eスポーツの理解を深めるセッション開催 - アール氏など6人が解説

eスポーツの理解を深めるセッション開催 - アール氏など6人が解説

2018.08.28

eスポーツ選手はアスリートに近づいている(アール氏)

日本ではゲーム動画を観る土壌ができている(中村鮎葉氏)

自分が好きなものについて胸を張って言えるように(かずのこ選手)

8月21日、東京竹芝にてデジタルとコンテンツの産業拠点構築を目指して活動しているCiP協議会が、その成果を国内外に発信するイベント「YouGoEx」を開催。そのYouGoExにて、eスポーツに関するカンファレンス「e-Sportsエキシビジョン」が行われた。昨今のeスポーツが急速に発展しつつあるものの、まだまだ一般的には認知度が低いため、比較的ライトな層に向けたセッションとなった。

司会を務めるのは、eスポーツ市場に参入している吉本興業の次長課長の2人。どちらもゲーム好きを公言しており、特に井上聡氏は芸人の中でもゲーマーとして名が知れている。

eスポーツについて解説をしてくれるのは次の6人だ。
中村鮎葉氏:ゲームのプレイ動画の配信を中心に行う動画配信サービスTwitchの日本人第1号社員であり、『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ(スマブラ)』のトッププレーヤーでもある。
ゆわ選手:中学生ながら『パズドラ』のプロライセンスを持つ。
リールベルト氏:世界でもっとも人気の高いeスポーツタイトルである『リーグ・オブ・レジェンド』の日本のプロチームで監督を務める。
アール氏:対戦格闘ゲームを中心に動画配信の実況を20年以上続けている。
SHAKA氏:元プロゲーマーで現在ストリーマー(ゲームの動画配信をする人)である。
かずのこ選手:『ストリートファイターVアーケードエディション』や『ドラゴンボールファイターズ』など複数の対戦格闘ゲームの大会に参加し、いずれも好成績を残している。

司会は次長課長の2人。どちらもゲーム好きで知られており、特に井上聡氏は『モンスターハンター』シリーズをはじめ、ハードなプレーヤーとしても知られている

世界でも議論されるe“スポーツ”の名称

最初のテーマはズバリ「eスポーツとは?」というもっともベーシックながら、誰もが知りたい内容が取り上げられた。

eスポーツは競技性のあるデジタルゲームを使い、プレーヤーがその技術を競い合うものだ。いわゆる従来のテレビゲーム大会と変わらないが、その規模とプレーヤーの技術力はまさにアマチュアとプロフェッショナルの差がある。

ただ、スポーツと冠しているだけあり、リアルスポーツとの差異である体を動かすということに関して、「ゲームはスポーツと見られにくいのでは」という次長課長の質問に対して、中村鮎葉氏は「運動でない部分は世界的に議論されています」と日本のみならず、世界でも話題になっていることを示した。

「世界で勝てるプレーヤーは尊敬されています。そういう意味ではアスリートに近づいてきたのではないでしょうか」とアール氏は語る。

これらの話を受け河本氏は、「ゲーム大会のままでは、権威がつけにくいのかも」と、日本人のゲームに対するスタンスとそれに対応するための手段として、スポーツを冠しているのではないかと言及した。

Twitchの日本人の第一号社員とスマブラプレーヤーの2つの肩書きを持つ中村鮎葉氏
対戦格闘ゲームを中心に20年以上の実績を持つ、ゲーム実況のトップランナーであるアール氏

最高賞金総額は『DOTA2』の27億円!

続いて話題はeスポーツイベントで発生する賞金について。ここはプロ選手として長年賞金付きトーナメントに参加しているかずのこ選手に話を聞いた。

「『ウルトラストリートファイターIV』のプロツアーで優勝したときに、1500万円の賞金を得ました。賞金はそれまでゲームばかりやって好き勝手やらせていただいたので、親に少し還元しました」と、かずのこ選手。

1500万円という高額に驚く次長課長の2人だが、そこでSHAKA氏が「大きな大会では2500人くらい参加しますが、それより小規模でも選ばれた選手のみが参加しており、高額賞金に見合うイベントになっています。最高額の話をすると、現在では『DOTA2』というゲームの大会が賞金総額27億円。バンクーバーのバスケコートかスタジアムで開催しており、チケットもプラチナ化しています」と世界の高額賞金大会について紹介した。

中学生ながらすでにプロとして活動しているゆわ選手にも賞金の話が移り、「僕のプロライセンスは賞金がもらえないジュニアライセンスなので、賞金はもらっていません。松竹芸能に所属しているので、そこからギャラを少しもらってはいます」と答えた。

高額賞金やスポンサー支援によってアスリートに近い状況にあるeスポーツ選手。普段どんな生活をしているのだろうか。

「1日10時間以上は練習しています」(かずのこ選手)
「四六時中ゲームに関わっています」(リールベルト氏)
「平日はほとんど『パズドラ』はやっていません。他の方と比べると全然違うので申し訳ないですが、遊び感覚でやっています」(ゆわ選手)
とさまざま。ただ、eスポーツで生計を立てている選手や監督と、プロ選手とはいえまだ賞金を得ていない選手とで、状況による差異とも見て取れた。

『ストリートファイターV アーケードエディション』や『ドラゴンボールファイターズ』などで世界大会に出場し、好成績を残しているプロゲーマーのかずのこ選手
『パズル&ドラゴンズ』のプロ選手としてライセンスが発行されているゆわ選手

eスポーツ観戦はシンプルなルールの動画視聴が第一歩

次の話題はeスポーツ観戦について。これからeスポーツを観戦してみたいという新規ユーザーにとって、どうやったら楽しむことができるかを話し合った。

eスポーツに限らずスポーツはルールや内容を知らないと楽しみにくい。その反面、自分で遊んだことがあるゲームであればとっつきやすいだろう。動画配信サイトには、数多くのゲームタイトルの大会動画があるので、好きなゲーム名で検索し、まずは大会を動画で視聴することが第一歩だ。

「テトリスやソーシャルゲームなどは、ルールも単純であまり詳しくない人も楽しめると思います」と話すアール氏に対して、河本氏から「テトリスでどうやって競い合うんですか?」という疑問が。

そこで中村鮎葉氏が「テトリスの大会はかなり熱いですよ。ブラインドテトリスとかあって、次に来るブロックの形だけは見えるんですけど、積み上がった状態は見えなくなっているんです。それでも、ちゃんとブロックを消していくんです」と答えた。

日本はeスポーツ市場がようやく立ち上がった状態だが、世界ではすでに一大イベントとして確立している。そこで、世界のeスポーツ事情についても言及した。

「ゲームタイトルごとに人気があり、それぞれの大会が盛り上がっています。私が監督しているチームの参加しているタイトルは『リーグ・オブ・レジェンド』ですが、その大会は1カ月くらいかけてやるんです。ちょうど先日サッカーのワールドカップが開催されていましたが、それに近いものがありますね。グループステージで勝ち抜いたチームがトーナメントに進出し、優勝をかけて戦います。会場も中国だとオリンピック会場になった鳥の巣や、韓国のソウルもオリンピックスタジアムなどで開催しています」(リールベルト氏)

観ているほうも、リアルスポーツと同様に良いプレーがでると歓声があがり、盛り上がるとSHAKA氏は述べる。「私が選手だったときは、プレーすることがすべてでしたが、ストリーマーになってからは大会を観るのが楽しくなった。それまで一度もプレーしたことがなかった対戦格闘ゲームも観るようになりました」

話を聞いていた井上氏は「芸人を集めてファミスタ大会とかやるんですけど、プレーしている人だけでなく、まわりで観ている人もすごく盛り上がります」と実体験を語った。

『リーグ・オブ・レンジェンド』のプロチームの監督を務めるリールベルト氏
プロゲーマーを経て、ゲームの動画配信を行うストリーマーに転身したSHAKA氏

日本におけるeスポーツの現状は?

特定の国の事情ではあるものの、これだけ盛り上がりを見せている世界のeスポーツに対して、日本は現状どうなっており、今後どうなっていくのだろうか。

「日本の動画データを見ると、人口の割合から多くの人がeスポーツ大会の動画を視聴していることがわかります。観るという土壌ができているので、今後うまくいくと思います」(中村鮎葉氏)

ただ、問題点がないわけではない。一番の問題点は、日本で好まれているゲームと世界でプレーされているゲームが違っていることだ。

日本で流行っているタイトルで、技術力の高い選手を排出できたとしても、世界でプレーされていなければ、彼らが活躍する大会は存在しないわけだ。これはリアルスポーツでも同様のことで、「世界規模で展開するのか」「国内だけで行うのか」の目的の置きどころを考えなくてはならない。ただ、世界で活躍する場があるということは、活躍のフィールドが広がるので、ある程度はそちらを目指す必要があるだろう。

また、昨今のeスポーツブームで、メディアに多く取り上げられ、企業からも注目されるようになってきた。そのことについて「多くのメディアに取り上げられ、注目されるようになりましたが、もともとゲーム大会を運営していたり、参加している人は、ちょっと混乱ぎみですね」とアール氏。

「日本は世界に追いつこうとして、いろいろ模索していますね。あと、一気に追いつこうとしていることもあり、選手やプレーヤーはちょっと置いていかれた感じもします」(かずのこ選手)

市場が大きくなると、どうしても「これまでやっていた人」以外の人や企業が参加し、それぞれにやりたいことがぶつかってしまうことは多々ある。発展を目指しつつ、これまでやってきた人へのリスペクトも忘れずに、急ぎすぎないように進んでいく必要があるのかもしれない。

将来的な話でも、さまざまな意見が飛び交った。

「東京オリンピックが開催されることで、世界各国の人が日本に訪れます。オリンピックでeスポーツのブースが出るかどうかはわからないですが、確実にeスポーツの大きなイベントは、オリンピック近辺で数多く開催されると思います」(アール氏)

「自分が好きなものについて胸を張って言えるように、ゲームに対する考え方が変わってもらえれば嬉しいですね」(かずのこ選手)

「以前、大会で賞金が発生したときに会社員の選手が、賞金をもらうと副業になってしまうから、会社をやめるかプロ選手を専業にするか、せまられたって話を聞きました。将来的には僕も会社に勤めながら大会に出たりするかもしれないので、こういうことを解消してほしいです」(ゆわ選手)

まだまだ問題点の多いeスポーツだけに、今回のエキシビジョンだけでは解決に至らないのは当然ながら、それでもこのエキシビジョンに参加した人にとっては、eスポーツの理解度が高まったのではないだろうか。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。