ルールのないコミュニティはどうなる? サイハテ村「一万坪の社会実験」(前編)

ルールのないコミュニティはどうなる? サイハテ村「一万坪の社会実験」(前編)

2018.09.03

熊本県の辺境にあるエコビレッジ「サイハテ村」に潜入!

ルールもない、リーダーもいないコミュニティを実践

社会の構造が変化し、新たなコミュニティの形が求められている

「コミュニティ」の重要性が再認識されている。2017年にはFacebookが創業以来、初めて企業ミッションを変更したことが話題となった。

「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する――」

インターネットの発達に伴い、続々と誕生したYouTubeやFacebook、Twitter、Instagramなどのさまざまなプラットフォーム上で、人々は自らの趣味、趣向、価値観にあったコミュニティを選択、参加するようになった。

こうした流れはオンラインだけではなく、オフラインにおいても起こっている。熊本県・宇土半島の山奥にある「サイハテ村」も、特有な価値観のもと形成されたコミュニティの1つだ。

「お好きにどうぞ」というキーワードのもと、ルールもない、リーダーもいないという不思議な関係性で人々が住まうこの”変な村”が実践している「新たなコミュニティの形」とは何か。現地で村の雰囲気を味わってきた。

熊本県宇城市三角町にあるサイハテ村。天草市へとつながる宇土半島の山奥、約1万坪もの敷地に、約30人の住民が暮らしている。電車やバスは通っていないため、車でしかいくことができず、かつ道も狭いのでなかなか行きづらい。

村へいく途中に通る山道。「本当にここに人が住んでいるのか? 」と不安になる

サイハテ村に到着

三角エコビレッジ・サイハテ。現地のデザイナーが描いた特徴的な壁面の建物が多く存在し、独特の雰囲気を放っている

記事にすると一瞬でサイハテ村に到着してしまうのだが、現地までの道のりは長く、とにかくアクセスが悪かった。思わず「到着」という必要のない小見出しを使いたくなるほどに、「とにかく無事に着いたこと」に達成感を得た。

?? : ようこそ、サイハテ村へ。

到着して最初に出会った村人は、サイハテ村の「コミュニティマネージャー」の、坂井勇貴氏。取材当日の村案内をお願いしていた人物だ。

坂井勇貴氏。1984年3月生まれ、長野県出身。CAMPFIRE・BASEなどの会社と提携し、三角エコビレッジ・サイハテのコミュニティマネージャーとして、運営およびプランニングの中枢を担う

筆者 (以下、田中) : 本当に人が住んでいるんですね……! とにかく、無事にたどり着けて良かったです。途中、何度も心が折れそうになりました。

坂井勇貴氏(以下、坂井) : お疲れ様でした。まさか原付で来るとは(笑)。ちょっと休憩しましょうか。

ルールもリーダーもない、お好きにどうぞ”な村づくり

坂井 : 田中さんは、どうしてサイハテ村に取材に来ようと思ったんですか? 

田中 : 実は私、熊本県出身で、実家がこの近くなんです。もともと、どうやら変なコミュニティがあるということは知っていて。今回、夏休みで帰省するタイミングで、取材してみたいと思って伺ったんです。

坂井 : だから原付だったのか。

田中 : そうなんです。ここに来る途中の山道で何度も、パンクするんじゃないか? とヒヤヒヤしましたが、なんとか無事に来られました。今回はこの村に一泊してみて、サイハテが実践する”新たなコミュニティの形”について体感したいと思っています。

坂井 : 是非この村の雰囲気を感じてみてください。じゃあ村の紹介をしていこうかと思うんですが、その前に。この村の唯一のルールについて説明します。

田中 : ルール?

坂井 : この村のルールは、ルールがないこと。ルールもない、リーダーもいない、”お好きにどうぞ”の村づくりを行っているのがここ、サイハテ村なんです。

田中 : (「ルールがない」のが唯一のルール……なんだかややこしいな)

サイハテ村を探索!

坂井 : まずはここが、今日泊まってもらうゲストハウスです。

ゲストハウス。広く開放感のあるベッドスペース、清潔感のあるトイレ、お洒落なダイニングがあり、居心地がいい

田中 : 綺麗ですね。山奥にこんなに快適なゲストハウスがあるなんて……。

坂井 : 実はここ、2016年にクラウドファンディングで資金調達して作ったゲストハウスなんです。約200万円の資金を集めることができました。

田中 : ……これは、プールですか?

村に設置されているプール。当日は村に遊びに来ていた子供たちが遊んでいた

坂井 : はい、村の前身となった施設で使用されていたプールを村人達で綺麗にして使えるようにしたんです。

アースバッグと呼ばれる、土のう袋を積み上げて建造した建物。村の標高が高いため、その眺めはとても綺麗だ
サイハテ村では「完全な自給自足」を目指しているわけではないが、鶏やヤギの飼育、各種青果物の栽培がなされているとのこと

「エコ」に振り切らない、ハイブリッドなコミュニティ

田中 : 村の案内、ありがとうございました。のどかな場所ですね。ところで「エコビレッジ」というと、完全な自給自足を目指しているイメージを持っていたのですが、サイハテはそうではないんですか? 

エコビレッジとは、持続可能性を目標としたまちづくりや社会づくりのコンセプト、またそのコミュニティ。以下のように定義されている。

・ヒューマン・スケールを基準に設計される。

・生活のための装備が十分に備わった住居がある。

・人間が自然界に害を与えず、調和した生活を行っている。

・人間の健全な発達を促進する。

・未来に向けて持続的である。

フリー百科事典「Wikipedia」より引用

坂井 : そうですね。サイハテでは、そこまでエコに固執しているわけではありません。そもそも昔(といってもここ数十年で)、エコビレッジが誕生したのは「環境破壊を止めたい」とか「資源の浪費を抑えたい」とかいう考えから。その想いは私達にもありますが、だからって「エコじゃないから」という理由で、生活の不便さをすべて享受しているわけではありません。食糧が足りなければ、買いに行きますしね。

もちろん、パソコンもスマホも使います。この村の住民の多くはクリエイターで、パソコン1つでWebデザイナーとして働いている人がいれば、ドローンを使っている人もいます。決してテクノロジーを否定しているわけではなく、私たちが目指しているのは、現代にあったエコビレッジの形、テクノロジーとエコが融合した”ハイブリッドなコミュニティ”なんです。

なぜ今、”コミュニティ”が重要視されているのか?

田中 : ハイブリッドなコミュニティ、ですか。

坂井 : はい。ここ数年、「コミュニティ」という言葉をよく聞くようになったのは、今一度、人と人との関わり方を見直すタイミングが訪れているためであり、そこで重要になるのが新たなコミュニティの形だと考えています。

私は以前、人口が100人ほどの村に住んでいました。そこではハッキリと「村社会」が存在していたんです。それは昔であれば、どの地域にも当てはまったこと。しかし、高度経済成長期を境にその社会が一部崩壊し、核家族が増え、コミュニティの形が変わりました。

当時はそれでうまくいったのですが、現在、社会とコミュニティの関係性が徐々にアンバランスになってきています。一生懸命働いてもお金がない、近所付き合いがないため子どもや老人の面倒を見てくれる人がいない、そもそも何をするにしても人手が足りない。私たちは、そういった問題を解決するための新たなコミュニティの形をここサイハテ村で模索しているんです。

後編では、サイハテ村が新たなコミュニティの形模索する中で見えてきたこと、その課題などについて紹介します。(後編は9月4日公開予定です)

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。