1カ月でカード1000万枚を発行したFGOアーケード、塩川氏がコンセプト語る

1カ月でカード1000万枚を発行したFGOアーケード、塩川氏がコンセプト語る

2018.08.24

サービス終了という運命に立ち向かうべく作られたFGOAC

スマホ端末では難しいキャラの魅力やバトルの表現に挑戦

稼働1カ月で1枚100円の物理カードが1000万枚発行された

2018年8月22日から24日までの3日間、ゲームを中心とするコンピュータエンターテインメント開発に携わる人やエンターテインメントコンテンツビジネスに携わる人を対象とした、コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2018(CEDEC 2018)が、パシフィコ横浜で開催された。

本稿ではCEDEC 2018で行われたセッション「Fate/Grand Order Arcade(FGOAC)を支える、“非常識”な企画術。」についてのレポートをお届けする。

登壇したのは、ディライトワークス 執行役員 クリエイティブオフィサーでFGO PROJECTクリエイティブプロデューサーの塩川洋介氏。スマホゲームの「FGO」をはじめとする、FGO PROJECTの企画に携わっている。

ディライトワークス 執行役員 クリエイティブオフィサーでFGO PROJECTクリエイティブプロデューサーの塩川洋介氏

セッションタイトルにもある「FGOAC」とは、2018年7月26日から全国のゲームセンターで稼働しているアーケードゲーム。「TYPE-MOON」が開発したPCゲーム「Fate stay/night」から始まる「Fate」シリーズのスマホゲーム「FGO」における、新タイトルという位置づけだ。稼働開始直後、筆者も都内のゲームセンター数カ所に足を運んだが、どの店舗も整理券を配布して「プレイ待ち」の状態が発生していた。

同セッションでは塩川氏はFGOACの企画立案時に考えたコンセプトを紹介。塩川氏は「スマホのゲームを手がけている人に、新たな展開をする際のヒントを提供できれば」とセッションのゴールを設定した。

サービス終了に立ち向かうゲームを作りたい

2017年、300を超えるソーシャルゲームがサービス終了して跡形もなく消滅したという。平均すると1日1タイトルに近い数のゲームが消えた計算だ。

「FGOもスマホで運営している以上、いつか終わりを迎えるかもしれません。しかし、私はFGOを消滅させたくないと思いました。FGOの要でもある、一人ひとりエピソードを持ったキャラクターの英霊(サーヴァント)を残していきたいと強く願ったのです」

塩川氏はFGOACの企画を考え始めた2016年1月の心境を語る。当時、スマホゲームのFGOは第四章を配信したタイミングであり、まだまだ大きなタイトルとして認知される前だろう。その段階から、塩川氏はサービス終了に立ち向かうべく、いつかサービスが終了してもユーザーに残せるものは何かを模索していた。

どのように残すべきか考えたとき、塩川氏はアーケードなら手元に残せるのではないかと思いついたのだ。

「スマホアプリでサーヴァントはセイントグラフと呼ばれるカードとして描かれているのですが、それをそのまま物理カードとして作ってしまおうと最初に考えました」

FGOACで入手できる物理カード
FGO内のカード(左)とFGOACの物理カード(右)

魅力的なサーヴァントの姿をもっと描きたい

2015年にローンチしたFGOだが、対応端末には2012年に発売された「iPhone5」も含まれる。そのため、塩川氏は、「スペックによる制約で描くことのできないサーヴァントの姿はまだまだあり、その状態のままでは終わらせたくない」と考えたという。

「アーケードであればイラストのまま動かせると、ゲームを一緒に作ったセガの方から教えてもらいました。FGOのサーヴァントは、キャラクターデザインを担当されている作家さんごとの個性がイラストに反映されています。その魅力をもっと描きたいと考え、イラストの細かいタッチやニュアンスを、可能な限り3Dでも再現しようと思いました」

FGOの対応端末では描けないサーヴァントの魅力を表現すべく、塩川氏はFGOのイラストをそのまま3D化して、アーケード版のキャラクターを作成した。

FGOでのイラスト(左)とFGOACの3Dモデル(右)。画像は開発中のもの

Fateらしく、FGOらしいバトルを

さらにFGOACでは、スマホでは操作不可能なFateらしいバトルシーンを描くべく、端末の制約に立ち向かうゲームを作ることを目指した。

FGOでは、「コマンドオーダーバトル」と呼ばれる、スマホに最適化されたバトルシステムを採用している。画面に表示されるカードをタップするだけで戦闘が進行するインターフェースだ。

コマンドオーダーバトルの画面

「FGOACでは、アニメで見たようなFateらしいバトルを実現したいと考えました。しかし、FGOらしさも残さなければいけない。そこで思いついたのがタッチパネル+1ボタンアクションによる操作です」

3D空間でキャラクターを操作しながら、まずはタッチパネルでFGOのコマンドオーダーバトルのようにカードを選択する。そして、攻撃は「アタックボタン」を押すだけ。連打していれば、キャラクターは選択したカードに応じたアクションを実行してくれる。簡単な操作でキャラクターがFateらしいバトルを繰り広げるというわけだ。

開発中のバトル画面。3Dのフィールドに、FGOらしさを加えた
最終的にたどり着いたタッチパネル+1ボタンアクションの仕組み
完成したプレイ画面

稼働1カ月で物理カード発行枚数1000万枚を突破

サービス終了と性能の限界、端末の制約という「ソーシャルゲームの宿命」に立ち向かっていたFGOAC。FGOキャラクターの魅力をそのままに3D化することに成功し、物理カード生成の仕組みや迫力あるバトルシステムを搭載した。

稼働からわずか1カ月という期間ではあるが、新規ユーザー30万は突破。また、セガ主力タイトル実績と比較すると、1台あたりの平均インカムは2.5倍以上だという。

そして、なんと物理カードの累計発行枚数は1000万枚を突破。カードが1枚100円であることを考えると、10億円……? なんと、1カ月でFGOACという筐体に投下された金額は10億円を超えるのだ。

FGOACを企画する際のコンセプトを紹介した塩川氏。最後に、FGO PROJECT全体に共通するコンセプトを述べた。

「それは“既知×未知”です。これまで、すでに存在するFGOをいかに未知のものと融合させるか考えながら、アーケードだけでなく、VRやAR、リアル脱出ゲームなどと組み合わせた企画を展開してきました。今後、スマホからのゲームを新しく展開したいと考えている人は、“既知×未知”で、『もしも』をカタチにする企画を作ってみてはいかがでしょうか」

“既知”にさまざまな“未知”を組み合わせて、企画を展開するFGO。次はどんな“未知”を見せてくれるのだろう。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu