhone XSやXR世代の「A12 Bionic」を搭載した。この点についても、スマホ需要が伸び悩む中、販売不振が指摘されるiPhone XRのプロセッサーを流用したのではないかと邪推したくなるところだ。

新しいiMacは最新の第9世代Coreプロセッサーを搭載したものの、基本デザインは従来モデルから変わっていない。AirPodsの再生時間は最大5時間のままだが、新チップの搭載で接続性が高まり、ワイヤレス充電のケースが加わった。

ディスプレイ一体型「iMac」の新モデル

 

新しい「AirPods」はワイヤレス充電対応モデルも

いずれも既存モデルの順当なアップデートだが、3日連続という異例の発表スタイルを採ることで、発表会の中に埋もれることなく注目を浴びることに成功したと言えるだろう。

新生活には朗報、ビジネス利用もお手軽に

新しいiPad AirとiPad miniに期待されるのが、ペン入力への対応や低価格化によるビジネス利用の拡大だ。

小型タブレットのiPad miniは、主にコンテンツの再生用途に使われてきた。だがスマホが大画面化する中で、再生用途だけでは買い換え需要が伸び悩んでおり、2015年のiPad mini 4を最後に製品投入が途絶えていた。

これに対して、第5世代となる新モデルは専用ペンの「Apple Pencil」に対応したことで、ビジネス利用の可能性が広がっている。メモ用途に最適なサイズとして、iPad miniの対応を待っていた人も多いのではないだろうか。

 

第5世代のiPad miniはペン入力に対応した

新iPad Airは、専用キーボードの「Smart Keyboard」に対応した最も安価なモデルになる。ペンとキーボードを合わせて購入しても10万円に収まるようになり、ビジネスパーソンや学生に訴求する価格帯に降りてきたといえる。

iPadのビジネス利用にあたっては、iOSの機能やアプリ対応の面で課題が多い。だが、低価格帯のiPadが登場したことは、春からの新生活に合わせてiPadの購入を検討していた人には朗報だろう。

2018年に登場した最新のiPad Proは、プロのクリエイター用途などハイエンド寄りになっていた。その中で登場した新しいiPad AirとiPad miniは、ビジネス用途をカバーするメインストリームの製品として売れ行きに注目したい。

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