新型iPhone控え「絶好調」のApple、ゆくさきに暗雲も?

新型iPhone控え「絶好調」のApple、ゆくさきに暗雲も?

2018.08.30

時価総額1兆ドルを上回り「絶好調」なApple

現状、販売台数は頭打ち。サービス部門の成長には暗雲?

新興国での普及戦略が鍵を握る

例年、9月はAppleが新しいiPhoneを発表する季節となっている。2018年のカレンダーとAppleの2018年第4四半期末から考えると、新型iPhoneの発売日は遅くとも9月21日金曜日となるだろう。そこから逆算すると、1週間前の9月14日金曜日に予約が開始され、9月10日から12日の間にスペシャルイベントが開催されることになる。

iPhoneの新モデルは、売上高全体の6〜7割を占めるAppleにとって重要であるのはもちろんのこと、Samsung、Huawei、Xiaomiといった競合となるAndroidスマートフォンメーカー、そしてiPhone向けのアクセサリを製造するメーカーにとっても、ここ1年、もしくは数年のビジネスを考える材料となる。

昨今のAppleの現状とモバイル業界について考えてみたい。

「絶好調」以外に言葉がない

AppleのiPhoneビジネスの現状は、控えめに言っても「絶好調」という状況だ。ウォール街の評価も高まり、米国企業として初めて、時価総額1兆ドルを上回り、なお株価は上昇し続けている。もしスマートフォンメーカーに投資するなら、Apple以外に考えられない、そんな評価を著名投資家からも集めているのが現状だ。

まずはここ数年のAppleとiPhoneについてふりかえっていこう。

AppleはiPhone 7を発売した2016年から2017年にかけて、成長に陰りを見せた。販売台数は横ばいだったが、売上高はマイナス成長を記録し、とくに急成長を経験した中国市場での下落が目立つ結果となった。

その原因となったのは、2014年のiPhone 6投入による中国市場のロケットスタートだ。それまで4インチ止まりだった画面サイズを4.7インチ、5.5インチへと大画面化し、一挙に攻勢をかけた結果だった。その反動で3年もの間、低成長の期間を経験することになった。

2017年に風向きは変わった。3年ぶりとなるデザイン刷新と、全画面デザインを採用したiPhone Xの登場で、iPhoneに新たな時代の到来をアピールした。iPhone Xは10周年、特別な仕様、というコンセプトで999ドルからという、これまでのスマートフォンにとっては最も高い部類の価格を設定した。

iPhone X

しかし、Appleは半年以上の期間、iPhone Xが週次の販売台数でトップを記録し続けたことを決算発表で明かすなど、最も高いiPhoneを最も多くの台数販売することに成功させたのだ。

直近の2018年第3四半期決算では、販売台数は1%増と横ばいだったが、売上高は20%増加した。つまり1台あたりの販売価格が2割上昇した結果であり、iPhone Xだけでなく、2017年モデルのiPhone 8がモデル末期になってもよく売れていることを表している。

例年、Appleの決算期における第3四半期以降は、併売している過去のモデル(現在であればiPhone 6sやiPhone 7)の販売が台頭し、平均価格は500ドル台まで下がってくる傾向にあった。しかし2018年第3四半期は平均販売価格が700ドルを超えており、現行モデルの人気が継続している、これまでと異なる動きを見せているのだ。

矛盾する利益と台数

決算の上では「絶好調」と言うべきAppleのiPhoneビジネスだが、一方で矛盾を見出すこともできる。AppleはiPhoneの年間販売台数は、2億1000万台で頭打ちとなっている。そのため、1台あたりの価格の上昇は非常に有効な戦略だった。

一方Appleは現在、サービス部門を拡大させてる戦略に出ている。サービス部門は、App Storeの売上手数料やiCloud追加ストレージ、Apple Music、Apple Pay、Apple Care+など、製品の販売以外のビジネスだ。

Appleはサービス部門を2016年から2020年までに2倍に成長させる目標を持っており、現在順調にその目標を達成してきている。直近の2018年第3四半期決算では、前年同期比34%増の95億4,800万ドルを売り上げた。

現在Appleでなんらかのサービスを継続的に利用しているユーザーは3億人に達しているが、この数字が5億人に伸びるか、現在のユーザーが1.5倍の支出をApple ID経由で行わなければ、目標に届かない計算だ。

このサービス部門は、iPhoneを中心としたApple製品のユーザーが増えることによって成長していく仕組みとなっている。つまり、販売台数が伸び、新規ユーザーが増えることが、サービス部門成長の原動力となるのだ。

その話から考えれば、iPhoneの販売台数が頭打ちとなっている現状は、サービス部門の成長にとって良くない兆候といえる。

新興国をどうしたいのか

先進国市場でのスマートフォン飽和の状況を考えれば、アジア太平洋地域、アフリカなどの新興国でのiPhoneの普及を重視しなければならない。そうした市場では端末の価格の安さが普及の鍵となっており、Appleの現在のiPhoneラインアップは、その市場に全く噛み合っていないのだ。

例えば昨今Appleの取り組みの失敗が伝えられたのはインド市場だ。Appleは現在、349ドルの4インチスマートフォンiPhone SEを有しているが、インド市場の平均的なスマートフォンの価格は150ドル程度で、最も安いiPhoneでも2倍以上の価格になっている。しかも、2年前に発売されたiPhoneに、すでに競争力がないことも明らかだ。

急成長する市場におけるAppleの停滞を尻目に、中国ブランドの台頭が見られる。新興国市場での好調さを背景に、2018年第2四半期の世界のスマートフォン販売台数では、Samsungの7150万台に次いで、2位にHuaweiの5420万台がランクインした。Appleは3位に追いやられ4130万台だが、4位のXiaomiも3190万台で追い上げている。

HuaweiもXiaomiも前年同期比40%増以上の成長を見せている一方、Appleは現状維持、Samsungは10%減となっていることを見れば、ハイエンドモデルに頼っている既存メーカーの苦戦と、低価格攻勢を仕掛ける中国メーカーの成長が顕著となっている。

AppleのiPhone戦略は、先進国市場については、現在の成功している高付加価値路線に変更の必要性は感じない。しかし新興国市場については、現状のままというわけにはいかないだろう。

低価格の戦略端末を用意するのか、数年間新興国の経済成長を待って、iPhone SEと同程度の価格のモデルを用意するのか。現在米国の利上げによって、資金が米国に戻ってきており、新興国の経済成長の停滞が予測される中、少し長期戦を覚悟した方が良いのかもしれない。

 
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu