発展著しいミャンマーで存在感を高める日本家電

発展著しいミャンマーで存在感を高める日本家電

2018.08.31

テレビ以外の家電製品に人気が集まり出すミャンマー

クレジット使用が少ない習慣が市場にどう影響するか

ミャンマーの生活様式に合わせた家電が増える可能性

前回、パナソニックのミャンマーでの事業についてレポートしたが、今回は同国で人気を集めている家電製品について触れよう。

関連記事:パナソニックのミャンマー事業展開、地道な活動がいよいよ結実か

ミャンマーは、ASEANのなかでも電化が遅れている国である。ミャンマー最大の都市となるヤンゴンでも、電気が通っているエリアは75%以下と言われ、ミャンマー全体での電化率は、わずか35%に留まる。

それでも、家電の売れ行きが好調だという。

調査によると、ミャンマーの家電市場全体で1億4000万ドル(約160億円)の市場規模があり、そのうちの約45%をテレビが占めている。だが、冷蔵庫やエアコン、洗濯機はテレビの半分程度の市場規模しかない。そして、普及率が20%以下の家電製品も多い。言い換えれば、まだまだ市場拡大の余地があるということだ。

ミャンマー最大手の量販店であるWai Yanを展開するTMWグループのカイン・テッ・ルイン(Khine Thit Lwin)エグゼクティブディレクターは、「テレビは富裕層の多くの家に行きわたり、エアコンも20%程度の普及率になってきた。次は冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなどに広がるだろう」と分析する。

ヤンゴン市内にあるTMWグループが展開するWAI YAN ELECTRONICSの店舗
TMWグループのカイン・テッ・ルイン(Khine Thit Lwin)氏
無電化地域の家庭の様子。テレビに自動車用バッテリーをつなげて視聴している

非電化地域でも裕福な家庭の場合、太陽光発電パネルを導入。自動車用のバッテリーをつないで蓄電し、それをテレビ用の電源として使用するというケースが多いという。また、都市部でも停電が多いため、テレビにモバイルバッテリーをつなげて番組を視聴する例が多い。

Wai Yanの店舗で展示されていたソニーのテレビは、スマホ用のモバイルバッテリーが接続できる製品として人気だという。ショップスタッフは、「多くの人がスマホを所持しており、モバイルバッテリーも所有している。このバッテリーをつなげて利用できるのは、ソニーのテレビの長所のひとつ」と語る。

スマホは、低価格で利用できるSIMカードが登場したことで、この3年間で一気に普及した。ほかの人が使っているのに感化され、スマホをほしがる人が増加したことも背景のひとつといえる。

スマホ用ののモバイルバッテリーをテレビの電源に利用できる

注目を集め始めたキッチン家電や理美容家電

一方でここにきて、注目を集めている家電のひとつが電子レンジだ。これまでキッチン家電は炊飯器だけが売れていたというが、低価格の電子レンジが登場したことや、先行して導入した家庭の様子をみて、電子レンジの使い方やメリットなどが伝わりはじめたことが販売に弾みをつけている。「電子レンジを不要だと思っていた人たちが電子レンジを使っている人たちをみて、自分たちもほしいと思い始めている」と、カイン・テッ・ルイン氏の話がそれを裏付けている。

タイなどの隣国に出稼ぎに行っていたミャンマーの人たちが、電子レンジなどの家電の良さを体験してミャンマーで購入するといったパターンもある。ほかにもコーヒーメーカーや理美容家電も同様の理由から売れ始めているそうだ。

電子レンジやIHクッキングヒーターなどを展示し、あこがれの生活を想起させる調理器具売り場
ドライヤーといった理美容商品は、今後の成長が期待される分野だ

不透明な経済政策やクレジットを使わない商習慣の影響

だがミャンマーの小売・流通業界からは「アウン・サン・スー・チー国家顧問による経済政策が不透明であることが課題。為替の影響で、以前に比べて30%も家電の価格が上昇している。チャット高(チャットはミャンマーの通貨名)に為替が振れれば、家電の購入にも弾みがつくのだが……」と、不安と期待の声をあげる。

多くの紙幣を手に持つ女性。ミャンマーではクレジットの購入はわずかで、ほとんどが現金払いだ

さらに、ミャンマーでの取引は現金が中心となっており、クレジット払いの普及が遅れている点も家電の普及の遅れにつながっているとの指摘もある。現在、イオンクレジットなどがサービスを開始しているが、ある大手小売店ではクレジットによる販売比率は全体のわずか0.5%に留まるという。

「クレジットに慣れていないことや審査に手間がかかること、さらには借金をしてまで家電を購入しているという目でみられることを嫌がる人が多いため、クレジットカードが普及しにくい」とする。いまでも一般家電店は、現金だけの取引をしているのが実態で、ヤンゴン市内の家電店店頭では現金の束が飛び交う光景が日常だ。

とはいえ、経済の発展とともにこうした動きにも変化が出てくるだろう。スマホがわずか3年で一気に普及したように、そのメリットが伝われば瞬く間に広がるスピード感を持った市場であることは確かだ。

富裕層を中心に少しずつ高額製品へ人気がシフト

冒頭でテレビが最も普及していると述べたが、この市場にも少しずつ変化がみられる。4K対応や大画面テレビが売れ始めているのだ。ミャンマーでは地デジ放送がスタートしており、これが富裕層に大画面テレビが売れ始めている理由のひとつだ。

マンダレーに本拠を置く家電量販店MYO THEIN Electronics(以下、MYO)では、Facebookを使って、中国TCL製の65型4Kテレビを99万チャット(約7万7000円)で販売することを告知。わずか5日間で170台を販売したという。日本からみても破格ともいえる価格設定だが、同社ではこの値段でテレビを買う人はまだ少ないと読んでいた。

MYOのミョウ・ティンCEOは、「大量に仕入れてみたが、すべてが売れるまでに1年はかかると覚悟した。だが、大きな反響を呼び、あっという間に売れてしまった。高価格帯のテレビがミャンマーで売れることを証明した」と笑う。

MYOでのテレビ売り場の様子。平日にも関わらず、多くの客が来店していた
99万チャットで販売された65型4Kテレのネット広告。5日間で170台が売り切れた

Facebookの活用で拡販を促す

ミャンマーではFacebookの普及率が高く、それが国内におけるPRに重要な役割を果たしている。家電の普及率は低くても、SIMカードの発行枚数は人口の約5500万人を上回っているともいわれ、Facebookの登録者数は1000万人を超えているそうだ。MYOの65型4Kテレビの販売戦略でもFacebookが有効な役割は果たした。

実は、ミャンマーの家電業界におけるFacebookの利用は一般的になっている。たとえば、パナソニックのドライヤーについて、ビューティーブロガーがFacebookで紹介したところ、80米ドルの商品が一気に5倍も売れたこともあったという。

そのパナソニックも、ミャンマー国内向けにFacebookを積極的に活用。すでに100万を超える「Like!(いいね!)」があり、重要な情報発信ツールになっている。

パナソニックはこうした動きを捉えて、今後の普及が見込まれる理美容商品に関して、2018年7月から女性ビューティーブロガーとアンバサダー契約を結び、普及・啓蒙活動を開始。さらにトラベルブロガーともアンバサダー契約を行い、デジタルカメラのLUMIXを題材に、旅先での写真撮影の楽しさを訴求する啓蒙活動を開始する。

パナソニック アジアパシフィック ミャンマー支店の前田恒和支店長は、「ミャンマーでは国内旅行ブームが訪れており、そこにスマホの写真にはない楽しさを訴求したいと考えている。ミャンマーには、信頼できる人が『よい』と判断した商品を購入するといった動きが強い。それを考えると、著名プロガーを活用したFacebookによる訴求は大きなインパクトになる」と話す。理美容製品もデジカメも、ミャンマー国内ではまだまだ普及していない商品だ。こうした啓蒙活動が必要な製品にもFacebookの活用は有効な訴求手段になるといえそうだ。

モバイルバッテリーが利用できるテレビが人気と先述したが、ミャンマーでは独特の製品が投入されることが多い。たとえば韓国のLG電子は、蚊よけ機能を備えたエアコンやテレビをミャンマー市場向けに投入している。もともと東南アジア市場などを対象に開発したものだが、ミャンマーでの関心が高いという。

パナソニックもミャンマーの市場の声を反映した製品をいくつか投入している。これは東南アジア市場向けというよりも、まさにミャンマー専用製品といえるものだ。ミャンマー市場向けのテレビに表示する設定メニューを、2015年以降からミャンマー語にしている。これを行ったのはパナソニックが先駆けだそうだ。毎年、新製品が開発されるたびにミャンマー支店のスタッフが協力し、ミャンマー語での表示を可能にしている。

エアコンもミャンマー狙い撃ちの仕様になっている。パソナニックのエアコンは一定の温度になるとコンプレッサーを保護するために室外機の稼働を停止する制御機能を備えているが、ミャンマー向けの製品では、これが46℃に設定されているという。乾季には40℃を超える暑い日が続くミャンマーの市場にあわせた製品である。

太陽光電池パネルと蓄電池、2つのLEDランプで構成されるエネループソーラーストレージもミャンマー仕様だ。同製品に付属するLEDランプは、5Wの直管形LEDランプと1.5Wの電球形LEDランプの2種類が接続されているが、直管形LEDランプは家族が集まる場所で使用するものであり、電球形LEDランプは主に仏壇に使用することを想定しているという。これは、国民の約9割が仏教徒であり、供給された電気を仏壇に優先的に使いたいというニーズに対応したものであり、まさにミャンマー文化を意識したものだ。

気温46度まで稼働するエアコンの室外機。これはミャンマー向けに開発したもの
エネループソーラーストレージ。仏教国ミャンマー市場向けに仏壇でも利用できるLEDランプを用意

こうした製品の投入が、ミャンマーにおけるバナソニックの存在感を高めているとともに、ミャンマーの今後の市場成長をパナソニックがいかに重視していることを示しているともいえよう。

今後、家電の爆発的な普及が期待されるミャンマー市場において、各社がミャンマー市場特有の家電をこぞって投入する可能性はかなり高い。これからは、日本にはないようなミャンマー仕様のユニークな家電がまだまだ増えることになるだろう。

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。