ワイン法の制定で何が変わる? 躍進する「日本ワイン」の可能性

ワイン法の制定で何が変わる? 躍進する「日本ワイン」の可能性

2018.08.30

2015年10月に定められた“ワイン法”が、施行のときを迎える

法律によって、日本でつくられるワインの「定義」に変化

日本のワインの現状とこれからについて、専門家に話を聞いた

平成が終わろうとしている2018年、日本のワイン業界に大きな変革の波が訪れようとしている。2015年10月に定められた“ワイン法”が、いよいよ施行のときを迎えるのだ。

ワイン法によって何が変わるのか。そもそも日本のワインは今、どんな状況にあるのか。日本のワイン業界を牽引するメルシャン株式会社のエノログ(ワイン醸造技術管理士)であり、そのキャリアを日本ワインの発展と共に歩んできた第一人者・藤野勝久氏にお話を伺った。

日本で“ワイン法”が生まれた理由

ワインというとフランスやイタリア、チリなどで造られているイメージが強いが、日本でもワインは造られている。ワイン売り場に足を運べばたいてい日本のワインの棚があるし、最近は特設売り場を設けてアピールしているところも多い。

同社グループ会社運営のレストラン「キリンシティ」でも、日本各地で醸造したワインを提供している(※掲載ラインナップでの提供は2018年9月中旬まで )

「日本ワインの消費量は年々増加しています」と藤野氏は言う。むろん、海外から輸入されたワインに比べるとシェアはまだまだ少ないが、着実に存在感を増しているのだ。

ただし、ワインといってもその種類は様々だ。ワインは価格の幅がもっとも広い飲み物で、同じ750mlのボトルでも500円で買えるものもあれば、それこそ100万円するものまである。原料は同じぶどうという果実であるにも関わらず価格がこれだけ違うのは、クオリティや希少性に差があるからだ。

たとえば、日本で造られるワインの多くは、海外からぶどう果汁を輸入し、それを醸造したものだ。つまり、日本で製造はしているけれど原料ぶどうは海外産なのである。こうしたワインは大量生産され、安価で販売されることが多い。

一方で、ワインの専門ショップなどに並ぶ中~高価格帯の日本ワインは、日本国内で栽培されたぶどうを用いて、日本国内で醸造されたものがほとんどだ。大量生産型のワインに比べて手間もコストもかかるため、価格はどうしても上がるが、その分クオリティも高くなる。

藤野氏によれば、「これまで日本では、原料が国産でも海外産でも『国産ワイン』を名乗れていた」のだという。海外原料なのに国産とはちょっと変な感じがするが、醸造したのは日本なのだから“国産”であるという理屈なのだ。

しかし、「国産」という文字を見れば、当然「ぶどうが国産」なのだと思う人もいるだろう。こうした誤解を招かないように、しっかりと表記ルールを決めましょうというのが、今回のワイン法制定の背景なのである。

新たな日本ワインのルール

それでは、新しいワイン法によって表記ルールはどうなったのか。

「国産ぶどうのみを原料として、日本国内で造られたワインのみ『日本ワイン』と表示できることになりました。一方で、原料が国産か海外産かを問わず、日本国内で造られたワインは『国内製造ワイン』を表示することができます」(藤野氏)

「国産ワイン」という曖昧だった表記は廃止され、日本のワインは今後、「日本ワイン」と「国内製造ワイン」という2つのカテゴリに分かれることになった。

ワイン法施行後の表記と条件。これまでひとくくりに「国産ワイン」とされていた製造条件の違うワインが、明確に区別されるようになる。

もちろん、これまでに製造された“国産ワイン”はまだしばらく市場に出回るので表記がいきなりすべて変わるわけではないが、少しずつ新たなワイン法に基づいた表示に統一されていくだろう。

また、「産地」「ぶどう品種」「ぶどうの収穫年」などに関する表記ルールも細かく定められた。たとえば「長野メルロー 2015」というワインの場合、「長野」という産地を表示するためには、原料となる長野県で収穫したぶどうを全体の85%以上使用しなければならない――といったルールである。

例に挙げたシャトー・メルシャンの「長野メルロー 」。

同様に「メルロー」(ぶどう品種)を表示するためにはメルローという品種を全体の85%以上使用している必要があり、「2015」を表示するためには2015年に収穫されたぶどうが原料の85%以上である必要がある。

こうしたルールをしっかりと定めることで、「長野メルロー 2015」という表示を見れば、「2015年に収穫した長野県産のメルローで造ったワインなんだな」とわかるというわけだ。ちなみになぜ85%なのかというと、それがワインにおける国際基準だからである。

誤解してはならないのは、今回のワイン法が制定される前が無法地帯だったわけではないということ。シャトー・メルシャンを始めとする各ワイナリーは以前から国際的な表記ルールを取り入れており、その意味では「ワイン法の前後で大きく変わるようなことは特にありません」(藤野氏)という。

とはいえ、今後日本ワインの輸出の可能性なども考えると、こうした基準が国の正式なルールとして定められた意義は大きい。ワイン法を持たない国のワインは国際市場には受け入れられないからである。

今後の日本ワインはどう発展していくのか

では、ワイン法の施行により今後の日本ワインはどのように発展していくのだろう。

確実にいえるのは、よりその産地の個性を表現した日本ワインが注目されていくだろうということだ。

ワインの原料はぶどうのみで、十分な水分(果汁)があるため水などは一切加えずに造られる。生ぶどうは傷みやすいため、収穫された産地で醸造されワインとなる(濃縮還元技術を使えば運搬も可能だが、前述したようにそれでは日本ワインを名乗れなくなった)。つまり日本ワインとは、その産地の味わいそのものなのだ。

他の農作物と同様、産地の気候や土壌などはぶどうの味に大きな影響を与え、ワインの味や香りにも表出する。これがワインの多様性であり、面白さだ。

ワイン法により「産地」ルールが明確化されたことで、今後は産地をアピールするワインがより増えてくるだろう。そして「みかんなら愛媛」のように、「○○という品種ならこの産地が良い」といったブランドが構築されていくはずだ。

そうした将来を見据えて、シャトー・メルシャンは新たな取り組みを始めている。

「2019年秋、長野県上田市に『椀子ワイナリー』をオープンする予定です。ワイナリーでは見学や直販を行い、より日本ワインを身近に感じていただければと考えています。また、桔梗ヶ原ワイナリーを今年9月にオープンする他、勝沼ワイナリーでも見学ツアーの刷新を行いました」(藤野氏)

シャトー・メルシャンの3つのワイナリー 。

地元に根ざしたワイナリーをオープンすることでワインファンを呼び込み、地域の活性化や日本ワインの価値向上につなげていくのが狙いだ。世界の有名産地がそうであるように“そこでなければならない”理由が明確にあるワインは、地場産業としても大いなる可能性を秘めている。

成長を続ける日本ワイン、その可能性に注目が集まっている。

あなたが頼んだからやったんですよ!

企業戦士に贈る「こむぎのことば」 第3回

あなたが頼んだからやったんですよ!

2019.05.22

「こむぎこをこねたもの」が企業戦士にエールを送る連載

頼まれた仕事をやったのに怒られるという理不尽に遭遇したら……

上司から頼まれた仕事をやって、翌日持って行ったら「何でそんなことをやっているんだ」と怒られた……。まさに「これぞ理不尽」という出来事です。

自分の言ったことを忘れてしまっている人、いますよね。

仕事をやらなくて怒られるのは仕方がないですが、頼まれたことをしっかりやったのに怒られるなんて、たまったものではありません。

口頭での指示ではなく、メールやチャットなどの履歴に残るやり取りであれば、このようなストレスも軽減できるかもしれませんが、徹底するのはなかなか難しいものです。

「今日のあの人」は「昨日のあの人」と同じ人ではないかもしれない。今日頼まれたことを、明日の相手が覚えているとは限らない。諸行無常の世の中です。

どうにかして理不尽な仕打ちをしないよう変わってほしいものですが、他人をコントロールしたり、変えることができないのもまた事実。自分の言ったことを忘れて信頼関係を崩すのも、自分の発言に責任を持とうと心がけるのも、その人自身の問題です。

あなたがまずできるのは、その上司と同じことをしないように、自身の行動を正すことでしょう。

また、相手もたくさんの仕事を抱えていて、たまたま頼んだことを忘れてしまっていただけかもしれません(だからといって怒るのはやりすぎですが……)。人間、何もかも完璧にこなすことはできませんから、あなたに頼まれた仕事ですよと伝えたうえで、たまたまのミスには寛容でありたいものです。

しかし、そうは言っても「仏の顔も三度まで」。あまりに同じことが重なるようなら強く指摘したほうがいいかもしれません。

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2019.05.22

「就活ルール廃止」で就活はどう変わる?

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「社会人デビューは30歳からでいい」の真意とは

2021年、「就活ルール」が廃止されます。

これにより、現行の「3月に採用広報を解禁」「6月に選考解禁」「10月に内定交付」といった取り決めがなくなり、通年採用が実施されるようになります。

――しかし、この件について「就活に混乱をもたらす」といった報道もしばしばなされています。実際、就活を控える学生からは「具体的に何が変わるのかイメージが湧かないので、どう動けばいいのかわからない」といった不安の声も聞こえてきました。

「就活ルールの廃止」は、これからの就活をどう変えるのでしょう。そして、就活を控えた学生は今、何をすべきなのでしょうか。

1万人を超える若者の転職・就職を支援してきた20代向けの転職支援サービス「20代の転職相談所」などを運営するブラッシュアップ・ジャパン 代表取締役の秋庭洋さんに、「就活ルール廃止で変化すること」について聞くと、話は「20代のキャリア論」にまで及びました。

ブラッシュアップジャパン 代表取締役の秋庭洋さん。1967年大阪生まれ。リクルート勤務、人事コンサルティング企業の役員を経て2001年9月にブラッシュアップジャパンを設立。就職・転職支援サービス「いい就職ドットコム」「20代の転職相談所」を運営しているほか、関西学院大学、武蔵野大学でキャリア開発科目の講師を務めるなど、若年層の雇用のミスマッチ解消に取り組んでいる

「就活」を取り巻く環境が急変している

――本日は「就活ルールの廃止」が、就活生にとってどのような影響をもたらすのか、ということを聞きたくて伺いました

秋庭:なかなか壮大なテーマですよね。3日間くらいかけて話してもいいですか? (笑)

――そこをなんとか1時間ほどでお願いします! 

秋庭:話せるかなぁ (笑)。

まぁ結論から先に申し上げますと、「『就活ルールの廃止』によってこれまでの就活が大きく変わるわけではない」というのが、私の考えですね。

そもそも、これまでの就活ルールを定めてきた一番の理由は、選考のスケジュールを定めることによって「採用活動の足並みを揃えること」でした。でも、実際にはその決まりを全社が必ずしも順守しているわけではなく、それはあくまで強制力のない「紳士協定」に過ぎなかったわけです。

2020年卒の就活スケジュール早見表 (出典:マイナビ2020)

――たしかにそれは、私が就活する際にも経験しました(筆者は2016年に就活を経験)。3月よりも早い段階で、大々的に「選考」とは言わずに「面談」という形で振るいに掛ける企業があったり

秋庭:正直、そういう企業は多いですよね。経団連に加盟する企業の中でもフライングするところがあり、これまでのルールはあまり意味をなしていなかったとも言えます。

そもそも、経団連に加盟している企業は1400社ほど(経団連加盟企業は2018年5月31日時点で1376社)で、日本の全企業数のほんの数パーセントにすぎないということも知っておきべきことです。

――何故今になって就活ルールが廃止されるのでしょう?

秋庭:現在の就活状況において、そのルールがあるために「不利な立場に追いやられていた企業」が多くあったことが大きな要因の1つです。

就活を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しました。少子化が進み、人材の確保が難しくなっていくことに加え、人材採用のグローバル化が進んでいます。多くの企業で人手が不足し、明らかに今、就活生は「売り手市場」にいます。

そうした状況で、 “そもそも経団連に加盟していない”新興のIT企業や、外資系企業などは、ルールに縛られることなく、早期から採用活動を行うことができていたんです。いわゆる「青田買い」ですね。

一方で、経団連に加盟する企業は「ルールを順守している」フリをしなければならず、大っぴらに学生とは接触することができません。つまり、優秀な人材獲得の競争で遅れをとることになります。そこで、仕方なく「採用を前提としないインターンシップ」という建前のもと、就活前の大学生と接触せざるを得ないという、おかしな状況に陥っていたわけです。

「就活ルール廃止」の影響を受けるのは、一部の人だけ?

――具体的に、2021年からの就活はどのように変化するのでしょうか?

秋庭:そうですね。これからの新卒採用のスタイルは、スポーツにたとえるならば「プロ野球型」から「Jリーグ型」に近いものになると思います。これまで経団連が定めていたルールは、「フライングはダメ」「抜け駆けもダメ」というプロ野球のドラフト会議のソレに近いものでしたが、外資系企業の手法はJリーグのソレに近いものでした。

前者は採用対象者に接触する時期や選考の方法など、最低限のルールが存在しますが、後者はまったくの自由競争。極端なことを言えば、「学生という身分で働いてもらっても構わない」とすら考えている企業もあります。

これまでの日本における就活の現場は、両者が混在していた状態でした。それが就活ルールの撤廃で、前者のルールがなくなる、と捉えるとよいでしょう。

ただ、ここで考えるべきは、一口に「学生」「企業」と言っても、本当はもっと細分化して見ていく必要がある、ということです。あくまで今お話ししたのは、就活生全体の1~2割にあたる極めて優秀な「トップリーグ」にいる学生を取り巻く話です。またはそういう学生を是非とも採用したい、と考えている企業の話だけといえます。

実際には、残り7~8割の一般学生や一般企業においては、「就職戦線が早期にスタートして長期化する」ということ以外、さほど大きな影響はないと思います。

ただ、多くの学生が入社を希望する「人気企業」の採用活動がひと段落しないことには、就職戦線はいつまでたっても終息しません。そういう意味においては、トップリーグの採用戦線が「いつ始まるか」よりも「いつ終息するか」の方が重要なポイントだとも言えるでしょう。

しかし、たとえスタート時期が早くなっても、終息する時期はおそらくこれまでとあまり変わらないと思います。いくら通年採用といっても、卒業の直前まで人気企業が採用数を確保できずに採用活動を継続している、なんてことはまずあり得ないでしょうから。

就活は「プロ野球型」から「Jリーグ型」へ

20代をすべて「就職活動期間」にあててもいい

――ルールが廃止される2021年以降に就活を始める学生は、どういう考えを持って就活に向かうべきなのでしょう?

秋庭:まず伝えたいのは、「就活の長期化」をネガティブに捉える必要はないということです。むしろもっと「就活がもっと面白くなる」とポジティブに捉えてほしいと思っています。

当たり前のことですが、時間が増えれば、できることが増えます。現行の就活ルールでは、限られた時間の中で就職先を決める必要がありました。就活が長期化することで、例えば、インターンシップに使える時間が増えます。実際に興味がある会社で働いてみることで、そこにどういう社員がいて、どういう社風なのかを実際に自分の肌で感じることもできるでしょう。その情報を得た上で、入社するか否かを判断できるわけです。

就活の長期化は、企業と就活生のミスマッチの減少にもつながりそうです

――それでは最後に、就活を控えた学生にアドバイスをお願いします

秋庭:これは就活生に関わらず、すでに就活を終えた学生や、社会人になったばかりの方々にも共通することですが、「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない」という考えを持ってほしいと思います。20代全部を使って就職活動をする、そんな気持ちで行動すれば良い、というのが私の考えです。

たとえ正社員として企業に勤務していても、それは「長いインターンシップにすぎない」といった感覚で、いろんな業界・仕事・人・価値観に触れてください。

そこで感じたことを踏まえて、いよいよ30歳で社会人デビューする。その考えを持っていれば、多少の失敗があっても、「いい勉強になった」程度に捉えられます。そして、30代で軸足を確かにできる場所を見つけて、迷いなくスタートダッシュを切れたら大成功、くらいに考えるといいのではないでしょうか。

「一度入った会社でなんとか成功しないといけない」と考えると、窮屈でしょう。転職をけしかけるつもりは毛頭ありませんが、「転職は大変」「せっかく入った会社を辞めていいのか」という考えに固執しすぎる必要もありません。

「人生100年時代」という言葉もあります。たった数年でも、世の中の「働く」を取り巻く環境は大きく変わります。働き始めれば、自身の考え方も変わることでしょう。ガチガチにならず、気楽な気持ちで、「20代の就職活動」に向かって行ってもらえれば、と思います。

――ありがとうございました

「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない。社会人デビューは30歳からでいい」
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