ジムニー、トコット、センチュリー…四角いクルマが増える理由

森口将之のカーデザイン解体新書 第1回

ジムニー、トコット、センチュリー…四角いクルマが増える理由

2018.08.31

モビリティジャーナリスト・森口将之さんの新連載

第1回は日本車に角ばったデザインが増えている背景について

注目の3台、四角い理由は三者三様?

「センチュリー」「ミラ トコット」「ジムニー」。最近デビューした日本車は、角ばったボディの持ち主が多い。しかも3台ともに注目を集めている。なぜ四角いクルマが次々に出てきて、どれもスポットが当たっているのか。四角さの理由を探っていくと、たどり着いたのは「日本文化」だった。

最近の日本車に四角いクルマが目立つ理由とは(画像はスズキ「ジムニーシエラ」)

馬車と駕籠の時代から続く伝統?

ここ最近発表された日本車に、四角いデザインが多いことに皆さんは気づいているかもしれない。具体的には、6月に21年ぶりのモデルチェンジを果たしたトヨタ自動車の最高級車「センチュリー」、同じ月に登場したダイハツ工業の新型軽自動車「ミラ トコット」、そして、20年ぶりとなるモデルチェンジを発表したばかりのスズキ「ジムニー」および「ジムニーシエラ」の3台だ。

しかも、3台ともに注目を集めている。センチュリーは限られたユーザーのためのクルマだが、昨年の東京モーターショーに参考出展されたときから話題になっていたし、ジムニーは現時点で注文しても納車まで半年待ちといわれる。ミラ トコットは発売から1カ月で月販目標台数の3倍となる約9,000台を受注した。

トヨタ「センチュリー」(画像提供:トヨタ自動車)

なぜ四角いクルマに好感を持つ人が多いのか。理由の1つに、丸いクルマが増えたことへの反動があるのは確実だろう。

欧州車にはダイナミックな造形が多い

自動車づくりの先輩である欧州や米国は、乗用車については動物に例えることが多く、前後のフェンダーを盛り上げたりして、抑揚の強いダイナミックなデザインを取り入れがちだ。確かにクルマも疾走する物体であるから、こうしたイメージには納得できる。

日本の乗用車は、欧米のカーデザインを参考にしながら進化してきた。海外での販売が重要になっている車種も多い。グローバルな嗜好を盛り込むことは大切だ。こうして日本車も、多くの車種が欧米と同じようにダイナミックなフォルムをまとうようになった。

欧米を参考にしたダイナミックなデザインとは対照的な、直線と角が特徴のデザインを採用したダイハツ「ミラ トコット」

しかしながら、多くの人が長い間、木造住宅で暮らしてきた日本人は、欧米人より水平・垂直のデザインに親しみを持つ人が多いような気もする。

そもそも乗り物がそうだった。今から200年ほど前、欧州の人たちが移動に馬車を使っていた頃、日本では人間が担ぐ駕籠(かご)が主役だった。両者のデザインを比べると、フェンダーなどに優雅なカーブを取り入れていた馬車に対し、駕籠は担ぎ棒を含めて直線と平面で構成されたものが多かった。

日本の風土が生み出した四角いクルマ

日本市場はこれまでも、欧米と比べて四角い乗用車が多かった。特にミニバンでは、かつては背が低く流麗なスタイリングの車種も人気があったが、現在の主役はトヨタ「アルファード」や日産自動車「セレナ」など、背が高い箱型の車種だ。軽自動車のハイトワゴンにも同じようなことがいえる。

トヨタ「アルファード」(画像提供:トヨタ自動車)

欧米に比べ日本では、自動車で移動する距離が短い。しかも、“ウサギ小屋”と称されるように狭い家に住む人が多い。道路も狭い。これが、乗り降りしやすく、車内が広々としていて、車体の見切りがしやすい箱型のミニバンなどを求める気持ちにつながったのではないだろうか。

しかも我が国は、欧州と比べて平均速度が低いから、高速域での空気抵抗を重視する必要性も相対的に高くないので、低く滑らかなスタイリングにこだわる必要もない。こうして考えてくると、四角いクルマは日本の風土が生み出した文化的な特徴ではないか、と思えてくる。

センチュリーに盛り込まれた「几帳面」な造形

しかし、センチュリー、ミラ トコット、ジムニー(ジムニーシエラを含む)の3台が四角いボディを採用した理由は、ほかにもありそうだ。

センチュリーのモデルチェンジを一言でいえば、“継承”だ。顔つき、横からの眺め、後ろ姿と、どこから見てもセンチュリー以外の何物でもない。多くの日本車が、移り気な日本人の気持ちを反映するように、モデルチェンジのたびに形を変えたがるところを見てきているだけに、センチュリーのブレない造形は尊敬に値する。

この見た目、「センチュリー」以外の何物でもない(画像提供:トヨタ自動車)

それでいて、細部には新しいディテールを盛り込んでいる。例えばボディサイドのキャラクターラインを見ると、ショルダー部のキャラクターラインには並んで走る2本の線を“角”として研ぎ出し、その隙間の面を1本の線として際立たせることで高い格調を与えている。これには、平安時代の屏障具(へいしょうぐ)の柱にあしらわれた面処理の技法を採用した。

この技法、実は「几帳面」と呼ばれる。我々が日頃、何げなく使う几帳面という言葉の語源はここにあったのだ。

この几帳面なボディサイドに注目だ(画像提供:トヨタ自動車)

トコットの四角さは「エフォートレス」のため

一方のミラ トコットは、新型車なので継承する伝統はない。では、角に丸みを入れたスクエアなフォルムの理由は何かというと「エフォートレス」、つまり、肩ひじ張らないクルマを目指して、女性社員のチームが開発したのだという。確かに、クルマに速さや勢いを求める気持ちは、男性の方が強そうだ。

でも実車を見ると、男性を含めて幅広いユーザーに受け入れられそうな、シンプルかつニュートラルなスタイリングだと思った。多くのクルマがダイナミック方向に向いているからこそ、個性的に映る。

ちなみに、ミラ トコットにはベーシックな仕様のほか、サイドシル(ドアの下側にあるフレーム)を白で塗装したり、グリルやドアにクロームメッキのモールを入れたりした、アナザースタイルパッケージの用意もある。これらは、ベースモデルがシンプルすぎて不安に思った男性社員が追加したものだというが、個人的にはベースモデルのほうがコンセプトを体現しており、好感を抱いた。

これは「スイートスタイル」というアナザースタイルパッケージだ

ジムニーの四角さは「ハスラー」あってこそ

最後に紹介するジムニーの場合は、チーフエンジニアに聞いたところ、「ハスラー」の登場が大きいと語っていた。ハスラーのほか、「イグニス」や「クロスビー」といった商品も持つスズキでは、SUVのラインアップの中で役割分担ができるようになり、ジムニーのデザインも2代目のような機能重視に戻したという。

最近まで販売していた3代目ジムニーは逆に、角を丸めたフォルムにボディ同色バンパーを備え、乗用車に近づけたような装いだったことを覚えている読者もいるだろう。3代目がデビューした20年前は、舗装路重視の乗用車的なSUVが増えはじめ、流行する兆しがあった。ジムニーも時代に乗り遅れまいと、このようなデザインに転換したのかもしれない。

上は「ハスラー」、下は3代目「ジムニー」(画像提供:スズキ)

しかし、それから20年が経過して、前述の兆しは現実になり、さまざまなブランドが乗用車的なSUVを送り出した。むしろ今では、四角いほうが個性的だし、ヘビーデューティSUVらしく見える。こうした読みも入っているかもしれない。

乗って感じた四角の恩恵

筆者は最近、これらの四角いクルマ3台に相次いで乗ることができた。実車を前にして感じたのは、どれも真横から見たプロポーションのバランスが取れていることだ。3台のデザインが練りこまれたものであることが分かった。

走り出すと、取り回しのしやすさに感心する。ミラ トコットはもちろん、全長5,335mm、全幅1,930mmという巨体のセンチュリーでさえそう思うのだから、スクエアなデザインが、いかに車体の見切りに効いているかが分かるだろう。ジムニーの四角さは、木や岩を避けながら進むオフロードコースでありがたかった。

前にも書いたように、四角いクルマは日本独自の文化から生まれたカタチだと考えている。欧米のダイナミック路線に影響されることなく、これを日本らしさとしてグローバルに打ち出しても良いのではないかと思う。

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2019.05.21

2018年度のM&A件数は830件、取引総額は12兆7,069億円

「武田薬品のシャイアー買収」は日本企業最高金額に

日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が見られた

平成最後の年度となる2018年度(2018年4月-2019年3月)は、日本の上場企業によるM&A(企業の合併・買収)が活発だった。

国内の高齢化が進み、中小企業の後継者不在の問題はますます深刻になっている。大手企業でも国際競争が激しくなる中で、規模を拡大したり、「選択と集中」で経営を効率化したりする動きが活発だ。こうした経済環境の中で、多くの企業はM&Aに注目し、自社の成長の手段の1つとして積極的に活用し始めている。

M&A仲介サービス大手のストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースによると、2018年度のM&A件数は830件、金額(株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額)は計12兆7,069億円となり、いずれも2009年度以降の10年間で最高に達した。

2009年度から2018年度にかけてのM&A件数の推移。ストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースで集計したもの。※経営権が移動するものを対象とし、グループ内再編は対象に含まない。金額などの情報はいずれも発表時点の情報
2009年度から2018年度にかけてのM&A金額の推移。 ※同上

日本企業最高金額となった「武田薬品のシャイアー買収」

2018年度に注目されたのが取引金額の拡大だ。

武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアーの買収に投じた6兆7,900億円は、日本企業が実施したM&Aとしては過去最高額となった。さらに同年は、1,000億円を超える案件がこの10年で最高であった2017年度と並ぶ18件に達するなど、国際競争が激しくなる中で、日本企業がクロスボーダー(国際間案件)のM&Aを活発化させた様子が見てとれる。

武田薬品のシャイアー買収は2018年5月8日に発表され、2019年1月8日に成立した。巨額の買収金額が経営に与える影響を懸念して、創業家一族ら一部の株主が買収に反対したことも話題になったが、臨時株主総会での武田薬品株主の賛成率は9割近くに達した。

武田薬品に次ぐ大型の案件は、ルネサスエレクトロニクスによる米半導体メーカー・インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収であった。買収金額は日本の半導体メーカーとして過去最高となる7,330億円に達した。自動運転やEV(電気自動車)などの進化に伴い、車載向け半導体の需要拡大が見込まれており、ルネサスエレクトロニクスはIDTの買収によってこの分野の開発力強化や製品の相互補完を目指す考えだ。

それに次ぐ大型の案件は、日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収であり、その金額は7,140億円に達する。日立製作所はABBから2020年前半をめどに分社される送配電事業会社の株式の約8割を取得して子会社化したあと、4年目以降に100%を取得し、完全子会社化する予定だ。再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されており、日立製作所は買収により送配電事業で世界首位を目指す。

2018年度(2018年4月1日-2019年3月31日)の取引総額上位10ケース。※金額は株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額 (ストライク調べ)

2019年度も活況続くか

先述したように、金額が1,000億円を超える大型のM&Aは18件あり、武田薬品など金額上位3社のほかに、大陽日酸、三菱UFJ信託銀行、大正製薬ホールディングス、東京海上ホールディングス、JTといった大企業が名を連ねた。

これら18件中17件はクロスボーダーであり、かつ2018年度のM&A件数中、こうしたクロスボーダーは185件(構成比22.3%)に達しており、日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が浮かび上がった。

かつて、日本で企業の投資といえば、研究開発や設備投資が大半を占めていた。しかし、最近の状況を受けて、ストライクの荒井邦彦社長は「全体の成長率が低迷する中で、こうした投資の効果は思うように高まらず、事業戦略としてのM&Aが日本企業でも定着してきている」と分析する。

なお同氏は、2019年度のM&A市場の動向についても「日銀による金融緩和が企業の資金調達環境を改善させており、活況が続きそうだ」と予測している。

出展:M&A online データベース

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カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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