分離プラン普及の試金石

分離プラン普及の試金石 "docomo with"に「iPhone 6s」追加のワケ

2018.08.30

docomo withに対象機種としてはやや高額な「iPhone6s」登場

「4割下げ」発言後、分離プランに舵を切る大手キャリア

分離プラン普及の試金石としての注目が集める

NTTドコモは、2018年9月1日より「docomo with」の対象機種として「iPhone 6s」を追加すると発表した。旧機種とはいえ、比較的高額なiPhoneを端末割引価格のないdocomo withの対象として追加したドコモの分離プランは普及するか。

「iPhone 6s」

ドコモの新プラン「docomo with」を振り返り

docomo withは、月々の利用料金を1,500円割引きするサービスだ。契約期間中は割引が継続するため通信料金の低減に繋がるが、利用するには対象商品の購入が必要だ。さらに、端末購入補助が利用できないため、基本的には端末代金をそのまま支払うことになる。

月々の利用料金を毎月1,500円割引きする料金サービス「docomo with」

最近のドコモの料金プランは、基本的に端末を24回などの分割で購入し、それを毎月支払う代わりに通信料金を値引きする、というもの。端末代金への割引ではないため「実質価格」という体裁となり、当然、端末代金の全額支払いが求められる。

この割引(月々サポート)は最大24回分の割引となるが、端末代金の一括・分割払いを問わず適用される。そのため、通信料金は割引かれているが、毎月の請求代金は端末の分割料金が加算されるため、全体の利用料金は割引かれていないように見える。

端末を一括で購入した場合、最初に数万~十数万円が必要になるが、分割代金の上乗せがないため、月々サポートによって毎月の利用料金は低廉化する。端末代金として支払っている額は分割でも一括でも変わらないので、「毎月の料金を下げたい」というだけなら、端末一括購入で月々サポートを利用すればいい。

ちなみに、一般的に「2年縛り」などと呼ばれる契約形態は、これとは別に「2年間の利用を前提として基本料金を割引く」という定期契約の場合だ。例えばカケホーダイプランの場合、月額4,200円が定期契約で2,700円となる。端末を一括購入して定期契約を結ばない場合、端末代金としての初期費用と月額料金の増加に目をつぶれば、解除料や分割代金の残債などに煩わされず、いつでも自由に解約できる、ということになる。

一部で誤解があるようだが、端末に縛りは存在しないので、2年間という期間を気にせず自由に買い換えられる。残債の支払いは残るが、2年契約による料金の割引は継続する。その代わり、端末購入にともなう割引(月々サポートなど)はなくなることになるが、新たに購入した端末にともなう割引が発生する。

「iPhone 6s」も対象端末に。料金は4万円ほど

docomo withは、この端末購入による割引をなくす代わりに、決まった額の通信料金割引を行う、というもの。月額1,500円の割引額が設定されており、上記の2年縛りの定期契約が前提となる。端末代金の分割も可能だが、2万~4万円の端末で揃っているので、一括でも大きな負担にはならない。一括払いなら分割代金の上乗せもないので、毎月の料金が単純に1,500円引きとなる計算だ。

24回などの一定期間の割引ではないため、契約が続く限り割引は継続する。ただし、割引を最大化するには2年間の定期契約が前提となるため、解約をするには解約月に注意が必要になるほか、機種変更で対象外の機種を購入すると廃止される。その代わり、自分で用意した端末を使う分には割引が継続するようだ。

これまでは、サムスン、LG電子、シャープといったメーカーがこれに沿った端末を提供してきたが、ここに来てiPhone 6sが対象端末として登場した。4万2,768円とdocomo withとしてはやや高額だが、おおむね4万円というところだろう。アップルストアの価格が税別5万800円なので、1万円以上お得ということになる。

アップルストアよりも安価な値付けは珍しく、公正取引委員会が公表したアップルとの「iPhone Agreement」が改定されたことが影響されていることも考えられるが、公式にはドコモはそうした点は否定する。

分離プランに舵を切った大手キャリア

こうした、端末代金と通信料金を別々に分けることは分離プランと呼称されているが、すでにKDDIも提供しており、ソフトバンクも8月29日に新たな分離プランを発表している。もともと、各社の料金プランは、端末代金と通信料金を分離するとの名目で、端末代金は割引きせず、その分の通信料金を割引くという仕組みを導入していた。

ソフトバンクが8月29日に発表した新プラン「ウルトラギガモンスター+」。月額料金は単身利用で光回線をセットにしない場合は1年目で6,480円、2年目は7,480円。こちらのプランでも端末の割引は適用されない

それとは異なり、端末購入のサポートの代わりに通信料金を割引くのが、今回の分離プランだ。「実質0円」といった見た目には安価に見える端末の売り方ができるなくなる代わりに、毎月の通信料は下がる。そのためには2年契約が必須、というのは各社共通した部分だ。

毎月の通信料を値下げするために2年間の期間拘束をする、という料金プランで従来と異なるのは、端末購入をともなわなくても割引が継続する点だ。さらにKDDIは2年契約を自動更新する場合の毎月の割引額を減らして、2年間拘束後に解除料がかからない「2年契約(自動更新なし)」を提供。ソフトバンクも同様の「2年契約(フリープラン)」を用意した。

そしてドコモの場合は、自動更新のある2年間の定期契約、定期契約なし、2年間の契約後に解約が自由にできる「フリーコース」の3種類から選べる。

こうした違いはあるが、分離プランになると端末代金は単純に上がるように見える。これまでも通信料金の割引によるもので端末代金は割引されていなかったが、分離プランではそういった売り方もできなくなるので、例えば10万円を超えるiPhone Xなどは、実質価格もなくそのままの価格で購入するかどうかを選択することになる。

もちろん、これが正常とも言える。分割払いの場合は「通信料金と端末代金の合算」が請求されることは変わらないだろう。ただ「実質価格」がなくなり、端末代金が意識されるようになると、より高額な端末は売れづらくなることが予想される。

分離プラン普及の試金石へ

そうした場合に、docomo withにiPhoneが追加されたインパクトは大きい。旧機種とはいえ、いまだ最新OSへのアップデートが約束された現役モデルだ。「iPhoneが欲しい」という声には応えられるし、日本ではこの声が無視できないほど大きい。通信料金は割安になるので、「スマートフォンが高い」というイメージでフィーチャーフォンからの移行をためらうユーザーに対しても、データ容量1GBまでなら月額3,672円(端末代金別)と、ある程度の訴求が図れるだろう。

アップル側にも、iPhone 6sの販売を拡大したい事情もありそうだ。9月の新機種発表を前に、安価な旧機種の安定供給先として、ドコモでの取り扱いは大きいだろう。iPhoneのさらなる市場拡大につながる可能性はある。

ドコモの場合、分離プランのdocomo with利用には対象端末購入が必要で、既存の売り方も継続することから、今回のiPhone 6sの追加は、分離プラン普及の試金石としても、その結果を注目したいところだ。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる